ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第110話「なつよ、開拓者の郷へ」【第19週】

あらすじ

十勝に戻ってきたなつ(広瀬すず)は、農協に勤める夕見子(福地桃子)がバター作りをしようとしていることを知る。翌日、なつと坂場(中川大志)は帯広の雪月を訪れ、すっかり菓子職人になった雪次郎(山田裕貴)や、雪之助(安田顕)たちに結婚報告をし、大歓迎される。そこへ、かつてなつがお世話になった高校演劇部員たちも現れ、再会を懐かしむ。一方、農協では工場を新設しようとしていたが、ある問題が起こる。

110話ネタバレ

柴田家

居間

なつ「じいちゃんのバター? えっ じいちゃんのバターを 農協で!?」

泰樹「うん。」

剛男「十勝の農協が集まって 乳製品の工場を作ろうとしてるのさ。 いわば 酪農家自らが設立する 乳業メーカーだな。」

なつ「へえ~ 農協が 今度は 乳業メーカーまでやろうとしてんの!」

剛男「その先頭に立ってるのが うちの田辺組合長だ。」

なつ「その田辺組合長に 夕見は信頼されてるんだって?」

夕見子「まあね。 半分は通訳を兼ねて 一緒に ヨーロッパに 視察旅行に行ってきたからね。 向こうじゃ 酪農家が自ら チーズやバターを作って売ってるのさ。 立派な工場だって持ってる。 それを 十勝でもやろうとしてんのさ。」

なつ「すごいね。」

坂場「すばらしい考え方です。」

富士子「おかげで 夕見子も なかなか 結婚のことを考えてくれないんだわ。」

夕見子「また すぐ そったらこと言う。」

なつ「ごめんね 夕見。 夕見より先にして。」

夕見子「大丈夫。 全然羨ましくないから。」

弥市郎「あっ まあ はい。」

坂場「あっ すみません。」

明美「でも おかしいでしょ なつ姉ちゃん。 あんなに 牛乳や牛が嫌いだった 夕見姉ちゃんが 結局 なつ姉ちゃんに代わって 今じゃ じいちゃんのバターまで 作ろうとしてんだから。」

なつ「そだね… 本当にそだね! じいちゃん いかったね。」

泰樹「新しいことしなけりゃ 十勝の牛飼いは 牛飼いの喜びを 感じることもできなくなってるんだ。」

なつ「牛飼いの喜び…。」

雪月

妙子「ありがとうございました。」

<次の日 なつとイッキュウさんは 帯広に来ました。>

妙子「いらっしゃい… あれ!」

なつ「こんにちは。」

雪次郎「あっ なっちゃん!」

なつ「おお~!」

雪次郎「イッキュウさん!」

坂場「お久しぶりです。」

雪次郎「待ってたわ。 昨日 こっちに来たのかい?」

なつ「うん。 元気そうだね 雪次郎君。」

雪次郎「元気だ。 いや~ 俺は こうなると信じて待ってたんだわ。」

妙子「まあ 座って。 今 うちの人と ばあちゃんにも知らせてくるからね。」

なつ「あっ おばさん これ 最近売られてる東京のお菓子。 おじさん 興味あるかなと思って。」

妙子「そりゃ喜ぶわ。 ありがとう。」

雪次郎「ありがとう。」

妙子「ゆっくりしてって。 ね…。」

雪次郎「あっ イッキュウさん うちの菓子。 何でも好きなの食べてみて。 はい。」

坂場「すっかり 菓子職人になったんですね。」

雪次郎「あ… はい。 結局 役者より職人の方が 向いてたのかもしれません。」

なつ「もうお菓子作ってんの?」

雪次郎「まあ 最近やっとな。 したけど ここにあるのは 全部 おやじが考えて作ったんだ。 自分の菓子が作れなくちゃ 一人前とは言えねえべ。 あっ 咲太郎さんや亜矢美さん 元気かい?」

なつ「うん。 あっ お兄ちゃんの会社も どんどん忙しくなってるみたい。」

雪次郎「そうか…。 俺がいなくても 東京は回るんだな。」

坂場「実は 僕も会社を辞めたんです。」

雪次郎「えっ? えっ?」

雪之助「なっちゃん なっちゃん なっちゃん! なっちゃん! あ~ なっちゃん いらっしゃい!」

とよ「なっちゃん おめでとう!」

なつ「とよばあちゃん おじさん ご無沙汰してます。」

とよ「どれ どれ どれ どれ。 なっちゃんを もらいに来たって人は あんたかい?」

坂場「はい。」

とよ「頭いいんだってね。」

雪之助「やめれ。 なれなれしいべ いきなり。」

とよ「なっちゃんの相手なら うちの親戚も おんなじだべさ。」

雪之助「親戚でも なれなれしいわ。 なっちゃん お土産ありがとね。」

なつ「ああ いえ。」

妙子「東京では もう 雪次郎も いろいろお世話になったみたいで…。」

坂場「いえ こちらこそ。 あの 坂場一久と申します。 どうぞ よろしくお願いいたします。」

雪之助「あ… これは どうも。 帯広 雪月の小畑でございます。」

妙子「まあ 座って。」

とよ「座って 座って…。 柴田のじいさんに殺されなかったかい?」

坂場「は… はい。」

なつ「なんとか許してもらたみたい。」

とよ「なんとかかい? やっぱし ヤキモチ焼いたのかい?」

なつ「いや そういうんじゃないんだけど…。」

雪次郎「会社を辞めたから?」

雪之助「えっ?」

なつ「まあ… そんなとこ。」

妙子「えっ 会社って なっちゃんの?」

なつ「いや 私は辞めてないんですけど この人は辞めてしまって。」

とよ「したら 今は無色かい?」

坂場「はい。」

とよ「それは反対されても無理ないべさ。 それで よく来たね。」

雪之助「やめれって。」

坂場「すぐに 次の仕事を 見つけようと思っています。」

とよ「そら そだわ。」

なつ「それで 私も満足なんです。」

とよ「なっちゃんにとったら そったらこと 苦労のうちに入らんもね。」

なつ「はい。 ず~っと強い とよばあちゃん 見習ってきましたから。」

とよ「うれしいこと言ってくれるね。」

(笑い声)

雪之助「あっ そうだ なっちゃん ウエディングケーキはさ 俺に タダで作らせてくれよ。」

なつ「えっ?」

雪之助「世界一のな 十勝のケーキ作る。 じいちゃんの牛乳でな。」

なつ「ありがとう おじさん。」

妙子「なっちゃんには 本当 お世話になったからね。 もう ケーキなんて安いもんよ。 幸せになってくれて 本当にいかった。 おめでとう。」

なつ「おばさん ありがとう。」

坂場「すみません。 あっ あの… 仕事は なんとかしますから。」

<大丈夫 イッキュウさん。 慌てない 慌てない。」

とよ「あ~れ! ほれ あれ 先生!」

なつ「ああ… 倉田先生!」

倉田「やあ。」

なつ「何で!」

雪次郎「俺が知らせたんだ。 なっちゃんが 今日 ここに来るって。」

なつ「え~!」

倉田「奥原なつ 元気だったか?」

なつ「はい。」

倉田「よし。 お前の漫画映画は いつも見させてもらってるよ。 『神をつかんだ少年クリフ』 あれは…。 すばらしかったな。 お前の魂を感じた ハハハ。」

なつ「よかった…。 うれしいね…。」

坂場「ありがとうございます!」

倉田「うん… ん?」

雪次郎「あっ 先生 その映画を演出したのが この人 イッキュウさんです。」

倉田「イッキュウ…?」

雪次郎「あ… じゃなくて 坂場一久さんです。 この人と 今度 なっちゃんが 結婚することになったんですよ。」

倉田「ああ そうかい。 君が あの映画を…。 うん あれを作った君になら 奥原を安心して任せられる。 奥原なつを どうか よろしくお願いします。」

坂場「こちらこそ よろしくお願いします。」

雪次郎「いかったな なっちゃん。」

なつ「うん ハハ…。」

雪之助「あ~ いらっしゃい。」

なつ「あ~!」

門倉「おお… 奥原!」

なつ「よっちゃ~ん!」

良子「なっちゃ~ん!」

なつ「なして よっちゃん! なして 私を置いて こんな人と結婚したの!」

門倉「えっ?」

良子「ごめんね なっちゃん…。 なっちゃんがいなくて つい寂しくて… 魔が差したの!」

門倉「ええ?」

なつ「よっちゃ~ん!」

良子「なっちゃ~ん!」

倉田「まあ いいじゃないか 一緒には なれたから。」

門倉「そうっすね…。」

倉田「な。」

雪次郎「はい どうぞ。」

なつ「ありがとう 雪次郎君。 ここで みんなに会えるとは 思わんかったわ。」

雪次郎「なんも なんも。」

門倉「お前 天陽は呼ばなかったのか?」

雪次郎「えっ?」

良子「バカでないの あんたは!」

門倉「あっ すまん…。」

なつ「なんも なんも。 もちろん 天陽君にも会いたいと思ってんのさ。 あっ この人も 天陽君の絵が好きなんだわ。」

坂場「はい。 できれば たくさんの絵を見たいと思っています。」

倉田「あいつは 今や 立派な画家だ。 あっ もちろん 職業的にという意味ではなくな あいつの生き方そのものが画家なんだ。 土を耕し 牛の乳を搾り 家族と生きている その手から自分の作品を生み出している。 したから あいつの絵は 純粋で尊いんだ。」

雪次郎「あっ 天陽んとこ おととし 男の子が生まれたんだわ。」

なつ「知ってる… よっちゃんのとこは 2人いるんだっけ?」

良子「気付かないと思うけど 今 ここに3人目。」

なつ「いや… たたいちゃダメっしょ!」

門倉「雪次郎 お前もグズグズするな。 いつまで 一人でいるつもりだ。 根性入れて 相手を探せ! ねえ おばさん。」

妙子「本当。 もっと言ってやって。」

雪次郎「俺は いんだよ。 まだ。」

門倉「何で?」

雪次郎「寄り道したから まだ半人前だ。」

なつ「フフッ。 あっ 倉田先生。」

倉田「うん? 農協が 今度 自分でバターを製造する 乳牛会社を 作ろうとしてるみたいなんです。」

雪次郎「バターを?」

倉田「奥原も聞いたか。 いいかい? これは 非常に画期的なことなんだ。 農民が 企業を頼らずに 自ら作った乳製品を 消費者に届けようとしているんだからな。」

門倉「北海道の牛飼いは 8割から9割が赤字経営だ。 喜子の家の牧場 俺が継いでよく分かった。」

良子「メーカーが買う北海道の牛乳は ほとんどが バターとかの加工用で 安いんだわ。」

門倉「柴田牧場だって 楽じゃねえべさ。」

なつ「そうなんだ…。」

倉田「だから 農協自ら 工場を作ろうとしているのさ。 まあ それこそ 田辺組合長の言っていた 酪農王国への道なのさ。」

なつ「酪農王国…。」

回想

田辺「この十勝全体を 全国一の酪農王国にしたいんだ。」

回想終了

雪次郎「それを 夕見子ちゃんもやってるんだな。」

なつ「うん。」

音問別農協

(ノック)

夕見子「組合長 大変です!」

田辺「どした? 夕見子さん。」

夕見子「国から横やりが入りました。」

田辺「横やり?」

夕見子「十勝の市町村長宛てに 集約酪農地域についての速達文書が 届いたみたいです。」

田辺「それは 十勝全体を集約酪農地域に 指定するということかい?」

夕見子「そういことです。 それも 今日届いたのに その返答を あさってまでに しなくちゃならないそうです。」

田辺「あさって? あさっては日曜でないかい!」

夕見子「そうです。 ほとんど こっちには時間がありません。」

剛男「組合長 どうしますか? これは どう考えても 工場建設に対する妨害です!」

柴田家

居間

なつ「その集落酪農地域っていうのに 指定されると どうなっちゃうの?」

剛男「酪農地域として 国の補助が受けられる。 あっ ありがとう。」

なつ「それって悪いこと?」

剛男「勝手に乳製品工場を 建てられなくなるのさ。」

夕見子「国が 我々の計画に反対してるってことよ。 恐らく 裏でメーカーが働きかけてるのさ。」

剛男「したから そういうやり方で潰しに来たんだ。」

富士子「恐ろしいわね。」

坂場「世の中の仕組みを 変えようとしてることですからね。」

なつ「それで どうなるの? 工場は建てられなくなるの?」

剛男「いや 建てる道は 一つだけある。 明日中に 届け出を出せばいいんだ。」

なつ「明日中に?」

夕見子「そう。」

剛男「集約酪農地域に指定される前なら 工場新設の届け出だけで 工場は建てられる。」

坂場「明日は同曜日ですね。」

剛男「そうなんだよ。」

坂場「明日中といっても お役所は午前中しかやってないから それまでに 組合長会議で決定して 届け出も出さなくちゃならない。」

富士子「午前中に全部かい。」

夕見子「その準備に追われて 今日は こんな時間になったの。」

泰樹「わしらにも できることあるかい?」

剛男「お義父さん。」

夕見子「じいちゃん…。 そだ じいちゃんらも できれば 会議に出て!」

なつ「えっ?」

剛男「なして?」

夕見子「酪農家が結束してるところを見せれば 組合長たちも迷わないべさ。」

剛男「あっ… したら 明日の朝 できるだけ人を集めよう。」

なつ「えっ したら 私も行く!」

坂場「僕も行かせて下さい!」

夕見子「えっ?」

坂場「あっ いや… なつさんが大切にしている 十勝の酪農のことを 少しでも知りたいんです。」

泰樹「勝手にすりゃいいべ。」

坂場「はい!」

詰め所

泰樹「そういうことで みんな 農協へ向かってくれ。」

菊介「はい。」

悠吉「おやっさん 分かった。 行くべよ。

坂場「菊介さん 先日は申し訳ございませんでした。」

菊介「は?」

坂場「皆さんの苦労を何も知らずに 軽はずみなことを言いました。」

菊介「いや…。」

坂場「皆さんの工場を 必ず造って下さい。 応援しています。」

<なつよ この人は こういうことが 本当に好きなんだな。」

なつ「うん。」

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