ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第155話「なつよ、あっぱれ十勝晴れ」【最終週】

あらすじ

十勝が冷害水害に見舞われた昭和50年。柴田家の居間では剛男(藤木直人)と照男(清原翔)が古い牛舎を建て替え、新しい設備を導入しようと話していた。多額の借金をして設備投資しようとする照男に対し、泰樹(草刈正雄)はやりたいようにすればいいと言う。その晩、十勝には激しい落雷の音が響き渡る。翌朝なつ(広瀬すず)が起きると停電になっていた。牛の心配をする泰樹は若返ったように声を張り、指示をしていくが…。

155ネタバレ

柴田家

居間

なつ「何してんの?」

照男「古い牛舎を 建て替えようと思ってんだ。」

なつ「あそこ 壊しちゃうの?」

照男「もっと大きい牛舎にするんだ。」

剛男「今度は パイプラインミルカーにするそうだ。」

なつ「パ… パイプライン?」

坂場「搾った牛乳を集めるまでを 機械化するということですね?」

照男「そう。 イッキュウさん それが 今 一番新しい牛舎なんだわ。」

(激しい雨の音)

富士子「あっ 降ってきた。」

なつ「じいちゃん…。」

<昭和50年8月。 この年 十勝は 冷害 水害に見舞われました。>

なつ「じいちゃんは知ってたの? 古い牛舎を立て直すって。」

照男「じいちゃんは 俺に任せるって言ってくれたんだ。」

なつ「そうなの?」

夕見子「今のバケットミルカーじゃ ダメなの?」

照男「パイプラインにすれば 重いバケットを運ぶ必要もなくなるべ。 牛だって どんどん増やしていけるんだ。」

剛男「いや したけど 設備費用もかかるからな。」

富士子「また お金を借りるってことかい?」

剛男「まあ 組合としても 補助事業として 勧めてるところがあるから 単純に反対はできないけど。」

照男「そうだ。 うちが率先してやらないで どうするんだ。 じいちゃんの作った この牧場を 十勝一 日本一にしていくのが 俺の役目だべさ。」

剛男「いくら 補助があったとしても 多額の借金をすることに 変わりはないからな。」

照男「それは 父さんも納得してるべさ。 乳量をふやしていけば 借金した分は取り返せる。 そうやって 牧場は 大きくしてくしかないべや。」

坂場「だけど 投資を回収するために 規模を拡大してゆけば そのうち 終わりが見えなくなりませんか?」

照男「えっ?」

なつ「イッキュウさん…。」

富士子「父さんは反対しないのかい? 照男のやることに。」

泰樹「照男の好きにすりゃいい…。 これは照男の開拓じゃ。 照男が覚悟すりゃいい。」

照男「じいちゃん… 分かった。」

(雷鳴)

<その晩は 嵐になりました。>

(激しい雨の音)

(雷鳴)

台所

富士子「あっ 父さん 停電だわ。」

泰樹「何時じゃ?」

剛男「もうすぐ7時です。 おお 照男。」

照男「参ったわ 停電だ。」

剛男「電気がなければ ミルカーが使えないべ。」

照男「牛乳を冷やす バルククーラーもだ。」

剛男「全部 電気頼みだからな。」

なつ「おはよう。」

坂場「おはようございます。」

一同「おはよう。」

夕見子「なしたのさ? みんなで。」

富士子「停電で ミルカーが使えないって。

泰樹「牛は?」

照男「菊介さんと砂良が見てるわ。」

泰樹「搾乳は?」

照男「大丈夫だ じいちゃん。 搾乳は 昼ごろまでしなくたって 牛は待てるって話だ。 それまでに 電気も通るべ。」

なつ「昼まで搾乳しなかったことなんてあるの?」

照男「うちでは まだないけど… 大丈夫だったって話は聞いてる。 俺は 一応 発電機のありそうなとこに聞いてみるわ。」

牛舎

(鳴き声)

居間

照男「ダメだ…。」

泰樹「牛が鳴いてるべ。」

照男「えっ?」

泰樹「牛が鳴いてるのが聞こえんのか!」

なつ「じいちゃん…。」

泰樹「すぐ牛舎行け! 牛を 放っておくな!」

富士子「父さん…。」

泰樹「牛は 決まった時間に搾ってやるから わしらを信用して いい乳 出してくれるんじゃ。 こっちの都合で待たせるな! 手で搾るんじゃ!」

なつ「搾らなかったら 乳房炎になるべさ!」

泰樹「牛を助けるんだ。 照男 行け!」

照男「分かった。」

泰樹「手の空いてる者は みんな来い!」

剛男「お義父さん すいませんが 僕は農協に向かいます。 ほかに困ってる農家が あるかもしれないんで すぐ対策を考えます。」

泰樹「剛男 頼む… 行け。」

泰樹「なつ すぐ着替えてこい。」

なつ「分かった! 千遥 子どもたち お願い。」

牛舎

菊介「おやっさん! なっちゃん!」

泰樹「菊介 どうじゃ?」

菊介「分娩間もない牛から搾り始めてます。」

泰樹「うん。」

なつ「あと 乳房炎に かかったことのある牛もいれば 先に搾った方がいいと思う。」

菊介「そうだな。」

泰樹「なつ ついてこい。」

なつ「はい!」

泰樹「なつ この牛 搾れ!」

なつ「分かった。」

夕見子「じいちゃん 私にも教えて!」

坂場「僕にも教えて下さい!」

泰樹「教えてる暇はない… 見て覚えろ。」

坂場「はい。」

なつ「イッキュウさんは 集乳缶 運ぶの 手伝った方がいいわ。」

坂場「うん 分かった。」

富士子「夕見子 あんたには 私が教えるから。」

悠吉「おやっさん!」

菊介「おやじ!」

なつ「悠吉さん!」

悠吉「遅くなりました!」

泰樹「よく来てくれた。 牛 頼む。」

悠吉「はい!」

菊介「だけど おやっさん バルククーラーが使えないんじゃ 牛乳を冷やしておけないべ。 搾乳しても 出荷できないですわ。」

泰樹「牛だけは助けたい。 牛乳は 後でいい。」

照男「母さん 砂良 アイスクリーム屋を壊してもいいか?」

富士子「えっ?」

砂良「どうすんの?」

照男「じいちゃん 少しでも冷やせるように 水槽を戻すべ!」

泰樹「ああ 照男 頼む!」

照男「分かった。 地平 ついてこい!」

地平「はい!」

詰め所

照男「急げ! 地平 井戸水くんでこい!」

地平「分かった!」

牛舎

夕見子「おっ…。 何だ 私にも才能あるんでないの。」

なつ「イッキュウさん これも。」

坂場「分かった。」

なつ「お願い。」

坂場「よいしょ…。」

詰め所

照男「もう これが限界だ…。」

泰樹「しかたないべ。」

悠吉「牛は 全部 助かったんだ。」

菊介「乳房炎になった牛は きっと 一頭もおらんべさ。」

なつ「いかった!」

泰樹「よくやった 照男。」

照男「俺なんか まだダメだ。」

泰樹「いや そんなことはない。 よくやった。」

照男「じいちゃん…。」

泰樹「一番大事なことは 働くことでも 稼ぐことでもない。 牛と生きることじゃ。」

照男「うん…。」

泰樹「みんな よくやった。 ご苦労さん。」

<嵐が去った翌日 なつは 泰樹さんと一緒に 天陽君の畑に向かいました。>

山田家の畑

靖枝「泰樹さん! なつさんも!」

なつ「こんにちは。」

靖枝「来てくれたんですか。」

泰樹「ああ。」

なつ「大変でしたね。」

靖枝「はい。 義父(ちち)と 義母(はは)は 家の方を片づけてます。」

山田家

馬小屋

タミ「どう?」

正治「ああ 大丈夫。 絵は ぬれてない。 無事だわ。」

タミ「ああ よかった…。 なんとか守れたわ 天陽を…。」

山田家の畑

泰樹「どうじゃ?」

靖枝「畑は このとおり。 けど 芋は残ってます。 水浸しで売りもんには ならないかもしれないけど でんぷん用に出荷することなら できるかもしれんわ。」

泰樹「天陽が守ってくれたんじゃ。」

靖枝「はい。」

泰樹「わしらも手伝う。」

なつ「手伝います。」

靖枝「すいません。 なつさん ありがとう。」

なつ「なんも。」

靖枝「陽ちゃんも喜びます。 あの なつさん… なっちゃんって呼んでもいいかい?」

なつ「当たり前だべさ。 やっちゃん。」

(笑い声)

なつ「さあ やろう。 みんなで頑張るべ!」

道夫「はい!」

彩子「はい!」

回想

泰樹「この荒れ地を我々の子孫に誇れる 美しい我が里の風景に変えるんじゃ!」

一同「オ~!」

回想終了

彩子「痛っ!」

靖枝「大丈夫?」

<なつよ また 大事なものを受け継いだな。>

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