ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第15話「なつよ、これが青春だ」【第3週】

あらすじ

泰樹(草刈正雄)と剛男(藤木直人)の間には、農協が貸した天陽家の牛のことで、ただならぬ空気が流れていた。農協に勤める剛男(藤木直人)は、なつ(広瀬すず)を味方につけようとするが、剛男の真意をつかめないなつは、微妙な反応をしてしまう。すると、泰樹が突然口火をきった「剛男が農協で進めている、牛を貸し、酪農家を牛耳るやり方には賛同しない」。そのひと言で、泰樹と剛男は真っ向から対立してしまう…。

15話ネタバレ

山田家

牛舎

なつ「いい牛じゃないですか。」

正治「剛男さんに勧められたんだわ。 この牛に 子牛を産ませて それがメス牛なら 農協に返せばいいんだ。」

柴田家

旧牛舎

泰樹「その牛は わしの牛とは 何の関係もない。」

なつ「それは そうだけど…。」

泰樹「お前も その牛の面倒を見ることは許さん。」

音問別農協

田辺「音問別きっての酪農家である 柴田泰樹さんが 賛成に回らなければ 農協の足並みも そろいませんから。」

剛男「必ず説得します。」

柴田家

居間

剛男「そういえば なつ お前 天陽君ところで 牛を見たんだって?」

なつ「えっ?」

<これが なつの人生を揺るがす 波乱の幕開けでした。>

剛男「どうだった? いい牛だったか?」

なつ「うん… 黒白のいい牛だった。」

剛男「だろ?」

なつ「うん…。」

剛男「天陽君も喜んでたか?」

なつ「うん 喜んでた… と思う。」

剛男「『と思う』って どっちだ? 喜んでたのか? 喜んでなかったのか?」

なつ「えっ?」

照男「どっちでもいいだろ そんなこと。」

剛男「どっちでもよくない! 大事なところだろ!」

照男「何が言いたいのか分かんないよ なつには。」

富士子「そうよ。」

剛男「いや だから 天陽君の家にいる牛はだな…。」

照男「そういうことを なつに言っても しょうがないだろ。」

富士子「そうよ。」

剛男「どうして?」

なつ「どうして?」

剛男「なあ なつも気になるよな。 天陽君は なつの大事な友達だもんな。」

夕見子「恋人でしょ。」

なつ「えっ?」

夕見子「えっ?」

泰樹「ん? そうなのか?」

なつ「違う! 違うってば… ねえ 夕見! 変なこと言わないでよ。」

剛男「余計なことを言うな。 お前は。 大事な話をしてるのに。」

夕見子「だから 何の話?」

明美「私にも分かんな~い。」

富士子「そうよねえ。 言いたいことがあるなら なつにじゃなく 言いたい人に言えばいいのよ 面と向かって堂々と。」

なつ「じいちゃんに 言いたいことがあるの?」

剛男「だから つまりですね 天陽君の家にいる牛は 農協が貸した牛なんですよ。」

泰樹「そんな話は聞いとらん。」

剛男「だから 聞いて下さい。」

泰樹「聞きたくないと言っとるんじゃ。」

なつ「話ぐらい聞こうよ じいちゃん。」

泰樹「ん?」

なつ「私も聞きたいから 一緒に聞こう。」

泰樹「じゃあ しゃべれ。」

剛男「あ… はい。 去年のような 冷害の多いこの土地では 農家は みんな 酪農もする必要は感じていても 牛を購入する資金がなくて 手を出せないんですよ。 だから 農協で 牛を保有して それを貸すことにしたわけです。」

なつ「それは すごくいいことだと思う。」

剛男「そうだろ?」

泰樹「だからといって 農協が 牛飼いを 牛耳っていいことにはならんぞ。」

剛男「酪農家を牛耳るだなんて そんなこと考えてませんよ。」

なつ「牛耳るって?」

富士子「牛耳るって 牛の耳って書くのよね?」

夕見子「そう。」

富士子「なしてかしら?」

なつ「母さん そこは 今 気にしなくていいと思う。」

富士子「ああ… そうね。」

剛男「我々は ただ 農家の力になりたいだけなんです。 みんなで 安心して暮らせる土地に したいだけなんですよ。」

泰樹「お前は 牛飼いのことは 何も分かっとらん。」

なつ「じいちゃん それはひどいよ。」

剛男「ひどいです! 私だって 富士子ちゃんと結婚してからは 22年も!」

明美「あっ 富士子ちゃんが出た。」

なつ「シ~。」

剛男「そりゃ お義父さんの力には あんまり なれなかったかも しれませんけど… けど そばで ず~っと お義父さんの苦労を見てきたつもりです!」

なつ「あの~ よく分かんないんだけど 何が問題なの? じいちゃんは。」

泰樹「問題など 何もない。 農協が 勝手に 問題をこじらしとるだけじゃ。」

剛男「そんなことは ありませんよ。 お義父さん この村に電気が通って 明るくなったのだって 我々 農協組合が 努力して資金調達をしたからです。 団結なくして 農業も酪農も よくなっていきませんよ。 少しは 我々を信じて下さい お義父さん!」

泰樹「分かった。」

剛男「えっ… 分かってくれましたか?」

泰樹「電気いらん。」

剛男「えっ?」

泰樹「明日 電信柱 引っこ抜け。 世の中 無駄に明るくなり過ぎる 大事なことが見えんようになる。」

夕見子「うまいこと言うな じいちゃん。」

なつ「夕見! ひっかき回さない。」

旧牛舎

照男「何だ? なつ。」

なつ「ああ 照男兄ちゃん。」

照男「見回りは 俺がやるから いいって言ってるだろ。 お前は 学校があるんだから 早く寝れ。」

なつ「大丈夫。 あのさ… 照男兄ちゃんは どう思う?」

照男「ん?」

なつ「じいちゃん 何で あんな怒ってんのさ? そんな怒ることかな? 父さんの言ってること。」

照男「お前が気にすることはないよ。 したから じいちゃんも お前に話さないんだべ。」

なつ「でも どういうこと?」

照男「天陽君とは 何も関係ないことだ。」

なつ「えっ?」

照男「したから 気にすんな。 おやすみ。」

なつ「天陽君のことは関係ないってば…。」

居間

富士子「それは 分かってるけど 父さんの気持ちもね。」

剛男「あ なつ…。 なっちゃん。」

なつ「えっ?」

剛男「ちょっと こっち いらっしゃい。 ほら お茶でも飲まないか?」

なつ「よいしょ… 何?」

富士子「ちょっと なつをどうする気?」

剛男「別に どうもしないよ。 だけど なつだって気になってるだろ?」

なつ「うん 気になってる。 じいちゃんのことしょ?」

剛男「そうなんだ。」

富士子「なつを巻き込まないでよ。」

剛男「そんなこと言うなら なつは もう巻き込まれてるんだよ。 これは なつの将来に関わることなんだから。」

なつ「じいちゃんと何があったの?」

剛男「うん… 実はな 今度 農協で 牛乳を 一手に引き取ろうかと 思ってるんだ。」

なつ「牛乳を 一手に?」

剛男「そう。 今までは 酪農家は 直接 乳業メーカーに卸してただろ? それを 農協が まとめて 乳業メーカーに卸そうとしてるんだよ。」

なつ「それに じいちゃんが反対してるわけ?」

剛男「そうなんだ。」

なつ「ありがとう。」

富士子「じいちゃんは 農協を頼りたくないのさ。 自分の牛乳は 自分の力で売りたいだけなの。 昔から 何でも 自分の力でやってきて それを支えに生きてきた人だからね。」

剛男「だからといって うちの牛乳だけ高く売れれば それでいいってわけにはいかないよ。」

富士子「それは 分かってるわよ。」

剛男「このままだと 力の弱い小さな農家が 泣くことになるんだ。 それで いいと思うか? なつは。」

なつ「そうは思わんけど…。」

剛男「頼む なつ 音問別の酪農のために 立ち上がってくれないか。」

なつ「え~…。」

夕見子「何 大げさなこと言ってんのさ。」

剛男「何だ 聞いてたのか。」

夕見子「別に 興味ないから気にしないで。」

剛男「少しは興味を持ちなさい お前も なつと同じ高校生だろ。」

夕見子「私は普通校。 普通に生きます。 お母さん 私も お茶が欲しい。 普通に 喉渇いた。」

剛男「なつ じいちゃんさえ 組合に任せるって言ってくれたら 天陽君だって幸せになれるんだよ。」

なつ「えっ?」

富士子「そっ… そんな ずるい言い方しないでよ!」

剛男「いや ごめん… けど そういうことなんだ。 頼む なっちゃん じいちゃんに言ってくれないか。 農協との話し合いに応じるようにって。 私は 農協に賛成だって。」

なつ「え~…。」

子供部屋

(なつのため息)

夕見子「だから 私には関係ない 迷惑だって言ってやればよかったのさ。」

なつ「関係ないことないしょ。 私だって この牧場で働いてんだから。」

夕見子「なつ あんただって 人生を選ぶ権利はあるんだからね。」

なつ「どういう意味?」

夕見子「あんたが 農業高校行ったのだって じいちゃんの期待に応えるためしょ? その上 父さんの期待に応える必要は ないって言ってんの。」

なつ「私は 好きで 学校に行ってるし ここで働いてんの。」

夕見子「そう? なつは どっかで まだ遠慮してんだよ。」

なつ「そんなことない。 いい? 余計なこと言わんでよ。 これ以上 ひっかき回さないでよ。」

夕見子「あ~… そうですか。 それは 余計なお世話でしたね。 では どうぞ ご自由に 朝まで じっくり悩んで下さい。 おやすみ。」

なつ「ねえ 夕見…。 (ため息)」

新牛舎

なつ「(あくび)」

悠吉「どうした なっちゃん 寝不足かい?」

なつ「そんなことないよ。」

悠吉「じゃ たるんでるだけかい。」

菊介「春から夏にかけてのこの時期が 一番眠いもな。 一年で一番 寝心地がいい。 (あくび) 寝ていたい。」

富士子「なつ もういいから 学校行く支度しな。」

なつ「まだ大丈夫だよ。」

富士子「ゆうべのことは 気にしなくていいからね。」

なつ「母さん 私 じいちゃんと話してみるわ。」

富士子「いいの そんなの あんたが…。」

なつ「けど じいちゃんの考えも知りたいし。」

泰樹「何の考えだ?」

なつ「あっ じいちゃん…。」

なつ「じいちゃんは 農協の考えに反対なの?」

照男「なつ そんなこと 朝からする話じゃないべや。」

泰樹「わしは 反対はしとらん。 農協が 勝手に やりたいことをやればいい。 わしとは関係ないと言ってるだけだ。」

悠吉「その話か…。」

なつ「だから じいちゃんは 何が悪いと思ってんの?」

泰樹「悪いなんて言ってない。 変える必要はないと言ってるんだ。」

なつ「組合より メーカーとの関係を 大事にしたいってこと?」

泰樹「わしの牛乳を ほかの牛乳と一緒にされてたまるか。 あいつに頼まれたのか?」

なつ「えっ?」

泰樹「組合は お前を使って わしを調略するつもりか。」

なつ「そったらこと… 組合は関係ないよ。」

泰樹「あいつに言っとけ。 わしの牛乳は 農協には絶対に売らんと。 なつに言っても無駄だと。」

富士子「あ~ 余計に こじらせた。」

なつ「ちょっと待ってよ じいちゃん。」

泰樹「ああ それから 今日 帰ったら 子牛の様子を見てくれ。 食欲が落ちてるようだ。 分かったな?」

なつ「うん… 分かった。」

<なつよ とにかく 朝だから元気を出せ。>

道中

なつ「私は どうしたらいいのさ。 教えて! 山! 道! か~ぜ~!」

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