あらすじ
なつ(広瀬すず)の手がけたテレビ漫画「魔界の番長」が放送される。しかし、娘の優は怖がって見ようとしない。坂場(中川大志)に、子どもは多感だからと言われるも、子どもが怖がるアニメを作ることに思い悩むなつ。そんなある日、神地(染谷将太)はなつを呼び出し、麻子(貫地谷しほり)からマコプロに誘われていると告げ、神地の抱く夢を語るのだった。一方、十勝では体調を崩した天陽(吉沢亮)が…。
133話ネタバレ
東洋動画スタジオ
社長室
なつ「『魔界の番長』?」
佐藤「魔界の魔王を裏切るわけだ。 人間を守るために戦うんだよ。」
なつ「また裏切って戦うんですか?」
佐藤「そう。 君にぴったりだろ!」
なつ「いや…。」
休憩室
桃代「作画監督は もうやりたくないの?」
なつ「やりたくないわけじゃないけど なるべく 6時に 保育園に迎えに行けるようにしたいから。 それにね こういう暴力的なものを 描くのは…。」
廊下
仲「こっからは なっちゃんが 自分で決めるしかない。」
<なつは 結局 作画監督の仕事を また引き受けました。>
坂場家
リビング
<そして 昭和48年の夏 なつが手がけた 『魔界の番長』の放送が始まりました。>
テレビ・番長『うう… うあ… うううう… うあ… うあああ…!』。
なつ「優 どうしたの? 見ないの?」
優「怖い… 見たくない!」
テレビ『悪をもって悪を制す 魔界の番長 ここに見参!』。
なつ「ええっ…。」
東洋動画スタジオ
テレビ班 作画室
神地「なっちゃん。」
なつ「あっ 神っち。」
神地「昨日の放送 見たよ。」
中庭
なつ「それで どうだった?」
神地「日本のテレビ漫画は どんどん ひどい方向に行くよな。」
なつ「相変わらず はっきり言ってくれるんだから。」
神地「作画室で言わなかっただけ 大人になっただろ。」
なつ「まあね。」
神地「別に なっちゃんに 文句があるわけじゃないよ。 ヒットはすると思うよ。 うん… よく出来てた。」
なつ「いいから そういう大人の発言は。 うちの子にもね 怖くて見たくないって言われちゃったの。」
神地「なっちゃん 俺もやめるわ。」
なつ「うん いいよ。 別に 無理して見てくれなくても。」
神地「ここを辞めるって言ったんだよ。」
なつ「えっ?」
神地「映画は もうダメだ。」
なつ「えっ でも 今やってる夏休み映画は 当たってるんでしょ?」
神地「それは 映画が当たってるわけじゃないよ。 東洋まんがカーニバルとして テレビ漫画と一緒に 長編映画を劇場にかけてるだけだろ。 子どもの目当ては 一緒にやってるテレビ漫画の方だよ。 会社も そっちにばかり 力を入れてるしな。 俺も とうとう テレビに行かされそうなんだ。」
なつ「テレビは やりたくないの?」
神地「どうせ テレビをやるなら 下山さんや イッキュウさんの いるところでやりたい!」
なつ「マコプロで!?」
神地「うん。 移ることにしたよ。」
なつ「そんな!」
神地「是非 来てほしいって マコさんも。」
回想
麻子「いいわよ。 いらっしゃい! 是非いらっしゃい。 フフフフフ…。」
下山「ハハハハハハハ…。」
麻子「フフフフ…。」
回想終了
なつ「モモッチに続いて 神っちまで…。」
神地「でもね 俺は いつか また映画を作りたい。 世界中の人が あっと驚くような 日本のアニメーション映画を作りたい。 そのために 独身を貫いて 仕事に 身をささげてきたんだからな。」
なつ「分かった。 神っちなら そのうち きっと… いい人が現れるわよ!」
神地「バカ そこを慰めて どうすんだよ!」
なつ「えっ?」
(笑い声)
坂場家
リビング
なつ「マコさんは 魔界の魔王だわ。 東洋動画を破滅させる気じゃないの?」
坂場「そうかもね。」
なつ「あなたも 魔王の手先でしょ。」
坂場「だけど そう簡単に破滅はしないよ 東洋動画は。」
なつ「破滅してたまるもんですか。」
坂場「君も いっそのこと 魔王に 魂を売ったらどうだ?」
なつ「魂を?」
坂場「実は今 ちょっと考えてる企画があってね。」
なつ「『大草原の小さな家』?」
坂場「アメリカ西部の開拓時代の話だ。 開拓者の家族がいて その家の小さな娘の視点で描かれてる。」
なつ「開拓者の話?」
坂場「リアルな日常を描くような話を アニメーションで表現したいと思ってる。 しかし それをやるには 君の力が必要だとも思ってるんだ。」
なつ「私にも マコプロに移れって言うの?」
坂場「一緒に やってみないか?」
なつ「面白そうだけど… 私は 東洋動画を辞めるわけにはいかないわ。 私だけは 仲さんたちを 裏切ってはいけないと思う。」
坂場「気持ちは分かるけど…。」
なつ「それに もし 辞めるとしたら… アニメーターかも。 今は 少しでも 優のそばにいてあげたいから…。」
坂場「そんなに やる気を失ってるのか。」
なつ「東洋動画を辞めるとしたらってことよ。」
坂場「まあ その本は置いとくから 暇があれば読んでみればいいよ。」
なつ「うん…。」
坂場「うん。」
<そのころ 十勝では 天陽君が退院をして また絵を描いていました。>
山田家
馬小屋
<しかし 8月に入ると 天陽君は また体調を崩し 帯広の病院に入院しました。>
病院
陽平「天陽。」
天陽「おっ 兄ちゃん。 もう東京に帰るのか?」
陽平「うん。 夏休みが終わるからな。 起きてて大丈夫なのか?」
天陽「うん。 今月中に カレンダーの仕事を 仕上げなくちゃいけないからな。」
陽平「いい絵だな。」
天陽「そう?」
陽平「馬小屋にあった 描きかけの馬の絵もいいけど 俺は お前の風景画も好きだな。」
天陽「つまらない背景画みたいだろ?」
陽平「おい それは 俺に対する当てつけかよ。」
天陽「違うよ。 風景画を描く時は いつも兄ちゃんのことを思い出すからさ。 アニメーションの背景なら こういうとこに 昔のなっちゃんを歩かせたりして…。」
回想
なつ「天陽君!」
回想終了
天陽「そしたら面白いだろうなとか…。」
陽平「なっちゃんか…。」
天陽「元気してる?」
陽平「うん。 お前に会いたがってたよ。」
天陽「なっちゃんも 俺も 会えなくたって 絵を描いていれば それで十分なのさ…。」
東洋動画スタジオ
テレビ班 作画室
<なつは まだ 優と約束した夏休みを 取ることができないでいました。>
道中
天陽「(せき)」
山田家
居間
タミ「え…。」
天陽「ただいま。」
タミ「天陽!?」
靖枝「陽ちゃん! どうしたの?」
道夫「父ちゃん!」
彩子「父ちゃん!」
天陽「道夫 彩子 元気にしてたか? ただいま。」
道夫「お帰んなさい。」
彩子「お帰んなさい。」
正治「お前 退院したのか? なして連絡しないんだ。」
天陽「退院は来週だよ。」
正治「えっ?」
天陽「来週 退院していいって さっき 先生に言われたんだ。」
正治「え… それで なして 今いんだ?」
天陽「うん… 退院が決まって 居ても立っても居られなくてなってさ 早く アトリエの絵を描きたくて 抜けてきた。」
タミ「ダメでしょ。 もう今すぐに戻りなさいや!」
正治「病院で心配してるべよ!」
天陽「大丈夫だって。 道夫 彩子 もうちょっとの 辛抱だからな。 父ちゃん もうちょっとで帰ってくるから。 お前たちと 一緒にいるからな。」
靖枝「辛抱できないのは あんたでしょや 陽ちゃん…。」
天陽「そうだな。」
(笑い声)
タミ「全く もう…。」
正治「しょうがないな。」
馬小屋
靖枝「全く しょうがないんだから…。」
天陽「すまんな。」
靖枝「本当に無理しないで 朝になったら戻ってよ。 もうじき退院なのに。」
天陽「靖枝がいてくれるおかげで こんなわがままが できるんだ。」
靖枝「わがまますぎるわ。」
天陽「畑も牛も 靖枝に頼ってばかりで…。 だから 俺は 絵を描いていられるんだ。 靖枝と結婚して 本当よかったわ。 俺は 俺でいられる。」
靖枝「どうしたのさ? したら 本当に ほどほどにしてよ。 大事な体なんだから。」
天陽「もう行っちゃうのかい?」
靖枝「えっ?」
天陽「ここにいろよ。」
靖枝「えっ? えっ いや ちょっ ちょっと… ちょっと 陽ちゃん! ねえ 絵の具! 絵の具ついちゃう…。 早く治してよ。」
天陽「うん ありがとう。」
朝
天陽「靖枝… 起きれ もう朝だ。」
靖枝「あ… 絵は出来たの?」
天陽「出来た。」
<なつよ… もうすぐ 夏が終わるぞ。>