ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第17話「なつよ、これが青春だ」【第3週】

あらすじ

演劇部顧問・倉田先生(柄本佑)から「演劇をやれ」と言われたなつ(広瀬すず)。すぐに断るなつだったが、演劇をやることが泰樹(草刈正雄)のためになるという倉田先生の言葉に、心が揺らぎ始める。その翌日、なつと倉田先生は、農協にいる剛男(藤木直人)を訪ね、酪農の現状について質問する。剛男は、酪農家が抱える問題をなつに説明するとともに、農協が目指す目標をなつに伝えた。そしてなつは、ひとつの答えを導き出す…。

17話ネタバレ

雪月

倉田「おじいさんの問題を お前が表現するんだよ。」

なつ「じいちゃんのことを 芝居にするんですか?」

倉田「そのためには 取材をして もっと深~く そのことを知らなくちゃならん。 それを 奥原に手伝ってもらいたいんだよ。 当事者の目で。」

なつ「当事者?」

倉田「うん。」

柴田家

<その晩です。 なつは 家族に 演劇のことは黙っていました。>

居間

富士子「雪月のみんなは元気だった?」

なつ「えっ?」

富士子「雪月行ったんでしょ? 雪次郎君とこ。」

なつ「うん… うん みんな元気だったよ。 とよばあちゃんも相変わらずだったわ。」

富士子「あそこも 喫茶店開いてから 随分 繁盛してるらしいからね。」

明美「ずるいよ! なつ姉ちゃん! 今度は 私も連れてってね。」

なつ「お土産あげたしょ?」

明美「え~。」

泰樹「土産?」

なつ「あっ… ごめん じいちゃんの分は…。」

明美「全部 食べちゃった。」

夕見子「雪次郎は まだ演劇なんかやってんの?」

なつ「えっ? あっ… うん やってるよ。」

夕見子「演劇なんかやって 女の子に もてたいのかね。」

なつ「ん? 違うよ。 そんなに心配しなくても 雪次郎君は 本当に真面目にやってるよ。」

夕見子「心配て何? 私は 別に ヤキモチなんか焼いてないからね。」

なつ「うん 分かってますよ。」

夕見子「分かってないじゃない その顔!」

なつ「フフフ…。」

夕見子「大体 長男なのに雪次郎なんて 名前からして おかしいのよ。」

富士子「父さんが雪之助だからでしょ。」

夕見子「ううん 跡取りは もてないってことを カモフラージュしてるのよ。」

富士子「あら 跡取りは もてないの?」

夕見子「少なくとも 自由を求める女にはね。」

明美「夕見姉ちゃんの自由は ただのわがまま。」

なつ「明美ちゃん うまいこと言う。」

夕見子「う~る~さ~い。」

<翌日の放課後 なつは 倉田先生と一緒に 農協に向かいました。>

音問別農協

剛男「お願いします。」

「は~い。」

剛男「なつ! どうしたんだ?」

なつ「父さん 突然ごめんなさい。 こちらね 学校の倉田先生。」

剛男「ああ… なつが 大変お世話になっております。」

倉田「倉田です。」

剛男「あっ あの~ うちのなつが 何か問題でも?」

なつ「あっ 違うの。 倉田先生は 演劇部の顧問で 今日は 農協の問題を知りに来たの。」

剛男「えっ?」

「すいません。」

田辺「分かりました。 何でも聞いて下さい。」

なつ「あの~ 組合は じいちゃんに 手を焼いてるんですか?」

田辺「それは また ストレートな質問だな。」

剛男「すいません。」

なつ「すいません。 あの メーカーと 直接 取り引きをしたいという じいちゃんの考え方は おかしいんでしょうか?」

田辺「うん おかしいわけじゃないよ。 今までは それでよかった。 ただ 乳業メーカーが増えてね 酪農家を確保することが 競争になってしまった。」

田辺「それで 牛乳の価格の決め方が 問題になってきたんだ。 なつさんは 牛乳の価格が どうやって決まるか知ってるかい?」

なつ「脂肪分の割合ですか?」

田辺「うん。 牛乳は 脂肪分の検査によって 価格が決まる。 しかし 今は その検査も 乳業メーカーが行ってるんだ。」

剛男「その脂肪検査の内容は 酪農家には分からないんだ。 正しく行われてるかどうかもね。」

なつ「それは つまり…。」

剛男「つまり そこを変えたいんだ。 農協が 牛乳を酪農家から集めて 我々が 検査を行い それを 乳業メーカーに卸す。 そうすることで 酪農家の不信感もなくなるだろう。」

なつ「じいちゃんは 別に 不信感を持ってない。」

田辺「うん どのメーカーも 牛乳の量を欲しいわけだから 大きな牧場ほど大事にして その量を確保したいと思うよね。 そのために 待遇をよくしようとするはずだ。 例えば 柴田さんの牧場とか。」

なつ「その分 小さな牧場は 大事にされないということですか?」

剛男「そうさせないために 酪農家が団結する必要があるんだ。 我々 組合が 間に入ることによって 大きな牧場も 小さな牧場も 共存できるようになるのさ。」

田辺「なつさん 柴田牧場は 十勝一の牧場かもしれない。 しかしね 私はね この十勝全体を 全国一の酪農王国にしたいんだ。」

なつ「酪農王国?」

田辺「うん。」

道中

剛男「なつは 演劇をやりたかったのか。」

なつ「いや なんも。 じいちゃんのためになる って言われたから。」

剛男「じいちゃんの?」

なつ「それに 自分で答えを 見つけなくちゃいけないって 倉田先生に言われたの。 だから もっと 詳しく知ろうと思って。」

剛男「それで どう思った?」

なつ「農協の考え方は 正しいと思う。」

剛男「うん。」

なつ「うん… しっかりしてよね 父さん。」

剛男「分かった。」

なつ「うん。 よし。」

柴田家

玄関前

剛男「あれ? 誰か来てるな。」

なつ「うん。」

台所

松村「これを どうぞ。」

富士子「ああ… もう こういうことは困ります。 うちの人は 農協に勤めてますから。」

松村「いや~ なんも なんも。 これは 長いこと おつきあい頂いてる 柴田さんへの ほんの… ほんの感謝のしるしだべさ。 ねっ…。」

富士子「いや…。」

剛男「それは 奥様封筒と呼ばれるものですね。」

松村「あ ご主人…。」

剛男「そういう つきあい方は もう古いんじゃないですか?」

泰樹「もらっとけ。」

なつ「じいちゃん…。」

泰樹「人とのつきあいに 古いも新しいもあるか。」

剛男「お金をもらう理由はないでしょう。」

泰樹「お前たちは どうして メーカーが悪いと決めつけるんじゃ。 メーカーは ちゃんと公平に 牛乳買ってるさ。 なぜ それを信じん。」

泰樹「この人には さんざんお世話になった。 牛が病気の時 どれだけ いい獣医を呼んでくれたか。」

剛男「だからって こんなことしてもらう理由は ないでしょう!」

泰樹「それを受け取ったからって わしは 何も変わらん。 これは この牧場への評価だと思っとる。 わしから要求したことはない。」

なつ「じいちゃん…。」

剛男「そんな理屈は通りませんよ!」

なつ「父さん…。」

泰樹「理屈の通らんことは これまで なんぼでもあった! この金で 富士子が少しでも助かるなら わしは 喜んで受け取る。 開拓の苦労を思えば… きれい事だけで 家族を守れるか!」

剛男「きたないことは やめましょうよ!」

なつ「父さん…。」

泰樹「何?」

富士子「とにかく このお金は お返しします。」

松村「いやいや…。」

富士子「いいわね? それなら 私の好きにして。」

夕見子「ただいま。 どうしたの?」

なつ「じいちゃん…。」

詰め所

なつ「ねえ 悠吉さん。」

悠吉「ん?」

なつ「悠吉さんたちは どう思う? 農協のしてること。」

悠吉「乳牛メーカーと 一括で交渉するって話かい?」

なつ「うん。」

悠吉「おやっさんの気持ちも分かるけど 助かる農家は多いべな。」

菊介「百姓は もともと 値段を交渉したりすることは あんまり得意でないからな。 どうしても メーカーの言いなりになっちゃうべさ。」

悠吉「農協がやってくれたら 安心だべさ。」

なつ「悠吉さんたちも本当は 自分の牛を飼いたいの?」

悠吉「えっ?」

なつ「だって 自分の土地があるのに 朝晩 ここで働いて で 自分の畑耕して大変しょ?」

悠吉「あっ… ハハハ…。 俺は 貧しい開拓民の八男に生まれて 子どもの頃に 奉公に出されて それが おやっさんと出会って 牛飼いを覚えてな 狭いながらも 自分の地べたを持てたのだって おやっさんのおかげだもな。」

なつ「だから 遠慮をしてるの?」

悠吉「遠慮とも違うな。 まあ おやっさんと牛を飼ってるのが 好きなんだべ。」

菊介「いつの間にか この柴田牧場を 自分の牧場のように 思ってるところがあるからな 俺たちも。 ここ どんどん でっかくしたいって。」

悠吉「なっちゃん この牧場は おやっさん そのものなんだべ。 だから そう簡単に 道を曲げられねえんだわ。」

なつ「う~ん…。」

居間

<その晩のおじいちゃんは 食欲がないと言って 早く寝てしまいました。 そんなことは なつが知る限り 初めてでした。」

照男「いきなり メーカーと 手を切れなんて じいちゃんにしたら 乱暴な話だべさ。」

剛男「手を切れなんて言ってないよ。 農協は メーカーと酪農家の関係を 円満な形にしたいだけなんだよ。」

照男「それは 分かるけど 今だって 円満にやってるじいちゃんは そう受け取らんよ。」

なつ「ごめんなさい 照男兄ちゃん。 私が そもそも 問題を ひっかき回しちゃったから 少し じいちゃん 意地になったのかもしれない。」

剛男「いや それなら そもそも 私のせいだろう。 初めから ちゃんと お義父さんと もっと話し合うべきだったんだ。 今日みたいに 傷つける前に。」

富士子「大丈夫よ。 じいちゃんは あんなことで めげたりしないから。 開拓1世は しぶといのよ。」

夕見子「私も そう思う。 状況は 何も変わってないはずよ。」

剛男「えっ?」

夕見子「じいちゃんが これで変わるとは思えない。」

剛男「嫌なこと言うな。」

明美「さすが 夕見姉ちゃん。」

泰樹の部屋

泰樹「お茶が欲しいな…。 お茶が欲しい…。」

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