ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第102話「なつよ、テレビ漫画の幕開けだ」【第17週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)たちの作ったテレビ漫画「百獣の王子サム」の放送が始まった。十勝の柴田家では富士子(松嶋菜々子)や剛男(藤木直人)、そして泰樹(草刈正雄)も、なつの活躍を喜んでいる。東洋動画のテレビ班では、演出の坂場(中川大志)と制作進行の言い争いが増す。その間で、なつも新しいアイデアを出し、作品づくりの中核を担うようになる。そのころ、帯広の雪月に、大きなカバンを抱えた雪次郎(山田裕貴)が現れて…。

102話ネタバレ

おでん屋・風車

1階居間

亜矢美「あ~ もう見てらんない もう…。 あ~!」

<昭和38年12月 なつたちの作ったテレビ漫画が 日曜日の夕方に始まりました。>

テレビ♬『あいつは怪力』

(歓声)

川村屋

(笑い声)

<なつたちの この苦難の冒険は やがて 未来の ジャパニーズ アニメーションの担い手たちへと つながってゆくのです。>

テレビ♬『あらしのサム ハレルヤサム いつか王者だサム』

柴田家

居間

富士子「なつ 見たさ。 面白かったわ。」

なつ『本当に?』

富士子「本当さ。 ちー君も好きになったみたいで じ~っと見てたわ。」

なつ『それは よかった。 ちー君に会いたいな。』

富士子「なつの名前も ちゃんと出てたね。 じいちゃん 思わず 『おっ!』て声出してたわ ハハ…。」

なつ『ハハハハ… そっか。 じいちゃんは?』

富士子「なつのテレビ見終わって すぐ牛舎戻った。」

詰め所

泰樹「テレビぐらい買え! お前ら 遅れてるもな。」

菊介「おやじ。」

悠吉「うん?」

菊介「労働組合作って 賃金上げさせるべ。」

悠吉「それより わしは もう引退したいわ。 近頃 腰が こわあて…。」

泰樹「それは困る。」

菊介「ハハハハハハハ…。」

居間

富士子「時間出来たら すぐ帰ってきなさいね。」

剛男「どれ 代わるかい。」

富士子「したらね。」

剛男「あっ… なして!」

富士子「電話代もったいないべさ。 別に用事ないしょ。」

剛男「声を聞くのが用事だべさ! なあ。」

地平「うん?」

喫茶店・リボン

なつ「どうだった?」

桃代「思ってたより 絵は動いてたんじゃない?」

店員「お待たせしました。 サンドイッチと チキンライスでございます。」

なつ「そう? 私なんか テレビ見てたら やっぱり動きが ぎこちないなって。」

桃代「あっ… そんな中でも なっちゃんらしいなって思うところも たくさんあったよ。 モノクロじゃなければ 私が 色を塗りたいくらいだけど。」

なつ「私より 猿渡さんって人がすごいの。 もう パパッと描いちゃう。」

桃代「それじゃ 順調なんだ?」

なつ「それが そうでもないんだよ…。 問題は やっぱり あの人よ。」

東洋動画スタジオ

作画課

荒井「あんた ええ加減にせえや! あんたの要求 聞いとったら みんな 4,000枚ぐらい 描かなあかんことにあるやないか! あの『鉄腕アトム』見てみいな あれ 1,000枚前後で 出来てるっちゅう話やぞ。」

坂場「『鉄腕アトム』という 作品の魅力があっての話です。 うちは うちらしい個性を出さなければ 太刀打ちできないでしょう。」

荒井「放送でけへんかったら 意味ないやろ! このままやったら ひとつきで 放送でけへんようになるぞ!」

なつ「荒井さん! 大丈夫です。 私が なんとかしますから。」

荒井「なんとかするって お前 そんな簡単なこと… どないすんの?」

なつ「これから描く予定の原画を見直します。 例えば ここの トラ同士が仲間割れをして 喧嘩をするシーン ですけど…。 こういう乱闘シーンは手間がかかるので こんなふうに 土煙で覆ってしまうんですよ。 この煙だけを モコモコと動かして 煙の中から 面白いポーズや表情をした トラの止め絵が飛び出してくるんです。」

茜「ああ… それで 喧嘩を表現しちゃうんだ?」

坂場「これは…。」

猿渡「それは いいアイデアだよ なっちゃん!」

なつ「猿渡さんのやり方を見ていて 思いついたんです。 あっ それから サムが トラをやっつけるシーンですが やっつけるサムの画に 画面いっぱいに 星だけ出しちゃうんですよ。 その次の瞬間に 伸びてるトラを見せれば サムの強さも表現できます。」

一同「あ~…。」

なつ「まあ テレビは 小さな子どもも見てますから これは 手を抜くというよりも 暴力を振るう場面を なるべく見せたくないんです。」

茜「そうよね。 それで枚数も少なくできれば 一石二鳥ね。」

猿渡「すごいよ なっちゃん!」

なつ「でも そのかわり ちゃんと丁寧に見せたいところには 枚数をかけられるようにしたいんです。 イッキュウさん 思い切って こういうことを やってはいけませんか?」

坂場「それを決めるのは あなたです。 私は それを 最大限 生かせるように 話の内容を考えてゆきます。」

なつ「はい! それじゃ 皆さん よろしくお願いします!」

一同「はい!」

荒井「よっしゃ ほな それでいこう! よっしゃ!」

雪月

妙子「ありがとうございました。」

<そして そのころ 北国では。>

妙子「いらっしゃい…。」

雪次郎「ただいま。」

妙子「雪次郎…! 何さ あんた 帰るなら帰るって 知らせてくれたらいいしょや。」

雪次郎「うん…。」

妙子「父さんと ばあちゃんに知らせてくる。」

回想

蘭子「あの人の分も生きて 演じてほしいのよ。 頑張ってほしいの これからも。」

回想終了

とよ「アッハハハハ…。」

雪次郎「ハハハ…。」

とよ「雪次郎! あんた 帰ってこれたんか!」

雪次郎「ただいま ばあちゃん。 あっ 父さん ただいま。」

雪之助「正月帰るんだら ちょっと早いんでねえか おい。」

妙子「あんた。」

雪次郎「クリスマスに 間に合うようにと思ってな。 父さん クリスマスケーキ作るべ!」

雪之助「ん?」

とよ「うん?」

雪之助「何だ? お前。」

とよ「どしたの?」

雪次郎「うん…。」

妙子「雪次郎…!」

雪次郎「父さん 言ったべや。 諦める時は 潔く諦めれって。」

雪之助「諦めたのか?」

とよ「そ… その芝居で失敗したのか? セリフ忘れたのかい?」

妙子「そんなことで…。」

雪次郎「そったらことでねえ! もう 悔いはねえんだ。 だから決めたのさ。 俺は 菓子屋に戻る。」

雪之助「バカでねえか! そったら中途半端なことで 菓子屋になれっか!」

雪次郎「だったら 父さん… 俺を鍛えてくれ! 中途半端な菓子屋として 人間として 俺を鍛え直してくれ。 頼む…。 父さんのもとで もう一度やってみたくなったんだわ…。」

雪之助「本気か?」

雪次郎「本気だ。」

雪之助「逃げてきたわけでねえんだな?」

雪次郎「逃げてねえ…。 捨ててきた。」

妙子「雪次郎…。」

山田家

馬小屋

(戸の開閉音)

天陽「うん どうした? もう搾乳の時間か?」

雪次郎「相変わらず やってんな。」

天陽「雪次郎!」

雪次郎「久しぶりだな 天陽。」

天陽「帰ってきたんかい。」

雪次郎「おう… もう ずっとな。」

天陽「ずっと?」

雪次郎「おう。 これからは ずっと こっちさ。 喜べ。」

天陽「別に うれしかねえわ。」

雪次郎「相変わらず冷めてんな。」

天陽「あっ しばれたべ? 何か 持ってくっか…。」

雪次郎「あ いい…。 後で お前の嫁さんに挨拶するべ。」

天陽「おう。 そうしてくれ。」

雪次郎「倉田先生にも 挨拶に行かねばな…。」

天陽「ああ そりゃ喜ぶべな。 あ… よっちゃんや番長も呼んで 一緒に酒飲むべ。」

雪次郎「うん。」

天陽「みんな お前に会いたがってるぞ。」

雪次郎「あっ お前 なっちゃんのテレビ見たか?」

天陽「ああ 兄貴から聞いたけど テレビなんて買えんからな。」

雪次郎「欲しくもないんだべさ。 あ… 俺も テレビに出てたんだ。」

天陽「ああ 声だけな。」

雪次郎「それは知ってんのかい。」

天陽「なっちゃんも相変わらずやってんだな。」

雪次郎「うん。 なっちゃんは相変わらずだ。 どんどん 先行くぞ。 脇目も振らずって感じだな。 俺は 結局 なっちゃんには追いつけもせんかった。」

天陽「競争じゃないべ 生きるのは。」

雪次郎「そだな…。」

天陽「お帰り 雪次郎。」

雪次郎「ただいま 天陽。」

天陽「何だ お前。」

おでん屋・風車

1階店舗

蘭子「そう…。 北海道に帰ったのね…。 別に 心から辞めろって 言ったわけじゃないのに…。」

亜矢美「彼は それも分かってましたよ。 分かったから 辞められたんだと思います。」

なつ「雪次郎君 あれから じっくり考えて 気付いたそうです。 自分は 開拓者になるなら 演劇じゃなくて菓子屋だって。」

咲太郎「俺は 少し残念ですけどね。」

蘭子「だったら もう あれも剥がしたら?」

亜矢美「うちは 思い出を捨てない店ですから。 あれは残しておきましょう。 メリークリスマス。」

蘭子「メリークリスマス。」

<ああ なつよ… 降り積もる雪が やがては解けるように 時間は過ぎてゆくだろう。 そこに残るのは 思い出から 愛か…。 来週に続けよ。>

蘭子 咲太郎「お~!」

なつ「ハハハ…。」

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