ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第107話「なつよ、どうするプロポーズ」【第18週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)が原画、坂場(中川大志)が演出を務めた漫画映画は大失敗。坂場はその責任を取り、東洋動画に退職届を提出する。その後、なつのもとを訪れた坂場は、アニメーターとして終わった、自分との約束を忘れてくれ、となつに言う。坂場からの一方的な申し入れに、なつは坂場への思いを一気に話し、その場から去る。帰宅以来、部屋にこもりきりのなつを心配した亜矢美(山口智子)は咲太郎(岡田将生)に相談するが…。

107話ネタバレ

映画館

<イッキュウさんの初監督漫画映画は 大失敗しました。>

東洋動画スタジオ

作画課

「ダメだよ クライマックスになる頃には 子どもが退屈しちゃって 通路を走り回ってんだから。」

「無理なんだよ あの哲学的な内容を 子どもに楽しめって言ったってさ。」

「せめて もう少し 笑える場面でもあったらな。 演出家に ユーモアがないから しょうがないけど。」

「ハハハ…。」

社長室

山川「『神をつかんだ少年クリフ』は この東洋動画スタジオ 始まって以来の興行成績で 最低記録を出すことは 確実と言える状態だ。」

坂場「申し訳ございません。」

山川「制作期間も その予算も 倍近くかかって この成績だ。 再三にわたる会社の忠告を無視して 君が 信念を貫いた結果だよ。」

坂場「分かっています…。」

山川「この作品に関わった 全スタッフの昇級 および ボーナスのカットを 覚悟してもらいたい。」

坂場「待って下さい。 責任は 全て 私一人にあります。」

井戸原「無論 君だけじゃない。 責任は君の暴走を許した この私にもある。 映画部長である私は その任を解かれることになるだろう。 後任は 親会社の東洋映画から送り込まれ 我々が 自由に企画を決めることは これで もうできなくなるだろう。 それが どういうことか 君には分かるかね?」

坂場「責任は取るつもりです。 よろしくお願いします。」

喫茶店・リボン

(ドアの開閉音)

店員「いらっしゃいませ。」

坂場「アイスコーヒーで。」

店員「かしこまりました。」

なつ「お疲れさま。」

坂場「うん。」

なつ「すぐ出てもいいけど コーヒーやめる?」

坂場「いや ちょっと話が…。」

なつ「うん。 分かった。」

店員「失礼します。」

坂場「映画が すごく不入りみたいだ。」

なつ「うん… みたいだね。」

坂場「でも 悪い映画じゃないと思ってる。 いい映画を作ったと 僕は思ってるんだ。 今でも。」

なつ「私も 本当に気に入ってるから。 うん… 今まで作った中で一番よ。 私 思うんだけど 大人の人にも見てもらえるように 宣伝してくれたらいいのに…。 そう思わない?」

坂場「僕には もう作れないんだ。」

なつ「どうして? 今度は あれよりも もっと すごいものを作ればいいじゃない。 私は 絶対に作りたいけどな また。」

坂場「会社を辞めてきた。 君を含め スタッフには これから 待遇の面で 迷惑をかけることになる。 その責任を取らなくてはならない。 たとえ 会社に残ったとしても もう演出はできないだろう。」

なつ「ねえ もっとよく考えたら? 仲さんや露木さんには相談したの?」

坂場「僕は終わった。 もう終わったんだ。」

店員「お待たせしました。」

なつ「そう…。」

坂場「だから 結婚はできない。 僕のことは忘れてくれないか。」

なつ「どうして? 仕事と結婚は別でしょ?」

坂場「僕は嫌なんだ…。」

なつ「嫌?」

坂場「君の才能を 誰よりも生かせる演出家になりたかった。 今の僕は その資格を失ったんだ。 結局 君を幸せにする才能なんて 僕にはなかったということだ。」

なつ「そっか… そういうことか…。」

坂場「そういうことです… 本当に申し訳ない。」

なつ「おかしいと思った。」

坂場「えっ?」

なつ「考えてみれば 一度だって あなたに 好きだと言われたことはなかったもんね。 私の方は いつ イッキュウさんのこと 好きになったんだろうって考えてたのね。」

なつ「一緒に 短編映画作った時か… 一生かけて 一緒に作りたいって 言ってくれた時か…。 まあ その前に アニメーションにしか できない表現とは何かって話をしてて イッキュウさんの言ったことに しびれたこととか…。」

回想

坂場「ありえないことも 本当のように描くことです。 違う言い方をするならば ありえないことのように見せて 本当を描くことです。 そう思います。」

回想終了

なつ「あれには 本当に参った…。 それ以来 私は その言葉に恋をしたんです。 ありえないことも 本当のように描くこと…。 私の人生には 本当に そんなことばかり起きてるから…。 戦争で孤児になって 親を失って 両親とも離れて きょうだいとも離れたけど… ありえないような すてきな家族に恵まれて ありえないような自然の中で 幸せに育って…。」

なつ「上野で浮浪児をしてた時に 一緒にいた信さんが ある日 また会いに来てくれて それで 行方不明だったお兄ちゃんにも 会えたし もうダメかと思った妹も ありえないような幸運で 今は どこかで幸せに暮らしてるって 信じていられるし…。」

なつ「自分のわがままで 北海道出て 好きなアニメーターにもなれて ありえないような楽しいことが いっぱいあって だから… これ以上の幸せはないなって 思ってたから…。 やっぱり これ以上は ありえなくても 文句は言えないけど 私は…。 私は あなたの才能を 好きになったわけじゃありません!」

なつ「あなたの言葉を… 生きる力を好きになったんです。 あなたを好きになったの ありえないくらい…。 だけど あなたは違った…。 好きじゃないことを 才能のせいにしないで下さい。 そんな人とは 一緒にいたくない…。 さようなら。」

おでん屋・風車

1階店舗

亜矢美「お帰り。」

なつ「ただいま。」

亜矢美「どうした? 具合でも悪い?」

なつ「大丈夫です。」

2階なつの部屋

東洋動画スタジオ

中庭

下山「あ… イッキュウさん 来てたのか。」

仲「驚いたよ。 昨日 退職願を出したんだって?」

坂場「はい。」

仲「君が 一人で 責任を負うことじゃないよ これは。」

下山「そうだよ。 君が辞めるんだったら 作画監督の僕も辞めなくちゃならない。 僕のためにも 取り消してくれないか?」

仲「一緒に行こう。」

坂場「いいんです。 それより 奥原さんは?」

下山「なっちゃん? なっちゃん 今日 まだ来てないみたい。」

仲「みんな 君のやりたいことに ついていったんだ。 なっちゃんだって 僕だって…。 完成した映画も満足してるよ。 あんな漫画映画 見たことがない。 そういうものが 日本で作れたんだ。 世界にだった あんな漫画映画 まだないよ。」

坂場「そんなことは どうだっていいんです!」

下山「なげやりになるなよ。」

坂場「それよりも大事な… もっと大事なものを 僕は失ったんです…。」

下山「えっ?」

仲「坂場君…。」

風車プロダクション

咲太郎「なつが おかしい?」

亜矢美『うん… ゆうべ帰ってきて 部屋に入ったきり ごはんもいらないって。 で 今日は 会社にも行かないの。』

咲太郎「具合でも悪いのか?」

亜矢美「何か… ずっと泣いてるみたい。」

咲太郎「泣いてる?」

亜矢美『うん… そんな感じがするってことかな。』

咲太郎「感じ? 見たわけじゃなくて?」

亜矢美「だって… 開けて見るわけにいかないからさ。 だけど あれは 絶対 何かあったな…。」

咲太郎「何があったの?」

亜矢美『それは やっぱり あれじゃないのかな…。』

おでん屋・風車

2階なつの部屋

<なつよ…。>

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