ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第142話「なつよ、この十勝をアニメに」【第24週】

あらすじ

東京に戻ったなつ(広瀬すず)は、早速、新しいアニメーションの企画「大草原の少女ソラ」の主人公ソラのキャラクターを描いてみたが、麻子(貫地谷しほり)や坂場(中川大志)たちにまったく認められない。思い悩むなつに対して下山(川島明)は、十勝でスケッチした優(増田光桜)と泰樹(草刈正雄)の絵を見せる。すると、イメージが沸き起こり、なつは勢いよくソラのキャラクターを描き始め…。

142ネタバレ

マコプロダクション

<なつがデザインした テレビアニメの主人公 ソラが ついに出来上がりました。>

神地「お~ かわいいじゃない!」

桃代「これなら かわいいだけじゃなくて 野性味も感じられるわよ。 女の子らしいけど 決して弱い子には見えないと思う。」

麻子「ちゃんと 中身のかわいさと たくましさを捉えているからよね。」

桃代「ほっぺが赤いの? これ。」

なつ「そう。 寒いから リンゴみたいに赤くなるのよ。 それに合わせて 服の色も赤にしてみました。」

桃代「いいと思う!」

なつ「本当? どう?」

坂場「うん。 この子の日常なら 見たくなります。 主人公の活躍よりも 生きる力そのものを描きたいんだから。」

陽平「そういう精神が この作品全体に必要なんだろうな。」

なつ「ねえ 神っちも 本当にいいと思う?」

神地「うん。 いいキャラクターだよ これは。 そして 新しい!」

なつ「よかった…。 あっ… 私 そろそろ迎えに行かなきゃ。」

麻子「あ… もう今日は帰っていいわよ。」

なつ「あっ いえ もう少し描きたいんで また戻ってきてもいいですか?」

麻子「それは構わないけど。」

なつ「すいません。 じゃ ちょっと行ってきます。」

<優は 保育園が終わったあと マコプロで過ごすことになりました。>

坂場家

<そして ある日曜日。>

玄関

(ブザー)

なつ「は~い。 信さん 明美ちゃん いらっしゃい!」

リビング

信哉「それじゃ 家族で会社にいるんだ?」

なつ「そうなの。」

信哉「大変だろうけど いい会社だね。」

坂場「小さいから なんとか やっていけるんです。 経営者も同僚も 気心が知れた人ばかりですから。」

明美「何だか羨ましい。 結婚しても 好きな仕事を続けられる環境って 作るのが 本当に難しそうだもん。 よかったね 優ちゃん。」

優「うん。 優ちゃんも 絵を描いて働いてるの。」

明美「ハハ… そうなんだ。」

なつ「明美ちゃんは? やっぱり 東京の放送局は大変?」

明美「うん… 人の数も 扱うニュースも 全然違うから。 でも 信さんがデスクで助かってる。」

信哉「明美ちゃんは 何だか 本当の妹のように思えてね。」

明美「それは なつ姉ちゃんのおかげだわ。」

信哉「だから 甘やかさずに ビシビシ鍛えなきゃと思ってるんだよ。 早く 一人前の女性ディレクターに なってもらわないとね。」

明美「何だ…。」

なつ「何だじゃないでしょ。 その方が 明美ちゃんのためなんだから。 信さん ビシビシ鍛えてやってね。」

信哉「分かった。」

明美「頑張ります。 あ… なつ姉ちゃんたちは 十勝に行ったんだって?」

なつ「取材。」

坂場「開拓者の話を テレビ漫画にしようとしてるんです。」

信哉「柴田家の話?」

なつ「いや そういうわけじゃないけど… じいちゃんが 今まで どうやって ここまで歩いてきたか そんなことを思いながら 作りたいと思ってる。 まあ あくまで 架空の話だけどね。」

明美「でも なつ姉ちゃんのことを知ってる人は みんな うちの話だって思うんでないの?」

なつ「うん… そうかな?」

坂場「僕は そう思われてもいいと思ってるよ。 それでも恥ずかしくないような リアリティーのあるものにしたいと 思ってるんです。 もともと 原案にしてるのも 作者の実体験ですし。」

信哉「その方が面白いかもしれない。 そういうのが見たいな。」

坂場「あ… はい。」

明美「そしたら うん… 千遥ちゃんが見ても なつ姉ちゃんの話だって 思うかもしれないしね。 うちの家族のことも知ってるわけだし。」

なつ「そうだね…。」

明美「うん。」

坂場「是非 見てほしいよ… どこかで。」

なつ「どこかで見てるって 私は信じてるから。」

優「ちはるちゃんって ママの妹でしょ? 写真の人でしょ?」

なつ「そうだよ。」

台所

坂場「今度の物語だけど…。」

なつ「ソラの話?」

坂場「そう…。 本当に 僕は 君の実体験と重ねるように 描いてもいいと思ってるんだ。」

なつ「えっ…。」

坂場「いや そうしなければ 君と造る意味がないとも思ってる。 十勝に行って 泰樹さんの話を聞いて 開拓者精神の底には 悲しみがあることを感じられた。 人との結び付きを 何よりも大切にする。 他人を家族のように 受け入れる その優しさが生まれることも知ったんだ。 それこそが 僕らの描くべき物語だと思う。」

リビング

なつ「具体的に どうするの?」

坂場「うん…。 新しい登場人物を作る。」

なつ「どんな?」

坂場「それは 子どもの頃の君であり 泰樹さんでもある。 それに… 千遥ちゃんでもあるかもしれない。」

なつ「千遥も?」

坂場「うん。 いつかは 君と千遥ちゃんが また 家族として結ばれることを信じて…。 家族であるかどうかは 本当の家族かどうかではなく それを望む意志があるかどうかなんだ。 それを描きたい。 そういう 自分のことのように 物語を描くことに 抵抗はある?」

なつ「私にとっては 自分の魂を 絵に吹き込むことが全てだから…。 信じて ついていくだけです。」

坂場「分かった。」

なつ「いい作品にしましょう。」

坂場「それじゃ 一緒に 絵コンテ作ってくれる?」

なつ「もちろん。」

<原作の『大草原の小さな家』に なつ自身の経験も織り交ぜた 新しい物語が なつたちの手から 生まれようとしていました。>

なつ「たき火の場所から 少年は耐えきれず 飛び出してくるのはどう? 少年は 初めて涙を見せる。 ソラは 追いかける。」

<そして 2人が生み出す物語は ようやく形になり始めたのです。>

マコプロダクション

麻子「今回 制作進行で入ってもらう 石沢さんと町田君です。」

石沢「石沢裕也です。 よろしくお願いします。」

一同「お願いします。」

町田「町田義一です。 よろしくお願いします。」

一同「お願いします。」

麻子「それから 動画チェックをしてもらう 立山久子さん。」

立山「立山です。 よろしくお願いいたします。」

一同「お願いします。」

麻子「立山さんだけじゃ大変だと思うので できるだけ 動画チェックは 私も手伝います。」

麻子「ここにいるのは メインスタッフだけで 仕上は もちろん原画も動画も背景の作画も 外注に頼らざるをえません。 外注先と みんなとの間を この石沢さんと町田君が 行ったり来たりしてくれることで なんとか 制作は成り立ちます。 しっかり 締め切りは守りましょう。」

一同「はい!」

麻子「返事だけは すばらしい。 それじゃ 第1話の絵コンテが 上がったので 配って下さい。」

石沢「はい。」

坂場「それでは ざっと 1話目のストーリーを説明します。 まず 一家が旅をしています。」

坂場「荷物を荷馬車に積み 荒野を走るのは 父さんと母さんと妹 そして 主人公のソラ。 住んでいた場所を 洪水で流され 新天地を求めていました。 その度の途中 川に流されている少年を発見します。 その時 少年の友達のリスが 助けを呼ぶように鳴くんです。」

坂場「それに気付くのが ソラ。 ソラは 父さんに助けを求める。 少年は ソラの機転と その家族によって救われるんです。 少年の名は レイです。 レイの家族は 洪水によって流されていました。 孤児となったレイは ソラたち家族と一緒に 新天地へ向かって 旅をすることになる。」

陽平「その少年も 主人公の家族として 育っていくという話?」

なつ「そうです。 ソラとレイ この2人の成長を通して 開拓者家族の物語を描きたいんです。」

<物語に登場するキャラクターも固まり なつたちの作画作業が いよいよ進み始めました。>

なつ「どう?」

坂場「うん…。 家族の表情は いいと思います。 だけど 荷馬車が… これでは まるで 競馬場を走ってるみたいですね。」

なつ「競馬場?」

坂場「荒れた大地を走ってるような 振動が感じられません。 一定のリズムで 揺れるわけがないと思うんです。 いろんな大きさの石を 踏むことだってあるでしょう。 その方が このワクワクとした旅を楽しむ ソラの表情も もっと生きると思います。 そういうリアリティーを おろそかにしないで下さい。」

なつ「そこまで追求しだすと…。」

坂場「子どもが見ても 大人が見ても 本当だと思える表現を したいだけなんです。 君の記憶と想像力なら それができると信じています。」

なつ「分かりました… やってみます。」

坂場「お願いします。」

なつ「よし…。」

<なつよ さあ どんなものができるのか 私も楽しみだ。>

モバイルバージョンを終了