ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第131話「なつよ、優しいわが子よ」【第22週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)が、茜(渡辺麻友)の家に預けている優を迎えに行く。すると茜の娘の明子の誕生日を一緒に祝いたいから家に帰りたくないと言われる。さらに、茜と一緒がいいと言われ、言葉を失うなつ。帰宅した坂場(中川大志)に、ずっと優を茜に預けてきたことの不安を口にするなつ。その夜、優のいない布団の中で眠れずにいたなつだったが、そこへ突然、電話が鳴り響き…。

131ネタバレ

下山家

玄関

なつ「さあ 優 帰ろう。 えっ?」

優「帰らない。」

リビング

茜「今日は 明子の誕生日だからよ。」

なつ「あっ そうか。 明ちゃんおめでとう。」

明子「ありがとう。」

優「優ちゃんも お誕生日する!」

茜「あ…。」

なつ「ママは帰っちゃうよ?」

優「いいよ。 茜さんと一緒にいる。 茜さんと一緒がいい。」

坂場家

リビング

(戸が開く音)

坂場「ただいま。」

なつ「お帰り。」

坂場「どうした? 優は?」

なつ「いない。」

坂場「えっ?」

なつ「茜さんの家に泊まるって。」

坂場「どうして?」

なつ「今日は 明ちゃんの誕生日なのよ。」

坂場「それで 置いてきたのか?」

なつ「優が そうしたいって どうしても…。 ごめん 何もしてなくて… 今 ラーメンでも作るから。」

坂場「心配なら 今からでも 迎えに行けばいいじゃないか。 下山さんも 今日は早めに帰ったから 誕生日のお祝いは もう終わってるはずだよ。 一緒に迎えに行こう。」

なつ「それだけじゃないかもしれない。」

坂場「えっ?」

なつ「優は 茜さんと離れたくないのよ。」

坂場「どういうこと?」

なつ「茜さんに預けられなくなるという話を してたから 優の前で…。 4つになるまで 私といるより ずっと長く一緒にいたからね 茜さんと。 分かるのよ 私には。 子どもは 一緒にいてくれる人が一番だから。 一番 好きなのよ。」

坂場「ん。」

なつ「ううん。 ありがと。」

(電話の呼び鈴)

なつ「はい もしもし。 ああ… すいません…。 すぐ迎えに行きます。 はい…。」

下山家

リビング

茜「優ちゃん ママ もう少しで来るからね。」

(チャイム)

玄関

下山「はいは~い。 ああ。」

なつ「すいません。」

下山「どうぞ どうぞ。」

リビング

なつ「優…。」

茜「ごめんなさいね どうしても泣きやまなくて…。」

坂場「こちらこそ ご迷惑をおかけしました。」

茜「いや…。」

下山「朝まで待とうって言ったんだけどね。」

なつ「茜さん ありがとうございます。 本当 すいません。」

茜「優ちゃん ママに会えてよかったね。 じゃあ またね。」

なつ「さあ 優 帰ろう。」

坂場「すいません…。」

道中

<その日の夜を その時の優のぬくもりを なつは 一生 忘れることはないでしょう。>

東洋動画スタジオ

社長室

なつ「えっ… また作画監督を?」

佐藤「そう。 ここは また 君しかいない そう思ってね。」

なつ「あの ちょっと待って下さい。 次は 作画監督ではなく いち原画に 戻りたいと思っているんですが…。」

山川「どうして? せっかく実績を上げたところなのに。」

なつ「子どもが まだ保育園で 6時以降は 人に預かってもらわなければ 働けないんです。 それで できるなら 6時に子どもを 迎えに行ける仕事にしたいと…。」

山川「今更 そんなこと言われても困るよ。 こっちは当てにしてるんだから 君の力を。 必要としてるんですよ。」

佐藤「そう。 君のように 原作のイメージを崩さずに 原作以上に キャラクターを かっこよく描けるアニメーター そういないからね。」

なつ「また 漫画原作なんですか?」

佐藤「そう。 これだ。」

なつ「『魔界の番長』?」

佐藤「そう。 魔界からやって来た魔物に 体を乗っ取られた番長の話だ。」

なつ「番長…。」

佐藤「この番長が 純情な男でね。 いちずに片思いをしている 女の子がいるんだが この番長に取りついた魔物が その女の子を好きなってしまうんだよ。 人間の敵なのに 人間を好きになる それが また番長を苦しめる。 それで 魔界の魔王を裏切るわけだ。 その度に 番長は魔人に変身して 人間を守るために戦うんだよ。」

なつ「また裏切って戦うんですか?」

佐藤「そう。 君にぴったりだろ!」

なつ「いや…。」

山川「やってくれるよね? やってくれた 昇級も約束しよう。」

休憩室

なつ「参ったな…。」

桃代「そりゃ あれだけ 『キックジャガー』を成功させたんだから 会社は もう一回やれって言うでしょ。」

なつ「いや それは うれしいんだけど…。」

桃代「作画監督は もうやりたくないの?」

なつ「やりたくないわけじゃないけど なるべく 6時に 保育園に迎えに行けるようにしたいから。」

桃代「ああ…。」

なつ「それにね こういう暴力的なものは 描くのは もうやめたいんだけど。」

桃代「会社の都合を聞いてたら やめられないわよ。 私の場合は その逆だけど。」

なつ「ん? あっ そうだ 今日は モモッチから 話があるって言ってたよね 何?」

桃代「うん… 実はさ 私 辞めるのよ。」

なつ「えっ?」

桃代「東洋動画を辞める。」

なつ「ええっ… どうして?」

桃代「私は この何年か ずっと トレースの仕事をしてきたでしょ。 トレースの仕事に やっと自身がついてきたところなのに トレースの仕事自体が減っていくんだもん。」

なつ「ああ…。」

桃代「機械が手早くやってくれちゃうからね。」

<仕上げの仕事には 作画をセルに書き写すトレースと そのセル画に色を塗る彩色があります。 このころから トレースマシンという機会を使って 作画の線を簡単に セルに写せるようになりました。 トレースの仕事を合理化するため 東洋動画は いち早く それを取り入れたのです。>

桃代「要するに 私は もう用済みなのよ 東洋動画にとって。」

なつ「いや そんなことないでしょ。」

桃代「まあ 私にとっても もう用済みなのかな この会社は。」

なつ「えっ? 辞めて どうするの?」

桃代「うん… この間 それで マコさんに相談しに行ったのよ。」

なつ「マコさんに?」

回想

麻子「モモッチ 色に興味ある?」

桃代「色? 彩色のことですか?」

麻子「色を塗ることじゃなくて こういう色を決めること。 私は 色指定の仕事も 仕上がやってもいいと思ってるの。」

桃代「えっ? 色指定を?」

麻子「東洋動画では 全部 色は美術が決めてるでしょ。 まあ 背景は そうするしかないとしても 動画の色は 仕上がやってもいいと思ってる。 モモッチなら そういうことに 興味があると思って。」

桃代「あります!」

回想終了

桃代「その言葉が決めてだった。」

なつ「色指定がやりたかったの?」

桃代「だって 今まで 色を塗りながら このキャラクターの服の色は 違う色の方がいいのにな なんて思ってたんだもん。」

なつ「なるほどね… モモッチには そういう才能があるかもしれない。」

桃代「才能というより 好きなことかもしれないって思ったの。 それで 行くことに決めた!」

なつ「ふ~ん…。 はあ… モモッチまで マコさんの会社に行くのか。 何だか 取り残されていくみたいだな…。」

廊下

仲「なっちゃん。」

なつ「あっ 仲さん。」

仲「なっちゃん よかったね。」

なつ「えっ?」

仲「さっき 山川社長と佐藤制作部長から 泣きつかれてね。 君に なんとか 作画監督を引き受けてもらえるよう 説得してほしいって言われたんだ。」

なつ「そのことですか…。」

仲「昇級も約束されたそうじゃないか。」

なつ「はい…。」

仲「子どもとの時間は欲しいか。 やっぱり無理かな…。」

なつ「すいません。 それも ありますけど… 実は 作品に乗れないんです。」

仲「なるほど… そうか。 そうだとしたら 僕が君に言えることは 何もないな。」

なつ「えっ…。」

仲「こっからは なっちゃんが 自分で決めるしかない。 アニメーターとして どこを目指すか それは もう 誰も教えてはくれないだろう。」

なつ「そうですね。」

仲「僕は… なっちゃんが決めたとおりでいい。」

なつ「はい…。」

仲「うん。」

回想

仲「我々は いちアニメーターとして 奥原さんの意志を尊重したいと思います。」

なつ「今までは当たり前だと思っていたことを 会社から望まれなくなることが 一番苦しいんです!」

(拍手)

回想終了

道中

なつ「はい…。」

優「ママ ありがとう。」

なつ「何が?」

優「今日は 来てくれてありがとう。」

なつ「優… 今日は 公園で遊んでから帰ろうか!」

優「うん!」

なつ「うん。 よし 行こう。」

<なつは 結局 作画監督の仕事を また引き受けました。 なつよ とにかく前を向いて 歩いていこう。>

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