ドラマダイジェスト

夜ドラ「ミワさんなりすます」(第23回)

らすじ

久保田ミワ(松本穂香)は八海崇(堤真一)の密着取材番組の対応で忙しいが、八海と越乃彩梅(高岡早紀)の対談で、八海がアメリカに渡った真相を知るなど取材を楽しんでもいた。藤浦(山口紗弥加)は私生活をさらすことを嫌っていた八海の心変わりに戸惑っている様子。ミワは思い切って引退話の真偽を八海本人に尋ねてみるがはぐらかされてしまう。ミワは廊下で取材のために訪れていた五十嵐凛(伊藤万理華)に呼び止められて…。

第23回ネタバレ

八海邸

控え室

回想

八海「藤浦さんと 意見が真っ二つに分かれてしまって。」

藤浦「勝手に決めないで下さい。 これまでも 二人で話し合ってきたじゃないですか。」

ミワ「番組に出るって決めたのは… 八海サマなんです。」

さくら「有名な俳優さん よく最後に ドキュメンタリーに出たりするじゃん。 例えば 何か重い病気を患ってるとか…?」

回想終了

ミワ「ないない…。 八海… さん。 どうして ここに?」

八海「いざ密着されると 当たり前ですけど 家の中までカメラが来て 全然落ち着かないんです。」

ミワ「ああ…。」

八海「まあ さすがに 家政婦さんの控え室までは カメラも来ないと思いまして。 あっ すいません お邪魔しました。」

ミワ「私は全然。 もし お疲れになったら どうぞ 隠れがに使って下さい。」

八海「ありがとうございます。」

ミワ「先ほど 越乃様がいらっしゃいました。」

八海「そうですか。 じゃあ 気合い入れて 行ってきます。」

ミワ「行ってらっしゃいませ。」

回想

八海「でも やるんだよ。」

回想終了

<その孤独な背中には 一抹のさみしさが漂っていた>

リビング

ナレーション『八海 崇。 職業 俳優。 ボトルシップ作りは 彼にとって 欠かせないルーティーンの一つだ』

藤浦「もしもし 藤浦です。」

ナレーション『こうしている間にも 八海のもとには 分刻みで世界中から 出演のオファーが舞い込んでくる』

藤浦「あの~ まずは 台本を読ませて頂いても よろしいでしょうか。 はい。」

ナレーション『だが 八海が受けられる作品の数は 物理的に限られている』

八海「まあ 作品の規模に関係なく 必ず 台本を読んで決めます。 たとえ小さな自主映画でも…。 その物語のなかに 自分の役が“生きている”と思えたら出ます」

ナレーション『実際に八海は 学生の自主映画にも 何本も出演している』

八海「かわいいでしょう。 ふう…。」

ナレーション『好きな言葉は「一意専心」。 一つのものに惜しみなく集中力を注ぐ それが 俳優 八海 崇の流儀だ』

廊下

スタッフ「越乃さん スタンバイされてます。」

八海「映画について話せばいいですか?」

スタッフ「そうですね。 最初にお二人が 共演された作品のことから。」

八海「分かりました。 はい。」

スタッフ「お願いします。」

リビング

越乃「ありがとうございます。」

八海「越乃さん おはようございます。 今日は ありがとうございます。」

越乃「おはようございます。 いえ 今日は はっちゃんとのおしゃべりを 楽しみに来ました。」

八海「はい。」

池月「やっぱり カメラの前だと さすが俳優って感じね。」

ミワ「ですね。」

一駒「さあ 紅茶の準備をしましょう。」

2人「はい。」

八海「私がデビューしたのが…。」

ナレーション『八海が 俳優のキャリアをスタートさせたのは 今から35年前に公開された 映画「紅の桜」。 主演は越乃彩梅。 八海はまだ 端役だった』

越乃「懐かしいわね。 でも はっちゃんはさ 若手の中でも 一人だけ全然違ったんだよね。」

八海「え?」

越乃「監督に言われたことを 絶対にやらなかったの。 倒れろって言われてんのに 立ったまんまだったり 殴れって言われてんのに 殴らなかったり。

八海「ひどいですね。」

越乃「わざとやってんのか 頑張ってもできないのか どっちだか分かんなかったよね。」

八海「多分 できなかったんだど思います。」

越乃「できなかった?」

八海「ええ。」

<この話 貴重すぎる…>

越乃「デビューしても なかなか芽が出なかったもんね。」

八海「ええ。 まあ 今考えたら 当然だと思いますけど 当時は かなり悩んでましたね。」

越乃「飲むたんびに 役者やめたいって言ってたもんね。」

八海「ええ。」

越乃「あっ やっぱり変わったのは アメリカに行ってから?」

八海「う~ん そうですね。」

越乃「よく一人で 海外に飛び込もうと思ったよね。 はっちゃんは そこが偉いと思う!」

八海「えっ 越乃さんが勧めたんですよ。」

越乃「えっ? ウソ 私が!?」

八海「任侠映画より 向こうの映画のほうが 合うんじゃないかって 越乃さんが言ってくれたんです。」

越乃「私が そんなこと言ったの? いや ごめん 全然覚えてない。」

八海「待って下さいよ。 私は あなたが言うから行ったんですよ。 何のプランもなしに。」

<ああ 越乃サマ… 八海サマを正しく導いて下さり ありがとうございます>

池月「そろそろ ランチの準備。 ミワさん。 ミワさん。」

ミワ「あっ はい 承知しました。」

(ぶつける音)

ミワ「すいませんでした。」

越乃「私 本当に言ったのかな?」

八海「もちろん。」

越乃「何で私 そんなこと言ったんだろう。」

(八海と越乃の笑い声)

玄関

越乃「はい ありがとう。」

八海「お忙しいところ ありがとうございました。」

越乃「いえ はっちゃんのためなら いつでも。」

八海「また 映画の話をしましょう。」

越乃「うん。 この先の仕事は いつまで決まってんの?」

八海「ああ… まだ来年以降は決めてないです。」

越乃「えっ 一つも?」

八海「ええ…。」

越乃「あっ やだ。 私 ヤバいこと聞いちゃった? (小声で)ちょ… これはNGね。 ダメだよ。 分かった? 分かった? じゃあ また飲みましょう。」

八海「お疲れさまでした。」

越乃「は~い。 じゃあ またね。」

八海「ありがとうございます。」

越乃「は~い。 バイバイ。」

キッチン

池月「八海さんがアメリカに行ってたとか 知らなかった。」

ミワ「アメリカで修業積んでる時に シラー監督に出会って そこで作った映画が 『コーヒー&ブルース』なんです。」

池月「へえ~ そこでブレークしたんだ?」

ミワ「はい。」

池月「まずは アメリかで評価されて そこから 日本でも 八海 崇の名前が広がって 東京ロマンス三部作につながるっていう。」

池月「そうなんだ。」

ミワ「はい。」

一駒「ミワさんって 本当に詳しいですね。」

ミワ「あ…。」

<まずい 調子に乗りすぎた>

ミワ「今回 密着取材ということで ちょっと調べたんです。」

一駒「ファンなんでしょ?」

ミワ「あっ えっと…。」

一駒「熱烈な八海 崇ファンなんでしょ?」

池月「あっ やっぱり そうなんだ。」

ミワ「えっ…。」

一駒「いいのよ 私たちには隠さなくても。 藤浦さんの前では気を付けて。」

ミワ「はい 気を付けます…。」

(オーブンの音)

ミワ「あっ 私 出します。」

<一駒さん… 私のことを ほぼ見抜いた上で それでいて 的確なアドバイスをくれる。 ありがたき存在>

スタッフ「すいません。 インタビューが終わったので このあと少しだけ 家政婦さんのお仕事も カメラ回していいですか?」

池月「はい。」

一駒「構いませぬが。」

ミワ「えっ カメラ…。」

ナレーション『美羽さくらさんは たとえ意味がなくても ニンジンの花の形に切る。 これぞ 家政婦のプロフェッショナルである』

<まずいまずい テロップで名前が出たら 他人になりすましていることが バレてしまう。 映ってはいけない>

ミワ「すいません! 私 あの ちょっと 片づけ行ってきます!」

スタッフ「こっちは もう終わった状態なんですか。」

リビング

ミワ「失礼しま~す。」

スタッフ「ねっ 一応 これ撮っといて。」

カメラマン「分かりました。」

ミワ「失礼しま~す!」

スタッフ「一応 空でも おさえとこうか。」

廊下

スタッフ「これ 撮っとこうか。」

ミワ「えっ…。」

スタッフ「ああ… ごめんなさい ごめんなさい。 自然な動きでお願いできますか。」

ミワ「ああ… はい すいません。」

スタッフ「どうぞ 続けて下さい。」

ミワ「あの… もう終わりましたので!」

<ダメだ どこにいても映ってしまう!>

控え室

ミワ「はあ…。」

藤浦「お疲れさま。」

ミワ「あっ お疲れさまです。」

藤浦「撮影が押してて ごめんなさいね。」

ミワ「いえ。」

藤浦「時間になったら上がって下さい。」

ミワ「かしこまりました。」

藤浦「私は反対だったのよ。 この仕事。 密着取材なんて 今まで受けたことないし そんな時間があったら 台本を読んだり 資料を読んだりしたい人だったから。」

ミワ「はい…。」

藤浦「だって あれだけSNSに抵抗してて この取材は あっさり受けるなんて おかしいでしょ。」

ミワ「はい…。」

藤浦「でも 八海の中で 何か心境の変化があったみたい。 私には話してくれないけど。」

ミワ「藤浦さんにも お話しにならないんですね。」

藤浦「何か寂しいよね。 長い間 推してきた人に そっぽ向かれたみたいで。」

ミワ「推し… ですか。」

藤浦「そう。 そんな言葉 昔はなかったけどね。 向こうも私のこと 信頼してくれてると思ってたんだけど。」

<そうか… 考えてみたら 藤浦さんが八海サマの 最初のファンなのかもしれない。 そりゃ 藤浦さんだって心配ですよね>

書斎

(ノック)

ミワ「ミワです。」

八海「どうぞ。」

ミワ「失礼します。 葉書が届いておりました。」

八海「ありがとうございます。 ミワさんも 慣れない業務で疲れたんじゃないですか?

ミワ「まだ始まったばかりなので。」

八海「お仕事を増やしてしまって 申し訳ないです。」

ミワ「いえ…。 あの 一つ伺ってもいいですか。」

八海「今度は ミワさんの密着取材ですね。 どうぞ。」

ミワ「私の家で 八海さんがおっしゃったこと… なんですが。」

回想

八海「そろそろ… 俳優をやめようかと。」

回想終了

八海「あの時 私 何か言いましたか?」

ミワ「え? いや その… すいません。」

(ノック)

ディレクター「スタンバイできましたので お願いします。」

八海「はい。 すいません 次がありまして。」

<えっ どうして…>

<私なんかが これ以上 八海サマの心に立ち入ってはいけないって ことですよね>

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