ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第115話「なつよ、笑って母になれ」【第20週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)が東洋動画で働き、夫の坂場(中川大志)が翻訳の仕事をしながら家事を行う新婚生活が始まった。アニメブームの中、なつは「魔法少女アニー」の原画を任される。その一方、妊娠して仕事に取り組む茜(渡辺麻友)を見て、働きながら出産することの難しさを実感する。そのころ、声優プロダクションの仕事が多忙になった咲太郎(岡田将生)のもとに、川村屋の野上(近藤芳正)が神妙な顔で訪ねてきて…。

115話ネタバレ

柴田家

<昭和42年の春 なつは結婚しました。>

坂場家

昭和42(1967)年 夏

<それから数か月がたち 季節は また夏になりました。>

<2人は 西荻窪という町に 家を借りて住んでいます。>

坂場「早く食べないと遅れるよ。 あとは やっておくから。」

なつ「うん。 もう終わる。 あ~ おいしそう。 頂きます!」

<どうですか あの不器用なイッキュウさんが こんなに 器用に朝食を作れるのです。>

坂場「はい これ弁当。」

なつ「ありがとう。 ねえ また指切ったの?」

坂場「うん。」

なつ「気を付けてよ。」

坂場「アニメーターじゃなくて よかった。」

なつ「どんな仕事をしても そんなに指を切る人はいないから。」

坂場「はい… 頂きます。」

<まあ 人間 そう簡単には変わりません。>

坂場「うん!」

なつ「おいしい。」

坂場「ね。」

東洋動画スタジオ

テレビ班 作画室

<なつの今の仕事は 専ら テレビ漫画の原画を描くことです。 今 描いているのは『魔法少女アニー』。>

「奥原さん これ チェックお願いします。」

なつ「はい。」

<仕事をする時の名前は 奥原なつのままです。>

なつ「ここ まつげを 目の向きに合わせて直してみて。 はい。」

「はい。」

<それから 茜さんも 今は 動画ではなくて原画を描いています。 そして もう一つ 茜さんには変化が。>

茜「あっ。」

なつ「ん?」

茜「動いた。」

なつ「本当?」

茜「まるで 魔法にでもかけられたみたいよ。 私が 絵を動かそうとすると こっちも それをまねして よく動くみたい。」

なつ「へえ~。 キラキラバンバン キラキラアニー! って 仕事も出産も 魔法で終わったら楽だけど きっと つまらないですよね。」

茜「そっちは どうなの?」

なつ「えっ?」

茜「子どもは考えないの?」

なつ「今すぐは無理ですよ。」

茜「でも 考えるなら早い方が…。」

なつ「子どもができたら 生活がどうなるのか 想像ができなくて。」

茜「イッキュウさんは まだ家で 翻訳の仕事をしてるの?」

なつ「はい…。 出版社にいる大学時代の知り合いから 翻訳の仕事をもらって それを コツコツ書いてます。 脚本の勉強にもなるって。」

中庭

桃代「でも 安定はしてないんでしょ?」

なつ「うん… 仕事が ずっとあるわけじゃないから。 今のところは 家事は ほとんど やってくれてるけど 子どものことまでってなると…。 だから 今は 子どものことは考えられません。」

桃代「欲しくないの?」

なつ「いや そりゃ 欲しいけど… 今は ぜいたくよ 子どものことを考えるのは。」

茜「いや ぜいたくという考えは おかしいわよ。 子どもを産んで育てることは 自然なことでしょ。」

桃代「じゃ やっぱり 女が働くことの方が不自然なの?」

なつ「それも おかしいでしょ。」

茜「でも 実際には そうなってるわよね 子どもができた途端に。」

なつ「それじゃ 茜さんは やっぱり辞めちゃうんですか?」

茜「経済的なことを考えれば 辞めたくはないけど 子どもは 一人じゃ育たないしね。 一応 赤ちゃんから預けられる 保育園っていうのを探してるんだけど あったとしても そこも入れるかどうか… 数が少ないから。」

なつ「そうですか…。 子どものために テレビ漫画を作ってるのに 自分の子どもが生まれたら作れないなんて 納得いかないですよね。」

<なつたちの結婚生活は まだ先の見えない 開拓の途上になるようでした。>

風車プロダクション

<そして まだ独身でいる この人の将来も…。>

咲太郎「また 声を聞いてみて下さいよ。 連れてきますから。 はい お願いします。 それじゃ また よろしく どうぞ!」

咲太郎「あ… いやいやいや すみません テレビ漫画の放送が増えましてね 声の仕事も そっちが どんどん増えてきまして 声優は もう引っ張りだこなんですよ。」

野上「いや 成功してるんですね。 ご立派なことです。」

咲太郎「あ~ いやいや まだ貧乏暇なしです。 あ… それで 何でしたっけ? 野上さんのご用件は。」

野上「いや そう大した話じゃないんです。 風車は どうされるのかなと思って。」

咲太郎「風車が何か?」

野上「立ち退きの話 聞いてないんですか?」

咲太郎「立ち退き!? あの店がですか?」

野上「あのあたり一帯が取り壊されて デパートのビルが建つことになったと 聞いておりますが。」

咲太郎「本当ですか? 風車は もう 営業できないということですか?」

野上「そういう話 聞いてないんですか?」

咲太郎「はい… 最近は忙しくて ほとんど 風車には 帰っていなかったもので…。」

野上「実は 我が川村屋も 今度 ビルに建て替えることになったんです。 今の店舗を取り壊して 近代化を図ることになったんです。 聞いてます?」

咲太郎「えっ? あ はい… ビルになるんでしょ。」

野上「その話は やはり聞いてらしたんですね。」

咲太郎「えっ?」

野上「それで あなた どう動くおつもりですか?」

咲太郎「動く?」

野上「いつまで待たせるおつもりかって 聞いてるんですよ。」

咲太郎「待たせる?」

野上「とぼけても無駄ですよ。 あなた方が陰で… そういった その… ご関係であるってことは 察しがついてるんです。 いつまで そうやって陰で コソコソ コソコソしてるつもりなんですか!」

野上「それとも 何ですか? このまま一生 けじめを おつけにならない おつもりですか!? それでは あまりにもあの人がふびんです。 もう若くないんですから!」

咲太郎「野上さん… 野上さん ちょっと落ち着いて下さい。」

野上「この風車が無くなるという機会に 是非 一度 ご自身の身の振り方を お考えになってはいかがでしょうか?」

咲太郎「あっ それ まだ…。」

野上「あちちち…!」

咲太郎「あっつ あっつ…!」

おでん屋・風車

1階店舗

亜矢美「♬『真夏の海は 恋の季節なの』 あら 茂木社長 早いね いらっしゃい。」

茂木「いやいや もう こんなに暑くちゃさ いつまでも社長室なんかに 籠もってられませんよ。」

亜矢美「ハハ それで 熱々のおでん 食べに来て下さるんだから ありがとう ありがたい。」

茂木「ママの顔見たら 少しは 涼しくなるんじゃないかと思ってね。」

亜矢美「私は お岩さんか。」

茂木「お岩さんよりも寂しいんでしょ 最近のママは。」

亜矢美「えっ?」

茂木「なっちゃんもいなくなって ここには もう たまの里帰りぐらいしか来ないでしょう。」

亜矢美「寂しくなんかありませんよ ちっとも。 子どもを立派に育て上げた お母ちゃんの気分を味わってますよ。」

茂木「へえ~。 はあ~… なっちゃんのいない この店のビールは 心なしか 気の抜けた味がするね。」

亜矢美「じゃ 試してみます? お~! ハハハハ…。」

茂木「おいおい…。」

坂場家

台所

(戸が開く音)

坂場「あ…。」

なつ「ただいま。」

坂場「お帰り。」

なつ「あ~ いい匂い!」

坂場「ちょうど完成したところだよ。 今日は 2時間でできた。」

なつ「2時間も?」

坂場「うん。」

なつ「あっ 牛乳使ったんだ?」

坂場「君のお母さんのノートにあった料理を 作ってみたんだけど。」

なつ「へえ~。」

リビング

坂場「はい。」

なつ「あ~ 懐かしい…。 頂きます。」

坂場「うん。 どう?」

なつ「おいしい。」

坂場「子どもの時に食べた味と同じ?」

なつ「うん 近いかも… でも 牛乳が違うからしょうがないでしょ。 これでも 十分おいしい。」

坂場「そうか… 牛乳だけじゃないかもしれないな これ。 う~ん…。 いや 大体 君のお母さんのノートには 塩は少なめとか しょうゆは多めとか やや少なめとか やや多めとか 曖昧な表現が多すぎるんだよ。 これじゃ どうやって計量していいのか 分からないよ。」

なつ「しょうがないでしょ 農家で忙しい中 作ってきたんだから。 いちいち計量なんてしてらんないわ。 明日は 私がやる。」

坂場「頂きます。」

おでん屋・風車

1階店舗

茂木「で どうすんの?」

亜矢美「ねえ 社長 どっか いい物件知りませんか?」

茂木「えっ 僕が探していいの?」

亜矢美「探して頂けるなら助かるわ。 あっ でも あんまり高い所ダメだからね。」

茂木「でもさ 咲太郎君に頼んだらどうだい? 最近は もうかってんでしょ?」

亜矢美「咲太郎には甘えたくないわ。」

茂木「どうして? 親孝行してもらいなよ これからは。」

亜矢美「親じゃないもん。 あの子の負担にはなりたくないの。」

茂木「負担だなんて思わないって。」

亜矢美「大人になったんだから 私たちは 対等でいたいのよ。」

茂木「咲坊は幸せだな そこまで愛されて…。」

亜矢美「ハッ… なっちゃんが幸せになったでしょ。 だから これで やっと 次は 咲太郎の番だからね。 ♬『まっ赤に燃えた』 もう一回いきやすか…。」

茂木「振るなよ 振るなよ 振るなよ ハハハ…。」

亜矢美「あ~っと…!」

茂木「いや 振るなよ…。」

坂場家

台所

なつ「茜さんが 会社を辞めるかもしれないって。」

坂場「えっ… 子どもが生まれるから?」

なつ「そう。」

坂場「まあ 当然 そういうことになるだろうな。」

なつ「それって 当然なの?」

坂場「当然 そういう悩みは 抱えるだろうってことだよ。」

なつ「うちは どうするの?」

坂場「ん?」

なつ「もし そうなったら…。」

(ブザー)

なつ「誰だろう?」

坂場「あっ いい。」

玄関

坂場「は~い。」

咲太郎「よう。」

坂場「お義兄さん。 どうぞ。」

咲太郎「うん。」

なつ「お兄ちゃん。」

咲太郎「悪いな こんな時間に。」

坂場「いやいや… どうぞ どうぞ。」

なつ「入ってよ。」

リビング

咲太郎「じゃ ちょっと邪魔するぞ。 あっ これ 適当に甘いもん買ってきた。」

なつ「えっ ありがとう。」

坂場「ありがとうございます。」

なつ「どうしたの?」

咲太郎「ちょっと話があってな。」

なつ「話?」

咲太郎「うん… ちょっと大事な話だ。」

なつ「大事な?」

咲太郎「なつ お前 風車の立ち退きの話は聞いてるか?」

なつ「立ち退き!?」

咲太郎「やっぱり知らないか。 母ちゃんは それを黙ってるんだな 俺たちに心配かけまいとして。 水くさいだろう? そこでだ 俺も考えた。 どうすればいいのか…。 どうすれば 母ちゃんは この俺を頼ってくれるのかと…。

なつ「頼る?」

咲太郎「ああ それで 俺も けじめをつけることにした。」

なつ「けじめ?」

咲太郎「結婚する。」

坂場「結婚?」

なつ「誰と?」

咲太郎「川村屋のマダムだ。」

回想

光子「いつも ありがとうございます。」

回想終了

なつ「ええ~っ!」

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