あらすじ
長編映画を任されることになった下山(川島明)の誘いにより漫画映画の演出をすることになった坂場(中川大志)。再び映画に携われるとなつ(広瀬すず)に報告し、なつへの思いも伝える。そしていよいよ、下山を中心に長編漫画映画の制作が始まるが、演出の坂場のこだわりが強く、一向に脚本が進まない。見かねた仲(井浦新)は、坂場と神地(染谷将太)に声をかけるが、仲に心を開かないふたりは聞く耳をまったく持たず…。
105話ネタバレ
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階段
坂場「僕と… 僕と! 結婚して下さい。 結婚… してくれませんか? ぼ… 僕の気持ちは ずっと前から分かっていたでしょう…。」
なつ「いや… 全然分かりませんでした。」
坂場「ずっと 長編映画の演出ができたら 言おうと思ってたんです。」
なつ「えっ…。」
坂場「あなたの気持ちは どうですか?」
なつ「はい… 分かりました。」
坂場「えっ?」
なつ「結婚します。」
坂場「えっ… いや 本当ですか?」
なつ「はい。」
坂場「いや… 結婚ですよ?」
なつ「えっ… 何を疑ってるんですか?」
坂場「映画が成功したらですよ。」
なつ「それ… いる?」
喫茶店・リボン
桃代「えっ 何それ? いきなり結婚?」
なつ「びっくりするでしょ。」
桃代「うそだ… 本当は 今まで つきあってたからでしょ?」
なつ「本当に つきあってないってば… 多分。」
桃代「えっ それで いきなり結婚してもいいと思ったわけ?」
なつ「う~ん… まあ 不思議なんだけど そうなのかなって気がして…。 やっぱり そうなるのかなって…。」
桃代「何それ? それ 今頃 気付いたの 本人だけだからね。」
なつ「でも イッキュウさんは 今度の長編漫画映画が成功しなければ 結婚できないと思い込んでるみたいで。」
桃代「だから 今まで 告白できなかったってことか…。 実は 私も 今ね 東京映画の助監督とつきあってるのよ。」
なつ「えっ! えっ… そうなの?」
桃代「うん。 知り合いに紹介されてね。 彼も 監督になるまでは 結婚したくないって思ってるみたい。」
なつ「まあ 結婚と成功は関係ないのにね。」
桃代「うん… 不器用な男ほど そう考えないのよ。 あ… でも大丈夫よ。 きっと成功するわよ。 テレビだって成功したじゃない。」
なつ「うん… まあ そのために頑張るわけじゃないけど 必ず成功させたいわ。 長編漫画映画は 私の夢でもあるから。 あ… モモッチ。」
桃代「ん?」
なつ「作画課の人たちには言わないでね 何か恥ずかしいから。」
桃代「うん 分かった。 仕上課にしか言わない。」
なつ「それも同じだから! 誰にも言わないで。」
桃代「うん… うん 分かった。 分かったって。」
<それから その長編漫画映画の企画は 猛烈な勢いで進んでゆきました。>
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作画課
坂場「題名は まだ仮ですが 『神をつかんだ少年クリフ』です。 ある村の巨大な木に 誰にも抜けない剣が突き刺さっています。 それを ある日 一人の少年 クリフが引き抜き 村人から英雄と見なされます。 しかし そのクリフの前に神が現れて その剣を砕いてしまう。」
坂場「その神とは 戦の神であり つまり 死神です。 死神の目的は 神を畏れなくなった人類に 戦をさせて滅ぼし もう一度 世界を創造し直そうということです。 そして その村に 死神の娘であるキアラが現れます。 キアラは 父の命令で この村に 戦をもららそうとしてるんです。」
坂場「そのキアラとクリフが出会い お互いに ひかれ合うようになっていく。 戦争という運命の中で どうやって 人間が 善と悪を見極めていくか それがテーマです。 では 引き続き キャラクターを 検討していきたいと思います。 まずは クリフから。 クリフは 決して諦めない 勇気ある少年です。」
<しかし その勢いは すぐに止まりました。 なつが描く 死神の娘 キアラのキャラクターに イッキュウさんは なかなか納得せず 脚本作りは 予定の8月になっても まだ作画の作業には入れずにいました。>
なつ「違う? どこが違うんですか?」
坂場「キアラは 戦をつかさどる神の娘で この村の争い事をさせに来たわけですが これだと いかにも災難をもたらしそうな 娘って感じがするじゃないですか。」
なつ「もっと か弱い方がいいってことですか? みんなが だまされやすいような キャラにしろってことですか?」
坂場「いや 強くは見せたいんですよ か弱い女の子にはしたくない。」
神地「一見 か弱そうに見えて 実は強かったなんて それこそ 通俗的だからね。」
坂場「しかし これは強すぎます。」
神地「強い女性だけど 主人公が 恋に落ちるような魅力もないとさ…。」
坂場「神っちの言うとおりです。」
仲「どう? 何か困ってる?」
なつ「仲さん…。」
坂場「いえ 大丈夫です。」
神地「大丈夫ですよ。」
仲「大丈夫?」
なつ「はい…。」
仲「少し内容が難しすぎないかな。 子どもたちが ついていけるかな。」
坂場「大丈夫です。 ちゃんと活劇にはしますから。」
仲「アクションが面白ければ いいというものでもないからね。」
坂場「話が分かりやすければ いいというものでもないでしょう。」
なつ「ねえ ちょっと…。」
仲「そうかな。」
なつ「あの 仲さん…。」
坂場「ほかに 何か?」
仲「いや…。」
坂場「生意気なようですが 好きにやらせて下さい。 責任は取りますから。」
仲「分かった。 それじゃ 成功を祈ってるよ。」
なつ「何で 仲さんに そんな失礼なこと言うんですか? 何か手伝おうとしてくれたんじゃないんですか?」
神地「あの人に泣きついたら おしまいだよ。 永久に新しいものなんか できなくなる。」
なつ「えっ…。」
坂場「とにかく あなたは キアラについて もう少し考えてみて下さい。」
中庭
なつ「はあ…。 仲さん…。」
仲「あっ なっちゃん。 いや 暑いね…。」
なつ「仲さん… さっき イッキュウさんが 何か失礼なこと言ったみたいで すいません。」
仲「君が謝らなくたっていいんだよ。 しかし 遅れてるみたいだね。」
なつ「はい… なかなか キャラクターの イメージをつかめずに困ってます。 キャラクターが出来てないと イッキュウさんも 脚本が完成できないんです。」
仲「普通は脚本から入るのに 珍しい演出家だよね。 自分で 絵を描けるわけでもないのに。」
なつ「仲さんは あの人がやろうとしていることは 間違ってると思いますか?」
仲「なっちゃん… 僕には分からないんだよ。」
なつ「えっ…?」
仲「彼のやろうとしていることが 正しいのか間違ってるのか 新しいのか そうじゃないのか…。 どうも判断がつかない…。 それが悔しいんだよ。」
なつ「悔しい?」
仲「アニメーターとして 自分の限界を突きつけられたみたいで 悔しいんだ…。」
喫茶店・リボン
下山「井戸さん。」
井戸原「うん?」
下山「仲さんって やっぱり イッキュウさんのことを嫌ってるんすかね?」
井戸原「嫌ってる? そんなことはないだろ。 イッキュウさん嫌ってるのは むしろ俺だよ。」
下山「(せきこみ) 堂々と言いますね。」
井戸原「仲ちゃんは どっちかっていうと 買ってるんじゃないか 彼を。」
下山「買ってる?」
井戸原「うん。 今度の演出にしたって 君に言わせたんじゃないかな 坂場イッキュウを使ってほしいと。」
下山「えっ…。」
井戸原「そうさせるためには テレビで 彼を成功させなければならなかったろう。 だからこそ まな弟子の奥原なつを テレビに送り込んだんだよ。」
下山「なっちゃんを…。」
井戸原「うん。 まあ あくまで俺の推測だけどな。」
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作画課
坂場「違うんだ… 違うんです。 キアラのキャラクターは こうじゃないんです! 神の怒りと人間の愛に引き裂かれて いくような登場人物なんです。 何度言ったら分かるんですか? こういう説明的で 分かりやすいキャラクターじゃないんです!」
なつ「あなたが どうしたいのかを考えて あなたの頭の中に向かって絵を描くのは これ以上 無理です。」
坂場「僕は もっと アニメーターの中から湧き出てくる そういう絵を使って 映画を作りたいんです。 テレビとは違うものを。」
下山「それは無理だよ イッキュウさん。 テレビと同じようにね 時間にだって制限はあるんだから。」
なつ「映画を作らなければ 元も子もありません。 あなた一人が 作ってるわけじゃないので…。」
坂場「そんなことは分かってます! だから待ってるんです! 私は 絵描きじゃない。 だから 理想のキアラを 描くことはできない。 でも 妥協はしたくない! 私は 私を超えたいと思っています。 どうか… 皆さんも 皆さんを超えて下さい。 そういう絵を出して下さい。 早く あなたのキアラを見せて下さい。」
廊下
仲「なっちゃん。」
なつ「あっ 仲さん お疲れさまでした。」
仲「なっちゃんに 頼みがあるんだけど。」
なつ「頼み? えっ?」
<なつよ それは きっと 仲さんの魂だ。>