ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第14話「なつよ、これが青春だ」【第3週】

あらすじ

子牛を救い、柴田泰樹(草刈正雄)から夕方の乳搾りを免除されたなつ(広瀬すず)は、学校帰りに山田天陽(吉沢亮)の家に立ち寄る。天陽とふたり、お互いの姿をスケッチし合うなつ。そんななつに天陽は、農協の支援を受けて家で乳牛を飼い始めたことを打ち明ける。健康そうな牛が天陽のところに来たことでうれしくなったなつは、家に戻ると、泰樹に報告。すると、笑顔だった泰樹の表情がみるみる一変し…。

14話ネタバレ

山田家の畑

なつ「今朝 子牛が生まれて それが 逆子の難産で大変だったんだわ。 見したかったなあ 人工呼吸したのさ。 口で 子牛の鼻に詰まった羊水 吸い出したんだから。 それで やっと息したんだわ。」

天陽「なまらすごいなあ なっちゃんは。 」

なつ「なんも。 学校で習ったことをしただけさ。 ぜいたくに 農業高校まで 行かせてもらってんだから これくらいは当たり前しょ。」

天陽「そんなに大変だった日に わざわざ ここに寄ってくれたのかい。」

なつ「フフ… だからね 今日は 夕方の乳搾りは しなくていいって じいちゃんが。」

天陽「そっか。 じゃあ やってくかい?」

なつ「うん やろう!」

山田家

なつ「ちょ… 動かんで。」

天陽「うん。 ちょっと。」

なつ「うん。 ねえ ちょっと。」

天陽「うん。」

タミ「あっ なっちゃん 来てたのか。 いらっしゃい。」

なつ「おばさん お邪魔してます。」

タミ「また 絵描いてるの? あんたら。」

天陽「見れば分かるべさ。」

なつ「ちょっとでも 天陽君から 絵を教わりたくて。」

タミ「どら 見してちょうだい。 お~ 天陽の特徴をよく捉えてるわ。 よく描けてる。」

なつ「でもね… ちょっと 天陽君の見して。 ほら~ やっぱり違う。 天陽君の絵は うまいんじゃなくて すごいんです。 私 何だか 背中まで 見られているような気してきました。」

天陽「でも なっちゃんの絵は いつも 躍動感があるんだよな。 今にも動き出しそうなんだよ。」

タミ「あんたたち そんなに 絵好きなの? 本当は 陽平みたいに もっと 絵の勉強がしたいの?」

天陽「んなこと 誰も言ってないだろ。」

なつ「違いますよ おばさん。 私たちは この十勝で働いてるから 絵を描くのが好きなんです。」

タミ「どういうこと?」

なつ「絵を描くのが楽しいと 働くのも楽しくなるんです。 牛を見ても 空の雲を見ても 雪が 大地に降り積もっても ああ いいなあって 感じられるじゃないですか。 自然が厳しくて つらいことがあっても 生きていることに向き合えるんです。 う~ん… 絵を描きたいと思うことと ここで生きたいと思うことは 同じなんだって 私 天陽君から教わったんです。」

タミ「えっ 天陽が そんなこと言ったの?」

天陽「そんなこと言わないよ。 絵を描きたいっていうのと 便所に行きたいっていうのは おんなじだって言ったんだよ。」

タミ「何? それ。」

なつ「それを きれいに言うと そういうことしょ?」

天陽「うん… そうかな? きれいに言い過ぎだと思うよ。」

なつ「まあ とにかく 私も 天陽君も ここで 絵を描くことが好きなんです。」

タミ「そう。 なっちゃんも ず~っと ここにいたいのね。」

なつ「それは… まだ分かりませんけど。」

タミ「分かんないの?」

なつ「ここにいたいけど いてもいいのかなって。」

天陽「東京に 本当のきょうだいがいるもんな。」

タミ「ああ…。」

なつ「東京にいるかどうかも。」

天陽「うちの兄貴に捜してもらおうか?」

なつ「ううん 柴田家の人たちも 手を尽くしてくれたんだけど 兄は 私を 捨てたかったのかもしれない。 ハハッ…。」

天陽「そんなことないよ。 うちの兄貴だって 家族を捨てたわけじゃないもん。 ね?」

タミ「そうよ。 うん。」

なつ「そうだね。」

天陽「うん。」

<天陽君の兄 陽平さんは 東京に出て 芸術大学に入りました。 天陽君は お兄さんとは 同じ道を選ばず ここで 農業をしながら 絵を描くことに決めたようです。>

なつ「私 そろそろ行くね。 少しは 牛のこと手伝わんと。」

天陽「あっ なっちゃん。」

なつ「うん?」

天陽「実は 今 うちにも 牛がいるんだ。」

なつ「えっ?」

正治「やあ なっちゃん。」

なつ「おじさん。 牛飼うことにしたって本当ですか?」

正治「うん。 乳牛を 一頭だけ 農協から借りたんだわ。」

なつ「農協から? 農協が 牛を貸してるんですか?」

正治「そうだよ。 あれっ 剛男さんから聞いてないかい? 剛男さんに勧められたんだわ。」

なつ「うちの父さんに?」

牛舎

なつ「いい牛じゃないですか! 健康そうな黒白だわ。」

正治「クロシロ?」

なつ「ホルスタインは 黒の部分が多かったら黒白 白が多かったら白黒っていうんです。 乳は よく出ますか?」

正治「出ますよ。 既に 子牛を産んだ牛だからね。 搾乳は うちじゃ 天陽が一番うまいかな。」

なつ「本当だ うまい!」

正治「この牛に 子牛を産ませて それがメス牛なら 農協に返せばいいんだ。」

なつ「あ~そうか。 牛乳は これから どんどん高く売れるって じいちゃん言ってたから 牛を飼うことは いいことですよ。」

天陽「だけど これからは 牛の飼料になる作物だって 育てないば ダメだろ。 その分 畑も広げないとな。」

なつ「それじゃあ うちのサイロにあるサイレージ 少し分けてもらえるかどうか じいちゃんに聞いてみる。 きっと じいちゃんも 喜んで協力してくれると思うよ。 天陽君が 牛を飼うと知ったら。」

天陽「喜ぶかな?」

なつ「ハハハ… 喜ぶに決まってるっしょ。 じいちゃんと天陽君は 馬が合ってるんだから。」

<なつは 今では すっかり 柴田家の人間です。 だけど 名前は 奥原なつのまま…。 いつか そこに 戻らなければ いけないような気もしていました。>

柴田家

<この時計は 高校に入る時に じいちゃんから もらった なつの宝物です。>

新牛舎

なつ「母さん ただいま。」

富士子「お帰り。」

菊介「なっちゃん お帰り。」

悠吉「お帰り。」

なつ「遅くなっちゃって ごめんなさい。」

悠吉「な~んもだ。」

富士子「今日は いいって言われたしょ。」

なつ「うん…。 母さん 天陽君とこにも 牛がいたんだわ。」

富士子「牛?」

なつ「うん。」

富士子「天陽君とこ寄ってきたの?」

なつ「母さんも聞いてない? 父さんから。 じいちゃんは?」

富士子「子牛んとこいるよ。」

旧牛舎

なつ「じいちゃん 照男兄ちゃん ただいま。」

照男「お帰り。」

なつ「どう?」

泰樹「もう大丈夫だ。 乳も よく飲む。 こいつは なつの子だな。」

なつ「えっ じいちゃん…。」

照男「そったらこと言ったら ほかの子牛が ヤキモチ焼くべさ。」

泰樹「ああ それも そうじゃ。 ハハハ…。」

なつ「あっ じいちゃん 今 天陽君とこ寄ってきたんだわ。」

泰樹「おう 元気だったか?」

なつ「うん。 そんでね 牛がいたのさ。」

泰樹「牛?」

なつ「そう。 農協から 搾乳のできる牛を 一頭だけ借りてきたんだって。 その牛が 子牛を産んで それが メスだったら また 農協に返すんだって。 すごいよねえ 父さんから農協が 農家の救済のために始めたんだって。 そんでね まだ牧草を作ってないから うちのサイレージ 少し分けてあげていい?」

泰樹「なつ。」

なつ「うん?」

泰樹「その牛は わしの牛とは 何の関係もない。」

なつ「それは そうだけど 天陽君とは関係あるしょ?」

泰樹「お前も その牛の面倒を見ることは許さん。」

なつ「どうして?」

泰樹「どうしてもだ。」

なつ「えっ? えっ… どういうこと?」

照男「ダメってことだろ。」

なつ「それは 分かってるけど 何で?」

照男「農協と うまくいってないんだよ じいちゃんは 今。」

なつ「父さんとってこと?」

音問別農協

田辺「柴田さん ちょっと いいかい?」

剛男「はい 組合長。」

田辺「どうですか? その後は。 まだ 牛のこと反対してますか?」

剛男「はい それが まだ… すいません。」

田辺「音問別きっての酪農家である 柴田泰樹さんが 賛成に回らなければ 農協の足並みも そろいませんから。 よろしくお願いします。」

剛男「分かりました。 必ず説得します。」

柴田家

台所

夕見子「おなかすいた~。 明美ちゃん ごはん まだ?」

明美「『まだ?』じゃないよ。 手伝ってよ。 この家で 暇な女は 夕見姉ちゃんしかいないんだから。」

夕見子「あんたがいるじゃない。」

明美「私は女じゃない 女の子だ!」

夕見子「あんたには まだ分かんないと思うけど 体を使うことだけが労働じゃないのよ。 私も こう見えて暇じゃないの。」

明美「こっちは そんなことを 聞いてる暇がないんだよ。」

夕見子「そうやってね ものを考えずに バカになってくのが 一番怖いんだよ 女にとって。」

明美「いいから手伝え! 女らしくしろ 夕見!」

なつ「何 騒いでんの? あっ 明美ちゃん ごめん すぐ手伝うから。」

明美「なつ姉ちゃん このバカに 何か言ってやってよ。 自分は 何もしないで 人を バカにするんだもん。」

なつ「はい 分かった 分かった。 夕見子を当てにした明美も悪いよ。」

夕見子「は~い 分かった 分かった。 おとなしくしてますよ。」

なつ「夕見 何もしないなら 人の心を ひっかき回すな!」

(戸が開く音)

剛男「ただいま!」

なつ「父さん帰ってきた。」

明美「お帰んなさい。」

剛男「ただいま。」

なつ「お帰りなさい。 すぐ ごはん支度するね。」

剛男「なつ おじいちゃんは まだ牛舎か?」

なつ「そうだけど 何があったの?」

剛男「えっ?」

富士子「お帰んなさい。」

剛男「ただいま。 お義父さん…。」

居間

なつ「おいしい! 今日のごはん よく炊けてるね 母さん。」

富士子「うん 本当ね。」

夕見子「でしょ。」

明美「『でしょ』って おかしいでしょ。 どうして 何もしてない夕見姉ちゃんが 『でしょ』って言うのさ。」

夕見子「あんたが そうやって怒ると思ったからよ。 ヘヘ…。」

明美「くぅ~…。」

なつ「やめなよ 夕見。 人の心を ひっかき回さない。」

富士子「明美が偉いのは 母さん ちゃんと分かってるわよ。 いっつも感謝してる。 本当に 料理が上手になったわね。」

剛男「そういえば なつ お前 天陽君ところで 牛を見たんだって?」

なつ「えっ?」

<電気も通って 明るくなった柴田家に その夜は 暗雲が立ち込めそうな気配です。 なつよ ご用心あれ。>

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