あらすじ
なつ(粟野咲莉)が通う小学校で漫画映画の上映が行われることに。スクリーンに映し出されるアメリカのカラーアニメーション映画にひきこまれ、上映が終わってもなかなか立ち上がれないなつ。上映後、同級生で絵が上手な天陽(荒井雄斗)に興奮気味に感想を伝えると、家に絵の具があるから今度遊びに来ないかと誘われる。
11話ネタバレ
小学校
<なつよ さあ 始まる。>
(笑い声)
(拍手)
夕見子「ねえ 何してるの?」
なつ「えっ?」
夕見子「もしかして 漏らしたの? 私は ずっと我慢してた。 先 行くね。」
なつ「天陽君! あっ 郵便屋さん。」
正治「やあ 君は 柴田牧場さんとこの…。 天陽の友達だったのか。」
なつ「はい。」
天陽「えっ 知ってるの?」
正治「うん 手紙を… ね。」
なつ「あの まだ来ませんか?」
正治「うん… そうみたいだね。 来たら すぐに届けるから。」
タミ「あなたが 東京から来た子ね。」
なつ「はい。」
タミ「いろいろ 大変なことが あったんでしょうね。 天陽と 仲よくしてやってね。」
なつ「はい。 あっ 面白かったね!」
天陽「えっ?」
なつ「漫画映画 すごく面白かった!」
天陽「あっ そうか。」
なつ「天陽君は 面白くなかった?」
天陽「そんなことないよ。 前見たのは 白黒だったけど 今のは天然色だったし。」
なつ「色が すごくきれいだった。」
天陽「やっぱり アメリカの映画は進んでるなあ。 兄ちゃんが言ってたけど アメリカには ディズニーっていう漫画映画が あるんだって。 それは すごいらしいよ。」
なつ「わあ~ 見てみたいなあ。」
正治「しかし 恐ろしい爆弾も作れば ああいうものも作るんだからな。 学校も すぐに アメリカ礼賛っていうのは どうなんだろうな。 さんざん 鬼畜米英だと教育しといて。」
タミ「あなた…。」
剛男「なっちゃん 帰ろう。 夕見子は?」
なつ「お便所。」
剛男「あ~…。」
富士子「あら 郵便屋さん。」
正治「こんにちは 柴田さん。」
タミ「山田の家内です。 いつも 学校で 息子が なつさんと仲よくしてもらってるようで。 ありがとうございます。」
富士子「こちらこそ。 なんだ そだったの?」
なつ「はい。」
正治「それじゃあ これで。」
タミ「さようなら。 失礼します。」
なつ「さようなら。」
天陽「今度 うちに 遊びに来いよ。」
なつ「えっ?」
天陽「うちに 絵の具があるんだ。 絵を描かしてやるよ。」
なつ「本当に? いいの? 行っても。」
天陽「いいよ。」
正治「天陽 あんな家に 柴田さんのお嬢さんを 招くなんて 失礼だぞ。」
なつ「ダメですか?」
富士子「あの~ もしよかったら 是非。」
正治「あっ… そりゃ もちろん うちは構いませんんが。」
タミ「はい… いつでも どうぞ。」
道中
<それから ある日のこと。 学校帰りに なつは 天陽君と一緒に その家に向かいました。>
<天陽君の家は 本当に小さな家でした。>
山田家
玄関前
天陽「こっちは 馬小屋なんだ。 行こう。」
なつ「うん。」
馬小屋
なつ「わあ~ すごい! これ 天陽君が描いたの!?」
天陽「違うよ。 それは 兄ちゃんが描いたんだ。」
なつ「お兄さんが?」
天陽「うん。 中学で 美術部に入ってるんだ。 兄ちゃんの絵 すごいだろ。 父さんも 兄ちゃんのために 無理して 絵の具を買ってるんだ。 僕の絵は こっちだよ。 ここで 死んだ馬を描いたんだ。」
なつ「だから黒いの?」
天陽「そういうわけじゃないよ。 黒い絵の具は 赤や黄色よりも安いんだって。 それに あんまり 兄ちゃん使わないから。 何か描く? ここにあるやつ どれ使ってもいいって 兄ちゃんに言われてるんだ。」
なつ「あっ… いいよ。」
天陽「せっかく来たのに。 遠慮するなよ。 絵 描きたいんだろ?」
なつ「また 今度。 今日は 天陽君の絵を 見られただけで満足。」
天陽「そっか。」
道中
天陽「貧しくて驚いたろ?」
なつ「そんなことないよ。 私なんて ずっと家がなかったんだから。」
天陽「そっか。」
なつ「頂きます! 冷たくておいしい!」
天陽「畑が うまくいかないから… ダメなんだ。」
なつ「えっ?」
畑
天陽「ここは いくら耕しても 土が悪いと言われて父さんは もう 耕す気もなくなってしまったんだ。」
なつ「そうなの?」
天陽「それで 父さんは なんとか 郵便局の仕事を見つけて 母さんは 近くの畑を手伝って 食べ物をもらってくるんだ。 それも 今年の秋までのことかもしれない。」
なつ「えっ?」
天陽「ここを離れるんだ。」
なつ「東京に戻るの!?」
天陽「分からない。 だけど もう ここにはいられないよ。 作物が育たなければ 捨てるしかないよ。 こんな土地。 せめて あの馬が生きていたらな…。 俺の力じゃ どうすることもできない! 農家にとって 馬の力は欠かせないんだ。 悔しいけど…。 チクショー! チクショー!」
なつ「天陽君は 農家をやりたいの?」
天陽「そりゃ やりたいよ! 俺は ここで生きたいんだ! ここが好きなんだ! この土に勝ちたいよ! 勝ちたい…。 くそ~! くそ~! くそ~! あ~!」
柴田家
牛舎
悠吉「それは 拓北農兵隊だな。」
なつ「たくほくのうへいたい?」
剛男「何ですか? それ。」
悠吉「ああ 剛男さんは 戦争に行ってて知らんでしょう。 つまり 日本の政府が 空襲で 家をなくした東京の人に 北海道へ行って開拓しなさいよと 勧めたってわけです。 なっちゃんの同級生も そんで ここ 音問別(おといべつ)に来たんだべ。」
菊介「けど 今更来たって まともな土地は みんな 開拓されたあとで もう人が住んでるのさ。」
剛男「そうだろうねえ。」
菊介「結局 たくさんの人が もう東京に帰ったって話だけどね。」
悠吉「しかたないもな。 食うもんが作れないんじゃ。」
剛男「なっちゃん?」
泰樹「ん? 何だ。」
なつ「あの… お願いがあります。 天陽君を助けて下さい。」
泰樹「何 助ける?」
なつ「畑で 収穫ができるように。」
泰樹「親は とっくに諦めてるんだべ。」
なつ「天陽君は それでも やりたいって言ったんです。 はっきり言いました。 土に勝ちたいって。」
泰樹「勝ちたい?」
なつ「はい。 土に勝たせてあげて下さい!」
泰樹「無理だ。 土が悪すぎる。」
なつ「見てもないのに…。」
泰樹「見んでも分かる。」
なつ「おじいさんだって 最初は そうだったんでしょ? 土が悪かったって。」
泰樹「なつ もう ほっといてやれ。」
なつ「うそつき! おじいさんは 自分の力で働いていたら いつか 必ず 誰かが助けてくれるもんだ って言ったじゃない! 天陽君は 一人で頑張ってるの! 一人で 土を耕してるの! 天陽君を 誰が助けてくれるの!?」
剛男「なっちゃん 分かったから… ねっ。」
居間
剛男「なっちゃんは?」
富士子「部屋に行ったみたい。」
剛男「そう… 天陽君が離農しそうだって 本当に心配してるんだなあ。」
富士子「天陽君 いなくなるの?」
剛男「うん。 それで お義父さんに 助けてくれって 泣いて頼んでたよ。」
富士子「あの子が そんなことを?」
剛男「優しい子だよ。」
夕見子「好きなのさ その子が。」
剛男「好きなのか… えっ?」
夕見子「あの子の好きな人でしょ 天陽君って。」
富士子「そうなの? やっぱり。」
剛男「いや いや いや いや 好きとか 嫌いとか そういうもんでは ないでしょう。 まだ子どもなのに。」
夕見子「はあ~?」
富士子「それは あなたが まだ子どもだと思いたいだけでしょう。」
剛男「えっ?」
富士子「好きになった小と離れたくないのね きっと。」
剛男「いやいや それは 君が 逆に あの子を子どもに見てるだけだと思うな。 あの子の怒りは そんな単純なものでは なかったような気がする。」
泰樹「じゃあ どういうもんだ?」
剛男「ああっ… あの もっと… この世界に対する 何と言うか こう…。」
泰樹「あの子の怒りは あの子にしか分からん。 それでいい。 ごちゃごちゃ言うな。」
剛男「ごちゃごちゃ言わせてるのは お義父さんでしょう。」
泰樹「何?」
剛男「あっ いや…。」
なつ<私にも そんなことは分かりませんでした。 自分が なぜ あんなに怒ったのか>
語り<なつよ おれは お前が 今 少なからず幸せだからだ。>