あらすじ
久保田ミワ(松本穂香)は映画が大好きなフリーター。特に世界的大俳優・八海崇(堤真一)の大ファン。ある日ミワは八海邸が家政婦募集中なのを知る。好奇心から八海邸に赴いたミワは、屋敷の前でひき逃げ事件に遭遇。意識をなくした被害者は、採用された家政婦・美羽(みわ)さくら(恒松祐里)だった。八海のマネージャー・藤浦(山口紗弥加)に美羽さくらと間違えられたミワは、つい否定せずに八海邸内に招き入れられ…。
第1回ネタバレ
レンタルショップ
ミワ「よし。」
田淵「ちょっと久保田さん。 ポップなんか後回しでいいから これ 先やって。」
ミワ「あっ ごめんなさい。」
田淵「まだ レジにあるからね。」
ミワ「あっ はい。」
田淵「あっ 終わったら レジ入ってくれる?」
ミワ「でも私 今日2時まで…。」
<久保田ミワ 29歳。 小さい頃から地味で不器用>
<何をやっても目立たない 空気のような存在だった私>
<そんな私を救ってくれたのは 映画だ>
<好きなセリフやシーンはメモに書き留め 繰り返し何度も見る>
<年間鑑賞本数は1,000本以上。 人生の大半を映画鑑賞にささげてきた>
ミワ「それじゃ 私は 今日これで…。」
樋口「あっ 久保田さん これもお願いします。 あと これもお願いします。」
ミワ「あっ えっと…。」
樋口「じゃあ 樋口 休憩入りま~す。」
田淵「はい 行ってらっしゃ~い。」
ミワ「あの~。」
田淵「えっ 何?」
ミワ「いいえ。」
客「あっ ちょい… 店員さんだよね?」
ミワ「あっ はい。」
男「ちょっと来て。 急いで 早く。 ほら。」
女「これ ブラピが出てるって 書いてあったから借りたのに 出てなかったんですけど~。」
ミワ「あ… いや ちゃんと出演されています。」
男「いやいやいや こいつが出てねえっつってんの。」
女「絶対 出てなかった。」
男「ねっ 出てないよね。 ねっ。 あっ これ詐欺さよね。」
ミワ「詐欺…。」
男「金返して。 110円。 早く早く。」
ミワ「失礼ですが ちゃんとカメオ出演されています。」
女「カメ? えっ どこ?」
ミワ「59分4秒辺りに。」
男「適当なこと言っちゃダメだよ。」
ミワ「適当ではありません。 私 映画は ふだん メモを取りながら見るので 細かいところも覚えているんです。 この映画は16回見てますし ブラッド・ピットは トータル4分は出てるので 間違いありません。 返金はできかねますが じゃあ 代わりに おすすめを紹介しますね。 ちょ… ちょっとお待ちください。」
男「いい いい いらない いらない いらない いらないんだ。 どこ行ったの?」
女「怖いんだけど。」
男「大丈夫。 しっかり 俺 言うから 次。」
ミワ「ブ… ブラッド・ピットがお好きでしたら 彼のルーツと言える作品が いくつもありまして 中でも…。」
男「いや もう そういうのいいからさ…。」
ミワ「ですから ブラッド・ピットといえば まず 幻の映画といわれる 『リック』から見て頂いて それから 『セブン』 『ジョー・ブラックをよろしく』 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』…。」
女「いや~ もう!」
川端「『店員の豆知識がうるさい』。 『聞いてもないのに 映画を語ってきて不快』。 『本当の怖かったぁ~』。 『論破された』。 『もう二度と行かない』。」
ミワ「申し訳ありません…。」
川端「ふだんは真面目だし 映画に詳しいのは結構なことだけど 論破しちゃダメだよね。」
ミワ「…はい。」
川端「辞めてもらえますか。」
ミワ「田淵さん 樋口さん 今日まで ありがとうございました。」
樋口 田淵「お疲れさまで~す。」
田淵「ふだん自己主張しないくせにさ 映画になると周りが見えなくなるとかね。」
樋口「本当 オタクの典型ですよね。 てか 29で サブカルこじらせてんのは イタいですよね。」
<こうして私は 5年勤めたレンタルショップを クビになった>
ミワ宅
<アラサー 独身 キャリアなし。 これが生きづらくないといえば ウソになる>
<だけど…>
<私には映画がある>
<映画を見ている間だけは 現実世界から逃避できる。 そして この画面の中には 私が幼少期から追いかけ続ける 掛けがえのない 激推し俳優がいる>
<八海 崇。 齢56にして 日本 いや! 世界を牽引する国際的名俳優>
<私は 八海 崇が 好きだ。 演技力はもちろん 顔 声 プライベート 全てにおいて 愛している>
『周りは敵兵に囲まれています!』
<その彼の 圧倒的なエネルギーが…>
『中隊本部に連絡しろ!』
『ダメです! もう使えません!』
<私の詰んだ人生に 生きる希望を与えてくれる>
『中尉殿! もはや この島は。』
八海『でも やるんだよ。』
ミワ「はあ… はい 分かりました!」
<映画鑑賞のあとは DVDの整理に フィギュアの手入れ>
<そして 寝る前に情報収集。 八海サマ出演作品の撮影秘話 独占インタビューを 隅々まで読み込んでいく>
<ネット検索も怠らない。 八海サマの本名が横山 崇であることや 彼の住んでいる住所も 独自のルートで入手した>
ミワ「まあ… だから何をするってわけでも ないんだけど。 えっ! ウソ 八海サマが家政婦を募集してる?! えっ 待って 住所は…。 合ってる! え… どうしよう ウソ。 もし 家政婦になれたら 八海サマと同じ空気を吸えるってこと!?(荒い息遣い)」
ミワ「高卒…。 英検4級… 整理収納… ないです ないです。 ない ない
ない ない…。 はぁ…。」
八海邸
<自分でも どうかしてるのは分かってる。 でも どんな人が採用されたのか 一目見てみたくて 気付けば八海邸に向かっていた>
「こんにちは。」
「こんにちは。」
ミワ「こんにちは。 完全に不審者…。 もう帰ろう。」
(衝突音)
ミワ「え? え…。」
「大丈夫? 痛いとこない?」
美羽さくら「ううん…。」
「聞こえる?」
ミワ「あの 大丈夫ですか? えっ!? 三毛猫ハウスサービス 美羽さくら…。」
<ひょっとして この人が 八海サマに採用された家政婦さん?>
「大丈夫?」
ミワ「あ… あの 救急車は?」
「どうぞ。 付き添いの方 お乗り下さい。 足元 気を付けて。」
「はい ドア閉めま~す。」
(サイレン)
藤浦「何の騒ぎですか?」
ミワ「あ… あっ あの 今 あの…。」
藤浦「もしかして 三毛猫ハウスサービスの… 美羽さん?」
<もしかして 私 今 運ばれていった人と 間違えられてる?>
<今までの人生 できるだけ目立たないように そして 嫌われないように 自分の本音は ずっと小さな部屋に閉じ込めてきた>
<だけど今こそ 人生を変える時>
ミワ「はい。 三毛猫ハウスサービスの… ミワです。」
藤浦「どうぞ お入り下さい。」
玄関
藤浦「申し遅れました 私 藤浦です。」
<こ… この人が伝説の敏腕マネージャー 藤浦さんか!>
ミワ「よろしくお願いします。」
藤浦「次回からは勝手口を使って頂きますが 今回は どうぞ。 ずっとやって頂いてた方が ちょうど産休に入られたんです。 とても優秀な方だったので なかなか代わりが見つからなくて…。」
<どうする… 今なら まだ引き返せる>
藤浦「ミワさん?」
ミワ「は… はい。」
控え室
藤浦「ここが家政婦さんの控室です。」
ミワ「はい。」
藤浦「それと…。 このロッカーは好きに使って下さい。 エプロンなど 必要なものは そろっています。」
ミワ「はい ありがとうございます。」
藤浦「着替えが終わった頃 戻ります。」
ミワ「はい。」
<え… 私 ホントに家政婦になるします気? 大体 あの人が病院から戻ってきたら 偽物だって確実にバレるし…。 いや それ以前に英語もできないし 資格も何もない底辺の私に セレブの家政婦が勤まると思う? そもそも他人になりすますなんて 犯罪だよね? バレたら 人生が終わるかもしれないのに…>
回想
八海『でも やるんだよ。』
回想終了
<ぴったり…>
藤浦「仕事の前に 主がご挨拶したいそうです。」
ミワ「はい… え?」
<主って ま… まさか 八海サマ!? いきなり八海サマに!? ちょっと こ… 心の準備に 10日間ほど頂けませんか?>
リビング
藤浦「念のため お伝えしておきますが この家には さまざまなお客様がいらっしゃいます。 ここで見聞きしたことは 一切 外部に 漏らさないよう お願いしますね。」
ミワ「かしこまりました。」
(ノック)
<八海サマ…。 私が ずっと推してきた神様が 今 私の目の前に…>
藤浦「こちら 新しく入って頂く 家政婦のミワさんです。」
ミワ「ミ… ミワです。」
八海「よろしくお願いします。」
<神が… しゃべった>