あらすじ
十勝農業高校演劇部の芝居の稽古が始まった。その初日、なつ(広瀬すず)と雪次郎(山田裕貴)は、天陽(吉沢亮)を学校に招き、演劇部顧問の倉田先生(柄本佑)に紹介する。そこで倉田は、天陽にある重要なお願いごとをする。放課後、倉田が書いたセリフをもとに、自分なりに演じてみるなつ。そんななつに、倉田は何度もやり直しを求める。だめ出しが続き、わけが分からなくなったなつは…。
21話ネタバレ
柴田家
子供部屋
なつ「あっ!」
新牛舎
なつ「おはようございます!」
悠吉「おはよう。」
なつ「遅くなって ごめんなさい。」
悠吉「なっちゃん 目が ウサギみてえに真っ赤だべ。」
菊介「演劇で疲れてるんでねえのか?」
なつ「ううん 元気 元気。 体も もう慣れて 前より元気。」
富士子「なつ 張り切るのもいいけど 体壊したら 元も子もないよ。」
なつ「分かってるよ。 母さんも無理しないでね。」
富士子「本当に元気みたいだねえ。」
なつ「うん。 今日から 台本の稽古も始まるし。」
悠吉「おっ いよいよか!」
菊介「なっちゃん 主役か?」
なつ「あのね 主役かどうかなんて関係ないの。 もはや 問題は 私に 芝居ができるかどうかよ…。」
(鳴き声)
十勝農業高校
畜産科
太田「牛のチーズに比べて ヤギのチーズは クセがすごい。 何か 臭いっていうより クセ。 うん 何か 全部の料理とかにも 勝ってくるから 結構 強いんよ。」
(ベル)
太田「はい 今日は ここまで。」
校庭
なつ「天陽君!」
天陽「やあ!」
雪次郎「久しぶり。」
天陽「久しぶり。」
演劇部
なつ「先生 天陽君 連れてきました。」
倉田「おっ! 君が あの雪月にある絵を描いた人か?」
天陽「はい。」
雪次郎「そうです。 彼が山田天陽です。」
倉田「よく来てくれたな。 よろしく頼む。」
天陽「あっ どうも。」
なつ「台本は渡してあります。」
倉田「読んでくれたか?」
天陽「読みました。 それで どんな絵を描けばいいですか?」
倉田「好きなように描いてくれ。」
天陽「はい?」
倉田「君の絵には… 十勝の土に生きる人間の魂が… 見事に表現されていた。」
天陽「えっ?」
なつ「魂って言葉が好きなんだわ。」
倉田「その君の感じるままに 好きなように描いてくれたまえ。 うん。 まあ 時々 好きな時に ここへ来て 芝居の稽古を見て 感じたことを 背景にしてくれればいいんだ。 おい 大道具の諸君。」
一同「はい。」
倉田「彼が 背景の絵を描いてくれる山田天陽…。」
門倉「あれなら 俺の勝ちだよな。」
良子「えっ? 何に勝ったんですか?」
門倉「男らしさよ。」
良子「男らしいのと いい男なのは 別ですからね。」
門倉「男らしい方がいいべや!」
良子「私はね。」
門倉「おめえに聞いてねえ。」
良子「聞いてたべさ。」
倉田「よし じゃあ 走ってこい。」
なつ「えっ? 今日も走るんですか?」
雪次郎「当たり前だべ。」
グラウンド
一同「5 6 7 8。」
雪次郎「2 2 3 4。」
一同「5 6 7 8。」
雪次郎「3 2 3 4。」
一同「5 6 7 8。」
雪次郎「横! 1 2 3 4。」
なつ「5 6 7 8。 ハハハ…。」
天陽「5 6 7 8。 ハハハ…。」
良子「何で 裏方も走るんさ…。」
門倉「おめえら! 走んなら シャキッと走れ!」
良子「男らしい…。」
演劇部
一同「ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ ぱ ぽ ぱ ぺ ぴ ぷ ぺ…。 なにぬねの にぬねのな ぬねのなに ねのなにぬ のなにぬね。 あいうえお いうえおあ うえおあい えおあいう おあいうえ。」
雪次郎「整列!」
一同「はい!」
雪次郎「よ~い!」
一同「あめんぼ あかいな あいうえお。 うきもに こえびも およいでる かきのき くりのき かきくけこ。 きつつき こつこつ かれけやき。 ささげに すをかけ さしすせそ。 そのうお あさせで さしました…。」
天陽「大変なんだな 演劇って。」
なつ「でしょ。 でね 私も この芝居を 絵に描いてみたのさ。」
天陽「絵に?」
なつ「うん この芝居の登場人物を絵にしたのさ。 天陽君の参考にはならんと思うけど 図書室で借りた いろんな民族の本を参考に 勝手なイメージで描いたの。」
天陽「ふ~ん…。」
なつ<『白蛇伝説』。 遠い昔の北の国 勇敢な村人のポポロが 山道を歩いていると 子どもたちが 白い蛇を取って 食べようとしていました。 ポポロは 子どもたちから その蛇を逃がしてやりました。 すると 川から 一匹の魚が跳ね上がってきたのです。 オショロコマという 珍しくて おいしい魚でした。 オショロコマをあげると 子どもたちは大喜び。」>
なつ<あの白い蛇は 神様の使いだと思いました。 それから しばらくして ポポロの村で 不思議な病気が はやりました。 原因は分からず 死を待つだけの病気でした。 やがて 村長が 病気を治す方法を見つけました。 サケの皮を焼いて 煎じて飲ませるというものでした。>
しかし 村人たちは困りました。 ポポロたちのいる川上の村は 川下の村と 仲がよくなかったのです。 そこで 村長は 川下の村長と話し合いに行きました。 そして 戻ってきた村長が みんなに告げたのです。 『わしの娘 ペチカを 向こうに嫁がせれば サケを分けてもらえることになった…』>
語り<なつよ 話が長すぎる。 この続きは 後にしよう。>
雪次郎『俺は 絶対に反対だ。 あんな乱暴者に ペチカ様を差し出すくらいなら 戦う方が ましだ! こうなったら 川下のやつらと 戦をするぞ!』。
高木『待て! 戦って どうする? ポポロよ。 戦ってるうちに 病気の者が 皆 死んでしまっては 元も子もない』。
雪次郎『それでも ペチカ様を あんなやつらに渡すよりは よっぽどいいに決まっている!』。
石川『ポポロ。 お前には 家族がおらんから そんなことが言えんだべ!』。
橋上『そうだ! 病気の家族を抱えてみれ。 そんなことは言えないはずだべ!』。
雪次郎『お前たちは ペチカ様を犠牲にしてまで 自分たちの家族を助けたいのか!』。
なつ『お待ちなさい ポポロ』。
雪次郎『ペチカ様!』。
なつ『私は 犠牲になるとは思っていません。 みんなが 血を流して戦う方が よっぽど 犠牲になると言えるでしょう』。
雪次郎『ペチカ様は あんなやつの嫁になりたいのか?』。
なつ『それを望まないことは あなたが 一番 よく分かっているはずです。 ポポロ。 だけど 自分のことだけを 考えるわけにはいきません。 そもそも 私たちは その考え方が間違っていたんです』。
倉田「ダメだ!」
なつ「えっ?」
倉田「奥原…。 お前 何考えてんだ? ちゃんとやれ!」
なつ「あの ちゃんと やってるんですけど…。」
倉田「ポポロに応えるセリフから もう一回。」
雪次郎「じゃ なっちゃん きっかけ言うべ。」
なつ「うん。」
雪次郎『ペチカ様は あんなやつの嫁になりたいのか?』。
なつ『それを望まないことは あなたが 一番 よく分かってくれているはずです。 ポポロ』。
倉田「ダメだ! もう一回!」
雪次郎『ペチカ様は あんなやつの嫁になりたいのか?』。
なつ『それを望まないことは…』。
倉田「ダメ! もう一回!」
雪次郎『ペチカ様は あんなやつの嫁になりたいのか?』。
なつ『それを望まないことは…』。
倉田「もう一回!」
雪次郎『ペチカ様は あんなやつの嫁になりたいのか?』。
なつ『それを望まないことは…』。
倉田「ダメ!」
なつ「分かりません! どうしたらいいんですか?」
倉田「どうすればいいのか 俺にも分からん。」
なつ「えっ?」
倉田「だが… お前が ダメなのは分かる。 自分で考えれ。」
なつ「そんなの… 当たり前じゃないですか。 私は 下手なんです!」
倉田「おい おい おい… 何言ってんだ。 下手というのは 何かをやろうとして できないやつのことだ。 お前は 何もやろうとしていない。 下手以下だ。」
柴田家
居間
なつ「ただいま。」
一同「お帰り。」
富士子「なつの頂戴。 ん。 ありがとう。」
なつ「ただいま。」
明美「どうだった? お芝居。 うまくできた?」
富士子「おなかすいたしょ。 先に食べなさい。」
なつ「ごめんなさい… 先に着替えてくる。」
富士子「なつ~?」
剛男「何かあったんじゃないのか?」
泰樹「具合でも悪いのか?」
夕見子「天陽君と 喧嘩でも したんじゃないの。」
照男「お前なあ… そういうことを簡単に言うな。」
夕見子「簡単に考えた方がいいんじゃないの? 重~くするより。」
照男「余計なこと言うなって言ってんだ。」
明美「夕見姉ちゃんには そんなの無理だよ。」
夕見子「うるさい。」
子供部屋
夕見子「えっ 何… そんな重いことなの? どうしたのよ? 何があったの?」
なつ「悔しい…。 悔しいよ…。」
夕見子「えっ?」
なつ「私は 何もできないよ。 できんかった…。 できないようり もっとダメなんだって…。」
夕見子「何言ってんの…。」
なつ「悔しい…。」
十勝農業高校
演劇部
なつ『それを望まないことは あなたが 一番 よく分かってくれているはずです。 ポポロ。 だけど 自分のことだけを 考えるわけにはいきません。 そもそも 私たちは…』。
倉田「あ~ ダメだ! お前のセリフには 魂が見えてこないんだ! もっと ちゃんと 気持ちを作れ!」
なつ「はい…。」
天陽「魂なんて どこに見えるんですか? 魂なんて作れませんよ。」