ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第151話「なつよ、あっぱれ十勝晴れ」【最終週】

あらすじ

小学校に入学する優(増田光桜)のため富士子(松嶋菜々子)が上京してきた。なつ(広瀬すず)が優の入学の準備をしていると、富士子が最近、泰樹(草刈正雄)が元気がないとぽつりと話す。一方、「大草原の少女ソラ」は放送から半年がたち徐々に人気番組になっていた。マコプロでは、皆寝不足と疲労と闘いながら必死にアニメ制作をしている。なつと坂場(中川大志)の机の上も仕事が山積みで…。

151ネタバレ

坂場家

リビング

昭和50(1975)年 3月

<昭和50年3月 富士子さんが 小学校に上がる優のために 上京してくれました。>

富士子「じいちゃんがね… このところ 元気がないんだわ。」

なつ「えっ?」

富士子「病気とかじゃないんだけどね… 90だしね。」

なつ「父さんも言ってた… 穏やかになったって。」

富士子「私の母さんのことがあってから 医者が嫌いでね 一度も かかったことがないでしょ。 無理やり 連れていこうとしたら もう十分なんて言うんだわ。 そうはいっても なかなか しぶといと思うんだけどね じいちゃんのことだから。」

<そして 4月 優は小学校に入学しました。>

<しかし こんな日も なつと イッキュウさんは休めません。>

なつ「ごめんね 母さん 慌ただしくて。」

富士子「そのために来たんだから。」

坂場「お義母さん すみません。 よろしくお願いします。」

富士子「あっ イッキュウさんのご両親から届いた この百科事典 どうするの?」

坂場「あ~ そのまま置いといて下さい。 出しても まだ読めませんから。」

富士子「分かった。」

なつ「名古屋のおじいちゃん おばあちゃんに 入学式の写真と一緒に 手紙送ろうね。」

優「うん。」

なつ「優 おめでとう。」

坂場「おめでとう。」

なつ「なるべく早く帰ってくるからね。」

優「行ってらっしゃい。」

マコプロダクション

作画室

なつ「おはようございます。」

坂場「遅くなって すみません。」

桃代「なっちゃん おめでとう。」

なつ「ありがとう。」

陽平「おめでとう。」

なつ「ありがとうございます。」

町田「これ 今朝 回収した原画です。」

なつ「あ… みんな どう?」

町田「外注先も みんな 徹夜続きです。 あっ でも 作品には みんな 自信を持ってるんで それで なんとか 持ちこたえてる感じですね。」

なつ「あ…。」

麻子「イッキュウさん 今日中に 絵のコンテ上げてね。」

坂場「分かってます。」

<『大草原の少女ソラ』は 放送から半年がたち 人気番組になっていました。 物語も佳境を迎え なつたちも外注先も 視聴者の期待に応えようと 必死に作業を続けました。>

坂場家

リビング

富士子「上手。 もう一つ…。」

(ブザー)

富士子「はい。」

玄関

千遥「こんにちは。」

富士子「千遥ちゃん?」

千遥「姉から お見えになっていると 聞いていたので。」

富士子「えっ?」

千遥「千夏です。」

富士子「あれ! 本当 昔のなつに そっくりだわ。」

優「千夏ちゃん!」

千夏「優ちゃん!」

富士子「どうぞ 上がって。」

千遥「お邪魔します。」

リビング

千遥「あの 柴田さん その節は 大変失礼をして すみませんでした。 私の洋服まで 取っといて頂いて ありがとうございます。」

富士子「なんもさ。 そんな水くさいこと言わなくていいの。」

千遥「あっ これ 優ちゃんの入学祝に作ってきたんです。」

富士子「千遥ちゃんのお料理?」

千遥「はい。」

富士子「うれしいわ。 なつも イッキュウさんも喜ぶわ。」

千遥「柴田さんも いつか 是非 お店にいらして下さい。」

富士子「千遥ちゃん 本当に よかった…。」

千遥「ご心配をおかけして すみませんでした。」

富士子「じいちゃんも喜んでたわ。」

マコプロダクション

作画室

坂場「これが レイが父さんに 夢を語るシーンの絵コンテです。 場所は ソラとレイが 風の丘と呼んでいる丘で そこで 星を見ながら 語るようにしたいんです。」

なつ「星を見ながらね…。 それは 何時ごろ?」

坂場「何時?」

なつ「眠る前? それとも 朝の搾乳をする前?」

坂場「う~ん…。」

なつ<新天地を求めて 旅をするソラの家族は その途中で 川に流されていた レイを助けました>

なつ<いつしか ソラとレイは 本当の家族のように育っていきました。 やがて レイは 馬の死をきっかけに 獣医になりたいという夢を 抱くようになりました。 レイは その夢を かなえるために 遠くの街へ旅立つことを 父さんに告げるのでした>

なつ<レイが 父さんに夢を語るシーンか…>

なつ「イッキュウさん。」

坂場「うん?」

なつ「この絵コンテだけど 星を見ながら話すのはいいけど やっぱり 最後は夜明けにしない?」

坂場「夜明け?」

なつ「そう。 話し終えた2人に 朝日が昇ってくるの。 牛飼いの生活は 太陽と共にあるでしょ。 その始まりを示す朝日の中でなら 父さんと レイの別れる決心も もっと 希望に満ちたものになると思う。 私も 朝日に 励まされたことがあったから。」

神地「開拓者を励ます朝日か… いいと思う!」

坂場「それなら もっと 風の丘であることも生かせるな。 風と光で 夜明けのにおいを出そう。」

麻子「ちょっと 変えるなら すぐに動いてよ。 もう時間ないんだから。」

坂場「分かりました。 陽平さん!」

神地「モモッチ!」

陽平「どうしたの?」

坂場「このシーンなんですが 最後は 夜明けにしたいんです。」

陽平「夜明け? なるほど…。 僕も 昔は天陽たちと一緒に開墾してて 十勝の夜明けは 何度も見てるよ。」

坂場「風と光で それを表現したいんです。」

なつ「陽平さんの中にある夜明けを 是非 描いて下さい。」

陽平「分かった。 描いてみるよ。」

桃代「私は?」

神地「光が出れば 人物に影も出るだろ。」

桃代「うん。」

神地「夜明けらしい影の色を 陽平さんと相談して 勉強しといた方がいいよ。」

桃代「なるほど。 ありがとう 神っち。」

神地「モモッチには 才能があるんだから。」

桃代「神っちに そんなこと言われると うれしい。」

茜「忙しいのに 何か いい感じね。」

麻子「あ~ これで あの何枚 増えることやら。」

坂場家

玄関

なつ「ただいま。」

寝室

なつ「ただいま…。」

リビング

富士子「これ 千遥ちゃんが持ってきてくれたの。」

なつ「えっ 千遥が来たの?」

富士子「うん。 わざわざ 入学のお祝いにって 持ってきてくれたわ。」

なつ「おいしそう。」

富士子「本当に おいしかったわ。 食べるかい?」

なつ「うん。 うれしい…。 これから仕事するから その前に。」

富士子「体 壊すよ。 というより 壊さない方が不思議だわ。」

なつ「ハハ… じいちゃんにも届けたいしょ。」

富士子「えっ?」

なつ「じいちゃんも見てくれてるんでしょ? したら じいちゃんに少しでも 元気になってもらいたいのさ。」

富士子「なつ…。」

なつ「うん?」

富士子「心配してるんだね。」

なつ「じいちゃんだけでなく じいちゃんのような開拓者の人に 恥ずかしくないものを 見せたいんだわ。 私にできる恩返しは それだけだから…。 頂きます。 ん~!」

マコプロダクション

作画室

<なつたちは ロケハンで出会った 十勝に人々や 風景を思い出しながら 開拓者の物語を描いてゆきました。>

回想

なつ「じいちゃんが 一人で北海道に来て 開拓したみたいに…。 私も 挑戦したい。」

泰樹「よく言った。 それでこそ わしの孫じゃ! 行ってこい。 東京を耕してこい! 開拓してこい!」

回想終了

<そして そのシーンが放送される日を 迎えました。>

テレビ

♬『育ててくれる 昨日の涙と 明日の笑顔は きっと友達 ラララ ラララ ラララ ラララ』

テレビ・レイ『父さん 僕は 牛や馬を助けたい。 命を救いたい。 そのために 勉強したいんだ』。

レイ『そのためには 遠くの街に行かなくちゃいけない。 父さんと牧場を 一緒にやりたいけど ごめん 僕は どうしても 獣医になりたいんだ。 行きたいんだ。』

父さん『レイ… あのひときわ輝いている星を見ろ。 あれは 明けの明星だ。 この辺りでは 古くから 朝の口にいる神と呼ばれている。』

レイ『朝の神様…?』

父さん「お前は 今 あの神様に誓ったんだ。 よく言った。 それでこそ 私の息子だ。」

レイ「父さん…。」

父さん『行ってこい レイ…。 お前がいなくとも 俺が この牧場を守る。 お前の分まで守ってみせる。 だから 行ってこい。 お前は お前の夢を守れ。』

レイ『父さん!(泣き声)』

(風の音)

<なつよ どうやら 風は ここまで吹いたようだ。>

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