ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第149話「なつよ、千遥よ、咲太郎よ」【第25週】

あらすじ

千遥(清原果耶)からお店を辞めたいと聞いたなつ(広瀬すず)と咲太郎(岡田将生)は、千遥の働く料理屋「杉の子」に向かう。店には、すでに千遥と、千遥の育った置き屋の女将(おかみ)・なほ子(原日出子)が来ていた。そして扉が開き「杉の子」女将の雅子(浅茅陽子)と、千遥の旦那である清二(渡辺大)が入ってくる。一同、向き合う中、千遥は自分の思いをポツリポツリと語りだす。そして、なつは…。

149ネタバレ

柴田家

居間

(電話の呼び鈴)

剛男「はい はい はい はい はい はい はい はい。 はい もしもし 柴田です。」

なつ『あっ 父さん。』

剛男「おお なつかい。 元気かい?」

なつ『うん。』

剛男「どうした?」

なつ『千遥のこと…。』

剛男「おう 千遥ちゃんのことか。 明美からも聞いたよ 元気で働いてるって。」

なつ『うん… それでね…。』

詰め所

夕見子「牧場で アイスクリーム屋ね…。」

砂良「普通のミルクと いちごミルクと 小豆ミルクを作ろうと思ってんだわ。」

富士子「ねえ 雪月でも 小豆のアイスは作ってるしょ?」

夕見子「うん。」

富士子「小豆のほかに 何か入れてるの?」

夕見子「えっ? う~ん… それは 企業秘密だから。」

富士子 砂良「え~!」

夕見子「あっ 父さん。」

剛男「何だ 夕見子もいたのか。 いや 今 なつから電話があって 千遥ちゃんが離婚するらしい。」

富士子「離婚?」

剛男「やっと決心がついたって。」

夕見子「決心?」

砂良「それって いいことなんですか?」

剛男「う~ん… いや それを見届けるために 俺も 東京に行こうと思うんだわ。」

富士子「はあ? あんたが行って どうなるの?」

剛男「どうもならんかもしれんけど… 俺には 責任があると思うのさ。」

御料理 杉の子

<そして なつと咲太郎は 千遥の話し合いの場へ向かいました。>

千遥「兄と姉です。 この人が 私を育ててくれた 置屋のお母さん。」

なほ子「光山なほ子と申します。」

咲太郎「兄の奥原咲太郎です。」

なつ「姉のなつです。」

咲太郎「千遥を助けて頂き ありがとうございました。」

なつ「ありがとうございました。」

なほ子「やめて下さいな。 いいんですよ…。 私が 勝手に 千遥を娘にしたんです。 私を恨んでないんですか? 千遥が結婚する時に 昔の家族とは縁を切らなくてはいけないと 言ったのは 私なんです。」

咲太郎「いえ それも 千遥のためを思ってのことですから。」

なつ「あなたに出会えて 千遥が どれほど救われたか…。 そのことは 私たちが 一番よく分かります。」

なほ子「まあ… ありがとう。 けど… 千遥の決心を聞いて 私も 本当に責任を感じました。 全ては 私のうそから 始まったことですからね。」

千遥「お母さんのせいなんてことは ないから…。」

(戸が開く音)

なほ子「あっ 女将さん。 清二さんも お久しぶりです。」

清二「どうも。」

咲太郎「初めまして。 千遥の兄の奥原咲太郎です。」

なつ「姉の なつです。」

雅子「千遥さん これは一体 どういうことなんです?」

千遥「申し訳ありません。」

千遥「私の父は戦死して 母は空襲で亡くなりました。」

なつ「空襲で母を亡くしたあとは 家も焼け出されて 私たちは 子どもだけで 生きなければなりませんでした。 終戦の頃は 上野の地下道で暮らしていました。」

雅子「浮浪児だったの? あなた。」

千遥「はい。」

咲太郎「それから 孤児院に送られたんです。 そこで 千遥だけ なんとか連絡のついた 親戚の家に預けました。 まだ 千遥が5歳の時です。 その親戚の家で 千遥は つらい目に遭ったらしく 6歳の時 そこから家出をしたんです。」

雅子「家出?」

なほ子「千遥は 見ず知らずの復員兵に拾われて その人が うちの置屋に 千遥を連れてきたんです。 私は そんな千遥を育てるうちに かわいくなって… それで身寄りのない子として届け出を出し 自分の養子にしたんです。 あのころは そういうことも たくさんあったので…。」

千遥「それで 私は救われたんです。」

雅子「つまり そういうことを隠して うちの嫁になったということね?」

清二「どうでもいいでしょう そんなことは…。 母さんだって分かっていたことだろう。」

なほ子「分かっていたんですか?」

雅子「それは 何かあるとはね…。 うちだって商売をしてますから 結婚する時に あなたが置屋に 売られたことぐらいは調べましたよ。 私は反対したけど この子が ほれていたし うちの人が そんなことは気にするなと言ってね。」

千遥「親方が?」

清二「僕より 千遥のことを 一番かわいがっていたのは おやじだったからな。 そのおやじが亡くなった今 千遥が この店にいる理由が なくなったのも 無理はないよ。」

雅子「何を言うの。」

清二「だけど   よく この店を やめる決心をしたな。 君さえよければ 僕は いつ別れてもいいと思ってたんだ。」

なつ「それは ただの無責任じゃありませんか。」

咲太郎「なつ…。」

清二「分かってますよ。」

雅子「千遥さんは この店を潰してもいいんですか?」

千遥「はい…。 すみません…。 養育費も 何も要りません。 千夏といられたら それだけでいいんです。」

雅子「そうはいきませんよ。 千夏は うちの大事な孫ですからね。 ここを出て あなたが 一体 どうやって育てていけるというの?」

千遥「仕事は すぐに見つけます。」

なつ「それに 私たちがいます。 家族がいます。 どうか 千遥から 千夏ちゃんを 奪うようなことだけはしないで下さい。 これからは 家族が 必ず支えていきます。」

千遥「千夏は ちゃんと育てます。」

咲太郎「女将さん… 実は 千遥の… 我々の戦死した父も 料理人だったんです。」

雅子「えっ?」

咲太郎「日本橋で 小さな料理屋をしていました。 その前は 浅草の料亭にいて そこで 女中をしていた母と知り合って 独立したんです。」

咲太郎「 2人とも 子どもの頃から 奉公に出されて 頼れる人は少なかったと 言っていましたが その小さな店で 本当に 私たち家族は幸せだったんです。 戦争さえなければ…。 その店を 私が再建したいと思っています。 千遥には いずれ その店を継がせたいと思います。 だから 安心して下さい。」

雅子「ちょっと お待ちなさい。 今 お父様が浅草の料亭にいたって 言ったけど 何ていうお店?」

咲太郎「さあ 名前までは…。」

雅子「亡くなったうちの人も 若い頃は 浅草の料亭で 修業をしていたんですよ。」

千遥「親方も?」

雅子「はあ… もしかしたら そのころから あなたと うちの人は 縁があったのかもしれないわね。 あなたたちの気持ちは よく分かりました。 夫婦の関係に関しては こっちが悪いんでしょうから 離婚は認めます。 いいわね。」

清二「はい。」

雅子「だけどね 千遥さん…。 あなたは 何か 思い違いをしているようだけど この店は 今 あなたがいないと やっていけないのよ。 この店の味は あなたの味なの。 あなたは うちの人が見込んだ料理人なのよ。 私はね… うちの人が残した この店を できれば続けたいの。 離婚しても… この店は やってもらえないかしら?」

千遥「えっ?」

雅子「清二にも 父親としての責任は残りますからね。 まあ どんな形にせよ この店は あなたが受け継いで 千夏も ここで 安心して暮らせる方がいいでしょう。」

千遥「お義母さん… 本当に それでいいんですか?」

雅子「引き受けてもらえる?」

千遥「はい…。」

なほ子「女将さん…。」

清二「さすが 母さんだ。」

雅子「お前が言うな!」

清二「そうですね はい…。」

雅子「あ~ これで すっきりしたわね。 (笑い声)」

千遥「お兄ちゃん お姉ちゃん 本当にありがとう。」

なつ「よかったね 千遥。 千遥は 本当に 親方から愛されていたんだよ。」

咲太郎「うん… やっぱり そうだ。 絶対に そうだよ。 千遥の親方と 俺たちの親は 同じ浅草の料亭にいたんだ。 そこで 同じダシのとり方を覚えた。 だから 千遥は 同じ天丼が作れたんだ!」

千遥「もし そうなら… うれしいけど。」

咲太郎「絶対に そうだよ!」

玄関前

剛男「ここか…。 あれ… もしかして 千夏ちゃん?」

千夏「はい。」

剛男「やっぱり 千夏ちゃんかい!」

<やっぱり 柴田君 心配で来てくれたんだね。>

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