あらすじ
久保田ミワ(松本穂香)は八海崇(堤真一)の事務所SNSの中に自分の本名が書かれた投稿を発見してしまう。美羽さくら(恒松祐里)がやってきて、一刻も早く削除しろと言うが、管理者は藤浦(山口紗弥加)なので頼めない。ミワはもう一人の管理者八海本人を夜中に訪ね、不都合な投稿を削除してもらう。その後八海から、彼の出演作のベストワンを聞かれたミワは、答えを求めて徹夜でDVDを見続けたために翌朝発熱してしまう…。
第20回ネタバレ
ミワ宅
ミワ「うわぁ…。」
<誰が こんなコメント…。 こんなの ほかの家政婦さんとか 藤浦さんに見られたら…>
一駒「えっ 久保田ミワ?」
池月「久保田?」
藤浦「あなた… 美羽さくらさんじゃないの?」
<身バレ 解雇 そして…>
(パトカーのサイレン)
<逮捕>
(パトカーのサイレン)
<えっ このコメント 誰なら消せる? 投稿した人と あとは管理者の藤浦さんか もしくは…>
(チャイム)
ミワ「え…。」
さくら「八海サマの投稿 これ。 これ ヤバくない?」
ミワ「そうなんです。」
さくら「だから言ったじゃん 気を付けたって。」
ミワ「はい…。 これって ちなみに 書いたのは さくらさんじゃないですよね?」
さくら「は? だったら教えに来ないでしょ。」
ミワ「ですよね ごめんなさい。 ちょっと 気が動転してて。」
さくら「バカなこと言ってないで 早く管理者に消してもらいなよ。」
ミワ「そうなんですけど 管理者は藤浦さんだから…。」
さくら「あ~ そういうパターンね。 ほかに このコメントを消せる権限を持ってる人は?」
<あの人しかいない>
八海邸
書斎
(チャイム)
廊下
八海「どうしたんですか こんな時間に。」
ミワ「夜分すみません。 あの SNSのことで。」
八海「え?」
<すみません。 でも オフな感じの八海サマもすてきです!>
八海「どうぞ。」
ミワ「あっ 失礼します。」
書斎
ミワ「この3つです。」
八海「これと これと これ。」
ミワ「はい。 このコメントを 削除です。」
八海「削除。 これですね。」
ミワ「はい。 はい これでOKです。 ありがとうございます。」
八海「久保田ミワ… 誰が書いたんでしょうね。」
ミワ「さあ… この人に悪気があるのか ないのか ちょっと分からないんですけど。」
紀土「この家政婦さん 久保田ミワだよね? 家政婦さんが更新してるんだ。」
ミワ「紀土くん…?」
八海「ん?」
ミワ「あっ いや 何でもないです。 ホントに夜分に失礼しました。 以後 気を付けます。 では 失礼します!」
八海「ミワさん。」
ミワ「あっ はい。」
八海「せっかくなので お茶でも どうですか。」
<八海サマからの お茶のお誘い。 これは 本当に実在する世界なのでしょうか>
八海「あっ いや お急ぎなら無理には。」
ミワ「いや はい ぜひ!」
八海「一度 ミワさんに 聞いてみたかったことがありまして。」
ミワ「あっ はい 私に答えられるものなら 何でも。」
八海「私が出ている映画作品の中で ミワさんは 何が一番 お好きですか?」
ミワ「えっ…。」
八海「あっ まあ 世間的には代表作とされてるものは いくつかありますけど ちょっと 映画に詳しい方の意見も 聞いてみたいなと思いまして。」
ミワ「ああ…。」
<八海映画のベストを 私めが お答えしてよろしいのでしょうか?>
ミワ「そうですね…。 はい もちろん デビュー作の『紅の桜』も 八海ファンとしては 絶対に外せないんですが 渡米前の『フライング・フィッシュ』は ベスト5に入れたいですね。」
ミワ「人生の葛藤を あんなに軽快に描いた映画はありません。 あ~ でも 全人類に見てほしい 私的ベスト1は…。 いや~ 3つぐらいまでは絞れますけど…。 うわ~ やっぱり 2000年代以降は 特に名作しかないんで…。」
八海「あ… はい あの もう 大丈夫です。」
ミワ「ああ これだけは言わせて下さい。」
八海「はい…。」
ミワ「ベスト1を選ぶのは 不可能です。」
八海「…はい ありがとうございます。」
<ああ… 全然 答えになってない>
ミワ「お役に立てず すみません…。」
八海「あっ ちなみに シラー監督の作品はどうですか?」
ミワ「殿堂入りです。」
八海「殿堂入り?」
ミワ「はい。 あのシュールな世界観と 八海 崇のニヒルなキャラクターは 神も予想しなかった 唯一無二の組み合わせだと思います。」
ミワ「八海 崇がアメリカでブレークする きっかけになった作品ですし 同時にシラーさんの 監督人生を変えた作品であることは 間違いないと思います。」
八海「私も 彼と彼の作品が好きなんです。 まあ ヒットするかどうかは ひとまず置いといて ただ純粋に 目の前の作品のことだけを考えてる 不器用で愚直な職人みたいな人です。」
ミワ「はい 分かるような気がします。」
八海「いや ミワさんの意見が聞けてよかった。」
ミワ「いえ ベスト1 ちょっとお時間下さい。 考えます。」
八海「い… いや いいんです ただの雑談ですから。」
ミワ「いえ 必ず!」
八海「いや… どうぞ」
廊下
ミワ「失礼します。」
<それにしても 何で八海サマは今になって ベスト1の映画を聞いてきたのだろう…>
ミワ宅
<あれから帰って DVDを見ながら ベスト1を考えていたら そのまま寝落ちしていた>
ミワ「(くしゃみ) ああ… 行かなきゃ。」
道中
ミワ「あ… 紀土くん?」
紀土「おお 奇遇だね。」
<奇遇… なのかな>
紀土「これから仕事?」
ミワ「ああ うん。」
<私に数々のマウントを取り…>
回想
紀土「実際に 俺は今 腕時計してないし 稼いでるし 社会に貢献してんだよ。」
回想終了
<八海サマの前では 何も言えなかった紀土くん>
回想
阿部「こいつ 俳優目指してたんすよ。」
紀土「おい バカ!」
回想終了
<彼は一体 どんな気持ちで 私の前に現れたんだろう>
紀土「なあ ミワちゃん。」
ミワ「何?」
紀土「何で俺のコメント消した?」
ミワ「えっ。」
<やっぱり 紀土くんだったのか!>
ミワ「いや 私は そんな SNSには関わってないから。」
紀土「へえ~ そうなんだ。 プロは入ってんの?」
ミワ「はい?」
紀土「だから SNS担当のプロはいるのかって 聞いてんの。」
ミワ「あ… いや 八海さんご本人とか マネージャーさんが 管理してると思うけど。」
紀土「え~ それって すごく危ないと思うけどなあ。」
ミワ「危ない?」
紀土「うん。 そうやって アップしちゃいけないものを うっかり上げて 取り消したり 炎上の初期対応でミスったり 俺から言わせると いくら宣伝とはいえ リスクに見合わないことやってんなあと 思うわけよ。」
ミワ「うん… 紀土くん そういうの詳しいんだっけ?」
紀土「まあ ITコンサル的なこと やってるからね。」
ミワ「へえ~ すごいね。」
紀土「いい代理店 紹介しようか?」
ミワ「代理店?」
紀土「マーケティングとかプランニングとか 投稿から反響分析まで 全部やってくれるよ。」
ミワ「いや 大丈夫だと思う。」
紀土「大丈夫じゃないから言ってんだけど。」
ミワ「うん 心配してくれて ありがとう。 じゃあ マネージャーさんに言っとくね。」
紀土「うん 連絡待ってるから。」
ミワ「じゃあ 私 あっちだから。」
八海邸
控え室
藤浦「今日は八海は 一日中ロケで不在です。 屋根の修理業者さんが来ますので 対応をお願いします。」
一駒「はい。」
藤浦「ほかに 何かありますか?」
池月「大丈夫です。」
一駒「はい。」
<よし コメント削除の件は 3人とも気付いてなさそう>
藤浦「じゃあ よろしくお願いします。」
<八海サマは今日一日不在か…>
ミワ「えっ!?」
一駒「あなた 熱あるんじゃない?」
ミワ「えっ あ… そうですか? 何か… 言われたら そんな気がしてきました。」
一駒「もともと ボーッとした人だとは思うけど いつになく ボーッとしてるから。 今日は そんなに忙しくないし 早めに帰って休んだら?」
ミワ「ああ…。」
ミワ宅
<それから私は 丸一日 眠り続けた>
八海邸
書斎
(ノック)
池月「失礼します。」
八海「はい。」
池月「失礼します。 郵便です。」
八海「ありがとうございます。 はい。 あれ? ミワさんは。」
池月「あっ 熱があるようで 昨日からお休みです。」
八海「熱ですか。」
池月「はい。」
八海「ふう…。」
ミワ宅
(チャイム)
ミワ「は~い…。 えっ…。」
<えっ どうして うちに!?>
八海「体調が悪いと聞いたので 差し入れを。」
<これは… 夢?>
八海「おおっと…。」
八海「ミワさんの好き嫌いが分からなくて ゼリー20種類 とりあえず 全部買ってきました。」
<八海サマ どうして そこまで… こんな私のために。 熱が上がっていくのが 自分で分かります>
ミワ「お茶… お茶いれます。」
八海「いや いいんです。 すぐに帰りますから。 はい 寝てて下さい。」
ミワ「はい…。」
八海「さすが… すごいコレクションですね。」
ミワ「私の人生の 全てなので。」
八海「『砂漠の塔』まである。 ミワさん。 実は… 前からずっと考えていたことがあって。」
ミワ「はい…。」
八海「そろそろ… 俳優をやめようかと。」
ミワ「…え?」