ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第132話「なつよ、優しいわが子よ」【第22週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)の娘の優が5歳になったある日、優は雲を指さし、その形が馬に似ているとなつに言う。本物の馬が見たいと言う優になつは夏休みになったら十勝に連れていくと約束する。だが、なつはそのころテレビ漫画の「魔界の番長」で再び作画監督を任されており、引き受けた以上はヒットさせようと必死になっていた。そんなある日、北海道から遊びに来た夕見子(福地桃子)が天陽(吉沢亮)について気になることを言い…。

132ネタバレ

坂場家

リビング

坂場 なつ♬『ハッピー バースデー トゥ ユー ハッピー バースデー トゥ ユー ハッピー バースデー ディア 優 ハッピー バースデー トゥ ユー』

坂場「おっ おっ… お~! おめでつ!」

なつ「おめでとう 優!」

<昭和48年6月1日 優は5歳になりました。>

優「ありがとう!」

(笑い声)

坂場「何だろうね?」

なつ「何だろう?」

なつ「はい。」

優「あっ… ねえ ママ お馬さんがいた。」

なつ「えっ? どこ?」

優「ほら あそこ!」

なつ「うん? ああ 雲か…。 どれ?」

優「ほら あれ! あそこ!」

なつ「うん? ああ 本当だ! お馬さんが走ってるように見えるね。」

優「乗りたいね。」

なつ「乗りたい? 優 本当に乗りたいの?」

優「乗りたいよ。 優ちゃん 乗りたい!」

なつ「乗せてあげようか?」

優「本当に?」

なつ「本当。 優ちゃん 本物のお馬さんに 会ったこと覚えてないの? じいちゃんと ばあちゃんちで。」

優「牛さんがいたとこ?」

なつ「そう 牛さんがいたとこ。 あ… まだ 2歳の時に 一度 会ったきりだから あんまり覚えてないか。 お馬さんも見たんだよ。 そこで。」

優「本物のお馬さん 見たい!」

なつ「じゃあ また連れてってあげる。 今度は ママが お馬さんに乗せてあげるよ。」

優「やった! いつ?」

なつ「う~ん… そう来るようね。」

優「いつ? いつ? いつ? いつ?」

なつ「う~ん じゃあ… 今度の夏休みに。」

優「ママの夏休みって いつ?」

なつ「そう来るか…。 う~ん… あっ ママの誕生日辺りに。 8月15日。 ママ その辺り 必ず休み取るから。 約束する。」

優「ありがとう ママ!」

なつ「優… ありがとうなんて 言わなくていいんだよ。」

保育園

なつ「優 お知らせの紙 先生に忘れないでね。」

優「うん 分かった。」

なつ「行ってらっしゃい。」

優「行ってきます。」

<なつは 作画監督として 忙しい日々を過ごしていました。>

東洋動画スタジオ

テレビ班 作画室

なつ「番長に取りついた魔物は 番長の純情な心に影響されて 番長が思いを寄せる この女学生を 好きになってしまうんです。 それで 人間を殺せなくなって 魔王を裏切ることになります。」

堀内「原作より 魔人の目に人間味があって いいと思う。 ですよね? 宮田さん。」

宮田「いい!」

「かっこいいです!」

「ね! ハハハ…。」

「お願いします。」

なつ「う~ん これじゃ 迫力が出ない。 線を太くしてみて。 あと もっと荒々しくていいから。 やり直して。」

中島「分かりました。」

なつ「よろしく。」

中島「はい。」

<引き受けた以上は ヒットさせようと必死でした。 優を迎えに行けない日も また増えていったのです。 そんな時 今は 茜さんに代わって この人が 優を預かってくれています。>

風車プロダクション

咲太郎「はい ここ ここ。 はい。 はい 優 連れてきたよ。」

<優は 咲太郎の声優事務所で ママの帰りを待つのです。>

光子「優ちゃん いらっしゃい。 は~い。」

光子「おなかすいたでしょ? これ食べててね。」

優「あり… あっ 光子さん ママがね ありがとうは 言っちゃダメって言うの。」

光子「えっ? 言わなきゃダメよ! ありがとうは 言わなくちゃいけません。 感謝の気持ちを持つことは 人間の基本です。」

優「はい。 ありがとうございます。 頂きます。」

光子「はい 召し上がれ。 なっちゃんは 何を考えてるのかしら…。 礼儀を教える気がないのかしらね。」

咲太郎「これは 俺か…?」

<優は 今でも みんなの愛情を受けて育っていました。>

坂場家

玄関前

<まるで 昔の自分のようだと なつは 時々思うのです。>

リビング

<そして ある日曜日のこと。>

(ブザー)

なつ「あっ 来たかな。」

優「夕見おばさん?」

玄関

なつ「そう。 は~い。 夕見 いらっしゃい!」

夕見子「久しぶり。」

優「夕見おばさん いらっしゃい。」

夕見子「優! おっきくなったな! 元気だったかい?」

優「元気です!」

夕見子「うん。 よし。」

リビング

なつ「雪見君は元気?」

夕見子「元気 元気。 元気じゃないと 小畑家じゃ やってけないしょ。」

なつ「そうだね ハハハ…。」

優「どうぞ。」

夕見子「ありがとう。 優 いいものあげる。」

優「ありがとう。」

夕見子「はい。」

優「雪月のお菓子だね!」

夕見子「そうだよ。 ん? イッキュウさんは?」

優「パパは お仕事です。」

夕見子「あ… 日曜日もかい?」

なつ「うん。 でも 今日は夕見が来るから 早く帰ってくるって。」

夕見子「ふ~ん 大変だね。 ありがとう。」

なつ「で 夕見は? なして東京に来たのさ?」

夕見子「これ。」

なつ「バター?」

夕見子「違う。 こっち。」

なつ「あ~! たんぽぽ牛乳! 出来たの?」

夕見子「そう。 これを 東京で売るために来たのさ。」

なつ「わ~ すごい! ねえ 飲んでいい?」

夕見子「うん。 はい どうぞ。」

なつ「頂きます。 うん 美味しい! 十勝の牛乳だわ!」

夕見子「やっと 十勝から東京まで 冷蔵庫で運べるようになったのさ。」

なつ「ふ~ん。」

優「優ちゃんも飲みたい!」

なつ「うん したら ママの飲んでみな。」

優「うん。」

なつ「気を付けて。」

夕見子「ねえ どう?」

優「おいしい!」

なつ「ねえ。」

夕見子「やっぱり なつの子だね。」

なつ「夕見は飲めないの? 今でも。」

夕見子「牛乳を使った料理ならいいけど いまだに 牛乳は飲めん。」

なつ「誰の子さ あんたは。」

夕見子「雪見は好きで飲んでんだけどね。」

なつ「あんただけ やっぱり変わってんだね。」

夕見子「うるさい…。 これを 東京で流通させれば 私の役目は終わりだわ。」

なつ「終わり?」

夕見子「うん。 農協の仕事は もう これで辞めようと思って。」

なつ「えっ…。」

夕見子「雪月も 案外忙しくなってんの。 ほら ディスカバージャパンとかって 旅行ブームになってから 雪月の土産も 飛ぶように売れてんのさ。」

なつ「へえ~。」

夕見子「けど 営業力がないからね。 これからは 私の力で もっと大きくしてやろうと思って。」

なつ「いいね。」

夕見子「ん? 何 馬? あっ なつ。」

なつ「ん?」

夕見子「天陽君のことは知ってる?」

なつ「天陽君が どうかしたの?」

夕見子「何か 忙しすぎて 風邪こじらせて入院してるみたいよ。」

なつ「入院!?」

病院

雪次郎「よっ!」

天陽「おお 雪次郎。 雪見君も…。」

雪見「こんにちは。」

天陽「こんにちは。 いらっしゃい。」

雪次郎「うん。 元気そうだな。」

天陽「うん もう すっかり いいんだわ。 もうすぐ退院できるだろうって。 したから そう毎日来なくてもいいさ。」

雪次郎「疲れがたまってる時は…。」

雪見「よっ!」

雪次郎「雪月の菓子が一番なんだって。」

天陽「悪いな。」

雪次郎「あれ? 昨日持ってきたの もう食べたのか?」

天陽「あ… ごめん うちのが持って帰ったわ。」

雪次郎「あっ。」

天陽「おかげで 子どもたちが大喜びだ。」

雪次郎「まあ それなら それでいい。 俺も大喜びだ。 ほら 見てみ。 ここでも 毎日 絵描いてんのか? 休みに来たんだべや。」

天陽「急いで描かなきゃなんないんだわ。 信用金庫の 来年のカレンダーの絵を頼まれてんだ。 去年 馬が死んで 畑に トラクター頼まなくちゃなんないべ。 その金がないと払えんのさ。」

雪次郎「絵で食えるんだから 大したもんだ。 もう立派なプロだわ。」

天陽「プロではないよ。 けど まあ これも収穫と同じだべ。」

雪見「おじさん 上手だね!」

天陽「ありがとう。」

雪次郎「バカ! 上手って 雪見 天下の山田天陽さんに失礼だべ。」

雪見「父ちゃんよりも上手!」

(笑い声)

雪次郎「比べたら失礼だべや。 うん? どれどれ どれどれ… うん? そう変わらんべ。 ハハ…。 また馬描くのか。」

天陽「うん…。 雪次郎 おかしなもんだな…。 好きな絵を描くために 農業をしてたつもりが 絵を売らんと 今は 農業が ままならんようになってしまった。」

雪次郎「まあ 冷害が続いた年もあったからな。 お前は 離農しないだけ偉いわ。 絵を描いて 家族を守ってんだべ 今は。」

天陽「俺は 俺でいたいだけだ。 どんなことがあっても。 な。」

雪次郎「かっこいいな 天陽おじちゃんな。」

雪見「かっこいい!」

(笑い声)

坂場家

リビング

なつ「おっきいけどいい?」

夕見子「頂きます。 う~ん… おいしいわ!」

坂場「奮発したんで いっぱい食べて下さい。」

夕見子「私なんかに奮発しなくてもいいのに。」

坂場「いえ…。」

夕見子「頂きます。」

坂場「それで 天陽君は大丈夫なんですか?」

夕見子「うん。 何か 疲れ過ぎて 風邪こじらせただけだって言うから。 帯広の画廊とも契約してて 絵が どんどん売れるようになってんのさ。」

なつ「畑仕事も しながらだからね。」

夕見子「そう。 それも やめないの。 その分 奥さんが大変みたい。」

なつ「そう…。」

坂場「北海道の展覧会でも 賞を たくさん取ってるからな。 こっちの画壇でも 天陽君を知らない人は もういないだろう。」

優「テンヨウ君?」

なつ「天陽君は ママとパパの 北海道にいる大事なお友達。」

優「じゃあ 優ちゃんとも お友達だね。」

なつ「うん。 そうなれるよ。」

優「優ちゃんも会いたい。」

なつ「会いたいね…。 うん… 天陽君に会いたいな。 あ… 夏休みになったら きっと会えるよ。」

優「楽しみだね。」

なつ「楽しみだね。」

<ああ なつよ どうか 夏が まだ終わらないうちに…。 来週に続けよ。>

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