ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第18話「なつよ、これが青春だ」【第3週】

あらすじ

乳業メーカーをめぐる富士子(松嶋菜々子)と剛男(藤木直人)の対応に、泰樹(草刈正雄)は心を閉ざしてしまう。その夜、なつ(広瀬すず)は、泰樹と気が合わない剛男となぜ結婚したのか、富士子に尋ねる。すると富士子は、剛男が抱えていた境遇や結婚に至った経緯を静かに語りだした。そしてなつは、演劇部の練習室を訪問。泰樹のために、自分にできることはあるか、顧問の倉田先生に尋ねる。

18話ネタバレ

柴田家

台所

なつ「母さん。」

富士子「ん?」

なつ「変なこと聞いてもいいかい?」

富士子「変なこと?」

なつ「母さんは どうして 父さんと結婚したの?」

富士子「あら! なつには 父さんの魅力が分かんない?」

なつ「そうじゃないよ! うん 父さんは すてきな人だよ。」

富士子「ハッ… 無理しなくていいのよ。」

なつ「あまり してないよ。 ただ… じいちゃんに 反対されんかったのかなって思って。」

富士子「ああ~ そういうことかい。」

なつ「母さんはと父さんは 恋愛結婚だったの?」

富士子「何人かいるうちの一人だったのよ。」

剛男「えっ?」

なつ「えっ?」

富士子「私が 19になった時にね じいちゃんが 私を連れて 農家を 一軒一軒 回って 一人一人 私に候補者を見せて歩いたのよ。」

なつ「へえ~ 斬新。」

富士子「そのうちの一人が 父さんだったわけさ。」

なつ「そんで 母さんは 父さんを選んだのね。」

富士子「そう。 そしたらね じいちゃん 『あれは お前 ほかのやつを 引き立てるために入れたやつだぞ』って。」

なつ「ひどい!」

富士子「ひどいでしょ。 まあ 確かに 働く男としては 一番さえない人だったかもしれないけど 母さんは この人しかいないって思った。 一人だけ 休憩時間に 本読んでたから。」

なつ「父さん 勉強してたんだ。」

富士子「父さんは 家の事情で 高等小学校 途中でやめてね 家族で 北海道に渡ってきた人なのよ。 じいちゃんと同じ北陸から。 本当は もっと勉強したかったんだって。 じいちゃんからしたら 同郷のよしみで 候補者に入れたってだけなんだけどね。」

居間

富士子「それに 青年団の集まりなんかでも 父さんのことは よく見かけてたのよ。 そん時も いっつも 本読んでた。 本読みながら 誰よりも 母さんのこと見てるのも知ってた。」

なつ「それじゃあ 前から 父さんは 母さんのこと好きだったんだ。」

富士子「う~ん まあ それは 父さんに限らないけどね。」

なつ「ああ~。」

富士子「ハハハ…。 じいちゃんはね 組合のことに 理解がないわけじゃないのよ。 父さんが 農協で働く時だって 『あいつには そっちの方が向いてるだろう』って 喜んでるみたいだったし。 それに… 亡くなった母さんのこともあるしね。」

なつ「母さんのお母さん?」

富士子「そう。 突然 病気で倒れて… 私が 9つの時だった。 そのころ うちは 冷害にたたられて お金がなくてね。 じいちゃんが帯広まで 医者を呼びに行ったんだけど 来てもらえなかったのよ。」

なつ「えっ?」

富士子「お金がないと 来てくれもしなかったんだわ。 その時 じいちゃん 葬式で誰かに 『組合があればな』って言ってた。」

なつ「組合?」

富士子「うん。 はっきり そう言ってたの覚えてる。 『組合がなきゃダメだな』って。」

泰樹の部屋

泰樹「お茶が欲しい…。」

居間

富士子「じいちゃんはね 一人で 北海道に渡って 一人で 荒れ地を耕して 苦労して苦労して 10年も一人でいて そんでもって 農家の一人の娘にほれて その家に通い詰めては 畑を手伝って やっと 結婚の許しをもらえて…。」

富士子「その人を お金がなくて亡くした時には 本当に悔しかったと思う。 さてと。 じいちゃんに お茶でも持ってってあげようかな。」

十勝農業高校

演劇部

なつ「先生。 先生は どんな演劇を作りたいんですか?」

倉田「う~ん…。 それは これから アイデアを絞りださなくちゃなんない。」

なつ「じいちゃんを 励ませられるような演劇ですか?」

倉田「えっ?」

なつ「じいちゃんが見て 面白いと思えるような 感動できるような… 絶対に 傷つけないような演劇ですか?」

倉田「そりゃ 当たり前だ。 そういう芝居を作らなくちゃ 意味がないんだ。」

なつ「私は じいちゃんに 間違ってるとは言えません。 言いたくありません。 だから じいちゃんの気持ちに 少しでも寄り添えるようなことを したいんです。 見つけたいんです。」

倉田「演劇とは 生活者が 楽しみながら 自分の生活を見つめ直す機会を 得られるものであると 私は考えている。」

倉田「地べたと格闘し そのことだけんに苦しみがちな農民にこそ 演劇は必要なんだ。 まあ そう思って 私は 演劇部の顧問になった。」

なつ「こんな私にも 何か お手伝いできることはあるんでしょうか?」

倉田「ある。 お前にしかできないことが ある。」

なつ「それは 何ですか?」

倉田「女優になれ。」

なつ「え… えっ?」

倉田「女優として 舞台に立て。 それが 一番 おじいさんのためになることだ。」

なつ「どうしてですか?」

倉田「だって お前が出ていなくて どうやって おじいさんは 芝居を楽しめるんだ? え? お前が出ていなくても おじいさんは 芝居を 見に来てくれるのか?」

なつ「それは…。」

倉田「ほら やっぱり。 出るしかないだろ。」

なつ「え~…。」

雪次郎「はあ はあ…。 あっ 何だ なっちゃん 来てたのかい。」

倉田「おい みんな 聞いてくれ。 奥原が 今日から 演劇部に入部した。」

一同「ええっ?」

倉田「勝農演劇部 女優 第1号だ!」

一同「おお~!」

なつ「いや… ちょっと待って下さい! そんなの無理です!」

雪次郎「大丈夫だ なっちゃん。 みんな下手だから ハハハ…。」

なつ「そうじゃなくて!」

倉田「心配するな。 高校演劇は あんまりうまいと お客が冷める。」

なつ「もう そうじゃないんです!」

倉田「ん?」

なつ「時間がないんです。」

倉田「時間?」

なつ「家の仕事をしなくてはならないし そんな時間は作れません。」

倉田「放課後の1時間だけでもいい。 日曜日だけだっていい。 働きながらやるのが 俺たちの演劇だ。 お前の思い じいちゃんに響かせろ。」

なつ「じいちゃんに?」

倉田「うん。」

柴田家

旧牛舎

なつ「あ~ じいちゃん。 ほら この子 よく飲むようになったわ。 もう元気になった。」

泰樹「そうか。」

なつ「じいちゃん…。 いろいろと ごめんなさい。」

泰樹「何 謝る? いや… わしこそ悪かった。」

なつ「えっ?」

泰樹「天陽と会うなと言ったわけじゃないんだ。」

なつ「うん 分かってるよ。」

泰樹「天陽の牛にも 罪はない。 干し草も 持ってってやれ。」

なつ「ありがとう。 ねえ じいちゃん…。 やっぱり じいちゃん大好き。」

泰樹「おいおいおい… バカ。 いちいち家族に んなこと言うな。」

なつ「ハハ…。」

牧場

なつ「ねえ じいちゃん。」

泰樹「ん?」

なつ「私 演劇やってもいい?」

泰樹「ん? 演劇?」

なつ「うん。 一回だけ…。 夏に あの 地区予選の大会があるんだけど その一回だけ 手伝ってもいい?」

泰樹「やりたいのか?」

なつ「う~ん…。 ちょこっとだけ やってみたいかな。 何かを表現するのって 面白そうだし。」

泰樹「それなら お前の好きにしていい。」

なつ「それでね じいちゃんにも その演劇 見に来てほしいんだわ。」

泰樹「えっ… 何で?」

なつ「何でって…。 じいちゃんにも楽しんでもらえるような そういうの作りたいって 倉田先生が言ってた。 だから 私も それを手伝いたいと思った。」

泰樹「ああ… お前が出るなら 見に行ってやる。」

なつ「えっ?」

泰樹「するからには 頑張れ。 1番になれ。」

なつ「じ… じいちゃん?」

泰樹「お前が出るなら 楽しみだ。」

なつ「いや… いや あのね 出たら 毎日 早く帰ってこられないんだよ?」

泰樹「構わん。 出ろ。」

なつ「えっ いや…。」

泰樹「いいから 出ろ!」

なつ「出ます。」

<こうして なつは 演劇に出ることから 逃れられなくなったのです。 ああ なつよ 夕日に向かって 来週に続けよ。>

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