あらすじ
泰樹(草刈正雄)と剛男(藤木直人)の意見がぶつかり、思い悩むなつ(広瀬すず)。それぞれの考えを聞いてみるも、ますます分からなくなってしまう。同級生の雪次郎(山田裕貴)に悩みを打ち明けると、自分が所属する演劇部の顧問・倉田先生(柄本佑)に相談してみてはとアドバイスを受ける。早速、雪次郎に連れられ倉田先生に会いに行くなつ。しかし、抽象的な倉田先生の発言に、さらに混乱してしまう…。
16話ネタバレ
十勝農業高校
畜産科
太田「え~ 母牛は いくら血統がいいからといっても 体形を無視していいことはない。 ここにあるように 遺伝的に高い泌乳能力を 母牛から受け継いでいても もし 足腰が弱ければ 冬の凍結した地面で転倒して 骨折するかもしれない。」
なつ「よっちゃん。 大事なとこだよ。」
良子「うん…。」
なつ「よっちゃん。」
良子「もう分かったってば 母ちゃん!」
なつ「えっ?」
太田「居村! おめえの母ちゃんのことでねえ! 母牛の話してんだべ!」
(笑い声)
良子「やだ… ひどいわ なっちゃん。」
なつ「えっ 私は 何も。」
太田「おい 大事なとこだぞ。 静かにしろ。」
<ここ 十勝農業高校では ほとんどの生徒が 将来は 家業を継ぐために学んでいます。 女性の仲間は少なく 貴重な存在でした。 中には お菓子屋を継ぐために 農業高校に通う 変り者もいました。>
校庭
雪次郎「ん。」
なつ「ありがとう。」
雪次郎「組合のことでかい?」
なつ「そう。 じいちゃんと父さんが もめてんの。」
回想
剛男「じいちゃんに言ってくれないか。 農協との話し合いに応じるようにって。 私は 農協に賛成だって。」
泰樹「あいつに言っとけ。 わしの牛乳は 農協には絶対に売らんと。 なつに言っても無駄だと。」
回想終了
なつ「どうしたらいいか分からなくて…。 雪次郎君に言っても しょうないけど。」
雪次郎「ハハハハ…。 あっ そういうことなら 倉田先生に相談すれば?」
なつ「倉田先生? 国語の?」
雪次郎「そう 俺ら演劇部の顧問だよ。 あの先生なら いい答え 出してくれるかもしれんよ。」
なつ「あの先生が?」
雪次郎「うん。 よし 行くべ!」
なつ「あっ…。」
演劇部
<十勝農業高校 略して勝農(かちのう)は 意外にも 演劇部が盛んでした。 なつたちが入学する前には 北海道の演劇コンクールで 1位になったこともありました。 全ては この倉田先生がいたからなのです。>
倉田「なるほど…。 おじいさんは 組合のすることに反対なのか。」
なつ「いや 反対ではないけど 勝手にやれって言ってます。」
倉田「それは 反対だということじゃないのかい?」
なつ「第三者から見ると そういうことだと…。」
倉田「お前から見たおじいさんでいいんだ。」
なつ「はい…。」
倉田「うん。」
なつ「そんで 組合の考え方は 正しいんでしょうか?」
倉田「うん…。 これ 正しく行われれば 正しいと言える。 正しく行われなければ 間違ってると言える。」
なつ「当たり前ですね。」
倉田「うん…。」
なつ「なら 今のところ 間違ってるのは どっちなんでしょうか?」
倉田「問題は お前が どう思うかじゃないか?」
なつ「えっ 私が?」
倉田「お前が 自分で 答えを見つけなきゃ おじいさんにも お父さんにも 何も ものが言えないんじゃないのか?」
なつ「ああ…。」
倉田「うん。 自分の問題として考えてみれ。 したら おのずと答えが見つかるはずだ。」
なつ「はい…。」
倉田「うん。」
道中
なつ「ねえ どういうこと? さっぱり分からん。 私の問題って…。 自分で 答えを見つけるって どういうことかな?」
天陽「それは なっちゃんが 柴田牧場のあるじだったら どうするのかってことじゃないのか?」
なつ「私が あるじなんか なれるわけないべさ。」
天陽「だったら もし そうだったら。 なっちゃん自身が 農協が 牛乳を集めて 売った方がいいと思うのか それか 直接 メーカーに 売った方がいいと思うのか… うん。 その答えを見つけれ ってことじゃないのかな? 違うかい?」
なつ「ねえ なして天陽君ってさ 私が 一生懸命 悩んでことに そうやって さらっと答え出せるわけ?」
天陽「ものすごく当たり前のことしか 言ってないけどな。」
なつ「うん…。」
(鳴き声)
なつ「あっ!」
天陽「えっ?」
(鳴き声)
天陽「どしたんだ?」
なつ「発情だわ。」
天陽「発情?」
なつ「牛が発情してるんだわ。 だから 落ち着きがないの。 明日の午前中までに 種牛に連れてくといいわ。」
天陽「午前中か?」
なつ「うん。」
天陽「分かった。」
なつ「あっ… ああ もう行かんと!」
(鳴き声)
柴田家
旧牛舎
なつ「ただいま。」
富士子「お帰んなさい。」
なつ「遅くなって ごめんなさい。」
富士子「いいから 着替えといで。」
なつ「母さん ワラビ採ってきた。」
富士子「どこ行ってたの?」
泰樹「天陽のところか?」
なつ「じいちゃん…。」
泰樹「子牛を見る約束だったぞ。」
なつ「あ~ 忘れてた…。 ごめんなさい。 でも やっぱり 天陽君の牛も心配で。 天陽君の牛が発情したんだわ。 今 種付けしたら 来年の春には生まれてくるね。」
泰樹「人間が発情したら どうするんだ。」
なつ「はっ?」
泰樹「世間の目も考えろ。」
なつ「何言ってんのさ じいちゃん。」
泰樹「お前らは もう子どもじゃないんだ。 世間から ふしだらと思われるようなことすんな!」
富士子「ちょっと!」
なつ「そったらこと じいちゃんが言ってるって知ったら 天陽君 悲しむよ!」
泰樹「バカ者! そう言われない方が 男として 見くびられとる!」
十勝農業高校
畜産科
太田「乳牛のメスは およそ21日ごとに 発情を繰り返す。 え~ 94ページの図にあるような 牛の卵巣中の ろ胞と 黄体の大きさの変化は ハモンドという学者が解明した。 発情を見逃すことなく…。」
良子「(大声で)なっちゃん 何描いてるの?」
なつ「シ~! やめてや よっちゃん…。」
良子「また漫画?」
なつ「漫画映画。」
校庭
雪次郎「なっちゃん! なっちゃん なっちゃん なっちゃん…。 もし 興味があるなら これ読んでみるかい?」
なつ「何? これ。 私は なんも 演劇には興味ないから。」
雪次郎「いいから読んでみなよ。 それから 今度の日曜日 うち来てくれんかな?」
なつ「雪月に?」
雪次郎「会わせたい人がいるんだわ。」
なつ「誰よ?」
雪次郎「まあ 来たら分かるさ。」
道中
なつ「さっぱり分かんねえ…。」
雪月
<それから 次の日曜日 なつは 久しぶりに 帯広の街に来ました。>
妙子「ありがとうございました~。」
なつ「こんにちは。」
妙子「あ~ なっちゃん いらっしゃい。 久しぶりだね。」
なつ「お久しぶりです。 あの 雪次郎君いますか?」
妙子「うん なっちゃん待ってたよ。 すぐ呼んでくるから 座って待ってて。」
なつ「ありがとうございます。」
なつ「あっ 倉田先生。」
倉田「おっ もう来てたか。」
なつ「えっ? えっ 雪次郎君が会わせたい人って 先生のことですか?」
倉田「まあ 座れ。」
なつ「はい。」
倉田「奥原なつ。 お前… 演劇やれ。」
なつ「えっ? 何ですか!? いきなり。 」
とよ「なっちゃん な~したの? そんな大きな声出して。 ご無沙汰だね。」
なつ「とよばあちゃん お邪魔してます。」
雪之助「なっちゃん いらっしゃい。」
なつ「おじさん お久しぶりです。」
雪之助「雪次郎と ここで会う約束したんだって?」
なつ「はい。」
とよ「こらっ!」
倉田「えっ?」
とよ「高校生が たばこなんか吸うんじゃないよ! 自分で稼いでから吸うもんだよ こんなもんは。 しかし 老けて見えるね この子は。 とっても 雪次郎の同級生には見えないわ。 よっぽど苦労してきたんだろうね。」
倉田「いや 苦労と呼べるようなことは 何も。」
とよ「言うことまで老けてるね。」
なつ「違うの とよばあちゃん。」
とよ「なっちゃん 苦労というのは 人には分かんないもんだよ。」
雪次郎「倉田先生! もう来てたんですか。」
倉田「おう。」
雪之助「先生? おかしいと思った! ハハハ…。」
とよ「だから 高校生に見えないって言ったんだよ。 失礼なこと言うんじゃないよ。 ハハハハ…。 孫が いつもお世話になっております。」
倉田「ああ いえ…。」
雪之助「息子が いつもお世話になっております。」
倉田「ああ…。 こちらこそ ご挨拶が遅れまして 失礼いたしました。 演劇部の顧問をしている倉田と申します。」
とよ「ああ~…。」
雪次郎「ばあちゃんと父です。」
とよ「ばあばでございます。」
倉田「あ 痛っ…!」
雪之助「すいません ごめんなさい…!」
とよ「先生 おたばこ…。」
倉田「あ~ いえいえいえ…。」
とよ「ハハハハ…。」
妙子「もう やだ お義母さん。 あんたも! 先生のこと分かんなかったのかい?」
雪之助「だってよ… 演劇を見に行ったことなんて なかったからな。 うちはね あの~ 商売をしてるもので どうも すいませんね。」
倉田「あっ いえ。」
とよ「だって 高校生にしちゃ老けてるけど 大人にしちゃ 子どもっぽく見えたんだもの。」
雪之助「また 失礼を上塗りして。」
倉田「いや おっしゃるとおりです。 紛らわしいので… うん 今日から禁煙します。」
とよ「それがいいね。 似合わないのに お金がもったいないわ。」
雪之助「失礼を普通にするなって だから。」
妙子「すみません 先生。 もう母は 悪気しかないんですよ。」
倉田「えっ?」
妙子「あっ いえ わざと 人をからかうようなこと 言っちゃうんですよ 母は。 癖なんです。」
とよ「私の意見は な~んでも 癖で片づけちゃうのよ この人は。」
妙子「だって そうじゃありませんか。」
雪之助「いいから やめれって。 ほら 先生の混乱が止まらんだろ。 ハハハ…。 先生 おわびと言っちゃなんだけど 今日は うちのお菓子 存分に食べてって下さい。」
倉田「あ~ いえ 結構です。」
雪之助「うちのお菓子が食べれんって言うんかい?」
倉田「いえ! えっ…。」
なつ「今が 一番混乱してるよ おじさん。」
雪之助「いえいえいえ… 冗談 待ってて下さいね。」
倉田「冗談…。」
妙子「それで 雪次郎 今日は何なのさ? 先生までお呼びして。」
雪次郎「あっ。 今日は 先生 なっちゃんに会いに来たんだわ。」
なつ「あっ そうだ! どういうことですか? それは。」
倉田「あっ… 奥原にも 演劇に参加してもらいたいんだ。」
妙子「あら なっちゃんも出るの?」
なつ「出ません。」
倉田「おじいさんのためにもなると思うんだ。」
なつ「じいちゃんのために?」
倉田「うん。 おじいさんの問題を お前が表現するんだよ。」
なつ「表現?」
倉田「うん。」
なつ「じいちゃんのことを 芝居にするんですか?」
倉田「そうしたいと思ってる。」
とよ「柴田のじいさんに 何か問題でもあるのかい?」
雪次郎「農協と 何だか もめてるらしいわ。」
とよ「あ~ あの人は 協調性がないからね。」
妙子「誰かと一緒で。」
雪次郎「先生 やっと 新作のテーマ 見つかったんですね。」
倉田「まあ そういうことになるな。」
なつ「本当に それが じいちゃんのためになるんですか?」
倉田「分からん。 そのためには 取材をして もっと深~く そのことを知らなくちゃならん。 あっ…。 それを 奥原に手伝ってもらいたいんだよ。 当事者の目で。」
なつ「当事者?」
倉田「うん。」
<なつよ さて どうする?>