ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第136話「なつよ、天陽くんにさよならを」【第23週】

あらすじ

十勝へ帰省中のなつ(広瀬すず)は、雪月を訪れ、菓子職人となった雪次郎(山田裕貴)と夕見子(福地桃子)に再会する。娘の優が雪次郎の作った菓子を食べていると、妙子(仙道敦子)やとよ(高畑淳子)も現れ、わいわいとにぎやかになり、昔の雪月の雰囲気が戻ってくる。そこへ雪之助(安田顕)が現れ、天陽(吉沢亮)が描いたというあるモノを見せる。天陽がそれに込めた思いを、雪之助は静かに語りだすのだった…。

136ネタバレ

雪月

雪次郎「お待たせしました! 雪月ロールとシュークリーム そして おバタ餡サンドです。 優ちゃん これはな 粒あんが6 バタークリームが 4の割合で 混ぜてあるんだ。 そこに 焼き塩を 隠し味に使ってる。」

夕見子「そったらこと 優が聞いたって分かるわけないべさ。」

雪次郎「分からなくても 手ぇ抜かねえのが雪月の魂だべ。」

夕見子「いい いい。 優 いいから食べな。」

優「頂きます。」

雪見「どう? 優ちゃん うまいかい?」

優「うん おいしい!」

雪見「よかった。」

夕見子「何で あんたが喜んでんのさ?」

雪次郎「そりゃ 雪月の魂 受け継いでるからだべさ。 なあ。」

夕見子「無理に受け継がなくてもいいからね。 雪見の人生は 雪見のもんなんだから。」

雪次郎「そんな 雪見に分からんこと言うなや。」

夕見子「分かるべさ。」

なつ「雪見君も大変だね。」

雪見「えっ?」

夕見子「何さ それ。」

なつ「ハハ…。」

妙子「なっちゃん いかったわ。」

なつ「何がですか?」

妙子「なっちゃんが笑ってて。」

妙子「お義母さん そったらこと言えば なつが 無理して笑ってるのが ばれてしまうでないですか。」

妙子「ああ… それは悪かったね。」

なつ「いや いいんですよ。 そんなに無理してないよ 夕見。」

夕見子「そう?」

なつ「天陽君 ちゃんといたから…。 びっくりするくらい 今でも変わらずに いるような気がする…。」

妙子「そうかい…。」

雪次郎「俺も そうなんだ なっちゃん。 天陽が いなくなったとは どうしても思えねえんだわ…。」

とよ「あ~れ なっちゃんかい。」

なつ「とよばあちゃん。」

とよ「相変わらず めんこいね なっちゃんは。」

なつ「えっ… とよばあちゃん?」

とよ「あっ なっちゃんは こっちか。」

なつ「え…。」

夕見子 雪次郎「ばあちゃん。」

妙子「もう… やだ 心臓が止まるかと思った!」

とよ「何で あんたらが びっくりしてんの?」

妙子「やだ もう そったら冗談やめて下さいよ! 冗談になりませんから!」

雪之助「お~ なっちゃん いらっしゃい。」

なつ「あっ おじさん ご無沙汰してます。」

雪之助「優ちゃんか。 いらっしゃい。」

優「ごぶさたしてます。」

雪之助「ハハハハ…。 なっちゃん ちょっとね なっちゃんに 見てほしいもんあんだわ。」

なつ「何ですか?」

妙子「あれね。」

雪次郎「いや… まだ それは早いんでねえか?」

雪之助「何でよ?」

雪次郎「いや それ見たら なっちゃん 泣くべや。」

なつ「えっ?」

夕見子「泣くと思う。」

なつ「何?」

雪之助「いやね… 亡くなる前の天陽君に 頼んでたんだわ。 この店の… 雪月の ね 包装紙を描いてくんないかって。」

なつ「包装紙?」

雪之助「うん。 それがね これなんだ。」

雪之助「この絵をさ 夜遅くにね 天陽君が ここに持ってきてくれたんだ。」

回想

雪之助「すばらしいな…。 この女の子はさ ひょっとして なっちゃんかい?」

天陽「なっちゃんみたいな人が この十勝には いや 北海道には たくさんいるでしょう。」

雪之助「うん。」

天陽「自然に 開拓者精神を受け継いで たくましく生きてる人が…。」

雪之助「そだね…。」

天陽「僕の十勝も そういうなっちゃんから 始まってるんですよ。」

雪之助「これは そのころの なっちゃんなんだね…。」

天陽「そういう出会いを 雪月のお菓子にも 込めたいと思ったんです。」

雪之助「うれしいね それは ハハハ…。 いや なっちゃんも それ聞いたら喜ぶだろうね。」

天陽「したら お菓子を送ってあげて下さい。」

雪之助「うん?」

天陽「東京に…。 もし なっちゃんが 何かに くじけそうになった時には それで 雪月のお菓子を包んで 送ってあげて下さい。 雪月のお菓子オが たくさんの人を喜ばせるように 今のなっちゃんも たくさんの人を 喜ばせなくちゃならないでしょ。 きっと それを感じてくれますよ。」

回想終了

雪之助「天陽君は 子どもの頃の思いを ず~っと大切にしてたんだね。 それは なっちゃんも おんなじだべ?」

とよ「ほれ あんた… これを。」

とよ「なっちゃん 残された者は つらいけどさ その分 強くもなれるべさ。 ならないば 先に逝った者に恥ずかしいからね。 大切な思い出に 恥ずかしくないように生きないば。」

なつ「はい… とよばあちゃん。」

雪之助「なっちゃん これ 東京への土産に持ってって。」

なつ「え…。」

妙子「はい。 東京のなっちゃんさ。」

なつ「ありがとうございます…。」

柴田家

台所

なつ「ただいま。」

優「ただいま。」

富士子「お帰り。」

砂良「お帰り。」

夕見子「よいしょ。」

富士子「あっ あんたも来たの。」

夕見子「うん。 なつと優を 車で送ってきたの。」

なつ「あっ 弥市郎さん。」

弥市郎「おお…。」

居間

弥市郎「天陽の人生には 長いも短いもない…。 そこにあるだけだ。 天陽の人生は ただ そこにある。 それは なんと美しいことか…。 あいつは あいつの作品そのものになったんだ。 俺は 羨ましいとさえ思う。 俺は… 天陽になり損ねて 生きてるだけだ。」

剛男「そうかもしれませんね。」

弥市郎「あ?」

剛男「あ いや… 弥市郎さんのことではなくて 天陽君は 家族にとって いや その作品のように 永遠に生き続けるものだと教えたくて 病院を抜け出して 家に 帰ってきたのかもしれないなと思って…。」

富士子「それでも やっぱり悲しいわよ 家族は…。」

照男「悲しいのは当たり前だべ。 天陽も それは よく分かってたんだ。 したから 最後に会いたかったんだべさ。」

砂良「悲しみが大きい分だけ 家族には 大きな幸せも残るんでないかい。」

地平「死に方まで かっこいいもな 山田天陽は。」

照男「お前 そう軽々しく言うな。」

地平「軽々しくなんか言ってねえわ。」

砂良「あんたのラブレター熊に つきあってくれた時の 天陽君も かっこよかったもね。」

照男「その話はするな。」

泰樹「なつ…。」

なつ「うん?」

泰樹「お前は大丈夫なのか?」

なつ「うん… 大丈夫。 じいちゃん… やっぱり 天陽君は すごいわ。」

泰樹「うん。」

なつ「こうして 今でも みんなの中に生きてる。 きっと… それが答えだね 天陽君の。」

泰樹「うん。」

子供部屋

なつ『あるものといっては 風の吹くままに 明るくなったり かげったりしながら 波うつ草ばかりの とめどなくつづく広い大草原と その上に広がる大きな大きな青い空と 草原から飛び立ち のぼっていく太陽に よろこびの歌を うたっている鳥たちだけでした。 これだけ広い土地と空のなかに 小さな幌馬車が ぽつんと ひとつ立っているのです。 そして…』。

なつ<『父さんと母さん メアリィとローラとキャリーがすわり…』>

優「ママ! ママ!」

なつ「うう…。 どうしたの? 優。」

優「ママ すごい!」

なつ「えっ?」

優「これ ママが描いたんでしょ? 昨日のお話しでしょ? これ。 見たい! 優ちゃん これ見たいよ ママ!」

なつ「見たい? 優 これ見たい?」

優「うん 見たい!」

台所

なつ「母さん!」

富士子「あっ おはよう。」

なつ「おはよう。 ちょっと東京に… 電話 借りていい?」

富士子「なんも いいけど どしたの?」

なつ「ちょっと…。」

<なつよ… それが 君の答えか。>

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