ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第140話「なつよ、この十勝をアニメに」【第24週】

あらすじ

新しいアニメーションの舞台が北海道に決まり、マコプロのメンバーはロケハンのため十勝を訪れる。柴田家を訪れた麻子(貫地谷しほり)、坂場(中川大志)、神地(染谷将太)、下山(川島明)たちは泰樹(草刈正雄)から開拓の話を聞く。そこで泰樹は十勝にやってきたころの話を語りだす。話を聞いた富士子(松嶋菜々子)が、泰樹は十勝に連れてこられたなつ(広瀬すず)を、かつての自分に重ねていたのではないかと話しだし…。

140ネタバレ

柴田家

しばた牧場

<なつたちは 開拓者家族の暮らしを取材するため 北海道の十勝にやって来ました。>

居間

麻子「すみません どうか お構いなく。」

富士子「何もないですけど。」

砂良「搾りたての牛乳を 召し上がって下さい。」

下山「ハハハ… ありがとうございます!」

神地 桃代「頂きます!」

桃代「うん おいしい!」

麻子「本当 新鮮。」

坂場「この牛乳の違いを 我々は 絵で表現しなければならないんです。」

下山「何だろう… 濃さの違いかな。」

桃代「色は白いけど ちょっと 黄色がかってんのかな?」

神地「いや~ 要するに このおいしさの違いを描けばいいんだよ。」

砂良「何だか大変そうね。」

なつ「こうやって 何でも感じることが大切なの。」

泰樹「なつ… それで?」

なつ「それでね じいちゃん じいちゃんの昔の話を みんなは聞きたがってるんだわ。」

泰樹「えっ? 何の話じゃ?」

なつ「開拓の話。 じいちゃんが この十勝に やって来た頃の話を聞かせてほしいの。」

富士子「それを テレビ漫画にしたいんだって。」

麻子「泰樹さんは どうして 北海道に渡っていらしたんですか?」

なつ「富山から来たんでしょ? そういう話を 私もまだ 詳しく聞いたことがなかったから。」

泰樹「いや… わしには… 親が おらんかったんじゃ。」

なつ「えっ?」

泰樹「幼い頃に亡くしたんじゃ 2人とも…。 はやり病でな。」

なつ「じいちゃん… それで どうしたの?」

泰樹「親戚の農家に… そのうちの養子になったんじゃ。 働かなけりゃ… ただのやっかい者じゃった。」

なつ「それで 北海道に渡ってきたの? 18の時に。」

泰樹「そうじゃ…。」

坂場「北海道に渡れば 土地は 手に入ったんですか?」

泰樹「まあ 土地といっても原野だ。 ほとんどが原生林じゃ。」

坂場「そこを開墾されたんですね。」

泰樹「3年のうちに切り開いて 国の検査を受け それで合格したら ようやっと 自分の土地になった。」

なつ「たった一人で それを成し遂げたんだ。」

泰樹「いや だから 土が悪くてな 作物は思うように育たんかった。」

なつ「それで 牛飼いも始めたんだね。」

麻子「初めから この音問別に 入植されたんですか?」

泰樹「いやいや 初めは もっと帯広に近い 十勝川のほとりじゃった。 うん。」

富士子「移住したんだもね。」

坂場「移住ですか?」

富士子「大正11年だから… 私が 8つの時だったね。」

泰樹「うん…。」

坂場「何があったんですか?」

富士子「十勝川が氾濫したのさ。 大洪水になってね。 家も畑も牛舎も流されて…。」

泰樹「家族と馬が助かっただけ よかったんじゃ…。」

富士子「それで 音問別に来て また開墾から始めて… それから 1年もしないうちに 母さんが 病気で 亡くなってしまったのよね。」

なつ「じいちゃんは… 本当に苦労したんだね。」

砂良「お義母さんも。」

下山「その洪水は使えるかもしれないぞ? イッキュウさん。」

坂場「えっ?」

麻子「神っち 使えるって…。」

神地「あ… いや 失礼。 けど せっかく お話しを聞かせてもらったのに 無駄にしては申し訳ないと思いまして。」

泰樹「ハハハ… 何か役に立ったかね?」

坂場「はい。 とても…。 開拓者にとって 一番の心の支えは やはり 家族だったんでしょうか?」

泰樹「家族に限らんかもしれん。 誰もが支え合って それで 開拓者は強くなったんじゃ。」

詰め所

なつ「母さん ごめんね。 部屋まで用意してもらって。」

富士子「なんも。 照男らが新しく離れを建ててから 部屋は余ってるもね。」

坂場「本当に助かりました。」

砂良「ここもね 牛舎の設備が新しくなって 使わなくなりそうなんだわ。 それで お義母さんと 何かしようかって話してるの。」

なつ「ここで? 何をすんのさ?」

富士子「柴田牧場のアイスクリームさ。」

砂良「牧場を見たいという人もいるのさ。 そこで ここをお店にしたら そういう人が たくさん来てくれるんでないかって お義母さんが。」

なつ「へえ~ 母さんと砂良さんが そんなこと考えてんだ。」

砂良「これは 私と義母さんの いわば開拓だもね。」

富士子「そう。」

坂場「開拓ですか。」

なつ「ねえ 母さんは知ってたの? じいちゃんの昔のこと。」

富士子「ああ… じいちゃん 富山にいた頃のことは あんまり話したがらなかったからね。」

砂良「子どもの頃から 一人で生きてきたような もんだったんですね じいちゃんは。」

富士子「そう思うと… ここに来た頃のなつを じいちゃんは 自分と重ねて見てたんだね きっと。」

坂場「それは どういうことですか?」

なつ「いろいろあったから… 9つで ここに来た時。」

回想

なつ「私を ここで働かせて下さい。」

泰樹「それでこそ赤の他人じゃ。 明日から 夜明けとともに起きて働け。」

なつ「はい!」

泰樹「お前には もう そばに 家族はおらん。 だが わしらがおる。」

なつ「おじいさん…!」

泰樹「お前は 堂々としてろ。 堂々と ここで生きろ。」

回想終了

坂場「そして 君も 人と支え合いながら 強くなっていったということか。」

なつ「そうだね…。」

旧牛舎

なつ「この牛舎で 私は育った。 昔は手搾りだったんだけど 今は バケットミルカーという機械で 搾乳します。」

菊介「よし したら この菊介さんが 手搾りでの搾乳を教えてやるべよ。 誰か 挑戦する人?」

一同「はい!」

菊介「ハハハハハハ。 おう… したら カメラのお嬢さんから。」

桃代「はい!」

菊介「はい。 牛に蹴られないように注意しろや。」

桃代「えっ 蹴るんですか?」

菊介「牛が怖がったら蹴るべさ。」

神地「怖い顔しちゃダメだよ。」

下山「優し~く 優し~くね。」

桃代「今から触るよ。 よろしく。」

菊介「おい… おいおい。」

桃代「仲よくしてね。」

菊介「おねえさん おねえさん! 動くな お前…。」

菊介「お~ いいんでねえか。 うまい うまい うまい…。」

麻子「神っちは スケッチしないの?」

神地「あ… いや スケッチすると 記憶に残らない気がするんですよね。 絶対に忘れまいと 目で見た方がいいんです。」

照男「すごい!」

神地「いや~ そんなことないですけど…。」

照男「やっぱ うまいもんだな。」

下山「あっ… どうも。」

神地「あっ そっちか…。」

門倉家

門倉「ほれ ハハハハハ…。 これは ラッパという 種をまく農具だ。」

門倉「うん…。 そして これが 大正時代に この十勝で開発された農機具だ。 三畦カルチベータという。」

坂場「3つの畝を いっぺんに掘り起こせるんですね。 十勝の開拓者が考えたんですか?」

門倉「そうだ。 これは うちのじいさんが 実際 使ってたもんだ。」

なつ「番長のおじいさんは どっから来たの?」

門倉「四国の香川県だ。」

良子「うちのじいちゃんは 四国の徳島県なんだわ。」

なつ「そんじゃ よっちゃんと番長の先祖は 近かったんだね。」

門倉「俺たちが 十勝で出会うことは 運命だったんだわ ハハハハ…。」

良子「勝農の演劇部を手伝ったのが 運の尽きだったわ。」

門倉「ハハハ…。」

桃代「あのさ 番長って あの番長?」

なつ「ん?」

神地「だよね 魔界の番長だよね!」

門倉「奥原! あれ見てたぞ。 やっぱり あれ 俺か? 奥原が 俺を主役に…。」

なつ「いや あの 原作の漫画が たまたま似てたから…。」

門倉「俺が 本物の魔界の番長だ! どうだ? 優ちゃん。」

『うあああ…!』

優「うん… 番長 大好き!」

門倉「そうか…。 よし! ほら 行くべ 行くべ! よいしょ ほれ!」

下山「ちょっと 危ない 危ない 危ない…!」

門倉「ワハハハハ…!」

良子「あれで しばらく機嫌がいいわ。 なっちゃん ありがとう。」

なつ「えっ?」

良子「好きなだけ見てって。 ちょっと あんた…!」

坂場「モモッチ ここも撮っといて下さい。」

桃代「はい。」

坂場「写真。」

柴田家

しばた牧場

麻子「開拓者が切り開かなければ 見られなかった景色なのね。」

なつ「そうです。」

神地「アニメーションだって 俺たちが切り開かなければ 何も見られないからな。」

坂場「我々の作る景色も いい景色にしましょう…。」

桃代「あっ 陽平さんだ!」

坂場「その森の中に入っていって…。」

下山「そうだ 優ちゃん ちょっと この辺 走ってみてよ。」

優「うん!」

(鳴き声)

坂場 なつ「優!」

なつ「優! お~ お~ お~。」

なつ「はい はい 大丈夫よ…。」

優「パパ 大丈夫?」

<なつよ どうやら イッキュウさんたちにも 何か届いたようだぞ。>

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