ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第120話「なつよ、笑って母になれ」【第20週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)の妊娠がわかる。夫の坂場(中川大志)と喜んだのもつかの間、これからの生活のことや、産後も仕事を続けていけるのか不安になるなつ。生活は自分が支えていくと言う坂場に背中を押され、なつは働き続けたいというアニメーターとしての仕事への思いを再確認する。下山(川島明)と神地(染谷将太)に妊娠のことを知らせるなつ。たとえ契約社員になっても働くつもりだと伝えると、二人は…。

120ネタバレ

坂場家

リビング

なつ「赤ちゃん。 赤ちゃんが… できてた。 私は 仕事を辞めるわけにはいかないよ…。 辞めたくないよ…。」

坂場「たとえ 契約になったとしても 仕事を続けたいなら 好きなだけ続ければいい。 それで もし 会社が その後の君の仕事を認めれば 次からは ほかの女性も 働きやすくなるだろ? 子どもを育てながら アニメーターを続ければ そういう戦いにもなるんだ。 君が その道を作るんだよ。」

なつ「道を作る…。」

東洋動画スタジオ

映画班 作画課

下山「おっ なっちゃん 元気してた?」

なつ「はい。」

下山「あ… 僕に 何か用?」

なつ「うん… あっ 神っちも ちょっと。」

神地「えっ どうかしたの?」

なつ「ちょっとだけ いい?」

休憩室

神地「本当か!」

なつ「うん。 今 3か月だって。」

下山「なっちゃん!」

神地「あ… ひょっとして イッキュウさんの子?」

なつ「ひょっとしなくても そう!」

神地「あ…。」

下山「おめでとう なっちゃん!」

なつ「ちょっと 声が大きいです。 会社には これから言うつもりだから。」

下山「ああ… で 何て言うの?」

なつ「仕事を辞めるつもりはないから それを言うつもり。」

神地「そうだよな。」

なつ「私は たとえ契約になっても 仕事を続けるつもりだから そのことを 先に 2人に言っておこうと思って。」

神地「イッキュウさんは 何て?」

なつ「イッキュウさんも たとえ契約になっても 続けていいと言ってくれてるから。」

神地「よし 一人で言いに行くことはないよ。 みんなに話そう!」

なつ「ん? みんな?」

映画班 作画室

なつ「ねえ ちょっと 神っち?」

神地「仲さん! ちょっといいですか?」

仲「うん?」

なつ「えっ ちょっと待って。」

仲「どうしたの?」

神地「なっちゃんが できたそうです。」

仲「うん… 『魔法少女アニー』?」

神地「アニーのことじゃありません!」

なつ「子どもです!」

仲「えっ…。」

なつ「あの… 子どもが できたんです。」

神地「そうです!」

仲「赤ちゃん… 赤ちゃんか!」

なつ「あの ちょっと 声が…。」

仲「それは おめでとう なっちゃん!」

なつ「ありがとうございます…。」

下山「お~い みんな なっちゃんに 赤ちゃんができたぞ! おめでとう!」

(拍手と歓声)

なつ「ありがとうございます…。」

神地「それで なっちゃんは 仕事を辞めるわけにいかないんです。 アニメーターを続けたいんです! イッキュウさんは いまだ 定職には 就いていませんから 大変なんですよ。」

仲「そうか…。 なっちゃんは 辞める気はないんだよね?」

なつ「はい。」

神地「なっちゃんは たとえ契約になっても いいと言っています。」

下山「うちの奥さんは それで辞めましたけども なっちゃんの場合は しかたなく契約でいいと言ってるんです。」

神地「それでいいんですか!? 仲さんは。」

井戸原「おいおい おいおいおい…。 何が言いたいんだよ? 仲ちゃんに どうしろってんだい?」

神地「仲さんだけに どうこうしろと 言ってるわけじゃありません。 これは アニメーター全体の存在価値が 問われているんです! なっちゃんが ここまで経験を積んで ここで習得してきた技術は そう簡単に 代わりが 見つかるものではないでしょう!」

神地「そのなっちゃんを 社員じゃなくて 契約にするということは 会社が 全く その価値を認めないということです! それで いいんですか!? 今 なっちゃんを守れるのは 男でも女でもない 俺たち アニメーターの仲間しか いないんですよ。」

なつ「神っち…。」

仲「よく分かったよ。 なっちゃんが望むなら 僕は いくらでも協力するよ。」

なつ「仲さん…。」

井戸原「君の本心は どうなんだ? 契約でいいのか?」

なつ「嫌です。 できれば このまま続けたいです。 ほかの女性アニメーターにも そういう道を作りたいんです!」

仲「よし。 それじゃ それを みんなで言いに行こう。」

神地「そうこなくちゃ! テレビ班にも声かけてきます。」

井戸原「どうやって交渉するんだ?」

仲「僕に考えがある。」

なつ「えっ…。」

社長室

(ノック)

山川「はい。」

なつ「失礼いたします。」

山川「ちょっ… おい… 何なんだ? 君たちは一体。」

仲「山川社長 作画課の奥原なつより ご報告があります。」

山川「何ですか?」

なつ「私は この度 その… 子どもができました。」

山川「それは… おめでとうございます。」

なつ「ありがとうございます。」

山川「分かりました。 産休を取りたいということですね?」

神地「それだけじゃないんです! その産休後に 契約に切り替えろなどと 言わないでもらいたいんです!」

下山「うちの妻の時のように。」

なつ「どうか お願いします!」

山川「君は 何なんだ? これは 一体どういうつもりですか? ほかの人を巻き込んで まるで 組合のデモじゃないですか!」

仲「そう思って頂いても 差し支えありません。」

山川「仲さん 井戸原さん あなたたちまで いつから組合員になったんですか?」

井戸原「我々 アニメーターは 結束の固さを信条に 仕事をしております。 これは 組合を超えた 我々一人一人 個人的な支援と お考え頂いて結構です。」

仲「我々は いちアニメーターとして 奥原さんの意志を尊重したいと思います。 奥原なつを契約にするなら 我々全員を契約にして下さい。」

「お願いします!」

「お願いします!」

「お願いします!」

「お願いします!」

「お願いします!」

「お願いします!」

山川「おい… ちょっと待ってくれ! 契約というのは なにも 意地悪で持ちかけてるわけじゃないんだ。 働きやすいと思って 提案してるだけなんだよ。」

なつ「出勤時間が自由になるからですか?」

山川「そうです。 赤ちゃんがいれば どうしたって 長くは働けなくなる。 以前と同じ責任を背負えば どうしたって 周りに迷惑がかかるでしょ。 それこそ 結束を乱すことになるでしょ。 だから 契約にすれば 自由に時間を使って働けて その方が楽でしょ。」

なつ「私は 楽がしたいわけじゃありません。 お金が欲しいわけじでもありません。 仕事で もっともっと成長していきたいんです。 いい作品を作りたいんです! どうして それが 子どもができると できないんでしょうか? 今まで当たり前だと思っていたことを 会社から望まれなくなることが 一番苦しいんです!」

山川「現実問題として 望んでも 期待には応えられないでしょう。 ここまで来たら はっきり言うけど 君には 次の作品で 作画監督に なってもらうつもりだったんだよ。」

なつ「えっ…。」

仲「テレビで作監を?」

山川「そう。 作画全体の責任を持ってもらい 演出に近い責任を担うことになる。 奥原さんは その作画監督に 女性としては初めて 抜てきする予定だったんだ。 だから 妊娠の話を聞いた時は 正直 がっかりしたんだよ。 いや おめでたい話だからね がっかりと言っちゃ失礼だけど。」

なつ「やらせて下さい。 是非 やらせて下さい!」

仲「なっちゃん…。」

井戸原「激務だよ 作画監督は。」

下山「本当に大丈夫? なっちゃん。」

なつ「はい。 大丈夫です。 やります! やってみせます!」

山川「子どもを産んでも できると言うんだね?」

なつ「はい… できます。」

山川「よし 分かった。 それなら 君の意志を尊重しよう。 引き続き 社員として頑張ってくれたまえ。」

神地「やった~!」

井戸原「よ~し 頑張れ! ハハハハ…。」

(拍手)

坂場家

リビング

(電話の呼び鈴)

坂場「はい 坂場です。」

なつ『もしもし 私。』

坂場「ああ どうした?」

なつ『会社に話したんだわ。 今までどおり 産休明けも働けるようになったから。』

坂場「そうか… それは すごいな すごいことをやったな。」

なつ『私じゃなくて みんなが…。 みんなが 私の背中を押してくれて…。』

坂場「うん。」

なつ『それでね…。』

坂場「うん?」

なつ『あ… いいわ。 これは 帰って ゆっくり話す。 とりあえず 大丈夫だから。 うん。 じゃあね。』

東洋動画スタジオ

廊下

なつ「よし…。 母さん 頑張るぞ!」

<なつよ… 予測もできない未来が 君を待っている。 恐れずに 来週に続けよ。>

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