あらすじ
泰樹(草刈正雄)と剛男(藤木直人)とのもめごとがきっかけで演劇を始めることになったなつ(広瀬すず)。いざ入部してみると演劇部の練習はとても厳しく、酪農との両立も次第に厳しくなっていく。そんな中、なつが同級生の雪次郎(山田裕貴)や良子(富田望生)たちと話をしていると、突然、不良学生風の男子生徒たちに取り囲まれる。驚くなつたちに彼らは「ある人が呼んでいる」と伝えた…。
19話ネタバレ
十勝農業高校
演劇部
なつ「私は じいちゃんに 間違ってるとは言えません。 言いたくありません。 だから じいちゃんの気持ちに 少しでも寄り添えるようなことを したいんです。」
倉田「奥原が 今日から 演劇部に入部した。 勝農演劇部 女優 第1号だ!」
柴田家
牧場
泰樹「お前が出るなら 見に行ってやる。」
なつ「えっ?」
泰樹「するからには 頑張れ。 1番になれ。」
なつ「じ… じいちゃん?」
昭和30(1955)年7月
十勝農業高校
演劇部
雪次郎「2 2 3 4。」
一同「5 6 7 8。」
雪次郎「3 2 3 4。」
一同「5 6 7 8。」
<なつは 十勝農業高校演劇部に 参加することになりました。 演劇部といっても 勝農では 完全に体育会系で その練習は 予想外に ハードなものでした。」
雪次郎「54。」
一同「54。」
<台本を作る倉田先生だけが じっと止まっているかのようでした。>
雪次郎「高木!」
高木「あっ はい。」
雪次郎「う~ん… 『空回り』。」
高木「『空回り 河原で 空手 かわら割り。 空回り 河原で 空手 かわら割り 空回り 河原で 空手 かわら割り』。」
一同「おお~!」
「『引き抜きにくい釘 抜きにくい釘 抜きにくい釘 引き抜きいくい釘』。 よっしゃ~!」
一同「おお~!」
雪次郎「じゃあ なっちゃん。 『新春早々』。」
なつ「『新春早々 新人少女のシャンソン歌手による 新春シャンソンショー。 新春早々 新人少女のシャンソン歌手による 新春シャンソンショー。 新春早々 新人少女のシャンソン歌手による 新春シャンソンショー。』」
一同「イエ~イ!」
柴田家
新牛舎
なつ「よいしょ。 ああ…。 ああ… あ~ 痛い 痛い 痛い…。」
悠吉「どうした? なっちゃん。 急に年取ったみたいだもな。」
なつ「若いから やってけてんのさ。」
菊介「演劇の練習 そんなに きついんかい?」
なつ「それが 全く 訳が分からん。 走ったり 腕立て伏せをしたり 人を持ち上げながら 声を出して腹筋したり。 演劇って 何なんだろう。」
富士子「そんなに つらいなら ここの仕事 しばらくいいよ。 あんたの分ぐらい なんとかなるから。」
悠吉「そうだ。 任せろ なっちゃん。」
菊介「今まで 何もしてこなかったもな なっちゃんは。 自分のことは 何も。」
なつ「なんも なんも。 ずっと好きなことしてたべさ 私は。 牛の世話も好きだし そのために 学校も通わせてもらってんだから。」
泰樹「今のお前の仕事は 演劇で 主役をやることだ。」
なつ「じいちゃん… 主役って何?」
泰樹「えっ? 楽しみにしとるぞ。」
なつ「無理だって そんなの 私 演劇やったことないんだから。」
泰樹「だから 人一倍 頑張るんだよ。 やるからには1番を目指さんと つまらん。 ハハハ…。」
<なつが 演劇を始めたのは 農協に勤める剛男さんと 泰樹さんのもめ事が原因でした。>
詰め所
富士子「はい たまったよ。」
<牧場の牛乳を これまでどおり 独自に売るべきか それとも 農協が まとめて売るべきか それが問題でした。>
音問別農協
剛男「農協による共同販売は 決して 皆さんの不利益に なることではありません。 これは 生産者が メーカーに のみ込まれないためにすることなんです。」
「だったら どうして ここに 柴田さんは いないんだべか?」
一同「そうだ!」
「あんた 自分の家は反対しておいて 何言ってるんだ!」
一同「そうだ!」
田辺「まあ 皆さん 柴田さんのことは置いといて ここは もう一度 我々だけで 現状の問題点を話し合いませんか?」
「組合長 今はね メーカーは どんなことをしても 牛乳を買いたい時代だよ。 それなのに 我々は 農協に一任して 柴田さんだけが 自由に もうけていい という法はないだろうが!」
<泰樹さんと農協の問題は ますます こじれてゆくようでした。 なつは おじいちゃんのために 演劇という表現を通して その答えを見つけようとしているのです。>
柴田家
庭
照男「なつ。」
なつ「うん?」
照男「じいちゃんに あんまり期待持たせんなよ。」
なつ「えっ 主役のこと?」
照男「牧場のことだ。 じいちゃんは お前に この牧場を継いでもらいたいんだわ。」
なつ「えっ?」
照男「それは お前も分かってるべ?」
なつ「分かんないよ そんな。 ここには 照男兄ちゃんがいるし 私が継ぐなんてことは…。」
照男「じいちゃんは お前に期待してんだ。 それでいいのか? お前は。 ずっと この家にいていいのか?」
なつ「どういう意味?」
照男「そんなことも 今から考えとけって言ってんだ。」
なつ「そんなこと言われても…。」
子供部屋
<なつは 時々 今でも 本当の兄に 手紙を書いていました。 送り先は 子どもの頃いた孤児院です。 そこには もう 兄がいないことを知っていながら だけど そこしか 連絡先がなかったのです。>
なつ『お兄ちゃん 久しぶりに 手紙を書きます。 私は 農業高校の3年生で 来年の春 卒業です。 卒業しても しばらく この家で働くと思います。 私は 大事にしてもらった 柴田家の家族に まだ 何も恩返しが できていません。 だから ここにいると思います。 この牧場で じいちゃんの夢だった バター作りをしているかもしれません』。
なつ『お兄ちゃんと千遥に 今でも毎日 会いたいです。 会いたく 会いたくて たまりません』。
明美「う~ん う~ん…。」
十勝農業高校
廊下
良子「なっちゃん 今日も演劇の練習かい?」
なつ「うん そう。」
良子「張り切ってるね。 楽しそうだね。」
なつ「練習はきついよ。 よっちゃんも やんない?」
良子「えっ? いいよ 私なんて。 お誘いもないし…。」
雪次郎「誘われたいの?」
良子「誰も そんなこと言ってないっしょ!」
雪次郎「一緒にやる?」
良子「いいよ。 ついでみたいに言わないでや。」
雪次郎「ついでじゃねえよ。 裏方は たくさんいた方がいいんだから。」
良子「裏方?」
なつ「よっちゃん よかったら 本当に手伝ってよ。」
良子「おう。 そうね まあ 考えてもいいけど。」
なつ「うん?」
良子「どんなお芝居すんの?」
なつ「それが まだ 台本も出来てないのさ。」
良子「そうなんだ。」
なつ「うん。 よいしょ。」
良子「何よ あんたら?」
雪次郎「何だ 君たち 1年生だろ。」
「門倉さんがお呼びです。」
雪次郎「門倉…? 角倉って あの?」
なつ「え… どの?」
<それは バンカラな校風を誇る勝農において 番長と呼ばれている3年生でした。>
学校裏
門倉「お前らは もう行っていい。」
「失礼します。」
良子「あなたは 農業科の門倉 努さんよね?」
雪次郎「あの~ 何でしょうか?」
門倉「演劇部に 入ったそうじゃねえか。」
雪次郎「あっ はい!」
門倉「おめえに聞いてんじゃねえ!」
良子「あっ 私は まだ…。」
門倉「お前にも聞いてねえ。 もう一人は? どうなんだよ。」
なつ「それが あんたに関係あるんですか?」
雪次郎「おい…!」
良子「なっちゃん…。」
門倉「女を入れていいと思ってんのか?」
なつ「はい? ダメなの?」
門倉「おめえに聞いてんだ 演劇部!」
雪次郎「ああ あの… 僕じゃなくて 倉田先生が…。」
門倉「いいのかって聞いてんだよ!」
なつ「ダメなのかって聞いてんのさ!」
門倉「あ?」
なつ「女が 演劇をやってはダメなんですか?」
門倉「農業高校が ナメられんだろうが。」
なつ「誰に ナメられるんですか?」
門倉「そりゃ… 世間様にだ!」
なつ「世間様って あんたは何様ですか?」
雪次郎「なっちゃん!」
良子「この人は 熊と サケを取り合って 勝ったって伝説がある人だよ。」
なつ「だからって 敬語使う必要ないしょ。 同級生なんだから。」
門倉「おめえら この学校 何しに入った? 演劇なんて 人前で抱き合ったりすんだろ!」
なつ「やらしい… そんなこと想像してんだ。 う~わっ。」
門倉「あっ… おめえら FFJの精神はあんのか!?」
なつ「あるわよ!」
門倉「FFJの意味を言ってみれ!」
なつ「フューチャー・ファーマースオブ・ジャパン! 我々は 日本学校農業クラブの一員です!」
門倉「斉唱! そ~れ!」
♬『みのる稲穂に富士と鳩 愛と平和を表した 旗はみどりの風に鳴る 土にとりくむ若人の』
<ちなみ これは 校歌ではありません。 全国の農業高校生が 全員所属する 農業クラブの歌です。」
♬『意気と熱とがもりあげた エフ エフ ジェイ エフ エフ ジェイ 我らの誇り』
門倉「あ~い!」
雪次郎「あ~い!」
良子「あ~い!」
なつ「あ~い!」
門倉「よし!」
演劇部
雪次郎「失礼します。 遅れてすいません。」
なつ「先生 私のほかにも 手伝いたいという人を連れてきました。」
倉田「えっ?」
なつ「どうぞ。」
倉田「居村良子と 門倉 努か。」
雪次郎「大道具でも 何でも やってくれるそうです。」
なつ「門倉君は こう見えて 真面目な生徒です。」
倉田「知ってるよ。 そうか 門倉 よろしく頼む。」
門倉「押忍!」
倉田「うん。 居村 よろしく頼む。」
雪次郎「先生。」
倉田「うん? 稽古しないんですか?」
雪次郎「ああ 今日はいい。 やっと 台本が上がったところだ。」
なつ「おお~ 出来たんですか?」
倉田「うん。」
雪次郎「やりましたね 先生。」
倉田「これを みんなで清書すれば完成だ。」
なつ「『白蛇伝説』…。 早く読みたいです。 読ませて下さい!」
雪次郎「なっちゃん 慣れねえと 全く読めねえだろう。」
なつ「黒板の字は読めるのに…。」
倉田「あれは 読めるように書いてるからな。 それは 魂で書いてるからだ。」
なつ「分かりました。 なら 魂で読みます!」
倉田「よし。」
<なつよ さあ 次は お前が 魂を見せる番だ。>