あらすじ
倉田先生(柄本佑)が指示する言葉の意味がわからないなつ(広瀬すず)。演劇の稽古を見ていた天陽(吉沢亮)は倉田に疑問を投げかける。すると倉田は、思わぬこと天陽たちに打ち明けた。そのころ剛男(藤木直人)は、山田正治(戸次重幸)とタミ(小林綾子)に、今後は牛乳を農協が一括管理してメーカーに売りたいと説明。ところが山田は、泰樹(草刈正雄)がそのことに反対しているのではないかと剛男にこぼし…。
22話ネタバレ
十勝農業高校
演劇部
なつ『ポポロ。 だけど 自分のことだけを 考えるわけにはいきません。 そもそも 私たちは その考え方が…』。
倉田「あ~ ダメだ! お前の セリフには 魂が見えてこないんだ! もっと ちゃんと 気持ちを作れ!」
なつ「はい…。」
天陽「魂なんて どこに見えるんですか? 魂なんて作れませんよ。」
<なつたちの演劇の稽古は ますます 白熱してゆきました。>
倉田「何が言いたいんだ?」
天陽「気持ちを作れとか 魂を見せろとか言われても 分からないと言ってるんです。」
なつ「天陽君…。」
天陽「なっちゃんのままでいては ダメなんですか? ほかの魂を作らなくちゃダメなんですか?」
門倉「おい 分かったようなこと 言ってんじゃねえよ!」
倉田「彼は よく分かってる。」
門倉「はっ?」
倉田「彼の言うとおりだ。 まあ 俺の言いたいことも ほぼ 彼と同じようなことだ。 登場人物の気持ちや魂なんて どこにもないんだ。」
なつ「えっ?」
倉田「これは ただの台本だ。 俺の魂は入っているが 役の気持ちや魂なんてものは存在しない。 それは これを読んだ お前ら 一人一人の中にしか 存在しないんだ。 役の気持ちや魂を感じるのは お前らの気持ちや お前らの魂だっていうことだ。」
倉田「つまり これを演じるためには 自分の魂を使って 演じるしかないんだ。 奥原は 自分の気持ちや魂を 何も動かしていない。 ただ ここに書かれている人物像をまねしようとしているだけだ。 それじゃあ 何も伝わらない。 奥原なつらしく 自分の気持ちや 自分の魂を見せるしかないんだよ。」
倉田「それが 演劇を作るってことだ。 よし。 じゃあ 俺は しばらく 口を出さんから まあ みんなで考えて作ってみてくれ。 いいな。」
雪次郎「なっちゃん 今ので分かった?」
なつ「何となく… 分かったような気もするけど。」
天陽「ごめん。 俺が 何か余計なこと言って。」
雪次郎「いや… 天陽は いいこと言ってくれたよ。」
なつ「ごめんね。 私を かばってくれようとしたんでしょ?」
天陽「つい イライラしちゃって…。」
雪次郎「先生に?」
天陽「なっちゃんの芝居に。」
なつ「えっ?」
天陽「倉田先生 怒っちゃったかな?」
雪次郎「いや あの先生なら 喜んでるわ きっと。」
門倉「つまり 気持ちや魂を見せろってのは もっと 根性を見せろってことだろ! 分かってんのか おめえら! おい!」
一同「はい…。」
良子「早速 分かったようなこと 言ってるよ。」
なつ「芝居って こんな難しかったのか。 表現って 難しい…。」
山田家
剛男「山田さん メーカーが提示する脂肪検査の内容に 農協としては 口を出せないのが現状でして…。」
正治「分かってます。 団結して 農協が まとめて 牛乳を メーカーに売るようになれば そんなことも なくなるんですよね? そのことに お宅の泰樹さんが 反対されてるんだとか…。 だから ほかの人も団結しないんですね。」
タミ「あなた そんな言い方は 泰樹さんに失礼よ。 誰のおかげで 私たち ここまで生き延びたと思ってるんですか。」
正治「分かってるよ。」
剛男「いえ 父のことは 必ず なんとかします。 それより 今は 少しでも 乳量を増やすことです。」
正治「質より量に頼りってことですか?」
剛男「まあ… そういうことです。 乳量を増やすには クローバーなどの 良質なマメ科を与えて下さい。 ただし やり過ぎには注意して下さい。」
天陽「ただいま。」
タミ「お帰り。」
剛男「天陽君。」
天陽「いらっしゃい。」
剛男「なつは どう? 頑張ってる?」
天陽「頑張ってますよ。 なっちゃん 何でも頑張るから。」
柴田家
旧牛舎
なつ『それを望まないことは あなたが 一番 よく分かってくれているはずです。 ポポロ』。
(鳴き声)
なつ『だけど 自分のことだけを 考えるわけにはいきません。 そもそも 私たちは その考え方が間違っていたんです』。
泰樹「なつ…?」
あんつ「あっ… はい?」
泰樹「なしたんだ? 何 悩んでる?」
なつ「あっ いや 何も… 何でもない。」
泰樹「いや いや…。 牛に相談してたべ?」
なつ「いや…。」
泰樹「何が間違ってる?」
なつ「あっ 違う 違う! そうじゃないの。 これは あの…。 もう やだ じいちゃん…。」
泰樹「何が間違ってたんだ…。」
居間
雪次郎「この本 読んで どう思った?」
なつ「私には難しかった。 何となくしか理解できてないと思う。」
雪次郎「俺だって そうだ。 きっと 世界中の俳優が そうなんじゃねえかな。」
夕見子「あんた 俳優なの? ただの高校生でしょ?」
雪次郎「先生は 自分らしくなんて言うけど 自分らしく演じることが 一番難しいんじゃねえかな。」
夕見子「たかが高校演劇でしょ?」
雪次郎「僕ら俳優は 役の心を見せるためだけに 集中しなくちゃダメなんだ。」
夕見子「農業高校生が 何を主張してんの?」
富士子「何だか 難しそうな話してるのね。」
明美「よく分かんない。」
なつ「それじゃあ う~ん… 自分らしく その役になりきるには どうしたらいいのさ?」
雪次郎「それは…。 想像力しかねえと思うんだ。」
なつ「想像力?」
雪次郎「うん。 このセリフの裏では 何を考えているとか この人物が どういう思いで生きてきたとか 自分自身の経験や記憶と重ねて それを 想像するしかねえんだよ。」
なつ「演じることも 想像力なのか…。 う~ん でも 難しい…。」
夕見子「要するにさ 台本は 与えられた環境にすぎなくて その中で生きるのは 自分自身だってことだよ。」
雪次郎「そのとおり! なして 夕見子ちゃんに分かるの!?」
夕見子「その本に書いてあったから。」
雪次郎「ああ…。」
明美「やっぱり合ってる!」
雪次郎「そう? いかった うれしいな!」
夕見子「うるさいよ あんたたち。」
牧場
富士子「雪次郎く~ん!」
雪次郎「あっ えっ…。」
富士子「野菜 持ってって。」
雪次郎「えっ ありがとうございます。」
富士子「少しだけど。」
雪次郎「うわ~ うわっ こんなに…。 それでは さようなら。」
富士子「気を付けて。」
なつ「ありがとう。」
雪次郎「はい。」
なつ「また明日。」
雪次郎「また明日。 それじゃあ。」
なつ「バイバイ。」
雪次郎「はいは~い バイバイ。」
富士子「だけど そんな深いとこまで考えて やってるとは思わんかったわ。」
なつ「倉田先生はね 農民こそ 演劇は必要だって言ってた。」
富士子「だから 農業高校で 演劇に力入れてるの?」
なつ「うん… だけど 私は 何か 農業高校らしいこともしたいんだわ。」
富士子「農業高校らしいこと?」
なつ「うん。 例えば… 演劇を見に来た人に 搾りたての牛乳を飲んでもらうとか!」
富士子「何で?」
なつ「十勝の酪農を もっとアピールしたいのさ。 演劇だけじゃなくて。 だって 母さんや みんなに こんなに親切にしてもらって やらしてもらってんだから 何かの役には立ちたいわ。」
十勝農業高校
演劇部
なつ『だけど 自分のことだけを 考えるわけにはいきません。 そもそも 私たちは その考え方が間違っていたんです』。
高木『何が間違っていたのだ ペチカよ』。
なつ『川下の村を 敵と見なすことです。 すぐに争うことです』。
高木『しかし それは 向こうとて同じことじゃ』。
門倉「ダメだ!」
高木「えっ?」
門倉「高木! お前 それでも村長か? 貫禄が足りねえんだよ。 もっと 根性を見せろや!」
雪次郎「おい なした?」
なつ「高木君 もう一回やりましょう。」
高木「はい…。」
なつ『そもそも その考え方が間違っていたんです』。
門倉『何が間違っていたのだ ペチカよ』。
なつ『川下の村を 敵と見なすことです。 すぐに争うことです』。
門倉『しかし それは 向こうとて同じことじゃ』。
なつ『だから…』。
良子「自分がやりたかっただけね。」
なつ『私にとって 村人は…』。
雪月
妙子「ありがとうございました。 いらっしゃい… あら 富士子さん お久しぶり。」
富士子「こんにちは。」
妙子「今日は 帯広に用事?」
富士子「ううん ちょっと 話したいことがあって。」
妙子「私に?」
妙子「ごゆっくり。」
客「ありがとうございます。」
妙子「それで 演劇を見に来た人に 酪農をアピールしたいの?」
富士子「うん。 なつがね そう言うのよ。 それで 何か 牛乳を使ったお菓子を 配れないかと思って。」
妙子「牛乳を使ったお菓子?」
富士子「例えば アイスクリームとか。」
妙子「演劇を見に来た人に?」
富士子「私も 何かして なつを応援したいんだわ。」
妙子「富士子ちゃんは もう 十分に なっちゃんを応援してるしょ。」
富士子「なつにね 言われちゃったの。」
妙子「何て?」
富士子「母さんや みんなに 親切にされてるって。」
妙子「それのどこがいけないの?」
富士子「普通 母親に親切にされてるなんて 思わないでしょ。」
妙子「う~ん… みんなのこと言ったんでしょ。」
富士子「そういう壁をね 本当は 今でも感じるんだわ。 でも いいの。 それが 私たち親子だから。 何年 一緒にいたって 本当の母親には なれっこないもの。 だから 私は あの子を応援するだけでいいの。 精いっぱい あの子を 応援する人でいたいのよ。」
十勝農業高校
演劇部
なつ『私にとって 村人は家族です。 血が つながっていなくても… みんなが 私にとっても 大事な家族なんです。 その家族が もし 争いごとに巻き込まれて 命を落とすようなことになったら 私は その悲しみに耐えられない…。 だから 私が 家族を守るんです!』。
<なつは 初めて 自分の感情を使って 芝居をしました。 なつよ 下手でも 伝わるものはあったぞ。>