ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第134話「なつよ、天陽くんにさよならを」【第23週】

あらすじ

病院を抜け出してきた天陽(吉沢亮)は、アトリエに籠もり、徹夜で描き続けて一枚の絵を完成させる。天陽は、一晩中寄り添っていた靖枝(大原櫻子)を起こし、絵が出来たことを伝えると、病院に戻る前に畑を見てくると言い残して、アトリエを後にする。夏が終わるころ、遅めの夏休みをとったなつ(広瀬すず)は娘の優を連れて十勝にやってきた。久しぶりの里帰りに富士子(松嶋菜々子)は温かく迎えてくれるが…。

134ネタバレ

山田家

馬小屋

靖枝「あ…。 あっ 大変! 病院に早く戻らなくちゃ…。」

天陽「大丈夫だ。 戻る前に畑を見てくる。」

靖枝「えっ?」

天陽「来週 退院する頃には芋掘りだろ。 様子を見てくる。」

靖枝「いや… 私も行く。」

天陽「靖枝は いいから。 もうじち おやじが搾乳に来る。 それから… おふくろと子どもたちを よろしく頼む。」

靖枝「陽ちゃん…。」

天陽「ちょっと行ってくるだけだから。 すぐ戻る。」

ジャガイモ畑

天陽「あったかいな…。」

<それは… 夏の終わりのことでした。>

東洋動画スタジオ

テレビ班 作画室

陽平「なっちゃん。」

なつ「あっ 陽平さん。 どうかしたんですか?」

中庭

なつ「陽平さん まさか… 陽平さんまで ここを辞めるんですか?」

陽平「えっ?」

なつ「辞めて まさか マコプロに 行くんじゃないでしょうね?」

陽平「なっちゃん… 落ち着いて聞いてくれるか。」

なつ「はい。 もう 何を聞いても驚きませんから。」

陽平「天陽が 死んだんだ。 今朝早くに 亡くなったって…。」

なつ「何を言ってるんですか?」

陽平「僕も まだ信じられないんだけど どうも うそじゃないみたいだ…。」

柴田家

しばた牧場

<なつが まとまった夏休みを取れたのは 9月に入ってのことでした。>

優「あっ 牛さんだ。」

なつ「そう あそこが ママの家。 おじいちゃんと おばあちゃんと ひいじいちゃんたちのいる家だよ。 前 来た時は ちっちゃかったから 覚えてないよね。」

優「広いね。」

なつ「広いでしょ。」

優「お馬さんもいるの?」

なつ「いるよ。 会いに行こうか。」

優「うん!」

台所

なつ「ただいま。」

砂良「あっ なっちゃん お帰り。」

なつ「砂良さん ただいま。」

砂良「あっ 優ちゃん! 大きくなったね。」

優「ただいま!」

砂良「お帰り 優ちゃん。」

剛男「着いたのかい。」

なつ「あ… ただいま。」

剛男「お帰り。」

富士子「お帰り。」

なつ「分かる?」

富士子「優ちゃん お帰り!」

優「おばあちゃん ただいま!」

なつ「優 あんた おばあちゃんのことは覚えてたの? 2歳の時に会ったっきりなのに。」

富士子「そりゃ覚えてるさ。 ねえ? ばあちゃんのことは絶対に忘れないって 約束したもね!」

優「うん。」

剛男「ほら じいちゃんのとこさも おいで ほら。 え… 優ちゃん じいちゃんのことは覚えてないのかい!?」

詰め所

なつ「ただいま。」

一同「おお!」

なつ「じいちゃん ただいま。」

泰樹「うん… お帰り。」

悠吉「お帰んなさい なっちゃん。」

菊介「やっと来たか。 今か今かと待ってたもね。」

照男「連絡すれば 駅まで迎えに行ったのに。」

なつ「あ… そこまで バスで来て… 優と歩きたかったから。」

(笑い声)

泰樹「優! おいで… おいで。」

なつ「え… なしたの? てれて…。 じいちゃん 怖くないしょ? 優の名前 付けてくれた人だよ。」

泰樹「優 おいで…。」

なつ「ただいま。」

泰樹「お帰り 優。 おいで…。」

悠吉「ハハハハハ…。」

泰樹「重くなったな。」

なつ「じいちゃん 照男兄ちゃん 私…。」

泰樹「うん…。」

照男「みんなも驚いたんだ。」

なつ「忙しいのもあったけど… びっくりし過ぎて 本当になるのが怖くて すぐに来られんかったわ…。」

照男「お葬式は 立派なもんだった。 新聞社とか テレビ局も来てたな。」

悠吉「あんな偉い画家さんだったなんて…。 いつの間にか…。」

菊介「そんなとこ 本人は 一つも見せなかったもな。」

泰樹「なつ… まあ ゆっくりして それから 会いに行けばいいべ。」

なつ「うん…。」

照男「あ… なつ 牛舎見るか?」

なつ「うん。」

旧牛舎

照男「これが ミルカーだ。」

なつ「へえ~。」

照男「これさえあれば 手搾りの時の 半分の時間で できてしまうんだわ。」

なつ「そう。」

照男「うちには 今 これが3つある。」

菊介「なっちゃん 優ちゃん 今は こうやって牛乳を搾るんだ。 おかげで おやじは もう ここに 搾乳しに来なくても よくなったんだ。」

なつ「じいちゃん 優が馬に乗りたいって言ってんの。」

泰樹「優 馬 のりたかったか?」

優「うん。」

泰樹「いや~ そりゃ ちょっと残念だったな。 馬は もう売ってしもうた。」

なつ「えっ?」

悠吉「なっちゃん 今は 馬を使ってる百姓は 随分減ってな。 今は 車とトラクターだもな。」

照男「天陽のうちでも そうやってんだ。」

なつ「したら 天陽君の家にも 馬は もういないの?」

泰樹「去年 死んだ。」

なつ「去年?」

泰樹「あの馬だ なつ…。 天陽の畑を開墾した年に来た。 25年以上 よく長生きした…。 今頃は また… 天陽と会ってるべ。」

居間

剛男「どう? 優ちゃん うまいか?」

優「うん おいしい!」

富士子「おいしいしょ。 優ちゃんが来ると思って ばあちゃんが 腕によりをかけて 作っといたんだから。」

優「ありがとう おばあちゃん。」

富士子「ああ… 優ちゃんは 本当に 礼儀作法が行き届いてるね。 なつ あんた偉いわ。」

なつ「いつも 光子さんに しつけられてるから。」

泰樹「優 こっちさ来い。 そうそうそう… こっちさ来い ハハハ…。」

剛男「何するんですか!」

菊介「こりゃ おやっさんと剛男さんの戦いだな。 そのうち 優ちゃんを食われちまうぞ なっちゃん。」

なつ「優は みんなに かわいがられることに慣れてるのさ。 昔の私と おんなじだわ。」

地平『ただいま。』

砂良「あっ 帰ってきた。」

一同「お帰り!」

砂良「ちゃんと挨拶しなさい。」

地平「なつおばさん お帰りなさい。」

なつ「うわ~ 地平君 また伸びた! まだ中学生でしょ。 どこまで伸びんのさ。」

砂良「しょうがないしょや 柴田家の家系だし 毎日 濃い牛乳を飲んでんだから。」

なつ「だっこできるのも 今のうちだね。」

剛男「優ちゃん おいで ほらほら…。」

子ども部屋

なつ「母さん… 私 このまま 今の仕事を 辞めるかもしれない。」

富士子「えっ? なして?」

なつ「自分が 何をしたいのか 分からなくなって…。 お金のことを考えなければ 今は 優といられる時間を 一番に 大切にしたいと思うようになって。」

富士子「そう…。 それが なつの出した答えなら そうすればいいしょ。」

なつ「少し 疲れてしまった…。」

<次の日 なつたちは 天陽君の家に向かいました。>

山田家

居間

なつ「すいません… アトリエを見てもいいでしょうか?」

正治「もちろん 構わないよ。」

馬小屋

優「あっ ママ ほんものだ!」

なつ「え…?」

優「ほんもののお馬さんがいるよ!」

<なつよ… それが 天陽君の遺作だ。>

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