ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第109話「なつよ、開拓者の郷へ」【第19週】

あらすじ

昭和41年の秋。ついに結婚を決めたなつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)は、十勝の家族に報告するため北海道にやってきた。緊張しながらも、柴田家の面々に結婚のあいさつをする坂場。家族が増えると喜ぶ富士子(松嶋菜々子)や剛男(藤木直人)たちだったが、なぜか煮えきらない坂場の言葉に、泰樹(草刈正雄)は難しい顔をする。そんな泰樹に対して、坂場はさらに周囲を不安にさせるような発言をしてしまい…。

109話ネタバレ

柴田家

しばた牧場

<なつと 坂場のイッキュウさん 2人は 結婚の報告をするため 北海道の十勝にやって来ました。>

昭和41(1966)年 秋

坂場「この中で 君は育ったのか。」

なつ「うん。 ねえ 思わず駆け出したくならない?」

坂場「えっ?」

なつ「私ね 今の父さんに連れられて 初めて ここに来た時 東京の焼け野原とは 違う 本当の野原を見て 思わず駆け出したのを覚えてる。」

回想

なつ「お~!」

回想終了

なつ「タンポポが咲いてて それ見て 私 思わず食べたくなったの でも 本当は不安でしょうがなかったの これからのことが。 えっ?」

なつ「あ 不安なんだ…。 あっ! ねえ 糞とかあるから気を付けて! あ~あ…。」

坂場「あっ…。」

居間

坂場「初めまして 坂場一久と申します。 よろしくお願いいたします。」

富士子「それで?」

坂場「はい。」

富士子「挨拶は それだけですか?」

坂場「あっ ああ… あの…。」

剛男「富士子ちゃん こっちから せかさなくても…。」

富士子「早く くつろいでもらいたいんだわ。 早く 家族になってもらいたいのさ。」

照男「気が早いべさ ばあちゃん。」

富士子「ばあちゃんなんて言わないでや 他人の前で。」

照男「今 家族だって言ったばっかりだべ。」

富士子「したから まだだべさ。」

坂場「はい 分かりました。 はい…。」

なつ「別に 無理して分からなくていいから。 自分のタイミングでいいんだから。」

夕見子「みんな知ってるんだからさ もう イッキュウさんが ここに 何しに来たかを。 形ばかりのことだべさ。」

富士子「結婚は 形が大事です。」

夕見子「ちょ… 結婚って 先に答え言っちゃったんでないの。」

富士子「あっ…。」

坂場「あの 私 坂場一久は なつさんと結婚したいと思っております。 どうか お許し下さい。 あっ…。 お嬢さんを 僕に下さい!」

富士子「えっ… そうなの? なつ。」

なつ「えっ?」

砂良「形だけよ。」

なつ「あ… はい。 そういうこと。」

富士子「そうですか…。 分かりました。 ふつつかな娘ですが どうか よろしくお願いいたします。」

坂場「ああ… はい。」

なつ「母さん ありがとう。」

夕見子「はい これで済んだね。」

剛男「したけど 今のは母親の言うことかい? 普通は父親でないのか?」

悠吉「そうだな。」

菊介「何か おかしいと思ったんだ。 ハハハハ…。」

富士子「したら ほら あんたからも何か言って。」

剛男「ああ…。 あの 坂場さん… ふつつかな娘ですが なつを どうか よろしくお願いいたします。」

坂場「はい。」

剛男「て ほら 同じことしか言えんべさ。」

なつ「父さん ありがとう。」

剛男「おめでとう なつ。」

富士子「じいちゃんからも 何か言うことないの?」

泰樹「なつを 本当に幸せにできるのか?」

坂場「…。」

泰樹「なして すぐに返事できねえ!」

なつ「じいちゃん。」

富士子「どしたの?」

剛男「無理に違うことを言わなくていんですよ。」

坂場「幸せにします きっと…。」

泰樹「きっとって何じゃ?」

坂場「あっ…。」

なつ「まあ 先のことは 誰にも分からんでしょ。」

泰樹「分からんから約束しとるんじゃ。 その きっとが引っ掛かる。」

坂場「いや あの 実は 堂々と言えない事情がありまして…。」

なつ「ねえ それは まだいいから。」

泰樹「事情って何じゃ?」

坂場「会社を辞めたんです。」

一同「えっ?」

坂場「今は無職なんです。」

泰樹「男にとって結婚は けじめじゃ。 仕事もなくて けじめがつけられるか。」

なつ「働かないと言ってるわけではないから。」

富士子「そうだわ。 何か考えがあって辞めたんでしょ。 ねえ。」

坂場「いえ 仕事に失敗して 責任を取っただけです。」

富士子「クビに近いんでないの? それは。」

剛男「富士子ちゃん。」

砂良「仕事って あの映画?」

なつ「あ… うん。」

砂良「帯広に見に行ったわ 地平と一緒に。」

なつ「どうだった?」

砂良「もう 途中で地平が…。 何か 難しかったみたいで。」

なつ「ちー君 おばちゃんの映画 面白かった?」

地平「つまんなかった。」

照男「地平!」

なつ「いいのさ 正直で いいの…。」

明美「私も見たけど 私は面白かったわ なつ姉ちゃん。」

なつ「明美ちゃんみたいな大学生とかが たくさん見てくれたら いかったんだけど。 会社に大赤字を出させてしまって…。」

夕見子「大丈夫だって 仕事なんか。 すぐ見つかるって。 ね イッキュウさん。」

坂場「はあ…。」

悠吉「そだ 東大出てんだもな。」

菊介「そろばんだって できんだべ?」

悠吉「バカ! そろばんどこの話じゃねえべや。」

剛男「ほら 坂場君は イッキュウさんって 呼ばれてるっていうべさ。 ちょうどいい ここでひと休みだ。」

富士子「したけど 坂場さんのキュウは 永久の久でないの?」

剛男「そういうこと言わないのさ。」

泰樹「休んでる場合か。 仕事見つけて ここに来るのが筋だべ。」

なつ「待って じいちゃん!」

剛男「もう どうでもいいしょや そったらことは! この人は なつが選んだ人ですよ! 結婚望んでるのは ほかでもない なつだべさ! なつの選んだ結婚相手に 文句があるっていうんですか? なつの見る目に狂いはないと 私は信じてます! したって お義父さんの孫でないですか!」

泰樹「うう…。」

夕見子「よし よく言った 父さん。」

明美「私も 父さんに賛成!」

照男「俺もだ。 咲太郎さんも賛成してくれてるんだべ?」

なつ「うん。」

砂良「もちろん 私も大賛成。」

地平「僕も!」

(笑い声)

富士子「何さ… 一人だけ いいこと言っちゃって。」

剛男「すまん。」

菊介「そこで謝るんかい ハハハハハ…。」

悠吉「おやっさん。」

なつ「じいちゃん… お願いします。」

坂場「なつさんを 必ず幸せにします。 約束します。」

泰樹「初めから そう言やいいべや。」

坂場「はい…!」

なつ「ありがとう じいちゃん!」

詰め所

なつ「さっきの父さん かっこよかったわ! 堂々とじいちゃんに ものが言えるようになったんだね。」

悠吉「そりゃ 剛男さんは 今や 音問別農協の専務だからな。 貫禄もつくべや。」

菊介「農協に 夕見子ちゃんも就職したべさ。 夕見子ちゃんに 恥ずかしいとこは見せられないもな。」

なつ「そうか。 今は夕見の上司だもんね。」

菊介「富士子ちゃんには 相変わらず弱いけどな。」

(笑い声)

照男「なつ。」

なつ「うん?」

照男「夕見子は 今 すごいこと考えてんだ 農協で。」

なつ「すごいこと?」

照男「うん。 視察旅行とかって 外国行ってんだ。」

なつ「外国?」

照男「組合長に誘われてな。」

なつ「組合長? 今も田辺さん?」

照男「うん。」

なつ「へえ~ あの田辺さんに信頼されてるんだ。 さすが夕見だね ハハ…。」

坂場「いいですね 皆さんの暮らしは。」

菊介「わしらの暮らしが いんかい?」

悠吉「何がいんだ?」

坂場「生産の美を いくらでも追求できるところです。」

菊介「何のび?」

なつ「生産。 美って 美しいってことでしょ。」

坂場「この暮らしこそが 人間の美徳ですよ。」

菊介「したけど 牛飼いは 菊介「どんなに もうからなくても 誰にも文句言えねえし まあ ただ牛飼いだから しかたなくやってるだけだわ。」

坂場「それでは ダメだと思いますね。」

菊介「は?」

坂場「いや しかたなくやってるなんて そんなこと言ったら 牛が泣きますよ。」

なつ「ちょっと。」

菊介「都会から来て 何言ってんだ? あんたは。 牛飼いのことは 何も分からんべさ。」

悠吉「やめれや。」

坂場「確かに 人間は食うために働く 生きるために牛飼いをするのは 正しいことだと思います。」

坂場「しかし そこに生産することの喜びを 見いだすことができるから 牛飼いをすることで 人に喜びを与えることができるからこそ 牛飼いに 誇りを持てるんじゃありませんか? うん… どんな仕事でも 人を感動させることはできます。 農業にも酪農にも そういう精神は必要じゃないでしょうか?」

泰樹「おい 何してる? 早く仕事をしろ。」

悠吉「あっ… おい。」

菊介「なっちゃん ごめん よく分からんわ。」

居間

弥市郎「熊の肉だ。」

照男「坂場さん 熊なんて めったに食えるもんじゃないですよ。」

坂場「はい。」

砂良「熊をとろうなんて よく思ったね 父さんが。」

弥市郎「結婚と聞いて 無性に 熊が撃ちたくなった。」

回想

(銃声)

回想終了

照男「それって… 俺のことですか?」

砂良「何だ そういうことかい。」

照男「納得すんのかい。」

泰樹「わしにも その銃貸せや。 撃ちたいやつがおる。」

なつ「じいちゃん。」

泰樹「ハハハ… 冗談だべ。」

坂場「あっ… ハハハハハハ…。 ハハハハ ハ…。」

富士子「さ 食べて。」

坂場「はい 頂きます。」

なつ「あ… そうだ 夕見 照男兄ちゃんから聞いたんだけど 農協で 何か すごいこと考えてんだって?」

夕見子「ああ そう。 バターだわ。」

なつ「バター?」

夕見子「なつが大好きだった あのバターだわ。」

なつ「じいちゃんのバター?」

泰樹「うん…。」

夕見子「そのバターを 農協で作ろうとしてんのさ。」

回想

なつ「おじいさんのバターが出来たよ!」

回想終了

なつ「えっ じいちゃんのバターを 農協で!?」

泰樹「うん。」

剛男「十勝の農協が集まって 乳製品の工場を作ろうとしてるのさ。 いわば 酪農家自らが設立する 乳業メーカーだな。」

なつ「へえ~ 農協が 今度は 乳業メーカーまでやろうとしてんの!」

<なつよ 君の大好きなふるさとにも 新しい風が吹いている。>

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