ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第119話「なつよ、笑って母になれ」【第20週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)と坂場(中川大志)の新居に茜(渡辺麻友)と下山(川島明)、神地(染谷将太)が訪ねてきた。聞けば、東洋動画の社長・山川(古屋隆太)が妊婦である茜に対し、産後は契約社員として働いてもらいたいと言ってきたのだと言う。神地は、そんな会社のやり方に対してどうしても納得がいかず、憤る気持ちをなつたちにぶつける。そんなある日、なつは仕事中に貧血を起こし倒れてしまう。用心のため病院にいくと…。

119話ネタバレ

坂場家

リビング

坂場「お義兄さんは大丈夫?」

なつ「光子さんが ついててくれてるから…。 だから 亜矢美さんも 安心して旅立っていったんだと思う。 きっと 新しい自分と出会うために…。 私は そう信じてる。」

坂場「うん…。」

(ブザー)

なつ「あっ 誰だろ?」

玄関

なつ「は~い。 神っち… 茜さん 下山さん。」

下山「こんばんは。」

茜「急に ごめんなさい。」

神地「イッキュウさん いる?」

なつ「うん。 あ… どうぞ 上がって。」

坂場「お~… いらっしゃい。」

神地「イッキュウさん 元気そうだね。」

坂場「お久しぶりです。」

下山「久しぶり。」

坂場「えっ 何かあったの?」

神地「あ… あっ もう あったなんてもんじゃありませんよ! もう腹が立って 腹が立って!」

下山「おいおい 神っち 君が興奮することじゃないよ。 これは うちの問題なんだから。」

なつ「茜さん 何かあったんですか?」

茜「もう… 嫌になっちゃった。」

なつ「えっ? どうしたの?」

リビング

坂場「それは 今日言われたの?」

茜「うん… 今日が最後だから 明日から産休を取る挨拶に行ったの。 そしたら 山川社長に…。」

坂場「産休明けからは 契約にしろって?」

茜「うん…。」

回想

茜「それは… クビってことですか?」

山川「クビなんて 誰が言ったの? 君の働きたいという意思をくんで 契約にしたいと言ってるんですよ。」

茜「でも 契約というのは… もう社員ではないということですよね? 給料ではなくて 作画1枚につき いくら ということになるんですよね?」

山川「その方が 出勤時間はフリーになるし あなたは 仕事ができるんだから 頑張れば 給料より かえって高く取れるでしょう。 あえて 契約を望むアニメーターも 増えてるんですよ うちには。」

回想終了

神地「実質 クビでしょ クビ!」

なつ「ちょっ… 神っち 落ち着いて。」

神地「落ち着いていられるか これが!」

下山「おいおい 人んちだよ ここは。 労働組合じゃないんだから。」

神地「あ… あっ ごめん なっちゃん。」

なつ「いいけど…。」

茜「私 辞めるわ。」

なつ「えっ?」

茜「せっかく 原画にもなったし できれば 仕事は続けたかったけど そこまでして 働くことはないって思ったの。」

下山「僕も そう思う。」

茜「私や なっちゃんのあとに入ってきた 女子社員なんて 入社する時に 子どもができたら退職しますって 誓約書を書かされたっていうもの。 まあ そうさせるのは うちの会社だけじゃないみたいだけど。 しかたないのよ。 世の中が まだ そうなんだから。」

神地「これじゃ アニメーターの未来は暗いよ。 それも これも アニメーションの地位が低すぎるからだ。 その地位を上げなければ しょうがないんだよ。」

茜「なっちゃん ごめんね なっちゃんにまで心配かけて。」

なつ「茜さん こっちこそ 何の力にもなれなくて…。」

テレビ『私 お姉ちゃまに ケーキを作ったの』。

『まあ うれしい。 でも どうして?』。

『だって 今日は お姉ちゃまの誕生日じゃないの。 あっ… あ~! (泣き声)』。

『キラキラバンバン キラキラアニー!』。

『うわ~!』。

なつ「人間は 魔法を使えないもんね…。」

坂場「ん?」

なつ「何でもない…。」

東洋動画スタジオ

テレビ班 作画室

<それから 茜さんに替わって なつと同じ班の原画に入ったのは 堀内さんでした。>

なつ「堀内さん。」

堀内「うん?」

なつ「堀内さんの奥さんは 仕上課にいたんですよね?」

堀内「そうだよ。 モモッチの後輩。」

なつ「あの やっぱり 入社する時に 子どもができたら退職するって 誓約書を書いたんですか?」

堀内「そうみたいだね。 でも もともと 結婚したら 辞めようと思ってたらしいから。」

なつ「何の問題もなかったわけですか…。」

堀内「うん。 あ… なっちゃんとは うちの奥さんは違うよ。 うちの奥さんは 良妻賢母のタイプだから。」

なつ「ふ~ん…。」

堀内「うん。」

なつ「私とは違うんですか。」

堀内「あっ そういう意味じゃなくて…。」

なつ「じゃ どういう意味ですか?」

堀内「あの だから… ごめん あの そういう… 違う違う ごめん…。」

なつ「お邪魔しました。」

堀内「あっ 違う違う あれ…。」

下山家

なつ「かわいい…!」

神地「女の子ですか。」

下山「ハハハ… かわいいでしょう?」

神地「茜ちゃんに似ることを祈りますよ。」

下山「それだけが心配。」

なつ「名前は?」

下山「あっ…。」

なつ「あ~。」

坂場「アキコか。」

下山「違う。 メイコっていうの。 命名 明子。」

なつ「それが やりたかっただけ?」

下山「いや 違うよ。 頭脳明せき 風光明美の明。」

なつ「明ちゃんか…。 茜さんは もう仕事に復帰することは 考えてませんか?」

茜「うん 今はね。 でも 仕事を辞めて 本当によかったと思ってるわ。 この子を置いて会社に行くなんて… 今じゃ とても考えられないもの。」

なつ「そうですか…。 でも 本当にかわいい…。」

茜「なっちゃんだよ…。」

なつ「どうしたの…。」

茜「眠たいのかな?」

なつ「かわいい…。」

東洋動画スタジオ

<そして ひとつきがたち 秋も深まる頃。>

テレビ班 作画室

なつ「(ため息)」

堀内「ん? どうかした?」

なつ「あ… ちょっと気持ち悪くて…。」

堀内「えっ! ちょっと 本当に大丈夫かい?」

なつ「うん。」

荒井「どないしたんや?」

なつ「何でもありません。」

堀内「気分が悪いって。」

荒井「何や 風邪か?」

なつ「違います。」

堀内「働き過ぎですよ。 いくら テレビで 止め絵が多いっていったって 一日に 10カットは描かないと 間に合わないんだから。」

荒井「しゃあないやろが!」

なつ「ちょっと 外の空気 吸ってきます。」

堀内「うん。」

荒井「遅れてまうねんで。」

堀内「おおっ 大丈夫か!?」

荒井「大丈夫か? なっちゃん? ちゃんと休まなあかんて。」

堀内「あ… なっちゃん! 水 お願いしていい?」

荒井「はよ はよ はよ…!」

病院

なつ「ありがとうございました。」

看護師「お大事に どうぞ。」

坂場家

なつ「ただいま。」

坂場「あっ お帰り。 早かったね。」

なつ「うん…。 また切ったの?」

坂場「大丈夫 もう慣れたから。」

なつ「指切ることに慣れないでよ。」

坂場「そっちは どうしたの? 顔色が あんまり よくないみたいだけど。」

なつ「うん…。 ちょっといい?」

坂場「うん。」

なつ「今日 仕事中に貧血を起こして 倒れてしまったの…。」

坂場「えっ?」

なつ「あ… それは 大丈夫なんだけど 念のため お医者さんに診てもらったら…。」

坂場「うん。」

なつ「できてた。」

坂場「えっ?」

なつ「赤ちゃん。 赤ちゃんが… できてた。」

坂場「よかったじゃないか。」

なつ「本当に? イッキュウさんは うれしいの?」

坂場「うれしいよ… 君は うれしくないのか?」

なつ「うれしいよ…。 お医者さんに言われた瞬間は 信じられないくらい うれしい気持ちになった。 だけど… どうするの? 私は 仕事を辞めるわけにはいかないよ…。 辞めたくないよ…。」

坂場「できた以上は 産まないという選択肢は ないだろ 僕たちに。 だったら そんなことは とても小さなことだ。 君が 母親になるってことに比べたら。」

なつ「やっぱり… 仕事より大事ってことよね。」

坂場「そうじゃない…。 産むと覚悟を決めて 仕事のことは 考えればいいと言ってるんだ。 一緒に考えよう。」

なつ「一緒に?」

坂場「うん。 幸い 僕は 今 家で働いてるわけだし 君を支えることができると思うんだ。 たとえ 契約になったとしても 仕事を続けたいなら 好きなだけ続ければいい。]

坂場「それで もし 会社が その後の君の仕事を認めれば 次からは ほかの女性も 働きやすくなるだろ? 子どもを育てながら アニメーターを続ければ そういう戦いにもなるんだ。 君が その道を作るんだよ。」

なつ「道を作る…。」

坂場「そういう開拓精神が 君には あるはずだろ。 一緒に頑張ろう。 な。」

なつ「じゃあ… 喜んでいいのね!」

坂場「当たり前だ。」

なつ「ありがとう。」

坂場「こちらこそ。」

<おめでとう。 なつよ 笑って母になれ。>

モバイルバージョンを終了