ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第152話「なつよ、あっぱれ十勝晴れ」【最終週】

あらすじ

「大草原の少女ソラ」を見ていた十勝の柴田家では、泰樹(草刈正雄)が何か物思いにふけっていた。放送後、久しぶりに「雪月」のお店に向かった泰樹は、とよ(高畑淳子)を訪ねるのだった。梅雨に入る頃、なつ(広瀬すず)たちは「大草原の少女ソラ」も大詰めを迎えていたが、放送前日ギリギリに完成することが当たり前になっていた。マコプロでは、局のプロデューサーからのクレーム電話を麻子(貫地谷しほり)が受けていて…。

152ネタバレ

テレビ

レイ『父さん…。』

父さん『行ってこい レイ…。 お前がいなくとも 俺が この牧場を守る。 お前の分まで守ってみせる。 だから 行ってこい。 お前は お前の夢を守れ。』

レイ『父さん!』

(風の音)

坂場家

リビング

富士子「(すすり泣き)」

優「おばあちゃん 泣いてる。」

富士子「何か なつと じいちゃんの時のこと思い出して…。」

坂場「泰樹さんも 見てくれたかな?」

富士子「電話してみる?」

なつ「いい 大丈夫。 何か… つながれた気がした。」

雪月

<その翌日 泰樹さんは 久しぶりに遠出をしたようです。>

雪次郎「はい いらっしゃい… あ 泰樹さん。 えっ お一人ですか?」

泰樹「うん。」

雪次郎「大丈夫なんですか?」

泰樹「一人で歩ける。」

雪次郎「あ… すいません。」

泰樹「雪次郎。」

雪次郎「はい。」

泰樹「亜矢美さんがいると 夕見子から聞いたんじゃがな。」

雪次郎「ああ 亜矢美さんは 今年の春 辞めたんです。 また 旅に出ました。」

泰樹「あ そうかい…。」

雪次郎「亜矢美さんに会いに来たんですか?」

泰樹「いや…。 いや あれじゃ…。」

雪次郎「あれ?」

泰樹「ばあさん いるか?」

雪次郎「あっ ばあさん…。」

とよ「はああ… とうとう 私に会いたくなったのかい?」

泰樹「は?」

とよ「私が恋しくなったってことは いよいよ お迎えが近いね。」

泰樹「あんたは 死神かい。」

とよ「天使だべさ ハハハ…。 大丈夫 あんたは天国だ。 安心しなさいや。」

泰樹「そっちは まだ来んのか?」

とよ「お迎えかい? 何度か来たね。 けど 追い払った。」

泰樹「ハハハ… しぶといな。」

とよ「開拓者の1世だからね。 そう簡単には くたばんないもね。 なしたのさ。 私が好きなら 好きって言えばいいべさ。 それ言いに来たんだべ?」

泰樹「口が裂けても言えん。」

とよ「ハハハハ… したら 何なのさ?」

泰樹「あんた… なつのテレビ見たか?」

とよ「なっちゃん? テレビ? ああ 漫画かい? そりゃ見てるさ。 あれのおかげで あんた うちは大もうけなんだわ。 観光客が増えてるべさ。 なっちゃんに 足向けて寝らんないわ。」

泰樹「昨日 見たか?」

とよ「昨日? ああ。 あれ 昨日だったかい… 見たよ。 あれかい… あんたと なっちゃんの別れを 思い出したんかい?」

泰樹「朝日を思い出したんじゃ。」

とよ「朝日?」

泰樹「ああ…。 何度も見た ああいう朝日を… 開拓してる頃にな。 この土地は捨てよう… そう思っても 朝日を見ると 気力が湧いてきた…。 ここで諦めるなって… 励まされた。」

とよ「へえ~。」

泰樹「そういう朝日を なつが見してくれた…。」

とよ「夜明けに感動したんかい…。 まあね 夜明けに励まされるってことは 何度もあったね。」

泰樹「なつは… そういうものを作ってるんじゃ。」

マコプロダクション

<なつたちの制作は 梅雨に入る頃に 大詰めを迎えました。 スケジュールは遅れ 放送の前日 ギリギリに なんとか完成することも 当たり前になっていました。>

作画室

(電話の呼び鈴)

麻子「はい マコプロです。」

藤森『もう いい加減にしろよ マコちゃん! 演出を呼べ 演出を!』

麻子「演出は 今 あいにく出払っています。」

藤森『ふざけるなよ お前ら。 本来なら 1週間前に 納品する約束だろう! それを 前日でいいなんて 開き直ってないだろうな!』

麻子「すみません。 開き直っているわけじゃないんです。 もう それしかないんですよ 視聴者の期待に応えるためには。 ここで手を抜けなんて言ったら みんな開き直って 逃げ出してしまいます。」

藤森『おいおい… 脅かすなよ マコちゃん。』

麻子「すみません。 彼らを支えているのは もう いいものを作っているという プライドしかないんです。 絶対に 穴はあけませんから… よろしくお願いします。」

藤森『はあ… 頼んだよ。』

(電話の切れる音)

石沢「局の藤森さんですか?」

麻子「そう。 いい? 絶対に イッキュウさんに 言っちゃダメよ。」

石沢「はい。」

麻子「苦情を 現場に伝えちゃダメ。」

石沢「あ… 分かりました。」

麻子「作品の質は 最後まで 絶対に こっちで守るわよ。 こうなったら 私も腹くくるわよ。」

玄関前

町田「あっ…! あ~!」

作画室

町田「すいません! 回収した動画のカット袋を 水たまりに落としてしまいました!」

下山「ええっ!」

町田「すいません!」

石沢「何やってんだよ!」

麻子「すぐ確認して!」

石沢「あ~ あちゃちゃちゃちゃちゃちゃ…!」

麻子「何か 拭くものある?」

石沢「あららら…。」

下山「はい はい はい はい はい…。」

なつ「ダメだ…。」

坂場「全滅か?」

なつ「使い物にならない。」

麻子「すぐ戻して 描き直してもらって。」

町田「ダメです! 外注は もう限界です。 描き直せなんて言ったら もう やめると言いだしかねません!」

麻子「じゃ こっちで やるしかないわね。」

町田「お願いします。」

茜「私だって限界よ…。 これは 動画チェックじゃなくて 一から描けってことでしょ? 無理よ そんなことは!」

下山「茜…。」

茜「どうやって そんな時間作れっていうの!」

なつ「茜さん 私も手伝うから…。」

茜「なっちゃん 何言ってるの! なっちゃんの仕事だって 24時間 寝ないでやっても 間に合わないくらいあるでしょ!」

なつ「それでも! やるしかないの。」

下山「僕も手伝うからさ。 茜。 子どものことは 一晩ぐらい お義母さんに見てもらおう。」

なつ「大丈夫。 茜さんは できる限りでいいから。」

神地「俺もやるから 茜ちゃん。」

麻子「だけど 原画は原画で 急がないと間に合わないわよ。」

坂場「しかたない。 描き直すカットは できるだけ 動きが少なくなるように…。」

なつ「動きは 変えなくても大丈夫! みんなの腕は上がってるから 同じ質の画でも 前より速く描けるようになってる。 みんなで 力を合わせれば このまま 質を落とさなくても 絶対 乗り切れる! 待ってる人がいるの。 この作品を 楽しみに待っている人たちが…。 その人たちを 私たちは 絶対に裏切っちゃいけない。」

麻子「茜ちゃん 私も手伝うから頑張ろう!」

立山「私も 茜さんみたいに腕はないけど 頑張ります!」

神地「よし みんなで 町田を助けてやろうぜ! 町田がいなかったら 俺たちの仕事は 絶対に成り立たないんだからよ!」

町田「すいません…。」

なつ「みんなで やりましょう。」

茜「ごめんなさい…。」

神地「いいの いいの いいの。 茜ちゃんが泣くことないんだから。」

下山「いやいやいや… 君が慰めることでもないでしょ。」

神地「か… かわいそうだから…。」

下山「慰めんのは 旦那の仕事です。」

なつ「よし 頑張りましょう。」

陽平「石沢さん ドライヤーお願いします。」

麻子「何か干すもの… ひも持ってきて ひも!」

坂場家

寝室

富士子♬『広がる空』

マコプロダクション

作画室

神地「はい 一丁上がり!」

なつ「こっちも出来た。」

坂場「町田君。」

町田「はい。」

坂場「次 これ お願いします。」

坂場家

台所

なつ「ただいま!」

富士子「お帰り! 朝には間に合ったね。」

なつ「ごめんね 母さん。 また すぐ戻らなくちゃいけないんだけど 朝の支度だけはと思って。」

富士子「えっ 寝ないで また行くのかい? そのために わざわざ帰ってきたの?」

なつ「まだ寝てる?」

寝室

なつ「優 おはよう! 起きる時間だよ。」

優「ママ おはよう!」

なつ「おはよう。 さ 今日も元気に頑張ろう! 学校は楽しい?」

優「楽しいよ。 ママ みんなね ソラを見てるよ。 大好きだって。」

なつ「そう? そっか! じゃ ママも頑張らないと。」

録音スタジオ

坂場「それじゃ これから ラストシーンです。 最後は 青年に成長したレイが ソラのもとへ帰ってくるんです。 ソラは この地で開拓を続けて たくましい牛飼いに育っています。 2人が成長した声で 演じて下さい。」

レミ子「成長した声で? (せきばらい) はい 分かりました。」

白本「分かりました。」

坂場「相変わらず 画は間に合っていませんが いつものように 線に合わせてお願いします。」

白本 レミ子「はい。」

レミ子「ソラ… ソラ~! (荒い息遣い)」

白本「レイなの…? レイ!」

レミ子「ソラ~!」

レイ「ソラ~!」

ソラ「レ~イ!」

(鳴き声)

<なつよ 『大草原の少女ソラ』も いよいよ最終回だ。>

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