あらすじ
坂場(中川大志)の思い描くイメージの要求が高過ぎて、長編映画の制作がなかなか進まない。締め切りが迫る中、坂場と折り合いが悪くなっていた仲(井浦新)が、なつ(広瀬すず)にキャラクターの入ったカット袋を託す。なつから、その動画用紙を見せられた坂場は、仲に対して抱いていた思いが誤りだったことに気づき、仲に力を貸してほしいと頼む。帰りに風車に寄ったなつと坂場は、二人の関係を亜矢美(山口智子)に気づかれ…。
106話ネタバレ
おでん屋・風車
2階なつの部屋
回想
仲「僕には分からないんだよ。 彼のやろうとしてることが 正しいのか間違ってるのか…。 アニメーターとして 自分の限界を突きつけられたみたいで 悔しいんだ…。」
回想終了
なつ「仲さん…。」
東洋動画スタジオ
作画課
坂場「では クリフと死神は これでいきましょう。」
一同「はい。」
坂場「奥原さん あなたの描き直した絵はないんですか?」
なつ「描けませんでした。 ある絵を見てから それ以上のものは描けないと思いました。」
坂場「ある絵?」
なつ「これです。」
坂場「これは 誰の絵ですか?」
なつ「仲さんです。 仲さんが描いて 私に託してくれたんです。」
回想
仲「もし 何かの参考にでもなればと思って これを なっちゃんに預けておくよ。」
なつ「あっ…。」
仲「気に入らなければ 無視していいから。」
回想終了
坂場「私は 今 やっとキアラに出会いました…。 ずっと これを待っていました。」
神地「参ったよな…。 俺 一瞬にして このキアラに恋しちゃったよ。」
茜「これが仲さんよ。」
堀内「うん。」
なつ「仲さんだけが イッキュウさんの心の中を 理解していたんです。 イッキュウさんのことを理解できないのが 悔しいと言いながら…。 仲さんだけが キアラの魂を描くことができたんです。」
下山「仲さんは 決して イッキュウさんの敵じゃないよ。 むしろ 陰ながら イッキュウさんのことを応援してた。」
なつ「仲さんは 誰よりも 自分を超えたいと 思っているアニメーターです。 今でも ずっと。 私は 同じアニメーターとして… 心から 仲さんを尊敬します。」
仲「どうしたの?」
坂場「仲さん… お願いします。 仲さんの力を貸して下さい。 この作品を完成させるには どうしても 仲さんの力が必要なんです。 どうか… キアラを描いて下さい!」
なつ「仲さんの絵を そのまま出しました。」
仲「いいのかい? 僕で。」
坂場「仲さんにしか描けません。」
下山「時間がないんです 仲さん 助けて下さい。」
なつ「お願いします 仲さん!」
神地「さすが 仲さんです!」
坂場「お願いします。」
仲「分かった。 ありがとう。 うれしいよ 採用してもらえて。」
坂場「生意気を言って すみませんでした。」
仲「謝ることなんか何もないよ。 よし それじゃ すぐに始めようか。」
坂場「はい。」
<その日から 徐々に ピッチを上げて 映画制作は進み始めたのでした。>
栗原「茜さん これもお願いします。」
茜「あっ はい。」
栗原「はい。 堀内さんもお願いします。」
堀内「はい はい。」
神地「栗原さん。」
栗原「はい。」
神地「これ 出来ました。」
栗原「あ~ ありがとうございます。 坂場さん チェックお願いします。」
坂場「分かりました。」
おでん屋・風車
玄関
なつ「今日は わざわざ送ってくれてありがとう。」
坂場「うん。 仲さんのことは どうもありがとう。」
なつ「私は 何もしてません。 まあ 仲さんに ちゃんと謝れたことは 認めてあげます。 あなたも立派だった。」
坂場「僕は 映画を成功させたい一心だよ。」
なつ「それは 誰だって同じ。 立派なキアラを描いて あなたに ギャフンと言わせたかった。」
坂場「いつでも ギャフンと言ってますよ。」
なつ「えっ…。」
坂場「君には ギャフンと言わされっ放しだ。」
なつ「それは お互いさま。」
1階店舗
亜矢美「あ~ いらっしゃい… あ お帰り。 やっぱり いらっしゃい。」
坂場「こんばんは。」
なつ「もう終わり?」
亜矢美「ううん… 夏場のおでん屋はね お客様が来て下さるなら 閉店時間なんてないようなもんだから。 どうぞ イッキュウさん。」
坂場「あの 咲太郎さんは?」
亜矢美「うん? あ 咲太郎に用事?」
坂場「いえ… いらっしゃるなら お兄さんにも 是非ご挨拶をと思って。」
なつ「挨拶なんていいから 今日は!」
坂場「えっ 普通の挨拶だよ。」
なつ「ああ…。」
亜矢美「普通の?」
なつ「えっ?」
亜矢美「てことは 普通じゃない挨拶も あるっていうことか? そういうこと!?」
坂場「普通じゃない挨拶も そのうち させて頂こうと思っています。」
亜矢美「来た~! 来た 来た 来た 来た! あ~ 来た! ついに来た! この時が…! いや 待って! もったいないわ 私が一番なんて もったいないわ。 待って 待って 待って 今 咲太郎呼ぶから 待って…。。」
なつ「あっ いい! いいから いいから いいから…。 今日は普通だから!」
亜矢美「普通?」
なつ「うん。 お兄ちゃんには まだ言わないで。 今 作ってる映画が完成したら その時 私が言うから。」
坂場「いや 僕が言うよ。」
なつ「なら 2人で言うから。」
亜矢美「2人で… 分かった。 じゃ それは いつ完成するの?」
なつ「予定では 来年の春。」
亜矢美「春か… いや~ 待ち遠しい春だわ。 どうしよう どうしよう あ~ 黙ってる自信がないわ…。」
なつ「いえ… そこを なんとか!」
亜矢美「なんとか頑張ってみるけど…。」
なつ「お願いします。」
亜矢美「じゃ まずは… お手を拝借。 ♬『幸せなら手を叩こう』」
(手拍子)
亜矢美♬『幸せなら』
亜矢美「乾杯!」
坂場 なつ「乾杯!」
なつ「ありがとうございます。」
坂場「よろしくお願いします。」
亜矢美「あ~ しみる…。 本当よかったね なっちゃん。」
なつ「ありがとうございます。」
亜矢美「イッキュウさん ご家族には?」
坂場「あ… まだ何も話していません。」
亜矢美「そう… じゃ そっちにも 普通じゃない挨拶に行かないとね。」
なつ「それだけど… 私で大丈夫なのかな?」
坂場「何が?」
なつ「戦災孤児だった過去とか 気にされないかなって…。」
坂場「どんな過去だろうと大丈夫です。 あなたが ゴジラでも大丈夫ですよ。」
なつ「それは 地球がダメでしょ。」
亜矢美「ハハハ… イッキュウさんだよ。 そんなこと ごちゃごちゃ言う親に 育てられたような人じゃないっしょ。」
なつ「だけど…。」
坂場「そんな心配はしないで下さい。」
亜矢美「で お父様 お母様 何なさってんの?」
坂場「父親は大学教授です。 考古学を研究して教えています。」
亜矢美「考古学?」
坂場「はい。 母親は師範学校の元教師で 僕が生まれた時には専業主婦でした。」
亜矢美「はあ… ごきょうだいは?」
坂場「兄が2人と 姉が1人います。 僕は末っ子です。 2人の兄は 医者と弁護士をしています。 姉は やはり教師です。」
なつ「すごい…。」
亜矢美「咲太郎が ふびんに思えてきたわ。」
なつ「私まで怖くなってきました…。 ゴジラの方が まだ歓迎されそう。」
坂場「いや… 医者といっても 今は 田舎の診療所にいるし 弁護士といっても 国選弁護人ばかりしているし 万が一 お金持ちに思われたら 困るんだけど お金には 全く縁のない家なんです。 だけど 僕は絶対 君に ふびんな思いはさせないから。」
なつ「うん…。」
亜矢美「私は お邪魔かな?」
なつ「そんなことないです。」
坂場「そんなことはないですから。」
亜矢美「そんな真面目に答えないでちょうだいよ。 もう…。」
坂場「それじゃ そろそろ帰ります。」
亜矢美「もう?」
坂場「明日もあるので。」
なつ「あっ 電車なくなっちゃうしね。」
坂場「うん。 あっ あの…。」
亜矢美「あ~… いいから いいって。 志ある貧乏人から お金なんて頂きませんよ。」
坂場「いや でも…。」
亜矢美「そのかわり なっちゃんをお願いね。 泣かせないでよ。」
坂場「はい。 それじゃ すみません。 ごちそうさまでした。」
亜矢美「はい。」
なつ「気を付けてね。」
坂場「うん。 じゃ おやすみ。」
なつ「おやすみ。」
なつ「何ですか?」
亜矢美「なっちゃん… 今が一番きれい。」
なつ「知りませんよ!」
亜矢美「おめでとう!」
東洋動画スタジオ
<しかし 映画製作は その後 スケジュールは やはり遅れてゆきました。>
作画課
坂場「ダメです! カット割りで アクションを ごまかさないで下さい! この絵コンテどおりに カメラの前で 実際に起きていることを見せるつもりで リアルなアクションを描いて下さい。」
下山「でも それじゃ 見てて ワクワクしないって。」
坂場「絶対に ワクワクしますよ。 実写では 絶対にできないことも アニメーションなら リアルに見せられるんです。 実写のように ごまかす必要はないんです。」
下山「ごましてはないけどさ…。」
<そして 翌年の春は過ぎ ようやく完成したのは夏でした。>
映画館
<映画は すぐに公開されましたが… 不入りに終わったのです。 なつよ 大変だ こりゃ…。>