ドラマダイジェスト

夜ドラ「ミワさんなりすます」(第3回)

あらすじ

久保田ミワ(松本穂香)は敬愛してやまない大俳優・八海崇(堤真一)が苦心して作った大切なボトルシップを割ってしまう。処分を覚悟するように言う藤浦マネージャー(山口沙弥加)だったが、八海はミワをとがめなかった。事故だから気にしないでほしいとミワを気遣う八海。感謝し敬愛を深めるミワは、これ以上嘘はつけないと告白の手紙を書いて八海に渡そうとするが、呼ばれて行った地下の書庫に二人きりで閉じ込められてしまう。

第3回ネタバレ

八海邸

リビング

(ボトルシップの割れる音)

<終わった…>

藤浦「ミワさん。」

ミワ「申し訳ございません!」

藤浦「いいから! ちょっと来て。」

ミワ「はい… 失礼します。」

廊下

<事もあろうに 八海サマの大切なものを 壊してしまった。 ショックで頭が回らない>

<私は もうろうとしながら 昔の自分を思い出していた>

回想

12年前

<高校時代 クラスメートが 青春をおう歌しているであろう時期に 私は一人 暗い部屋で 八海 崇に夢中だった>

八海『お前が幸せなら 俺は何も言うことはえねえよ。』

『お兄ちゃん。』

<彼の演技の真骨頂は 『顔で笑って腹で泣く』。 どんなにつらい試練が降りかかろうと 泣き言ひとつ言わず 笑って過ごす粋な男。 八海 崇は そんな人物を演じていた>

<それは 私たち2年生が主役の文化祭。 その準備に追われていた時のことだった>

女子「ごめんね ミワちゃん。 これから私たち用事があるんだ。」

女子「残りの作業 お願い… できる?」

ミワ「えっ…。」

男子「用事って お前ら絶対カラオケだろ?」

女子「うるさい 黙れ。」

女子「ねえ ごめん ミワ。 明日また手伝うからさ!」

女子「私たち ミワみたいにうまくないし。」

ミワ「うん 大丈夫だよ。」

女子「ごめんね~。」

女子「じゃあ また明日ね。」

女子「ごめんね またね。」

ミワ「顔で笑って 腹で泣く。」

<私は 八海 崇に恥じない生き方をしたかった>

<次の日から なし崩し的に この作業は 私一人で担当することになった。 出し物は『レ・ミゼラブル』。 5×3メートルの巨大な書き割りは 一人で描くには かなりハードな分量だった>

<生っ粋の文科系である私は 本番前日には 全身筋肉痛になってしまった>

ミワ「いててて…。 顔で笑って 腹で泣く…。 うっ… はっ!」

(ざわめき)

女子「マジか。 うちら これ頑張ったのにね。」

<この大失態は 文化祭が終わったあとの高校生活も 文字どおり真っ黒に染めた>

<ああ 無情…>

回想終了

藤浦「どうしてくれるの? 八海にとってボトルシップは ただの趣味じゃないのよ。」

ミワ「はい。」

藤浦「あれは 役作りに没頭するための 大事なルーティーンなの。」

ミワ「申し訳ありません。」

藤浦「これから八海と話し合うけど それなりの覚悟をしておいて下さいね。」

ミワ「…はい。」

藤浦「じゃあ 八海のところへ行きますよ。」

<もはや 死にたいとすら思わない>

ミワ「死のう…。」

<29年の人生で分かったことは 一度の失敗で 全てが終わってしますということだ。 人知れず いくら奮闘努力を重ねても 顔で笑って 腹で泣き どんな理不尽に耐えようとも 一度失敗すれば水の泡 世の中は そういうふうにできている>

(ノック)

リビング

藤浦「失礼します。」

ミワ「この度は まことに申し訳ございませんでした。」

藤浦「彼女の処分はどうしましょうか。」

八海「えっ… いいですよ 別に。」

藤浦「えっ!? 今回のことについては 不問に付すということですか?」

八海「だって 事故でしょ。 しかたないですよ。 ミワさん 気にしないで下さい。 また作ればいいんですから。」

ミワ「はい…。」

<八海 崇の笑顔は 全てを包み込む優しさがあった>

<いろいろ あった>

ミワ宅

ミワ「うわあ! かっこいい~!」

(荒い息遣い)

ミワ「あの真剣なまなざし。 優しく甘い声。」

回想

八海「よろしくお願いします。」

回想終了

ミワ「繊細な手先 洗練された所作。 もはや この世のものとは思えない まさに… 神!」

(荒い息遣い)

<映画で その破壊力は 十分 知っていたはずなのに リアルの彼は それを優に超えてくるなんて…>

八海「ミワさんも一緒に この船に乗りませんか?」

<私もいっそ このボトルに閉じ込められたい…>

ミワ「うわあ~! (笑い声)」

(壁を蹴る音)

隣人『静かにしてもらえませんか。』

ミワ「すいません。」

(おなかの鳴る音)

ミワ「おなかすいた。」

(タイマーの音)

<オタクは基本 報われない>

<いかに財を費やそうとも>

<孤独な時間を過ごそうとも>

<偶像は どこまで行っても偶像。 決して私のいる現実世界と つながることはない…>

<はずだった。 人生は何が起きるか分からない。 あの時 勇気を出して本当によかった>

<私は今日 人生のクライマックスは迎えた>

ミワ「よし…。 もうこれで 終わりにしよう。」

八海邸

寝室

池月「ねえ 八海さんのボトルシップ 壊したんだって?」

ミワ「はい やってしましました。」

池月「でも おとがめなしだったんでしょ?」

ミワ「はい 事故だから しかたないと。」

池月「気に入られてるじゃん。」

ミワ「いやいや…。 八海さんには 本当に申し訳ないことしました。」

池月「まあ 怒ってないなら 別に気にしなくていいじゃない?」

ミワ「でも 私の罪は それだけじゃないんです。」

池月「えっ どういうこと?」

ミワ「あっ 枕…。」

<あんな尊いお方を この先もだまし続けるなんてことは 断じて許されない>

控え室

<手紙を渡し 思いの丈を告白して きちんと罰を受けよう>

<ただ 八海サマは この広いお屋敷の 一体どこにいるのか。 さっき藤浦さんに 今日は3食用意するよに頼まれたから このお屋敷のどこかには いらっしゃるはずなんだけど…>

園庭

八海「誰か… 誰かいませんか?」

ミワ「え? 八海サマの声?」

<いや これは幻聴!? 彼を思うがあまり ついに幻聴まで聞こえてきたのか?>

八海(幻覚)「ミワさ~ん。」

八海「こっちです こっち。」

ミワ「え? 八海… サマ?」

八海「ここです。」

ミワ「どうしたんですか?」

八海「いや ちょっと 書庫で捜し物をしてたんですけど 外から かんぬきがかかってしまって 閉じ込められてしまったんです。」

<八海サマが… とらわれの身!? かわいい…>

八海「書庫に来てもらえませんか?」

ミワ「は… はい 今すぐ!」

書庫

ミワ「これか。 よし。 失礼します。」

八海「いや 参りました 閉じ込められてしましました。」

ミワ「かんぬきが下りていました。」

八海「いや 助かりました。」

<今だ… 手紙 渡さなきゃ>

八海「なるほど これは気を付けないといけませんね。」

ミワ「あの 八海さん…。」

八海「はい。」

ミワ「あの… お話があるんです。」

八海「私にですか?」

ミワ「はい。 あの… 実は私…。」

(かんぬきが下りる音)

ミワ「え…。」

八海「え…。」

(ドアを開けようとする音)

八海「閉じ込められました。」

ミワ「え…。」

(ドアを開けようとする音)

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