あらすじ
なつ(広瀬すず)の演劇大会が近づいたある日、富士子(松嶋菜々子)は雪月を訪れ、自分たちにもできることはないかと相談。とよ(高畑淳子)や雪之助(安田顕)は、その熱意に押され、十勝の酪農を発展させるあるものを、会場で配布することを決める。一方、舞台の背景画を任された天陽(吉沢亮)も、演劇に必死に取り組むなつたちの姿を見ながら、自らの表現を絵にぶつけていた。そしていよいよ、演劇大会の当日を迎える…。
23話ネタバレ
十勝農業高校
演劇部
なつ『その家族が もし 争いごとに巻き込まれて 命を落とすようなことになったら 私は その悲しみに耐えられない…。 だから 私が 家族を守るんです!』。
門倉『よく言った ペチカよ。 それでこそ わしの娘じゃ!』。
倉田「えっ! おいおいおい… ちょちょちょ… ちょっと待て。 ちょっと待て。 何で 門倉が村長やってんだよ?」
門倉「ああ… あの… 高木君が どうしても代わってくれと言うもので。」
なつ「えっ?」
倉田「はっ? 高木 どこ行った?」
門倉「あの 後ろ…。」
倉田「わっ! びっくりした! 何 お前 そんなこと言ったのか?」
高木「あっ…。」
門倉「言ったべ?」
高木「はい…。」
倉田「なしてだ?」
高木「僕には 門倉さんのような貫禄は 出せないので… 門倉さんが やった方がいいと思います。」
門倉「高木… 困ったやつだ。」
倉田「そうか。 まあ お前には 来年もある。 次は頑張れ。」
高木「はい…。」
倉田「よし。」
門倉「おい 俺たちにとっては 最後の夏だ。 今 頑張るしかねえぞ!」
一同「よし!」
門倉「やるべ。 先生 やるべ!」
雪次郎「何か 番長 やっぱり すげえな。」
門倉「どっからやるべ?」
倉田「一回静かにしろ 一回静かにしろ…。」
門倉「よし。」
倉田「やる気は分かった。」
良子「余計な人まで目覚めちゃったわ。」
<そして 天陽君の中でも 何かが動き出したようです。>
雪月
雪之助「演劇の大会に アイスクリームかい?」
富士子「はい。 ちょうど夏だし 喜ばれると思うんです。」
とよ「いいんでないか。 そりょ喜ばれるよ。 飛ぶように売れるよ。」
富士子「いえ あの… 売るんじゃなくて 配るんです。」
とよ「タダでかい?」
富士子「十勝の酪農を発展させようと 頑張ってるあの子たちを 応援するためなんです。 材料の牛乳は あの子たちが 学校で育ててる牛の牛乳を 使ってもいいと思うんです。」
雪之助「あ~ なるほど。 農業高校のアイスクリームか。」
とよ「したけどね それだって 氷や何だって お金はかかるんだよ。」
妙子「お義母さん 大会には うちの雪次郎だって出るんですよ。 うちが協力しないで どうすんですか。」
とよ「なるほどね。 アイスクリームで 優勝を勝ち取りたいわけかい。」
妙子 富士子「違いますよ!」
雪之助「違うよ!」
とよ「だったら 何の得があんだい?」
妙子「得がなくても やるんです。 応援って そういうことでしょ。」
とよ「分かんないね。」
妙子「分かんなかったら ちょっと黙ってて下さい。」
とよ「あ~ 平和って やだね~。 食うや食わずの苦労も忘れて 親を邪魔にしだすんだから。」
妙子「私は 平和に感謝しますけど。」
雪之助「やめてくれよ 2人とも。 話が大きく ずれてってんじゃないの。」
富士子「何でも言い合える仲になったんですね。」
雪之助「もう困っちゃってるよ。」
とよ「だけどね 器は どうするんだい?」
雪之助「うん? 器?」
とよ「うちにも そんなにないよ。 いちいち 洗って使うのかい?」
雪之助「あ~ アイスクリームの器か…。」
妙子「はい。 それ 私 ずっと考えてたんですけど 器に もなかを使ったらどうでしょう?」
雪之助「もなか?」
妙子「もなかの皮です。 それなら 食べればなくなっちゃうし。」
雪之助「アイスクリームのもなかか…。 あっ そういえば あの~ 東京に 修業に行ってた頃にね 小倉を アイスにして もなかを作ったっていう 和菓子屋の話を聞いたことがある。 それは いいかもしんない!」
とよ「それなら うちでも売れるね。 そこで試せばいいのか!」
雪之助「うん!」
妙子「いい考えでしょう?」
とよ「よ~し それでいこう!」
富士子「いいですね!」
とよ「うん ハハハ…。」
雪之助「いや~ 腕が鳴るなあ。」
とよ「鳴らしてみれ。」
<と あっちこっちで盛り上がっています。>
十勝農業高校
演劇部
門倉「もうちょっと 上じゃないのか?」
倉田「よし ちょっと見せて… うん。」
<そして 瞬く間に 月日は過ぎて 大会当日の朝を迎えました。」
柴田家
玄関前
なつ「行ってきま~す!」
剛男 富士子「行ってらっしゃい。」
旧牛舎
泰樹「ほれ。」
なつ「じいちゃん。」
泰樹「おう。」
なつ「行ってきます。」
泰樹「おう 行ってこい。」
なつ「見に来てくれるよね?」
泰樹「ああ 行くさ。 行くからには 必ず勝て。」
なつ「うん… じいちゃんに 何も感じてもらえんかったら 私の負けだから。」
泰樹「ん?」
なつ「私が この芝居 見したいのは じいちゃんだけだから。 じゃ 行ってきます。」
演劇コンクール 十勝地区予選大会
富士子「アイスクリーム入ってますよ。」
とよ「おいしいよ~。」
「よかった。」
とよ「タダだから。」
雪次郎「オホホホホッ…。」
なつ「すごい大盛況だね。」
雪之助「もう 用意した材料が もうすぐ なくなりそうだ。」
雪次郎「いや~ 『勝農魂』か。 あれ? うちの店の名前が どこにも書いてねえな。」
妙子「バ~カ 店の宣伝じゃないの。 あんたたちを応援したくて してることなんだから。」
なつ「ありがとう おばさん。」
妙子「頑張ってよ なっちゃん。」
なつ「とよばあちゃんも ありがとう。」
とよ「いいんだよ。 今日は 店 休みにしたから。 これで 雪次郎が 舞台で 失敗こいたりしたら うちは大損だわ。」
雪次郎「そんなことねえから安心してよ。 だけど もなかは いいアイデアだね。 さすが ばあちゃん!」
妙子「あ~ あのね 考えたの私!」
とよ「決めたのは私! ハハハ…。」
雪之助「どっちでもいいべ!」
なつ「母さんも ありがとう。」
富士子「父さんのおかげよ。 学校関係者や演劇連盟の人に いろいろ 口利いてくれたから。」
剛男「調子はどうだ? なつ。」
なつ「うん 準備は万端。 父さん ありがとう。 学校の牛乳も 使えるようにしてくれたんでしょ。」
剛男「農協として アピールすべきことだ。 農業高校は 我々の未来だからな。」
なつ「ねえ じいちゃんは?」
剛男「ああ… 後から来るよ。 夕見子と明美と一緒に。」
富士子「大丈夫さ。」
なつ「うん。」
柴田家
牧場
泰樹「後は頼むぞ。」
菊介「はい! 行ってらっしゃい!」
悠吉「なっちゃんに よろしく!」
照男「頑張れ~って!」
泰樹「はい はいよ~。」
明美「みんなも行ければいいのにね。」
泰樹「牛も 連れていければなあ。」
夕見子「それなら なつも喜ぶわ。」
(いななき)
泰樹「天陽 どうした?」
天陽「泰樹さん 牛の様子が おかしいんだわ! 農協に 誰もいなくて…。」
演劇コンクール 十勝地区予選大会
雪次郎「なっちゃん。」
なつ「うん?」
雪次郎「天陽は まだ来ねえのか?」
なつ「うん… どうしたんだろ。」
倉田「にしても すごい絵だな。」
雪次郎「う~ん… これ 芝居より 背景の印象が 強くなるんじゃないでしょうか?」
倉田「いや… この前でやるからそこ 争いを避けようとする人々の芝居が 生きてくるんだ。 これは まさしく 彼自身の心の叫び 山田天陽の魂だな。」
山田家
牛舎
泰樹「あ~…。 鼓脹症だ。」
正治「こちょうしょう?」
泰樹「腹に ガスがたまっとる。 抜かないと 手遅れになるぞ。」
正治「えっ? すぐに 獣医を探してきます。」
泰樹「いや。 これなら わしが なんとかする。」
タミ「よろしくお願いします!」
泰樹「みんな 水 よろしく頼む。」
正治 タミ「はい!」
演劇コンクール 十勝地区予選大会
良子「はい これでよし。」
なつ「どうも。 よっちゃんいて 本当助かったわ。 ほとんどの衣装 作っちゃったもんね。」
良子「私は器量が悪い分 手先が器用なんだわ。」
なつ「よっちゃんは かわいいよ。」
良子「それって 牛と おんなじだべさ?」
雪次郎「いつものやるべ。 お客様に~!」
一同「愛を~!」
雪次郎「大切なのは!」
一同「心!」
雪次郎「揺るがす!」
一同「魂!」
雪次郎「勝農演劇部!」
一同「そ~れ~!」
雪次郎「しゃあ!」
(拍手)
雪之助「おいおい おい… そろそろ始まるぞ。」
富士子「はい。 あっ 明美 夕見子。」
明美「お母さん!」
富士子「あれ 遅かったね。」
夕見子「うん… 駅まで歩いて トテッポで来たから。」
富士子「えっ? じいちゃんは?」
山田家
牛舎
泰樹「お前ら 牛に 何をした? 何 食わしたんだ?」
正治「乳量を増やすには クローバーなどの マメ科のものがいいと言われたもので それを たくさん…。」
泰樹「そんなもの 大量に食わしたら 病気になるに決まってるべ。」
天陽「だけど… 乳量を増やさないば うちのようなところは やっていけないんです。 どれだけ努力して 牛乳を おいしくしようとしたって メーカーに 乳脂肪が低いと言われてしまうんです。」
泰樹「お前ら いくらで 牛乳をメーカーに売ってるんだ?」
タミ「これは 今朝 搾った牛乳です。 飲んでみて下さい。」
演劇コンクール 十勝地区予選大会
(拍手と歓声)
<泰樹さんと天陽君が来ないまま 芝居の幕は上がりました。>
「村長 川下の村に行ったっきり まだ帰ってこないべ。」
「話し合いが うまくいってねえのかな?」
「あっちには 乱暴者の跡取りがいるからな。」
雪次郎「みんな 聞いてくれ。 俺は こないだ 山で 白蛇を助けたんだ。」
3人「白蛇を?」
雪次郎「おう。 子どもが 取って食おうとしてるところを 助けた。 そしたら 不思議なことに 川から魚が あのおいしいオショロコマが 飛び上がって 俺の足元に転がってきたんだ。 あの白蛇は きっと 神の使いだったんだ!」
「そだな。」
「ポポロを信じよう。」
「正直 戦は嫌だったんだわ。」
雪次郎「この俺には 神様がついてるんだ! だから 今度のことも きっと うまくいくさ!」
「ありがとうございま~す!」
「白蛇様~!」
「神様~!」
<なつよ さあ 出番だ。 きっと うまくいくさ。>
一同「ペチカ様!」