ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第10話「なつよ、夢の扉を開け」【第2週】

あらすじ

泰樹(草刈正雄)はなつ(粟野咲莉)をある場所に連れていく。そこでなつは、十勝に入植して以来、泰樹が抱き続けてきたバター作りの夢を知ることになる。翌日、泰樹はなつや剛男(藤木直人)の前で、バターを作ることを宣言。なつは泰樹の夢でもあるバターを楽しみにするが、富士子(松嶋菜々子)や夕見子(荒川梨杏)はあまりいい顔をしない。しかし…。

10話ネタバレ

柴田家

牛舎

なつ「これは 何?」

泰樹「これは わしの夢じゃ。 バターチャーンだ。」

なつ「バターチャーン?」

泰樹「ああ 牛乳からバターを作る道具じゃ。」

なつ「バター…。」

泰樹「そう。 日本一の… いや いや いや… 世界一のバターを作るんじゃ。」

なつ「世界一のバター!?」

泰樹「明治35年 わしは たった一人で 富山から北海道に渡ってきた。 18歳の時だ。 十勝に入植して 必死に 荒れ地を耕したが ここは 火山灰地といって 土が悪く 歯が立たんかった。 この十勝には 晩成社といって 先に来た開拓団の人々がいた。」

泰樹「わしは その人たちを訪ねて学んだんじゃ。 そして 牛飼いを勧められた。 晩成社が バターを作っておった。」

なつ「バターを…。」

泰樹「それを 初めて食った時 わしは としても生きようと決意した。 この北の大地で 新しい時代が始まろうとしている…。 そう実感したんだ。 わしも うまいバターを作りたい。 ハハハ… そう思った。」

泰樹「お前が 大人になる頃には 日本人も当たり前のように バターを食うようになってるだろう。 その時 どこにも負けない おいしいバターを うちの牛乳から作れたら…。 それが わしの夢じゃ。」

なつ「私もバター作りたい!」

泰樹「そうか?」

なつ「うん。」

泰樹「バター作ってみるか?」

なつ「えっ? はい!」

居間

<次の朝です。 柴田家の長男 照男君が 初めての 搾乳の仕事に挑戦しました。>

(鳴き声)

剛男「うわ~…。」

悠吉「危ない! 大丈夫か? こりゃ もう ダメだわ。」

剛男「大丈夫だよ。 牛に バケツをひっくり返されるなんて しょっちゅうだ。」

泰樹「照男 お前 そんな焦らんでもいい。 お前は 一生 それを仕事にできるんだよ。」

照男「はい…。」

悠吉「けど 自分から教わりたいなんて 頼もしいんでないかい おやっさん 2代目は。 ハハハ…。」

菊助「おやじ 2代目は 剛男さんになるんじゃないのかよ?」

悠吉「あっ! 間違えた…。 申し訳ない! つい 口が滑ったんだ。 申し訳ない!」

剛男「いや いいんだわ。 そんなに 真剣に謝られると 余計 傷つくんで。 気にしないで下さい。」

悠吉「申し訳ない…。 申し訳ない!」

詰め所

菊助「よいしょ…。」

泰樹「今度 バター作ることにした。」

剛男「バター?」

泰樹「ああ。」

菊助「ここで作るんですか?」

泰樹「そうだ。」

悠吉「懐かしいなあ おやっさんのバターか。」

剛男「何で また? 売る方法でも見つかったんですか?」

泰樹「いや それは まだ先の話だ。 とにかく また作ってみたくなった。 なあ なつ。」

なつ「はい!」

悠吉「なっちゃんもかい? バターをね。 そりゃ ぜいたくな話だべ。」

菊助「ぜいたくなのか? バターを作ることは。」

悠吉「そりゃ そうだ。 これっくらいの 一塊を作るのに 牛乳を タンクで 何本も使うんだ。」

なつ「そうなんだ。」

剛男「だけど 食べてみたいな。 お義父さんのバター。」

居間

富士子「バター? また作るの? あの臭いやつ。」

剛男「えっ?」

夕見子「臭いの?」

富士子「臭いよ。 牛乳よりも乳臭い。」

夕見子「絶対に食べない。」

なつ「私は食べてみたい。」

富士子「バター 食べたことない?」

なつ「あります。 お父さんが…。」

富士子「あっ… なっちゃんのお父さん 料理人だもんね。」

剛男「そうだ。」

なつ「ホットケーキを作ってくれました。」

富士子「ホットケーキに バターか。」

夕見子「何? それ。」

富士子「小麦粉で作るやつ。 小麦粉があれば 作ってあげるのにねえ。」

照男「ねえ 学校遅れるよ。」

富士子「そだね。 小麦粉の前に 時間がない。」

玄関前

3人「行ってきま~す。」

富士子 剛男「行ってらっしゃい。

照男「じいちゃんは なっちゃんのために バターを作りたいんだ。」

なつ「えっ どうして?」

照男「分からないけど あんまり 食べたいなんて言わない方がいいよ。」

なつ「ダメなの?」

照男「だって 牛乳がもったいないだろ。」

なつ「そうか…。」

夕見子「牛乳なんか 何さ。 どうなったって いいべさ。」

照男「夕見子! お前には じいちゃんの苦労が分かってないんだ!」

夕見子「何よ 跡取り気取っちゃって。 男って 考えることが 本当に狭いよね。」

詰め所

<そして 次の日曜日 なつたちは バターを作りました。>

泰樹「牛乳から とれたクリームをな こうやって おんなじ速さで回してやるんだ。 そしたら 小さな塊が出来る。 それが バターになるんじゃ。 やってみるか? なつ。」

なつ「はい!」

泰樹「座って。 そうそう 同じ速さでな。 そう そう そう… おお うまい。 このまま 30分ぐらい回し続けるんだ。」

菊助「楽でねえな なっちゃん。 ハハハ…。」

悠吉「頑張れ なつ。」

泰樹「40分かな。」

台所

なつ「おばさん バターが出来た! おじいさんのバターが出来たよ!」

富士子「こっちも ちょうど出来たわよ。」

居間

富士子「はい お待たせ。」

なつ「ジャガイモ?」

富士子「そう。 子どもの頃 食べた記憶がある。 お母さんが考えたのよね?」

照男「ばあちゃんが?」

富士子「そうだよ~。 お芋に このバター載っけて食べると おいしいよ~って おばあちゃんのうれしそうだった顔 思い出す…。 これ 好きだったのよね。 若くして死んじゃったけど。 さあ 召し上がれ! なしたの?」

剛男「これで死んじゃったの…?」

泰樹「バカモン! バターは 体にいいんじゃ!」

剛男「は… はい! 頂きます!」

悠吉「頂きます。」

なつ「頂きます!」

照男「頂きます。」

剛男「ん~… 何だ これは! うまい!」

悠吉「うまいべさ。」

なつ「おいしい!」

富士子「でしょ~?」

菊助「牛乳の香りも ちゃんとするなあ。」

富士子「夕見子も 熱いうちに食べてみなよ。 このバターが溶けてるとこが おいしんだから。」

夕見子「いらない いらない!」

なつ「おいしいってば。」

夕見子「いらないってば。」

泰樹「いいから食べてみなさい 夕見子。」

なつ「どう?」

富士子「うまいしょ?」

なつ「やった! 夕見子ちゃんが 牛乳食べられた!」

剛男「いかったな 夕見子。」

夕見子「バターでしょ? 牛乳じゃないもん。」

剛男「え~?」

一同「ハハハ…。」

雪月

雪之助「載せるぞ~。 はい 載せたぞ~。 バター。」

とよ「バター載せんのかい。」

雪之助「よ~し 蜜かけるぞ~ 蜜。」

とよ 雪次郎 妙子「おお~…!」

雪之助「全部かけたいか お前ら…。」

雪次郎「わ~い!」

雪之助「はい はい~ お待たせいたしました!」

夕見子「これが ホットケーキ?」

雪之助「うん そうだよね? なっちゃん。 僕もね 東京で食べたことあるんだわ。」

なつ「東京にいたんですか?」

雪之助「うん 戦争前にね 修業に行ってたんだ。 さあ 召し上がれ。」

一同「頂きま~す!」

泰樹「こんなもの よく作れたな。」

雪之助「小麦粉をひいた時に残った カスみたいな ふすまという粉を使って ビートを煮詰めて作った蜜 かけてみました。」

泰樹「おっ これは うまい!」

なつ「おいしい!」

富士子「おいしいわねえ。」

雪次郎「夕見子ちゃんは?」

夕見子「うちのバター使ってんだから おいしいのは当然よ。」

照男「夕見子 お前 バターは自慢すんのか。」

富士子「うちのバター使うと こんなおいしいもんが出来るんですね。」

雪之助「はい そのとおりです。」

とよ「本当に 恩着せがましいんだから 家族して ハハハ…。」

妙子「奥さん おいしいのは うちの人の技術もあるからですよ。」

富士子「あれ それは分かってますよ 奥さん。」

とよ「まっ 私は あんまり好きじゃないけどね。 バタ臭くて。」

妙子「バターですから。」

雪之助「けど 新鮮だから もう製品化されたバターよりは 臭みがない。 やわらかくて 香りもいい。 柴田さん このバター 是非 売って下さい。 これからは 十勝のお菓子は バターの時代 来ます。」

泰樹「このバターは わしが作るのではない。」

雪之助「えっ?」

泰樹「なつたちが大きくなったら 開拓すればいいんだ。」

なつ「開拓…?」

泰樹「照男や なつたちが 仕事として 売る方法も考えて もっと おいしいもの作りゃいい。 それが わしの夢じゃ。 ハハ。 ハハハハ…。」

雪之助「じゃ 売ってくんないってことですか?」

泰樹「ああ ハハハハ…。」

雪之助「じゃあ 雪次郎の時代にな バター売ってもらって。」

<なつは バターと一緒に おじいさんの夢を味わいました。 そして…。>

小学校

花村「皆さん 来週は いよいよ この学校で 映画会があります。」

「え~!」

「やった~!」

大作「チャンバラだよな? 先生。 チャンバラだよね?」

花村「いいえ 今度の映画は お待ちかね 漫画映画です! あっ… 皆さん 漫画映画見るの初めてですか? 先生も 一度しいか見たことないんだけど 楽しみにしてて下さいね。」

一同「はい!」

大作「チャンバラがいいよな!」

花村「はい。 家族の人 み~んな来ていいですから そのように伝えて下さい。」

一同「はい!」

大作「チャンバラがいい!」

花村「はい。 それでは 皆さん さようなら。」

一同「さようなら。」

大作「チャンバラ チャンバラ…!」

なつ「ねえ 漫画映画って どういう映画かな?」

天陽「見たことないの?」

なつ「ないよ。 あるの?」

天陽「あるよ。」

なつ「漫画映画って 漫画が うつってるのかな?」

天陽「絵が動くんだよ。」

なつ「絵が動くのか…。 そうだと思った!」

天陽「フフフ…。」

なつ「フフフ…。 楽しみだね。」

天陽「うん。」

<なつは もう一つの夢を 味わうことになるのです。>

映画会当日

<なつよ さあ 始まる。>

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