あらすじ
久保田ミワ(松本穂香)は新しく採用された家政婦と間違えられたまま、憧れの大俳優・八海崇(堤真一)の屋敷で働き始める。自分が別人だとは言えなかった。マネージャーの藤浦(山口紗弥加)に伴われて初めて対面した八海は、想像どおりの好紳士だった。初仕事としてリビングの清掃を始め、オタク知識を使ってボトルシップの台座をピカピカにしたことで八海に感謝される。その後空気の入れ替えのため窓を開けるミワだったが…。
第2回ネタバレ
八海邸
リビング
<この世に神様はいると思う。 どん詰まりの人生の中 その存在を信じるだけで 救われる存在>
<それが神だとするならば 八海 崇は 私にとって間違いなく 神だ>
藤浦「こちら 新しく入って頂く 家政婦のミワさんです。」
ミワ「ミワです…。」
八海「よろしくお願いします。」
<神が… しゃべった>
藤浦「お気付きだったかもしれませんが 家政婦を募集していたのは 俳優の八海 崇です。」
ミワ「はい。」
藤浦「くれぐれも ミーハーな心で 変な気を起こさないよう 気を付けて下さい。」
ミワ「ウッ!」
藤浦「ミワさん?」
ミワ「鼻血が…。 大丈夫です。」
<ミーハー心… 出ました>
(ドアの開閉音)
池月「失礼します。」
藤浦「こちら これから一緒に働いて頂くミワさんです。」
ミワ「ミワです。」
池月「池月です。 よろしくお願いします。」
藤浦「この家のルールや仕事内容を 一とおり教えて差し上げて下さい。」
池月「かしこまりました。」
八海「それでは よろしくお願いします。」
藤浦「ミワさん。」
ミワ「は… はい。」
藤浦「あなたには 善人の家政婦と同等か それ以上のパフォーマンスを 期待していますので よろしくお願いしますね。」
ミワ「かしこまりました。 失礼いたします。」
藤浦「あ… あと一つ。」
ミワ「はい。」
藤浦「あなた 八海 崇のファンではないですよね?」
ミワ「え?」
藤浦「ファンは NGにさせて頂いてるので。 念のため。」
ミワ「はい。 まったくもって ファンではございません。」
藤浦「結構です。」
池月「じゃあ 行きましょうか。」
ミワ「はい。」
<また ウソをついてしまった>
廊下
池月「八海さんには びっくりしたでしょ?」
ミワ「はい。 まだ手足が震えてます。」
池月「だよね。 私も最初に来た時 まさか あの八海 崇の家だとは 思わなかったから 思わず 『ええ~っ!』って叫んじゃったもん。」
ミワ「分かります。」
池月「藤浦さんは どう?」
ミワ「ああ… 厳しそうな方ですね。」
池月「あの人が八海さんのマネージャー。」
ミワ「あっ はい。」
池月「間違ったことは言わないけど 厳しい人だと思う。 私が知ってるだけでも もう何人も辞めていったから。」
<うう… 私は どれだけもつのか>
池月「でも聞いたよ。 ミワさんは語学も堪能で 栄養士も クリーニングインストラクターの資格も 持ってるんでしょ?」
<いえ 持っているの資格は 普通運転免許のみ。 しかも ペーパードライバーです>
池月「私たちのほかにも一駒さんっていう 先輩がいて 3人で回してるの。 今度 紹介するね。」
ミワ「イチコマさん… はい。」
池月「漢数字の一に 将棋の駒。」
ミワ「はい。 一駒さん。」
書斎
池月「まずは書斎なんだけど…。」
<うわ… ここが神の書斎>
ミワ「すごい…。」
池月「今度の撮影で使うから 外に出してるみたい。 これは Don‘t touchで。」
ミワ「ドンタッチ。」
池月「机の上は 勝手に整理しちゃダメ。 これはゴミじゃなくて 大切なアイデアのメモだから Don‘t touch!」
ミワ「ドンタッチ。」
池月「でも これはゴミだから捨てる。」
ミワ「え? え?」
<難しすぎる…>
池月「八海さん宛てのお手紙とかは この箱に入れる。」
ミワ「この箱。」
池月「あとは お花の水を取り替えるだけ。」
ミワ「はい。」
池月「迷ったら…。」
ミワ「ドンタッチ。」
池月「イエス! 行きましょう。」
池月「ここが寝室。」
<ここが神の眠る場所… 尊い>
池月「ベッドメーキングは こんな感じで。 シーツにしわが入ったら一発アウト。 ゲストルームにもベッドがあるから 慣れるまでは しばらく二人一組でやろっか。」
ミワ「はい ありがとうございます。」
池月「洗濯物は 毎日10時に業者さんが取りに来るので まとめて出します。」
ミワ「全部ですか?」
池月「そう。 それで返ってきたものは 所定の位置に戻す。 これは覚えて。」
ミワ「所定の位置に。」
<もはや お店。 でも 所定の場所に戻すのは… 私の得意分野>
ミワ「はい 分かりました。」
書庫
池月「ここは 八海さんが出た映画の台本とか 雑誌とか 資料の部屋。 中には 値段のつけられないものがあるから 扱いには 気を付けてね。」
ミワ「はい。」
池月「行きましょう。 ミワさん?」
ミワ「はい すいません。」
園庭
池月「基本的に 園庭は 庭師さんにお任せしてるんだけど こういう 外から飛んでくるゴミを拾ったり。」
ミワ「拾ったり。」
池月「掃いたり。」
ミワ「掃いたり。」
池月「ベンチやガーデンテーブルを拭く。」
ミワ「拭く。」
<これなら 私にもできそう>
ミワ「ベンチ…。」
リビング
池月「(小声で)そして ここが さっきミワさんもいた リビングとダイニング。 八海さんは ここで過ごされることも多いから。」
ミワ「(小声で)はい 分かりました。」
キッチン
池月「そして ここがキッチンね。 今は 一駒さんが1か月の献立を作って その日に担当する人が 3食作ってるんだけど ミワさん 栄養士の資格 持ってるんだよね?」
ミワ「はい…。 『ウッフ・フリ ・シェル・リ・ドゥ・サトウハム ソテー』。」
池月「じゃあ 来月はミワさんにお願いしようかな。」
ミワ「いや 一駒さんの献立がいいと思います。」
池月「足りない食材は 前日までに買い足しておく。 八海さんは ロケでいない時も多いし 予定も急に変わったりするから 必ず朝 藤浦さんに確認すること。」
ミワ「分かりました。」
池月「ここに アレルギーとか 八海さんの好みが書かれてるから 目を通しておいて。」
ミワ「はい。」
<これは…>
回想
ミワ「八海氏が しめじアレルギーで 蕎麦と刺身が好きだということに ギャップを感じ より一層 八海 崇が好きなった。」
回想終了
<うん 知ってる。 でも 私なんかの料理を 八海サマに食べてもらうなぞ 恐れ多すぎる…>
控え室
池月「洗剤とか掃除道具とか 切れそうになったら補充する。」
ミワ「はい。」
池月「一とおり こんなもんかな。」
ミワ「はぁ… 思った以上にハードルが高い。 今のところ 庭掃除ぐらいしか できることがない>
池月「じゃあ 今日は私 ここで終わりだから あとはよろしくね。」
ミワ「え… えっ いきなり私一人ですか?」
池月「ふふ… 大丈夫 大丈夫。 一つだけ残して あとは全部 私がやっといたから。」
ミワ「ありがとうございます。 その 一つっていうのは…。」
池月「リビングの清掃。」
ミワ「リビング。 あっ さっき 八海サマがいらっしゃった…。」
池月「そう。 あの部屋を清掃するの。 簡単でしょ?」
ミワ「あ…。」
池月「Bon Courage!(幸運を)」
ミワ「えっ 何て? ボンクラ?」
リビング
ミワ「失礼します。」
<八海サマ…。 私は今 この瞬間 天に召されても 悔いはございません>
八海「お掃除ですか。」
ミワ「はい。」
八海「よろしくお願いします。」
ミワ「それでは お掃除を始めさせて頂きます。」
<エリート家政婦としての仕事 美羽さくらとしての振る舞い… 考えなければならないことは 山ほどあるけど 今 私の思考を支配しているのは この空間に 八海 崇と二人きりという 圧倒的な事実!>
八海「趣味なんですよ。」
ミワ「えっ… はい。」
八海「ボトルシップ。」
<知っています。 役作りのため 精神集中するために ボトルシップ作りに 没頭されていること。 ファンにとっては常識です>
ミワ「すてきですね。」
八海「ありがとうございます。」
<八海サマが… 私なんかと会話してくれている!>
<ダメだ。 ここで涙なんか流したら ファンだとバレてします!>
<私は罪深きなりすまし。 この愛を伝えることはできない。 せめて何か 八海サマのお役に立ちたい…>
(ドアを開く音)
藤浦「終わりましたか?」
ミワ「ああ はい。」
<たとえ ここでダメになったとしても 八海サマと同じ空気を吸えただけで 幸運だと思わなきゃ>
藤浦「あれ?」
ミワ「えっ あっ 何か…。」
藤浦「ボトルシップのプレート くすみが取れてる。」
八海「え?」
藤浦「ミワさん 何かした?」
ミワ「あ… はい。 あの たまたま これを 控え室で見かけたもので…。」
藤浦「除光液?」
ミワ「はい。 ふだん 私も フィギュアの汚れを落とすために これを使っていて…。」
八海「おお。 新品みたいになっちゃいましたね。」
<もしかして くすみは 年季を感じさせるための味? あえて そのままにしてた!? ああ 私 なんて余計なことを!>
回想
藤浦「あなたには 前任の家政婦と同等か それ以上のパフォーマンスを 期待していますので よろしくお願いしますね。」
回想終了
ミワ「あ… あの…。」
八海「いいですね。」
ミワ「えっ?」
八海「除光液なんて思いつきませんでした。 すばらしい。」
ミワ「あ… ありがとうございます。」
<助かった!>
八海「(せきこみ)」
ミワ「あっ ごめんなさい。 換気します。」
藤浦「大丈夫ですか?」
(窓を開ける音)
(ボトルシップの割れる音)
ミワ「あっ…。」
<終わった…>