ドラマダイジェスト

夜ドラ「ミワさんなりすます」(第4回)

あらすじ

久保田ミワ(松本穂香)は憧れの八海崇(堤真一)と二人きりで地下書庫に閉じ込められてしまう。このチャンスに告白の手紙を渡そうとするミワだが、なかなか機会が訪れない。八海が地下書庫にいたのは、うろ覚えのセリフを頼りに古い台本を探すためだと知ったミワは、持ち前のオタク知識を発揮して見事に探し当てる。ミワが映画ファンであることを八海に知られてしまう。そして喜びのあまり思いもよらぬ行動に出た八海にミワは…。

第4回ネタバレ

八海邸

書庫

(かんぬきが下りる音)

八海「いや 申し訳ない。 今度は 二人して閉じ込められてしまうなんて。」

ミワ「いえ…。」

八海「参ったな…。 ミワさん 携帯は持ってませんか?」

ミワ「あっ すみません 控え室に置いてきてしまって。」

八海「そうですか。 まあ ここに来ることは 藤浦さんに伝えてあるので そのうち気付いてくれるでしょう。」

ミワ「はい…。」

八海「あっ どうぞ。」

ミワ「あ…。」

<今のうちに手紙… 渡さないと。 なりすましの罪を告白して 全てを終わりに>

(木々の葉が揺れる音)

八海「風が… 吹いてますね。」

(風の音)

八海「やはり 向こうの風とは違いますか?」

ミワ「むこう…?」

八海「ミワさんは イギリスに長くいたと 伺ったんですが…。 あれ 違いましたか?」

ミワ「あ… それは 違うんです。」

八海「そうでしたか それは失礼。」

<それは本物の美羽さくらさん。 海外の大学を出て TOEIC 800点以上のエリート。 偽物の久保田ミワは 万年フリーター… ですらない。 今や なりすましの罪人です>

<あと少し… あと少し この時間をかみしめていたい。 この期に及んで 私は なんてあさましいんだろう>

ミワ「ここで何をされていたんですか?」

八海「ああ ちょっと捜し物を。」

ミワ「捜し物?」

八海「うん… でも 見つかりませんでした。」

<会話が続かない。 続くわけがない。 本物の美羽さくらなら いざ知らず。 ただの偽物と八海 崇に 共通の話題など あるはずがない>

八海「全てわかってるんだぞ!! このニセモノめ!」

ミワ「え…。」

八海「あっ そういうセリフがあったんです。 昔の作品に。」

ミワ「何だ・・・ セリフですか。」

八海「驚かせて すみません。」

ミワ「いえ。」

八海「その台本を捜してたんですが どんな作品だったか どうも思い出せなくて。」

ミワ「全てわかってるんだぞ このニセモノめ…。 全てわかってるんだぞ このニセモノめ…。」

八海「まあ 私に無理なんだから 世界中の誰も 見つけることはできませんよ。 残念だけどね。」

ミワ「八海さん。 このセリフじゃないですか?」

八海「えっ!? はい これです!」

ミワ「よかった…。」

八海「これは自主製作で DVDにもなっていない作品なんです。 配信もしてないのに どうして あなたが…。」

<八海さんが喜んでくれた。 最高の人生の幕引きだ>

ミワ「八海さん 実は私…。」

八海「ありがとう。」

八海「ミ… ミワさん? ミワさん? ミワさん? ミワさん? ミワ… ミワさん?」

リビング

<ウソ… 私 気絶してた?>

藤浦「前から思ってたんですけど やっぱり ちょっと変じゃないですか? この家政婦さん。」

<え… 私の話?>

八海「ん~ そんなに変ですか。」

藤浦「今までの家政婦さんに比べて 感覚というか 雰囲気というか ふだん私たちが おつきあいのある方たちとは何か 決定的に違う気がするんですけど。」

八海「なるほど。」

藤浦「経歴を見ると それなりの方なんですが。」

<ごめんなさい それは全部ウソなんです…>

<そりゃ 感覚は合うわけないです>

八海「確かに 全く違う。」

藤浦「ええ。」

八海「イギリスに長くいたというのも どうやら事実ではないそうです。」

藤浦「えっ… えっ そうなんですか?」

八海「本人が そう言ってましたから。」

<胸が痛い… 本来ならば彼にとって ちりあくたにすぎない私の存在。 認識して下さっただけでも大変な誉れ。 なのに この胸の痛みは何…>

<そうか… フリーターも世界的俳優も関係ない。 やっぱり私は 八海 崇に恋をしていたんだ>

八海「今まで来てくれた家政婦さんは 国際的な感覚に長けていたと思いますが 彼女らと違ってミワさんは いい意味で日本人…。 それも 古い気質の日本人を感じます。」

藤浦「それは どういうことですか?」

八海「秘すれば花… というような美徳です。」

藤浦「秘すれば花?」

八海「例えば 彼女がきれいにしてくれた ボトルシップのプレート。 今までの家政婦さんなら やっておきましたと 報告してきた気がします。 でも 彼女はしない。 まあ 自分の能力をアピールするのは かつての私たちは ミワさんのように 黙って行動に移す人が 多かったように思います。」

藤浦「そうですね…。」

八海「嫌いじゃないです ミワさんみたいに不器用な人。」

<八海サマ…>

(着信)

藤浦「では まだもう少し様子を見る ということで 失礼します。」

(ドアの開閉音)

八海「ミワさん 大丈夫ですか?」

ミワ「は… はい。 すみません 貧血だと思います。 もう大丈夫です。」

八海「びっくりしました。 突然 倒れてしまったから。 台本を見つけてくれた時も びっくりしましたけど。 あれは 何で分かったんですか?」

ミワ「好きなんです。」

八海「え?」

ミワ「映画を 少しだけ…。」

廊下

藤浦「お待たせしました いつもお世話になっております。 はい。 あっ ミワさんの件… ですか。 はい。」

リビング

八海「少しっていうか すごく好きなんじゃないですか?」

ミワ「えっ…。」

八海「ミワさんに見つけてもらった台本は 自主制作のほとんど世に出てない作品なんです。 少し好きぐらいじゃ分かるはずがない。」

ミワ「でも 八海さんの前で 映画ファンというのは 恐れ多くて…。」

八海「最近のものでは どんな映画が印象に残ってますか?」

ミワ「そうですね… ちょっと前ですが 『パラサイト』とか。」

八海「ああ あれは確かに名作です。 こちらの心を 実に巧みにえぐってくる。」

ミワ「住居の位置 貧富の差 コメディーとサスペンス 全てのギャップが美しくて 心がギュッと締めつけられました。 それと あの作品には…。」

八海「おほど お好きなんですね。 映画。」

ミワ「いや そんな 私なんか とても。」

八海「仕事柄 いろんな映画人に会ってますから 目の輝きを見れば分かります。 ああ 『パラサイト』か。 だったら  あの空のシーン よかったですよね。」

ミワ「はい。 絶妙な色合いだと思います。」

八海「え… 今ので どのシーンか分かったんですか?」

ミワ「あ… はい。 多分 あそこかなって。」

八海「見てみましょう。 あの映画 確か今 配信されてますよね。 え~っと… これはどうするんだ。」

<憧れの八海サマと映画の話をする 世界線があったなんて…。 高校生の自分に教えてあげたい。 いろいろ苦労はあるし 報われないことも多いけど 映画を好きな自分は 間違っていなかったと>

八海「あれ? ここじゃなかったか。 えっと じゃあ どこだ?」

ミワ「あの… 56分24秒辺りだと思います。」

八海「えっ 56分…?」

ミワ「24秒。」

八海「24…。 えっ? おおっ ここだ! ここです! えっ 何で? ミワさん 何で分かったんですか!?」

ミワ「いつもメモを取りながら見るので 好きな映画のことは覚えているんです。」

八海「ミワさん。」

ミワ「はい。」

八海「お茶をいれて頂けますか。」

ミワ「は… はい ただいま。」

八海「2つ。」

ミワ「え?」

八海「ミワさんの分も。 もう少し映画の話 しませんか。」

<神様。 こんなこと あっていいのでしょうか>

八海「藤浦さんのことが気になりますか?」

ミワ「いえ そういうわけでは…。」

八海「大丈夫です 私から うまく話しておきますから。」

ミワ「あの… 八海さん。」

八海「はい。」

ミワ「私…。」

(ドアの開く音)

藤浦「ミワさん。 ちょっと話があるんだけど。」

<バレ… た?>

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