あらすじ
剛男(藤木直人)や夕見子(福地桃子)が勤める農協では、酪農を守るため、工場を新設し、乳業会社をつくろうという案が出ていた。しかし、反対派と折り合いがつかず、組合長・田辺(宇梶剛士)をはじめ、泰樹(草刈正雄)や天陽(吉沢亮)ら酪農家が集まり、激しい議論になる。その時、坂場(中川大志)の言葉を思い出した菊介(音尾琢真)が、酪農への純粋な思いを語りだし、なつ(広瀬すず)をはじめ、皆はその話に耳を傾け…。
111話ネタバレ
音問別農協
剛男「午前中に 届け出を出すためには 遅くとも 11時までに ここを出なくてはなりません。 それまでに決議する必要があります。」
田辺「分かった。 これで十勝の脳許が 更に一致団結すれば 今度のことは幸いでないか。」
剛男「そうなればいいんですが…。」
(ノック)
夕見子「失礼します。 組合長 なつを連れてきました。」
田辺「おお。」
なつ「失礼します。」
田辺「なつさん!」
なつ「田辺さん お久しぶりです。」
田辺「いや よく帰ってきてくれたわ ハハ…。 今 まさに なつさんが このタイミングで 十勝に帰ってきてくれたことは きっと 天の恵みだ。」
なつ「えっ?」
田辺「昔 なつさんが いてくれたおかげで 農協が 農家から牛乳を集めて メーカーに売る 共同販売が実現することができたんです。」
なつ「いえ 私がいたからなんて とんでもないです!」
夕見子「なつが演劇をやって うちのじいちゃんを説得したからでしょ。」
坂場「演劇で?」
田辺「そうなんです。 あれがなければ 今度の工場新設も ありえなかった。」
なつ「田辺さんは あの時から それを見据えていたんですね。」
田辺「うん… だから 私は なつさんに なまら感謝してる。」
夕見子「それが 今日 実現するか潰されるか 決まるんだわ。」
坂場「実現させましょう!」
田辺「おっ 頼もしいな なつさんの婚約者は。」
なつ「組合が好きなんです。」
良子「なっちゃん!」
なつ「あっ よっちゃん!」
門倉「奥原も来たのか。」
なつ「うん。 うちのじいちゃんたちも来てる。」
良子「倉田先生も 授業がなければ来たがってたわ。」
天陽「なっちゃん。」
なつ「天陽君…。」
天陽「なっちゃん 帰ってきてたのか。」
なつ「うん。」
靖枝「こんにちは。」
なつ「あっ こんにちは。 ご無沙汰してます。」
門倉「あっ 天陽 大丈夫だ。 あっ いや 大丈夫って話じゃないけども 奥原も 今度 結婚するらしい。」
天陽「えっ?」
坂場「あっ 坂場と申します。 お兄さんとは いつも 仕事をしていました。」
天陽「あっ そうですか…。 なっちゃん おめでとう。」
なつ「ありがとう。」
靖枝「おめでとうございます。」
なつ「ありがとうございます。」
正治「天陽。」
なつ「おじさん。」
正治「なっちゃんかい!」
天陽「なっちゃん 結婚で帰ってきたらしい。」
正治「え… そうかい。」
なつ「いや まあ そうすぐって わけじゃないですけど。」
正治「ハハ… おめでとう。 あっ いや… したけど 今は 行かないばなんないわ。」
なつ「あ… そうだ。 今は それどころではないわ。」
門倉「行くべ 行くべ。」
<工場設置届を提出するため 十勝の各農協組合長が 決議に集まりました。>
剛男「これより 会議を始めます。 まずは 音問別組合長 そして ここにお集まり頂いた 十勝地区農協組合長の会長でもある 田辺政人より発言させて頂きます。」
田辺「皆さん 今日 緊急にお集まり頂いた理由について ご理解頂いてることと思いますが 計画中の十勝共同乳業を 私は 何としても実現したい。 しかし それには 今日の午前中に 工場設置届を出す必要が生じました。 そうしなければ この計画は 国に潰されるでしょう。 直ちに届け出を出すことに 皆さんに同意して頂きたいのです。」
剛男「これは もちろん 満場一致での同意がなければできません。 時間は切迫しております。 同意して頂ける組合長は 挙手願います。」
(ざわめく声)
剛男「では 反対の方 ご意見を。」
「田辺さん それは つまり 国が 我々のやろうとしてることは 無謀だと判断したからでしょう?」
田辺「無謀なんかでありません!」
「したけど これ以上 乳業メーカーを敵に回して それで もし その工場が失敗した時は 十勝の酪農民は ますます 苦境に立たされるんでないですか?」
田辺「失敗したら? 失敗などせん!」
剛男「我々は 一般の乳業メーカーを 締め出そうとしてるわけではありません。 健全な自由競争することで 共存共栄を図ろうとしてるだけです。」
「したけど 実際 不安がってる酪農民だって たくさんいるんだ。」
夕見子「なして 分からないんですか。 この工場は そういう酪農民が 安心して暮らすために 酪農民の誇りをかけて 造ろうとしてるんでないですか!」
剛男「夕見子…。」
田辺「そのとおりです。 乳業だけが栄え 酪農が滅ぶような 社会の仕組みを変えるためには どうしても 協同組合で造る 農民の工場が必要なんです。 これは 私の… いや 十勝の使命だ!」
菊介「その工場は ほかの乳業メーカーよりも うまいバターを作れるんだべ?」
悠吉「菊介…。」
菊介「俺らが もっと 俺らの手で おいしいバターを 作ろうとしてるだけだべさ?」
田辺「そうです。」
菊介「したら なして迷うことがあるんだ…。 俺らの手で 人に喜んでもらうことをするのに なして迷うことがあるんだ!」
なつ「菊介さん…。」
菊介「ここにいる人らは ほとんどが 開拓者の2世か3世だべ? おやじらのように 荒れ地を耕して開拓した誇りは 俺らには ないかも分からんけど…。 俺らにだって 開拓できることは まだまだ あるはずだべさ!」
菊介「俺は 学もない ただの牛飼いだけど 俺らの搾った牛乳が 人に感動を与えるようなものになるなら 凝ったら うれしいことはないもな。 どうか その工場を 俺らに造って下さい。 俺らに牛飼いの喜びを 作らせて下さい!」
天陽「賛成! 工場を造れ!」
門倉「おう! 俺たちの工場を造れ!」
良子「工場を造れ!」
照男「工場を造れ!」
正治「私も 菊介さんに賛成だ! 工場を造れ!」
泰樹「工場を造れ!」
悠吉「工場を造れ!」
なつ「工場を造れ!」
坂場「工場を造れ!」
酪農民たち「工場を造れ! 工場を造れ! 工場を造れ!…!」
剛男「分かった! 分かりました…。 それでは もう一度 今度は 全員に決を採ります。 工場設置届を出すことに賛成の方は 挙手を願います。」
夕見子「よし!」
田辺「ありがとうございます!」
剛男「それでは これより 直ちに 工場設置届を提出しに参ります。」
(拍手)
「田辺さん 我々 組合長会も 一緒に行きましょう。 農林省や道庁に対する抗議も込めて。」
田辺「それは すばらしいアイデアだ! 是非 みんなで 一緒に行きましょう。」
正治「菊介さん 我々も一緒に行きましょう。」
菊介「えっ?」
正治「我々 農民も 直接 抗議に行くんですよ!」
菊介「あんた なして そんなに張り切ってんだ?」
天陽「おやじも俺も 菊介さんと同じ 柴田牧場の仲間ですから。」
菊介「ああ…。」
照男「みんな 菊介さんに感動したんだべさ。」
菊介「こっぱずかしいことを…。 何で しゃべったのか 自分でも分かんねえ。」
なつ「行こう 菊介さん 私も行く。」
菊介「なっちゃん…。」
坂場「僕も お供します。」
菊介「お前のせいだ。」
坂場「えっ?」
回想
坂場「牛飼いをすることで 人に喜びを与えることができるからこそ 牛飼いに 誇りを持てるんじゃありませんか?」
回想終了
菊介「こうなったら 最後まで行くべか!」
門倉「よ~し 全員で殴り込みだ!」
良子「違うべさ。 百姓一揆だべ!」
夕見子「よし 行くど!」
門倉「おお~!」
悠吉「おやっさん もう わしらの出る幕でないですね。」
泰樹「うん…。」
十勝支庁庁舎
なつ「えっ 新聞やテレビ?」
夕見子「昨日 私が知らせといたのさ。 ほら なつ あそこ。」
なつ「あっ… 信さん!」
剛男「じゃ 行きましょう。」
田辺「うん。」
(ノック)
『はい。』
田辺「失礼します。 十勝地区農協組合会 会長の田辺政人です。」
大清水「十勝支庁長 大清水 洋です。」
田辺「支庁長じきじきに迎え下さり 感謝しております。」
大清水「ここまで 騒ぎを大きくされては リーダーである私が 矢面に立つしかないでしょう。」
(シャッター音)
剛男「これは 工場設置届です。 どうか お受け取り下さい。」
大清水「確かに 受け取りました。」
田辺「支庁長 あなたも十勝の酪農が… いや 北海道の酪農が 今 どんなに苦しい状況にあるか それを よく分かっているはずです。 十勝を酪農王国にしたいという 我々の願いを どうか 潰さないで頂きたい!」
大清水「潰すなんて そんな 人聞きの悪いこと言わないで下さい!」
剛男「それなら 今回のやり方は何ですか!」
夕見子「そうだ!」
一同「そうだ!」
なつ「十勝の酪農を守れ!」
一同「十勝の酪農を守れ!」
正治「北海道の牛乳を守れ!」
一同「北海道の牛乳を守れ!」
菊介「それでも あんたは道産子か!」
一同「道産子か!」
大清水「私だって道産子だわ! 何を言ってんだ! この十勝を 北海道を思う気持ちは あなた方にも負けない! この大清水が 必ず 十勝を 酪農王国にしてみせます! そのためにも 皆さん どうか頑張って下さい!」
(拍手)
田辺「どうも ありがとうございます!」
剛男「組合長!」
夕見子「組合長!」
なつ「田辺さん!」
田辺「大丈夫だ… 何でもない…。」
(拍手)
<なつよ 十勝にとって 今日は 歴史的な日になったな。>