あらすじ
朝早く久保田ミワ(松本穂香)の部屋に美羽さくら(恒松祐里)がやって来る。八海崇(堤真一)に渡すクッキーを二人で作ろうというのだ。困惑するミワだったが、さくらには逆らえず一緒にクッキーを焼くはめになる。さくらはこれからもなりすましを続けて、起きたことを自分に報告するようミワに迫る。八海邸で藤浦(山口紗弥加)たちの目をかいくぐってなんとか八海にクッキーを渡すことはできたが、そこで想定外の事態が…。
第10回ネタバレ
ミワ宅
さくら「材料 買ってきたよ。」
ミワ「へ?」
さくら「クッキー 一緒に焼こ。 お邪魔します。」
ミワ「あ… あの クッキー焼くのはいいんですけど うち その あんまり調理器具がなくて。」
さくら「知ってる。 だから家から持ってきたよ。 私 こういうの きっちり量らないと 気が済まないタチなんだ。 0.001グラムでも違うと気持ち悪くて。 小麦粉 取ってくれる? 久保田さん。」
ミワ「はい。」
さくら「小麦粉。」
ミワ「小麦粉… はい。」
<さくらさん… 本当の目的は何?>
<私は あなたがよく 分からない…>
回想
さくら「『お疲れさまです』とか 『お世話になっております』とか 相手に気遣ってますアピールに終始する人 決まって無能です。」
回想終了
<紀土くんみたいな クールな合理主義者と思えば…>
さくら「チョコチップも入れるでしょ?」
ミワ「いいですね。」
<八海サマのことになると…>
回想
ミワ「(笑い声) マジ!?」
回想終了
<中学生みたいに大はしゃぎ。 私が さくらさんになりすましたことを 怒ってないというけど それは本当なんだろうか…。 彼女の本心 意図 思惑 どれも まだ分からない>
ミワ「えっ 正方形なんですか…。」
さくら「このほうが無駄も出ないし 味は一緒でしょ?」
さくら「さて クッキー焼けるまで 久保田さんのコレクション 見てもいい?」
ミワ「はい。」
<それが目的?>
さくら「いや~ ホントすごいよね。」
ミワ「さくらさんも映画ファンだから たくさん持ってるんじゃないですか?」
さくら「ん~ でも 手元にはデータしかないんだ。」
ミワ「ああ…。」
さくら「だって 物を集めだしたら 場所がいくらあっても足りないでしょ?」
ミワ「私は やっぱり 実物があったほうがいいから。」
さくら「そっか。 あっ これって 例の映画メモ?」
ミワ「はい。」
さくら「すっご・・・ 年間鑑賞本数1,000本以上だっけ?」
ミワ「はい。」
さくら「倍速で見るの?」
ミワ「え…。」
さくら「あっ さすがに倍速は 分かんない時あるか。 1.7倍くらい?」
ミワ「いや ないです ないです。 それは しないです。」
さくら「え…。 等倍で この本数は さすがに無理じゃない? 私は倍速で見るよ。」
ミワ「はい。 楽しみ方は それぞれだと思うんですけど。」
さくら「あっ 倍速は作りてに失礼とか?」
ミワ「そうですね。 何か 申し訳ない気がします。」
さくら「倍速で見たって それで作り手の収益は変わらなくない?」
ミワ「それでも私は 映画に敬意を払いたいです。 映画には お金では はかれない 作り手の情熱とか人生が 詰め込まれてると思うから。」
<し… しまった! 今 世界で一番 機嫌を損ねてはいけない 相手を 怒らせてしまった…?>
ミワ「さくらさん…。 え え えっ!? えっ…。」
さくら「あなたって 相当 不器用な生き方をしてきたんだね。」
ミワ「え?」
さくら「たとえ自分が損をしても 他人の情熱や人生を尊重して 敬意を払う。 誰が見ているわけでもないのに。 あなた 悪い人じゃないね。 一時の過ちで 人生を台なしにするような人じゃない。 最近ひどいでしょ 罪を犯した人へのバッシング。 ネットで流れてる不確かな情報だけで まるで殺人でも犯したかのように 徹底的に個人を攻撃する。」
さくら「私 ああいうの大っ嫌い。 その人の罪に どんな背景があったのか 人間性考慮しないと フェアじゃないでしょ? 私が あなたという人を量る。 言ったでしょ? 私 きっちり量らないと 気が済まないタチだから。」
(オーブンの音)
ミワ「ク… クッキー…。」
さくら「焼けたね。」
ミワ「はあ はあ はあ…。」
さくら「いただきま~す。 ん~ おいひい! 私ね あなたのこと すごいって思ってるよ。」
ミワ「え?」
さくら「だって 家政婦でも何でもない人が 世界的俳優の八海 崇に そこまで近づけるなんて すごいじゃない。 私が家政婦になろうと思ったのも 八海サマに近づくためだったけど どう考えても あなたほど うまくやれなかったと思う。 できるとこまで続けたらいいんじゃない?」
ミワ「でも…。」
さくら「確かに あなたが八海サマに近づけたのは 偶然の産物かもしれない。 だけど その偶然を引き寄せたのは あなたの映画愛 そして 29年の人生で培った あなたの人間力でしょ? この幸運を享受する資格は 十分にあると思う。」
ミワ「でも バレたら…。」
さくら「しばらく続けて 自然な形で辞めたら なりすましなんてバレないよ。 そのかわり 私の作ったクッキーも ちゃんと渡してくれる? そのぐらいの権利あるよね?」
ミワ「は… はい もちろん。」
さくら「いや~ 自分の作ったクッキーを 八海サマが召し上がるなんて どうしよう! うれしすぎる! あっ ねえねえ どっちがいいかな?」
ミワ「こっちが。」
さくら「じゃあ 包んじゃうね。」
<彼女に対する疑問は いくつもあったけど それ以上 質問することは できなかった>
八海邸
書斎
(ノック)
藤浦「少し いいですか?」
八海「はい。」
藤浦「ミワさんの件なんですけど ちょっと厳しいかもしれません。」
八海「厳しい?」
藤浦「ボトルシップの件もありますし 買い物を頼んでも 一日かけて自転車で行くような人です。 使用期間が終わり ちょうど会社に 報告するタイミングなんです。 ほかの方に代えて頂いたほうが 無難かと。」
八海「そうですか。」
藤浦「では 手続きしますね。」
八海「待って下さい。」
藤浦「はい。」
八海「無難という理由で代えるのは どうなんですかね。」
藤浦「え?」
八海「うまく言えないんですが 彼女の行動には 気になるところがある… というか。」
藤浦「気になるって ただの家政婦ですよ?」
八海「たまにあるんですよ。 この人はなぜ そんな言動をとるのか その心理を追求したくなることが。 役者の性ってやつですかね。」
控え室
<意中の人に手作りクッキーを渡す。 例えば その相手が 同級生や仕事仲間であっても それは相当なプレッシャーだろう。 よりによって 私が渡す相手は… 神>
ミワ「吐きそう…。」
<八海サマ 今日は家にいらっしゃるのかな…>
一駒「今日は いらっしゃいますよ ご主人様。 はい。」
ミワ「そうなんですね。」
一駒「今日は まず 3人でリビングの掃除をいたします。 」
ミワ「はい。」
一駒「ご主人様は 新作映画の準備を されているようですので 物音は控えめに 拭き掃除中心でまいりましょう。」
池月「はい。」
ミワ「分かりました。」
一駒「くれぐれも ご迷惑にならないようにお願いしますね。」
<迷惑…>
池月「ミワさん ちょっと…。」
ミワ「何ですか? その箱。」
池月「ファンからのプレゼント。 事務所の決まりで 食べ物は処分することになってるの。」
ミワ「ああ…。」
池月「手作りのチョコレートとか パンとか。 まあ 悪気はないんだろうけど 万が一のことがあったらね。 これ 開けてみて。」
ミワ「はい それは全部…。」
池月「これも手作りね。」
リビング
<よく考えたら いや よく考えなくても 一般庶民の 大して おいしくもないクッキーを 世界的な俳優が食べるわけがない! 一流のパティシエが作ったなら まだしも よりによって ド素人の私が作ったクッキーなんか…>
ミワ「迷惑でしかない。」
池月「どうした?」
ミワ「いや 何でもないです。」
一駒「ミワさん 休憩に入ったら?」
ミワ「あっ いや でも まだ…。」
一駒「やるべきことがあるなら 先に済ませなさい。 中途半端な気持ちで拭き掃除しても 汚れは落ちませんから。」
ミワ「はい すいません。」
控え室
<いくら迷惑だとしても ここには さくらさんのクッキーも 入ってるわけで。 渡さなきゃいけないわけで>
書斎
ミワ「はあ…。」
(ノック)
ミワ「失礼します。」
<いないか…。 っていうか 何て言って渡したらいいんだろう。 試しに 練習するか>
ミワ「ふう…。 これ 食べて下さい!」
<ダメだ… 中学生の告白みたいだ。 もっと落ち着いて まず 何を持ってきたか言わないと>
ミワ「八海さん あの もしよろしければ クッキーを焼いたので 召し上がって下さい!」
<ああ~ やっぱ無理! 恥ずかしすぎる!>
八海「クッキー?」
ミワ「うわあ~! や… やつ… 八海サマ!?」
八海「すみません こんな格好で。」
ミワ「え… 役作り ですか。」
八海「ええ。 武田信玄の気持ちになってみようと 思いまして。」
ミワ「お邪魔しました。 すみません 失礼します!」
八海「ミワさん。 それは… 私にですか?」
ミワ「はい。 あっ よろしければ…。」
八海「ありがとうございます。」
<渡せた…>
八海「ああ… 手作りですね。」
<神が… 笑った>
ミワ「何の変哲もないクッキーですが…。」
八海「これは?」
ミワ「え?」
<そこには 身に覚えのない手紙が入っていた>