ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第141話「なつよ、この十勝をアニメに」【第24週】

あらすじ

十勝から東京に戻ったなつ(広瀬すず)は、咲太郎(岡田将生)の事務所を訪ねる。なつは十勝の雪月でとよ(高畑淳子)から開拓時代の話を聞いていると、そこに突然、亜矢美(山口智子)がやってきた話をする。驚く咲太郎と光子(比嘉愛未)になつは、亜矢美が日本中を旅していたという話をする。すると、咲太郎と光子は…。そしてマコプロでは十勝を舞台としたテレビ漫画の制作が進んでいく。

141ネタバレ

柴田家

しばた牧場

麻子「開拓者が切り開かなければ 見られなかった景色なのね。」

門倉家

門倉「十勝で開発された農機具だ。」

柴田家

居間

泰樹「誰もが支え合って 開拓者は強くなったんじゃ。」

<なつたちは 十勝での取材を終え 東京に帰ってきました。>

風車プロダクション

(ノック)

なつ「よいしょ… こんにちは。」

佐知子「はい… あっ なっちゃん!」

なつ「えっ 佐知子さん? どうして…。」

佐知子「今週から ここで働いてるのよ。」

なつ「えっ…。」

咲太郎「よっ!」

レミ子「どっから来たの? その荷物。」

坂場「北海道から戻りました。」

光子「北海道から そのまま ここに来たの?」

坂場「はい。 夜行で 今朝着いて。」

光子「疲れたでしょう。」

坂場「よいしょ…。」

優「ただいま!」

光子「優ちゃん お帰り。」

なつ「佐知子さんにも会えるなんて。」

光子「私が頼んだのよ。 人手が足りなくなって 電話番だけでもって さっちゃんなら信頼できるから。」

佐知子「子どもも 手が かからなくなったし 夕方まで ここで 働かせてもらうことにしたのよ。」

なつ「佐知子さんも戻ってきたんですか。」

佐知子「私も?」

なつ「お兄ちゃん。」

咲太郎「うん?」

なつ「帯広で 亜矢美さんに会ったのよ。」

咲太郎「えっ…。」

レミ子「亜矢美さんに!?」

光子「帯広で?」

なつ「はい。」

<話は2日前に遡ります。>

雪月

雪次郎「開拓時代を調べてんのか。」

なつ「とよばあちゃんにも 話を聞きたいんだわ。」

坂場「大正11年ごろの洪水は 覚えていらっしゃいますか?」

とよ「ああ 大変だったね…。 したけど 私は そのころは もう嫁いでたからね。」

坂場「ほかに 何か 印象に残ってることはありますか?」

とよ「したら サケだわね。」

なつ「サケ?」

とよ「川に サケの群れが戻ってくると そりゃ もう銀色に光ってね! 水しぶきを上げて 川を遡ってくるサケの群れと 私らも 一緒になって 跳びはねて喜んだもんだわ! ああ サケが帰ってきた…!」

雪次郎「あっ いらっしゃ…。」

亜矢美「あっ いた! 元気?」

なつ「亜矢美さん!」

亜矢美「あ~! な な な… なっちゃんが 何で ここに!? な… なっちゃんだ! どうした!」

なつ「それは こっちが言いたいですよ!」

亜矢美「どうした どうした!」

なつ「どうしたんですか!」

とよ「亜矢美ちゃ~ん!」

亜矢美「あ~ とよばあちゃん! お会いしたかった!」

とよ「まだ生きてるもね! しぶといべさ。」

亜矢美「全然 お変わりないべさ。」

坂場「ご無沙汰してます。」

亜矢美「お~ イッキュウさんだ。 うわ~ 里帰り?」

坂場「いや~ まあ ちょっと違いますが。」

亜矢美「もしかして… えっ?」

なつ「はい。 私の娘です。 優といいます。」

亜矢美「ゆう? ゆうちゃん?」

優「はい。」

亜矢美「ミーは 亜矢美…。」

麻子「あの お久しぶりです。」

亜矢美「うわうわうわ… マコちゃんだ! イタリア行ってたんじゃないの?」

麻子「あっ 覚えてて下さったんですか。」

亜矢美「覚えてるよ それぐらい… あっ 神っち?」

神地「いや どうも…。」

亜矢美「全然 変わらないね。」

亜矢美「モモッチ?」

桃代「はい!」

亜矢美「ね~。 何っち?」

下山「あ… ハハ。 『ち』は付かないんですけど…。」

なつ「下山さん 会ったことないですか?」

亜矢美「あっ 下山っちといえば… うん! ね?」

下山「ああ そうです。」

亜矢美「よく聞いてた なっちゃんから。」

下山「これもんの ハハハ…。」

なつ「私が住んでた おでん屋の亜矢美さんです。」

下山「初めまして どうも。」

亜矢美「あ~ もう 座って 座って ごめんね 皆さん お邪魔しちゃって。 何 ご旅行? いや~ だって みんな…。」

夕見子「亜矢美さん!」

亜矢美「何 夕見ちゃん どうしたの。 ここで会えるなんて…。 お手伝い? エプロンして… 今 どっから出てきた?」

なつ「夕見は 雪次郎君と結婚したんです。」

亜矢美「何! え~! でもね ちょっとね お似合いかなと思ってた。」

夕見子「え~。」

亜矢美「そうなったか!」

夕見子「なっちゃいましたけど…。」

亜矢美「おめでとう! よかったじゃない! あらららら どうも。」

雪之助「亜矢美さん…!」

妙子「ご無沙汰してます 亜矢美さん!」

亜矢美「ええ…。」

雪次郎「亜矢美さん これ 息子の雪見です。」

亜矢美「ゆきみっていうの?」

亜矢美「かっこいい名前。」

雪見「こんにちは。」

亜矢美「こんにちは。 うわ ハンサムだ。 将来は役者?」

一同「やめて下さい!」

雪次郎「ごめんなさい ごめんなさい…。」

亜矢美「貫禄ついて 立派になったね。」

雪次郎「いや もう東京で 人の心を学び 十勝のお菓子作りに生かしました。」

亜矢美「よっ 雪次郎!」

雪次郎「ありがとうございます。」

なつ「それで 亜矢美さんは 何で帯広に?」

亜矢美「いや そりゃ 雪次郎君に もう会いたくて 会いたくて…。」

雪次郎「本当ですか!」

亜矢美「うそに決まってんじゃん バカ。」

雪之助「座って 座って うちのお菓子でもね…。」

亜矢美「今晩 一杯やりやしょうよ。」

妙子「やめて下さいよ…。」

亜矢美「生まれて初めて来たのに こんな懐かしい顔 顔 顔 顔 顔…。 もう みんなに会えて もう… 夢みたい!」

風車プロダクション

咲太郎「それで 何をしてるんだ? 今。」

雪月

亜矢美「人呼んで フーテンの亜矢美と発しやす。」

神地「お~ かっこいい! ハハ…。」

亜矢美「九州 鹿児島から 7年かけて北上し やっとこさで 帯広に たどりつきやした!」

雪次郎「えっ… それじゃ 亜矢美さん 亜矢美さん これから 帯広で働くんですか?」

雪之助「それじゃあさ いっそのこと うちで働きませんか?」

雪次郎「あっ それ いいわ!」

夕見子「働かなくても ここにいて下さい。 好きなだけいて下さい。」

亜矢美「いや とにかくさ あと一稼ぎしたら 目標額に達するから そしたら 新宿戻って 一旗揚げようかなと思ってんの。」

なつ「新宿に?」

亜矢美「うん。 咲太郎や光子さんの世話になんなくてもさ ビシッと 返り咲いてみせますよ。 それが フーテンの意地ってもんでございやす。 だからね 咲太郎には それまで おとなしく待ってな。」

風車プロダクション

咲太郎「本当に戻るのか? 新宿に…。」

なつ「そう言ってたから。 誰の力も借りずに 戻ってくるって。」

光子「亜矢美さんらしいわね。」

レミ子「よかったじゃない 咲ちゃん。 待っててあげなよ。」

咲太郎「ああ…。 よかった…。 本当によかった…。 しかし バカだな… 何が フーテンの亜矢美だよ ハハハ…。」

雪月

とよ「本当に ここで雇うつもりかい。」

夕見子「これで もっと はやりますよ きっと。」

雪次郎「うん。」

亜矢美「結構なお菓子いかがです? 結構 毛だらけ…。」

<亜矢美さんのおかげか 分かりませんが 雪月は 十勝を代表するお菓子メーカーに 成長していくのでした。>

マコプロダクション

<十勝から戻った なつは 早速 主人公の少女 ソラの キャラクター作りに取り組みました。 キャラクターが決まらなければ 作画作業に入れません。>

なつ「出来た。 どう?」

坂場「うん…。 あ…。 ダメですね。 これは ソラではありません。」

なつ「どこがダメなの?」

坂場「ちょっと 皆さん いいですか? どう思いますか?」

麻子「なるほどね。」

下山「うん… 何か 強そうだね。」

なつ「強いのは 開拓で 自然と鍛えられたからです。」

坂場「だけど 人間らしい かわいさが 感じられないんです。」

なつ「かわいくなければ いけないの?」

坂場「かわいい女の子を 描けと言ってるわけじゃなくて…。」

神地「これは強そうなんだけど まるで 野生の動物を従えて 冒険をするような強さなんだよな…。 『百獣の王子サム』じゃないんだからさ。」

桃代「衣装も 何だか 葉っぱを着てるみたい。」

なつ「葉っぱ?」

陽平「うん… なっちゃん 背景は どうしたって緑が多くなるだろ? 十勝の自然 描くわけだから。 同色の緑っぽい服だと 保護色になって 目立たないんじゃないかな。」

神地「これじゃ戦闘服だよ。」

麻子「この発想だと 今までのテレビ漫画の キャラクター作りと 何も変わらないわね。 まあ 大自然を開拓するっていう意思は 感じるんだけど。」

坂場「今回は もっと日常的な 人間の表情を捉えたいんです。 大げさに 喜怒哀楽を表現したり 過剰なドラマ主義に走らなくても ちゃんと ドラマが見えてくるような 人間が生活する上での細かい心の動きを 一番大切に表現したいんです。 それを感じさせてくれる キャラクターでなければ…。 アニメーションらしい表現も 開拓者らしい人間の心の機微も 君なら よく分かってるはずだからね。」

なつ「うん…。 言いたいことは よく分かるけど…。」

坂場「うん…。 例えば このソラが 新しい世界に触れた時 自分の知らなかった世界が 今 目の前に広がっているのを見た時 その戸惑いや期待感 まっすぐに前を見て ワクワクしてるような目を描いて下さい。 そういう表情から ソラを捉えて下さい。」

なつ「ワクワクしているような目?」

坂場「そうです。」

麻子「あなたは 昔から 人の内面描くの得意だったじゃないの。 『白蛇姫』の頃から。」

なつ「戦いばかり描き過ぎて いつの間にか 自分の心が ギスギスしているんでしょうか。」

麻子「そんな重く考えないで…。」

下山「なっちゃん。」

なつ「はい。」

下山「あの… 参考になるかどうか 分かんないけど これ。」

下山「十勝に ロケハン行った時に スケッチしたものなんだ。 とっても いい表情 してたもんだからね。 まあ その表情は なっちゃんが 一番よく知ってるもんだろうけど。」

麻子「結局 あなたの心が 絵にも出るのよ。 あなたが ワクワクしなくちゃ ダメなんじゃない?」

なつ「そういうことか…。 忘れてました…。 こういう気持ちを テレビ漫画にも 描いていいんですよね…。」

麻子「そうよ。」

なつ「ありがとうございます。 下山さん。」

下山「何か見えた?」

なつ「はい… やってみます!」

下山「うん。」

麻子「よろしくね。」

なつ「はい。」

<なつよ どんなソラが生まれるのか  ワクワクしてきたぞ。>

モバイルバージョンを終了