あらすじ
母と向き合うことを決心したるい(深津絵里)が雉真家に帰って来ると、懐かしい歌が聞こえてきます。見ると、カムカム英語のテキストを手にしたひなた(川栄李奈)の姿が。表紙に書かれた「Yasuko」という名について尋ねられたるいは、母・安子(上白石萌音)との思い出を初めてひなたに話します。次の日、一人で「Dippermouth Blues」に向かった錠一郎(オダギリジョー)は、ある人物と待ち合わせを…。
98話ネタバレ
雉真家
るいの部屋
ひなた「♬『Come, come, everybody How do you do, and how are you? Won’t you have some candy? One and two and three, four, five?』あっ お母ちゃん。 お帰り。」
るい「ただいま。」
ひなた「なあ お母ちゃん。 これ…。 やすこって…?」
るい「ひなたのおばあちゃんや。」
ひなた「やっぱり。 こんな昔から聴いてたん? ラジオの英語講座。」
るい「うん。 毎日の日課やった。」
ひなた「ふ~ん。」
るい「そうそう。 確か 平川先生いわはった。 去年… 亡くならはったそうやけど…。」
ひなた「えっ?」
るい「何?」
ひなた「ううん… 何でもない。」
るい「そう?」
ひなた「うん。」
るい「♬『Come, come, everybody How do you do, and how are you?』」
2人♬『Won’t you have some candy? One and two and three, four, five? Let’s all sing a happy Sing tra la la la la』
リビング
るい「勇叔父さん。」
勇「うん?」
るい「お母さんの居場所に 心当たりある?」
勇「え…?」
るい「あれから… 手紙のやり取りとか してたん?」
勇「義姉さんは それまでの人生 全て断ち切る覚悟で アメリカ行ったんじゃ思う。 るいが岡山出た時と 一緒じゃのう。 ハハ…。 う~ん… 義姉さんが 親しゅうしょおったんは 水田屋とうふの きぬじゃけど いつじゃったかのお… きぬの旦那さんの里へ 一家で帰ることになった 言うて…。」
るい「そうやったんや…。」
勇「うん。 るい。 すまなんだなあ。」
るい「叔父さん…。」
勇「わしら大人が 寄ってたかって 小さかった るいを苦しめてしもうた。」
るい「違う。 私が… 決めたことなんや。 けど… やっと… あの時 閉ざした戸を 開けよういう気になった。 やっと…。」
勇「わしの方でも できるだけのこと すらあよお。 きぬの消息も調べとく。」
るい「ありがとうございます。」
勇「世話あねえ。 義姉さんも そりょお望んどるはずじゃ。」
るい「勇叔父さん。 久しぶりに会えて ホンマによかった。 明日 帰ります。」
勇「ええっ 何でなら。 もっと ゆっくりしていきゃあええがあ。」
るい「ひなたは仕事があるし お店も こないに長く閉めたん初めてなん。」
勇「それじゃったら 桃太郎だけでも残ってくれんかのう。 雉真の野球部 見せてやりたんじゃ。」
るい「叔父さんから言うてやって。」
ダイニング
錠一郎「それから 『サザエさん』のやつも 面白かったですね。」
雪衣「『マー姉ちゃん』じゃろ。」
錠一郎「ああ! そうそう そうそう。 あとは何やったかなあ… あの~ 甲子園が舞台の…。」
雪衣「『純ちゃんの応援歌』じゃ。」
錠一郎「ああ そうそう。 すごいな。 全部知ってはるんですね。」
雪衣「アハハッ。 私ゃあなあ 第1作の『娘と私』から 欠かさず見ゅうるんじゃ。」
錠一郎「第1作?」
雪衣「うん そうじゃ。」
錠一郎「それから 一本も欠かさず?」
雪衣「そうじゃ! アハハハッ。」
錠一郎「へえ~ すごいなあ。」
雪衣「好きなんじゃ。 1日15分だけの この時間が。 たった15分。 半年で あれだけ喜びも悲しみもあるんじゃから 何十年も生きとりゃあ いろいろあって当たりめえじゃが。」
ひなた「あれ? お父ちゃん まだ そないしてんの?」
錠一郎「うん。 いや お父ちゃんも もう一日いることにしたんや。」
ひなた「何で?」
錠一郎「いや まあ ちょっとな。」
ひなた「ふ~ん。」
雪衣「あっ いけん。 始まる!」
錠一郎「ああ ああ ホンマや。 危うく見逃すとこでしたね。」
雪衣「フフフフッ。」
♬~(テレビ)
客間
るい「桃太郎。 あんまりご迷惑かけんようにね。」
桃太郎「分かっている。 進路のこととか ここで ゆっくり考えるわ。」
喫茶店・ディッパーマウスブルース
ホール
健一「はい お待たせ。」
錠一郎「えっ…。」
健一「錠一郎君は ホットドックが好きじゃあいうて 父さんが よう言ようったから。」
錠一郎「ああ ありがとうございます。 うれしいなあ。 頂きます。」
健一「どうぞ。」
(ドアが開く音)
慎一「いらっしゃいませ…。」
健一「いらっしゃいませ…。」
(ドアが閉まる音)
「お前。 ふざけんなよ。」
錠一郎「トミー。 久しぶり。」
トミー「お前 こぼすなよ!」
錠一郎「あっ… ごめん ごめん ごめん。」
トミー「変わってへんなあ お前は。」
錠一郎「トミーも。 コーヒーでいい?」
トミー「ああ。」
健一「聞こえた。 どうぞ。」
トミー「なあ ジョー。 お前 俺が どこに住んでるか知ってるよな?」
錠一郎「東京やろ?」
トミー「そうや 東京や。 そして ここは岡山や。 いきなり電話してきて 茶ぁ飲まへんかいうて 呼び出す場所ちゃうやろ。」
錠一郎「ハハハハッ。 ごめん。」
トミー「ごめんやないねん。」
錠一郎「ありがとう 来てくれて。」
♬~(レコード 『Red Hot』)
慎一「あの… トミー北沢さんですよね?」
トミー「ああ いかにも。」
慎一「やっぱり!」
錠一郎「サインしてあげたら?」
トミー「ああ。」
慎一「いいんですか!? あ… 少々お待ちください。 あの… お願いします!」
トミー「はい。」
慎一「あ… ありがとうございます!」
健一「すいません。 ありがとうございます。」
慎一「家宝にします。」
錠一郎「やっぱりええなあ。 トミーのトランペット。 久しぶりに聴いたけど やっぱ最高や。」
トミー「何やと? 久しぶりとは 何事や お前 聴いてへんかったんかい。 この30年に出し続けた 俺の数々のアルバムを。」
錠一郎「うん。」
トミー「おい!」
錠一郎「でも 全部買ってるよ。 これから聴く。 全部聴く。 トミー。」
トミー「何や。」
錠一郎「あのね トミー。」
トミー「何や 何や。 怖い。 ハハッ 怖いで。」
錠一郎「すぐにやなくてええんやけど…。 トミーのバンドに 入れてもらわれへんかな。」
トミー「え…。 お前… 吹けるようになったんか? トランペット。 ほな…。」
錠一郎「鍵盤を… やってみようかなと思ってる。 ずっと トランペットが全てやと 思ってたけど… 演奏することが楽しい。 演奏で 人が踊ったり笑ったりしてるのが うれしい。 そう思えるようになったんや。」
トミー「何や… よう分からんけど サッチモちゃんのためなんやろ?」
錠一郎「うん。」
回想
るい「お母さんを捜しに…。 アメリカに行きたい。」
回想終了
錠一郎「アメリカに連れてってあげたい。 僕が 音楽で連れてってあげたい。」
トミー「鍵盤か…。」
錠一郎「若い時に 基礎は習ったよ。」
トミー「まあ トランペットやってたんやから 当然やな。」
錠一郎「死ぬ気で練習する。 トミーに認めてもらえるまで。」
トミー「嫁に探させる。」
錠一郎「えっ?」
トミー「一流のピアノ講師を。」
(呼び出し音)
錠一郎「えっ トミー でも…。」
トミー「あっ もしもし? 奈々?」
奈々「富夫! どこにいるの!?」
トミー「えっ メモ残しといたやろ。 ジョーに会いに岡山に…。」
奈々「すぐにバレるうそ つくんじゃないわよ! 何なの いい年して。 まだグルーピーと遊び回ってるのね! あなたは 大体 いつも そう…。」
(電話を切る音)
錠一郎「奈々さん 何て?」
トミー「ああ… 忙しそうやから 帰ってから話すわ。」
トミー「いつか また… お前と トランペットで セッションするのが俺の夢やった。 けど 修正するわ。 お前と一緒に ステージに立つ。 それが俺の夢や。」
錠一郎「ありがとう トミー。」
トミー「礼は実現してから言え。」
錠一郎「フッ…。」
トミー「まあ どうでもええけどな お前 その話するために 岡山まで呼んだんか?」
錠一郎「フフフ… ホンマに ごめん。」