ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第112話「なつよ、開拓者の郷へ」【第19週】

あらすじ

農協の工場建設問題は無事解決する。なつ(広瀬すず)の育った環境を知った坂場(中川大志)は、なつが多くの人からの愛情を受けて育ったことを実感し、絵を生み出す力の源を知る。そして坂場はある思いをなつに打ち明ける。組合長の田辺(宇梶剛士)に呼ばれたなつは、入院している病院を訪れる。すると田辺からあるお願いされる。一方、そのころ、雪月では、雪次郎(山田裕貴)が何やら企てており…。

112話ネタバレ

十勝支庁庁舎

なつ「十勝の酪農を守れ!」

一同「十勝の酪農を守れ!」

大清水「この大清水が 必ず 十勝を 酪農王国にしてみせます!」

(拍手)

<こうして 十勝の農民会社 十勝共同乳業は立ち上がったのです。>

信哉「なっちゃん 結婚おめでとう。 坂場さん おめでとうございます。」

坂場「ありがとうございます。」

なつ「式は まだ先なのよ。 それに 坂場さんの家族にも ご挨拶に行ってないから。 まだ許しも もらえてないし。」

坂場「それは大丈夫だって言ってるだろ。」

信哉「坂場さん なっちゃんを どうか よろしいくお願いします。 本当に つらい思いをしてきた人なんです。」

坂場「分かっています。 分かりました。」

信哉「なっちゃん 実は僕も去年 結婚したんだ。」

なつ「えっ… ちょっ… 何で教えてくれなかったの!」

信哉「札幌で 2人だけで式を挙げたんだ。 僕に身内がいないことを知ってるから 向こうが そうしようって言ってくれてね。」

なつ「おめでとう 信さん!」

信哉「うん…。 なっちゃんも これから新しい家族を作っていくんだな。」

なつ「うん… 信さんもね。」

信哉「うん…。」

なつ「ハハ…。」

柴田家

しばた牧場

坂場「君は すごいな。」

なつ「えっ 何が?」

坂場「本当に いろんな人から恵みを受けて 生きてきたんだな。」

なつ「それは 自分でもすごいと思う。 恵まれてるわ。」

坂場「その恵みを 君も ちゃんと人に返してる。」

なつ「そうだったらいいけど…。」

坂場「この北海道に来て よく分かったんだ。 君の絵を動かす力は どこから来てるのか。 それは この大地に吹く風みたいに 君が生きてること そのものの力なんだって実感したよ。」

なつ「また難しいこと言うんだから。」

坂場「君は 僕の才能じゃなくて 生きる力を好きになったんだって そう言ってくれたよね。」

なつ「うん。」

坂場「そのことを ずっと考えてたんだ。 僕にも もし そういう力があるんだとしたら 才能が あるなしにかかわらず また やってみたいんだよ。」

なつ「何を?」

坂場「漫画映画を。 作りたいんだ。 また 一から挑戦したいんだ。 その道を探りたい。 だから ほかの就職先は考えられない。 君に 苦労をかけるかもしれないけど… それでも いいかな?」

なつ「いいに決まってるしょ。 ほら… こうすれば 生きる力だって2倍になるしょ。」

坂場「うん。」

なつ「大丈夫だって…。 やるぞ~! 空~!」

坂場「よ~し! 空~! (せきこみ)」

なつ「えっ 大丈夫?」

居間

テレビ・信哉『十勝の農協組合長と酪農民は 今日の午前11時30分ごろに 十勝支庁を訪れ 工場建設の届けを提出しました。 十勝の農協が 共同で乳業会社を設立し 大手の乳業メーカーに頼らなくても…』。

なつ「あっ 映った。」

明美「いいな 私も行きたかった。」

砂良「ほら じいちゃんだよ。」

地平「うん…。」

テレビ・信哉『農林省や北海道庁は それに対して妨害しようとしていると 十勝の農協 酪農民たちは訴えています』。

テレビ『こんばんは』。

照男「あれっ これだけ?」

なつ「(笑い声)」

テレビ『北海道の大雪山系の旭岳では 初冠雪が観測されました。 各地で朝は冷え込み 十勝晴れとなった帯広では…』。

なつ「あっ この人! この人が 信さんの結婚相手だわ!」

一同「ええ!」

富士子「この人 よく見てたけど ちっとも気付かんかったわ。 おんなじ名字だなとは思ってたんだけど。」

砂良「言われなければ 気付かないしょ。」

テレビ『朝晩と日中との気温差が 大きくなるでしょう。 最低気温は 10度以下…』。

泰樹「めんこい子だな。」

富士子「そりゃ テレビに出てる子だも。」

泰樹「めんこくない子も出てる。」

照男「じいちゃんも そういう目で テレビ見てんのかい?」

砂良「あんたもかい?」

明美「いいな 私も こういう仕事してみたい。」

なつ「えっ 明美ちゃんは そっちを目指してるの?」

明美「う~ん… 別に テレビに出たいわけじゃないけどさ。 信さんみたいな仕事は いいなって思ってんだ。 女でも できるならね。」

坂場「できますよ きっと。 どんな仕事にも 男女の差はなくなっていくでしょう。」

なつ「そだよ。 明美ちゃんは 夕見や私の妹なんだから。」

明美「そだね。」

富士子「あんまり けしかけないでや。 心配事が増えるだけだわ。」

(戸が開く音)

剛男「ただいま。」

夕見子「ただいま。」

一同「お帰りなさい。」

富士子「ごはんは?」

剛男「ごめん。 ごはんは済ませてきた。」

富士子「大変だったね。」

砂良「たった今 テレビで流れてたのさ。 お義父さん 大きく映ってて かっこよかったわ。 ね。」

地平「うん かっこよかった!」

剛男「本当かい? そうか?」

地平「うん。」

泰樹「そったらことより 組合長は?」

なつ「田辺さんは どうされたの?」

剛男「うん…。」

夕見子「帯広で入院した。」

なつ「えっ?」

富士子「入院?」

夕見子「あ… 休むためさ。 静養のために入院させたの。 組合長は嫌がったけどね そうでもしなきゃ あの人は休まないんだから。」

剛男「そだな。」

夕見子「ヨーロッパの視察旅行から戻って たった3か月で ここまで来たんだもん。 組合長の行動力には 私も いっつも たまげてるわ。」

泰樹「あれは 根っからの開拓者だ。」

夕見子「あ… なつ 組合長が なつに話があるって。」

なつ「えっ 話?」

夕見子「うん。」

病院

(ノック)

夕見子「失礼します。」

田辺「やあ なつさん 坂場君も」

夕見子「連れてきましたよ。」

田辺「わざわざ こんな所へ ごめんね。」

なつ「いえ お加減はいかがですか?」

夕見子「ダメじゃないですか。 これじゃ ちっとも よくならないでしょや。」

田辺「もう大丈夫だって。 これから 工場建設に向けて やっと具体的に忙しくなっていくんだ。 休んでる方が 死にそうになるべや。」

なつ「フフ… それで 私に話というのは?」

田辺「ああ… まあ 座ってくれや。 実はね 工場の会社名は 十勝共同乳業でいいと思うが ブランド名が必要になる。」

なつ「ブランド名?」

田辺「十勝共同乳業バターじゃ 堅苦しいべや。」

なつ「あ… バターの名前ですか?」

田辺「そうだ。」

夕見子「たんぽぽ。」

なつ「タンポポ?」

夕見子「うん。 平仮名で たんぽぽ。」

なつ「たんぽぽバター?」

夕見子「うん。」

田辺「タンポポが咲いて カッコウが鳴いたら 我々 十勝の農民は 種まきの季節になったことを知る。」

坂場「それは 気候の変化を知らせるからですか?」

田辺「我々が新しい種をまく時を知らせ 本当に春が来たことを 実感させてくれる花 それが タンポポだ。 ぴったりだべさ。 その名前を考えたのは 柴田さんだよ。」

なつ「えっ 父さんが?」

田辺「うん。 なつさんは そういう季節に この十勝にやって来たそうだね。」

なつ「はい。」

田辺「柴田さんは 子どものなつさんが タンポポを食べたって話を 懐かしそうに話してくれたわ。 覚えてるかい?」

なつ「覚えてます… 十勝に来てからのことは 一つも忘れないんです。」

田辺「そうか。 して なつさん なつさんには その商標を考えてもらいたいんだ。」

なつ「しょうひょう?」

夕見子「マークさ マーク。 雪の結晶とか 晩成社のマルに成の字とか バターを作る会社に マークがついてるべさ。」

なつ「ああ! えっ… そのたんぽぽバターのマークを 私が考えていんですか!? そんな大事なものを!」

田辺「なつさんは プロの絵描きだべさ。 それに たんぽぽバターは なつさんのふるさと そのものになるっしょ。」

なつ「はい。」

坂場「君の発想力なら きっと いいものが描けると思うよ。」

なつ「イッキュウさんに そう言われると 挑戦したくなるわ。」

夕見子「いんでないかい。 ダメだったら採用しないだけだから。」

なつ「夕見にそう言われると やる気が出るわ。 はい 分かりました! 喜んで やらせてもらいます! ありがとうございます!」

田辺「こちらこそだわ。 なつさん よろしく頼むよ。」

なつ「はい。」

雪月

雪次郎「俺のバター…。 おバター…。 おバタ雪次郎…。 ハハハハハハ…。 ハハハ… 天才だ。」

<ふざけているわけではありません。 そのころ ここ雪月でも 新しい挑戦が着々と進んでいたのです。>

妙子「ありがとうございました。 あっ。」

3人「こんにちは。」

妙子「いらっしゃい。」

なつ「えっ なして みんないるの?」

天陽「雪次郎に呼ばれたんだよ。」

なつ「みんなも?」

良子「なっちゃんもかい?」

なつ「うん。 私と夕見も。」

門倉「今日の午後3時に集まれってか。」

良子「何があるか なっちゃんも聞いてないの?」

なつ「聞いてない。」

夕見子「何考えてるんだろ みんな集めて。」

妙子「ごめんね 忙しいのに 雪次郎につきあわせて。 まあ 座って。」

坂場「あっ はい。」

妙子「はい じゃ みんな そろったって 知らせてくるからね。」

なつ「倉田先生も呼ばれたんですか。」

倉田「呼ばれてない。」

なつ「なして来たんですか?」

倉田「それより 昨日は 随分 面白かったそうだな。」

なつ「面白がることじゃありませんけど 面白かったです!」

倉田「この十勝にも 来年は 新しい春がやって来ると。」

なつ「はい。 新しいタンポポが咲きます。」

倉田「えっ タンポポ?」

雪之助「ああ みんな お待たせして申し訳ないね。」

なつ「おじさん とよばあちゃん 雪次郎君 どしたの?」

とよ「今 来っから 楽しみにしといて。」

雪之助「何しろ あいつが 一人でやってることだからね。 まあ 味は保証できないんだけど。」

なつ「あっ 何か作ってるの?」

雪次郎「はい お待たせしました! 出来ました! 俺の考えた新しいお菓子です。 雪月で 初めて考案した 先生 みんな これが俺の新しい魂です!」

なつ「へえ~。」

<なつよ この雪次郎君の魂が また新しい春を 呼び込むことになりそうな…。>

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