ドラマダイジェスト

夜ドラ「ミワさんなりすます」(第14回)

らすじ

久保田ミワ(松本穂香)は、八海邸の中で徐々に藤浦(山口紗弥加)や池月(小泉もえこ)、一駒(片桐はいり)と親しくなり信用を得てきた。だがそうなればなるほどミワは罪の意識に苦しむ。そんな時美羽さくら(恒松祐里)がミワの部屋を訪れる。ミワの悩みを一通り聞いたさくらは、世の中の人はみな幸福をつかむために嘘をついて生きているとミワに言う。だから、八海崇(堤真一)との関係を死守するために偽さくらを演じきれと。

第14回ネタバレ

八海邸

正門前

池月「あっ 藤浦さん あの車です。」

藤浦「ありがとう。」

(ノック)

「何?」

藤浦「困るんですよ こんなところに止められると。 ここは止めるところじゃありません。 直ちに移動して下さい。 今すぐ。」

「はあ? そんなことね あんたに言われる…。」

藤浦「早く! 通報しますよ。 いいですね?」

「やめろよ おい。」

(エンジンをかける音)

藤浦「あっ 練馬署の…。」

「ちょっと 何してんだよ お前 おい! 車動かすよ! おい!」

控え室

一駒「あ~それは週刊誌ね。」

池月「そうなんですね。 最近 表に よく怪しい車が止まってるなと 思ってたんです。」

一駒「何を嗅ぎ回っているんだか。」

池月「八海さん スキャンダルとは無縁だし… 何だろう。」

一駒「たとえ あったとしても 藤浦さんの鉄壁ガードを崩せるとは とても思えないけどね。」

池月「セキュリティーに関して言えば 私たちも かなり厳しいですもんね。 藤浦さん。」

一駒「そう。 前に働いてた家政婦が ミーハー心を出して お屋敷内を撮影したら えらいことになったのよ。」

池月「クビですか?」

一駒「クビだけじゃ済まずに 3,000万円の賠償金を 要求されたんですって。」

家月「ええっ 3,000万!? 藤浦さん こっわ! いや~ 徹底してますね。」

藤浦「誰が怖いって?」

池月「あっ…! あ… いや お金より怖いものはないなって。 ねっ 一駒さん。」

池月「すみません…。」

藤浦「コーヒーを頂けますか?」

池月「はい。」

廊下

(連射音)

池月「ミワさん!?」

一駒「えっ 今 写真撮った!?」

ミワ「いや えっと…。」

一駒「ダメ! すぐ消して すぐ消して!」

ミワ「いや えっと あの…。」

池月「ああ…!」

ミワ「あっ 藤浦さん。」

池月「スマホを見せなさい。」

一駒「3,000万円…。」

藤浦「正門付近を確認して下さい。」

ミワ「え… そうじゃなくて…。」

一駒「3,000万円…。」

園庭

警備員「よし 消えた。」

藤浦「ご苦労さま。」

リビング

藤浦「ボヤ騒ぎで済んで よかったです。」

池月「何で家事が起きてるって 分かったんですか?」

藤浦「ミワさんが撮った この写真 よく見て。」

一駒「あっ! あっ タバコの吸い殻 投げ入れてますね。」

藤浦「私が追い払った週刊誌の記者が 腹いせにやったんだと思う。 ご丁寧に 監視カメラのないところを選んでね。 放火罪の重要な証拠になるわ。 ありがとう ミワさん。」

ミワ「あっ いえ 怪しい人が見えたので…。」

池月「私 てっきり ミワさんが ミーハー心で撮ってたのかと思いました。 藤浦さん よく ミワさんの意図に 気付かれましたね。」

藤浦「ミワさんは 家政婦として まだまだ頼りないところはあるけど 人をだましたりするような人間じゃない。 盗み撮りなんかするようには 思えなかっただけよ。」

控え室

<いや 藤浦さん 私は人を欺く あさましい女です。 こんなこと いつまでも続くとは思えないのに 今日だけ 明日だけ そうやって ずるずる毎日が過ぎていく。 そして今日も 一日 終わってしまった>

池月「あっ ミワさん。 どう? 家政婦の仕事 慣れた?」

ミワ「いや… 全然 うまくできないです。」

池月「そうかな? ミワさん センスあると思うけど。」

ミワ「えっ そうですか?」

池月「最初は 随分おどおどしてるなって 思ったけど 仕事は丁寧だし 整理整頓がすごいじゃん。」

<それは多分 私がオタクだからです>

池月「今 週3で入ってるでしょ? いっそのこと 週5 入ったほうがいいんじゃない?」

ミワ「いやいや そんな…。」

<私は ただのなりすまし…>

池月「ミワさんって ふだん何してるの?」

ミワ「えっ ふだん?」

池月「家政婦は週3だけでしょ? ほかの日は何やってるのかなって。」

ミワ「ほかには えっと…。」

池月「まあ いいや。 じゃあ お疲れさま。」

ミワ「お疲れさまです。」

<池月さんは いい人だ。 彼女たちとも 親交が深くなればなるほど その罪悪感は重くのしかかる>

ミワ「はあ…。」

ミワ宅

ミワ「はあ…。」

(チャイム)

ミワ「えっ? はあ…。」

さくら「おつ~。」

<今日は何しに…>

ミワ「どうぞ。」

さくら「お邪魔します。 あっつ…。」

ミワ「窓開けますね。」

(風鈴の音)

さくら「風 気持ちいいね。」

ミワ「風…。」

(風鈴の音)

回想

八海「風が… 吹いてますね。」

回想終了

<あの日 私は なりすましを告白するつもりだった>

さくら「今日はね これを持ってきたんだ。」

<えっ それは あの時の手紙!? ずっと捜して 見つからなかったのに…>

<何で さくらさんが…?>

さくら「はい お給料。」

ミワ「お給料?」

さくら「直接届けようと思って。 どうしたの?」

ミワ「それは… 受け取れません。」

さくら「えっ 何で?」

ミワ「ただでさえ さくらさんには とんでもないご迷惑をおかけしてるのに お金なんて…。」

さくら「まあ そう言うと思ったけどね。 あっ クッキー作戦 どうだった?」

ミワ「あっ 何で クッキーの紙袋に 私の電話番号 入れたんですか?」

回想

八海「これは… 手紙ですか?」

ミワ「あっ えっと これは その…。」

回想終了

さくら「だって それぐらいしないと 二人の距離が 縮まらないかなって思ったから。」

ミワ「なんてことを…。」

さくら「効果なかった?」

ミワ「いや… それがきっかけで… 銀座に行きました。」

さくら「えっ 八海サマと!? プライベートで!?」

ミワ「はい…。」

さくら「えっ 待って そんな近くでオーラを浴びたの!? それ 致死量 超えてるから! それでそれで? そのあとは?」

ミワ「バーに行って シラー監督とお会いして…。」

さくら「ええっ!? シラー監督って ニコラス・シラー!?」

回想

シラー「NINJAが 現代の東京によみがえって 夜の街を飛び回る話にしようかと 思ってるんだ。」

回想終了

ミワ「はい。 そのあと 帰りに 八海サマと二人で 神社を歩きました。」

さくら「神と神社で二人きり!? それ もはや神話だから! うわあ… ダメだ すごすぎて 脳が追いつかない。 っていうか あんた 何で そんな冷静でいられるの?」

ミワ「冷静っていうか 怖いんです。 なりすましが明るみになったら 彼らの好意も信頼も 全て裏切ることになるから…。」

回想

藤浦「ミワさんは 家政婦として まだまだ頼りないところはあるけど 人をだましたりするような人間じゃない。」

池月「仕事は丁寧だし 整理整頓がすごいじゃん。」

一駒「あっ お水いりますか? どうぞ。 はい。」

ミワ「あっ ありがとうございます。」

一駒「ロッカーに入れとく?」

回想終了

さくら「苦しいんだ? 社会的地位を失うことよりも 他人を裏切ることのほうが ずっとずっと。」

ミワ「…はい。」

さくら「他人の人生を尊重して 敬意を払って そんな人だもんね 久保田さんって。 カマトトぶってんじゃねえよ!」

ミワ「か… かまと と?」

さくら「そんなの全部言い訳で ホントは 八海 崇と離れたくないだけなんでしょ? 人生をかけて追いかけている 『神』が 『男』が 自分を気にかけてる そんな奇跡を失いたくない。 そうなんでしょ?」

<そうかもしれません>

さくら「はあ… みんな幸せそうだよね。 家族や恋人と 幸せ そのもの。 この幸せを手に入れるために みんなが どんな代償を払ってるか 想像したことある?」

ミワ「いえ…。」

さくら「憧れの異性を振り向かせるために 理想の地位を手に入れるために 何をしてると思う? ウソをつくの。」

ミワ「ウソ?」

さくら「そう。 例えば 就職面接で 『ありのままの私を 受け入れて下さい』なんて言う学生 どこも採用しないよね? 仕事でも恋愛でも みんな その理想に合わせて ギリッギリのところでウソをつく。」

さくら「なりふり構わず 死に物狂いでね。 で 久保田さんは? 八海 崇という世界一の理想を前にして 何をすべきだと思う?」

ミワ「分からないです。」

さくら「演じるのよ。」

ミワ「えっ?」

さくら「好意だとか信頼だとか そんなきれい事は一切忘れて 今の奇跡的な立場 八海 崇にとって掛けがえのない存在という立場を死守する。 そのためには… 美羽さくらを演じきるしかない。」

ミワ「…さくらさん。」

さくら「まあ とりあえず これ 受け取ってよ。 はい。 じゃあ また来るね。」

ミワ「はあ…。 はあ…。」

(風鈴の音)

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