ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第146話「なつよ、千遥よ、咲太郎よ」【第25週】

あらすじ

マコプロを訪ねてきた千遥(清原果耶)と再会したなつ(広瀬すず)。千遥の働いている神楽坂のお店「杉の子」にお客としてきてほしいと言われ、咲太郎(岡田将生)と光子(比嘉愛未)と信哉(工藤阿須加)と明美(鳴海唯)とともにお店を訪ねる。千遥の事情を知っているなつたちは、皆初めて会うお客として接し、店員の上田(助川嘉隆)と自分たちのこれまでの話を語らう。千遥は料理を作りながら、なつたちの話に耳を傾けて…。

146ネタバレ

マコプロダクション

玄関前

なつ「今 どこにいるの? 教えてもらえない?」

千遥「神楽坂で 杉の子という料理屋をしています。」

なつ「神楽坂の すぎのこ?」

千遥「もし よかったら… お客様として いらして下さい。」

お料理屋 杉の子

<土曜日 なつと咲太郎は そこに向かいました。 信さん 光子さん 明美ちゃんも同行しました。>

(戸が開く音)

孝子「いらっしゃいませ。」

咲太郎「予約した奥原です。」

孝子「お待ちしておりました。」

回想

千遥「お兄ちゃん!」

咲太郎「千遥。」

回想終了

千遥「いらっしゃいませ。」

咲太郎「あの カウンターでもいいですか?」

千遥「どうぞ。」

孝子「ご注文は?」

咲太郎「とりあえず ビールで。」

孝子「かしこまりました。」

咲太郎「料理は お任せします。」

千遥「はい。」

咲太郎「あの… お若いですが 女将さんですか?」

千遥「はい。」

咲太郎「女将さんが 料理を作るんですか?」

千遥「私は 料理人ですから。」

咲太郎「そうなんですか…。」

千遥「何か お好みはございますか?」

咲太郎「あ それなら… 最後に 天丼が食べたいです。 お願いできますか?」

千遥「天丼ですか?」

咲太郎「それが どうしても食べたくて…。 お願いします。」

千遥「天丼…。 はい できます。 分かりました。」

千遥「前菜になります。」

一同「頂きます。」

なつ「おいしい! とても おいしいです!」

千遥「ありがとうございます。」

咲太郎「本当に うまい… うまいよ 女将さん!」

千遥「どうも。」

上田「皆さん お友達ですか?」

咲太郎「いえ 私たちは こう見えて家族なんですよ。」

上田「ご家族ですか?」

咲太郎「彼女は 私の妻です。」

光子「光子と申します。」

千遥「どうも。」

咲太郎「それから…。」

なつ「私は 妹です。」

明美「私は その下の妹です。 最近まで 北海道にいたんですが 東京に 転勤になって。」

回想

千遥「明美ちゃんに似てるね。」

明美「千遥ちゃんにも似てるよ。」

回想終了

信哉「僕は 彼女の上司ですが ここにいる みんなとは 昔から きょうだいのように つきあってるんです。」

上田「なるほど。 いいですね。 あたり お願いします。」

信哉「そこにいる咲太郎という男は こう見えて社長なんですよ。」

上田「社長さんですか?」

咲太郎「いや それほどのもんじゃないですよ。」

信哉「テレビの外国映画や テレビ漫画に 声を吹き込む俳優がいるでしょう? そういった俳優のプロダクションを 経営してるんです。」

上田「へえ~ 芸能関係ですか それは ご立派な。」

信哉「だから こんな すてきな方とも 結婚できるんです。」

上田「全く 羨ましい限りで。」

咲太郎「いや それほどのもんじゃ…。」

光子「そこは あなたが謙遜しなくてもいいの。」

咲太郎「あ… いや 実際 俺には過ぎた女房なんです。」

光子「ちょっと 咲ちゃん 何言ってるの?」

咲太郎「よく 俺なんかと 結婚してくれたと思います。 とても心が広くて優しいんです。」

光子「ちょっと…。」

千遥「いいですね。」

咲太郎「はい。」

上田「お願いします。」

明美「そちらも ご夫婦で料理人なんて すてきじゃないですか。」

上田「あっ いえ 私は ただの板前ですよ。」

明美「あ… 違うんですか?」

千遥「主人は 店には出ていないんです。」

明美「そうですか。」

千遥「焼き物です。」

なつ「まさか 女将さんが… 女の人が 料理をされているとは 思いませんでした。 本当に 一生懸命 修業されたんでしょうね。 だから ここまで…。 本当に すごいです。」

千遥「いえ… 親方に恵まれただけです。」

なつ「親方? そうですか…。 私も同じです。 人生で いろんな師匠に恵まれました。 おかげで こうして生きてます。」

千遥「そうですか…。」

千遥「お待たせしました。 天丼です。」

一同「頂きます。」

なつ「おいしい…。」

信哉「うん 本当においしい…。」

明美「おいしいです!」

光子「こんなに おいしい天丼は 初めて食べたわ。」

千遥「ありがとうございます。」

光子「ちょっと どうしたの?」

咲太郎「これだ…。 これだよ…。」

千遥「何か ございましたか?」

咲太郎「いや… 戦死した父が 昔 作ってくれた天丼と同じ味なんです。 間違いなく… この味だ。 俺の… 俺たちの父親も 料理人だったんです。」

千遥「そうなんですか?」

なつ「私も 幼い時の記憶しかないですけど…。」

咲太郎「その父親が 昔 天丼を作ってくれたんです。 その味が忘れられなくて…。 食べたくて…。 どうして 女将には それが作れたんでしょうかね…。 不思議だ…。 本当に不思議だよ…。」

なつ「違う…。」

咲太郎「えっ?」

なつ「ねえ 違う… 思い出した。」

咲太郎「何を?」

なつ「お母さんだよ…。 空襲で死んだお母さんが… いつも作ってくれてたんだよ 天丼は…! お父さんが揚げた天ぷらを いつも 横で働いてたお母さんが ダシをとって タレを作って…。」

回想

母「はい お待ち遠さま。」

回想終了

なつ「思い出した…。 どうしてだろう 今頃…。 女将さんが それを作ってた母に似てたから…。 それで思い出したのかもしれません。」

咲太郎「そうか…。 そうかもしれない…。」

なつ「うん…。」

<なつよ 咲太郎よ…。 父さんと母さんは ずっと この時を待っていたんだ。>

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