ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第26話「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」【第5週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)を探して、東京からひとりの青年が柴田家を訪れた。十勝の丘で絵を描いていたなつは、近づいてくる青年を見るなり、感極まっていく。なつを東京に連れ戻そうとやってきたと勘違いした柴田家の面々の間に緊張が走るが、この青年もまた孤児院で育ち、なつの安否を確かめにやってきただけと知り安堵(ど)する。そして青年は、なつの兄について「居場所はわからないが、どこかで生きているはずだ」となつに告げて…。

26話ネタバレ

丘の上のキャンパス

なつ<なぜだろう…。 その瞬間 風が吹くように 私の中で その光景がよみがえりました>

なつ<10年前 東京に空襲があった あの日>

<私は その人に救われたのです>

信哉「奥原なつ… なっちゃんか? 俺が 誰だか分かるか?」

なつ「信さん…?」

信哉「元気だったか?」

なつ「うん。」

信哉「なっちゃんに また会えてよかった。」

なつ「私も。 ずっと ずっと 会いたかったわ。 なして… なして ここにいるの?」

信哉「会いに来たんだよ。 なっちゃんに。 さっき 柴田さんの牧場に行ったら ここにいるって教えられて。」

なつ「会ったの?」

信哉「うん。 みんな いい人そうだ。 今のなっちゃんを見たら それが よ~く分かった。 いい人たちに恵まれたんだな。 なっちゃんは。」

なつ「うん。 信さん。 お兄ちゃんは…!?」

信哉「なっちゃんが 咲太郎に出した手紙 それを受け取ったんだ。」

なつ「えっ?」

信哉「行ったんだよ なっちゃんたちがいた孤児院に。 やっと見つけて。 今でも 時々 手紙を出してるんだろう?」

なつ「うん。」

信哉「ごめん… それを 勝手に読んだんだ。」

なつ「いいよ。 そのおかげで 信さんに会えたんだから。 いかった。 手紙出したかいあったわ。」

信哉「咲太郎は生きてるよ なっちゃん。 ちゃんと生きてる。」

なつ「本当? 知ってるの!?」

信哉「いや… 今は分からないけど 4年前までは ちゃんと生きていた ってことを 知ってる人に会ったんだ。」

なつ「どこで?」

信哉「新宿。」

なつ「新宿…?」

信哉「新宿の闇市に行ったみたいだな 孤児院を逃げ出したあと。」

なつ「それで 今は お兄ちゃん 新宿にいないの?」

信哉「みたいだな。 今は 行方が分からないって。」

なつ「ふ~ん…。」

照男「な~つ~!」

なつ「あっ 照男兄ちゃん。」

照男「みんな 心配してるから。」

なつ「うん。」

照男「早く来い。 あんたも どうぞ。」

信哉「すみません。」

柴田家

居間

富士子「どうぞ。」

信哉「ありがとうございます。」

(戸が開く音)

なつ「どうしたの? 悠吉さんと菊介さんまで。」

悠吉「いや…。 なっちゃんをね 東京から 連れ戻しに来たんじゃねえかって 夕見子ちゃんが言うもんでさ…。」

なつ「えっ?」

夕見子「その人 家族も同然だった人でしょ?」

菊介「だけど 今更 連れていくなんて 言わんでもらいたいんだわ。 どなたさんかは 分からないけど…。」

なつ「何言ってんのさ 菊介さん。」

明美「なつ姉ちゃん どこにも行かんで!」

なつ「行かんよ。」

信哉「大丈夫です。 そんなことはしません。 そんなことはないので 安心して下さい。 僕は ただ なっちゃんが元気でいることを 確かめたかっただけですから。 あっ… 確かめたかったっていうのは失礼ですね。 ただ それが知りたかったんです。」

悠吉「バカ! おめえが余計なこと言うからだべさ!」

菊介「おやじが騒いだんだろ 力ずくでも 俺が止めてやるって。」

悠吉「力ずくって 何すんだ?」

菊介「知らねえよ。 おやじ言ったんだろ。」

悠吉「黙ってれ!」

信哉「よかった… 本当によかった。 なっちゃんが こんなにも 皆さんから大事にされていて…。 安心しました。 本当によかったです。」

なつ「信さん…。」

富士子「あなたも 本当につらい思いを されてきたんでしょうね。 あなたのことは なつから聞かされてたんだわ。」

信哉「僕は 孤児院で育ちましたが 恵まれていたと思います。 そこにいた指導員の方々に よくしてもらって 自分の将来のことも 大事に思うようにもなりました。」

信哉「だからね なっちゃんたちのこと すぐに捜さなきゃいけないって 思ったんだけど つい 自分のことで精いっぱいで 後回しになってしまって 申し訳なかった。」

なつ「何言ってんのさ! 私の方こそ 自分だけ幸せになって ずっと悪いなって思ってたわ。」

剛男「こうやって また会えたんだから いいんでないかい。」

富士子「本当にね。 すごいことだわ。 わざわざ北海道まで。 そんで 今は 東京で働いてるのかい?」

信哉「はい。 新聞配達をしながら 夜間の大学に通っています。」

富士子「大学かい… 偉いねえ。」

信哉「孤児院を出てからは 働きながら定時制高校に通って その上も目指せるようにって いろんな方が協力してくれたおかげです。」

富士子「苦労しながら 努力もしたんだね。」

信哉「自分の力で 三度三度のごはんを 食べていくためには 今 お前ができる最善の努力をしろって そう先生にも おっしゃってもらったんです。」

富士子「偉い! それこそ 大学に行く意味だよね!」

夕見子「母さん 何が言いたいのさ?」

剛男「それで なつのお兄さん 咲太郎君の行方は分からないのか?」

信哉「はい。 残念ながら…。」

なつ「でも 4年前までは 新宿にいたって。」

剛男「新宿?」

悠吉「お兄ちゃん 無事に生きてたんかい。」

なつ「はい!」

菊介「いかったなあ 安否だけでも分かって。」

なつ「うん。」

菊介「なあ。」

剛男「それで 新宿では どんなことをしてたんだろう?」

信哉「芝居小屋で働いていたらしいです。」

富士子「芝居小屋?」

信哉「そういうところも あいつらしくて…。 きっと 咲太郎に違いないと思いました。」

悠吉「芝居好きなんかい。」

信哉「はい。 その芝居小屋は 4年前に潰れたんです。」

剛男「なるほど…。」

信哉「だから とにかく 今も 元気でいると思います。」

なつ「ありがとう 信さん。」

信哉「これからも捜してみるよ。 何か分かったら すぐに教える。 これは 僕が 今いる所。 そっちも 何か分かったら教えて。」

なつ「うん そうする。」

信哉「それじゃあ 僕は これで。 お邪魔しました。」

富士子「えっ… もう帰るのかい?」

剛男「ここに泊まっていけばいいのに。 宿を どっかに とったのかい?」

信哉「いえ… これから 函館に行って 明日一番の連絡船に乗るつもりです。」

剛男「こんな遠くまで来て とんぼ返りじゃないか。」

信哉「いえ それでも 本当に来てよかったです。 皆さん 僕が言うのもなんですが なっちゃんのことを どうか よろしくお願いいたします。」

台所

明美「わっ… 珍しい! どしたの? 勉強はいいの?」

夕見子「いいの。」

子供部屋

回想

咲太郎「大丈夫だよ なつ ちょっとの辛抱だ。 手紙を書くから。 兄ちゃん しっかり働いて 必ず なつを迎えに行くからな。」

咲太郎「千遥と一緒に 迎えに行くよ。」

回想終了

詰め所

泰樹「よっ…。」

富士子「父さん。」

泰樹「ん?」

富士子「話があるんだけど。」

泰樹「何だ?」

富士子「なつのお兄さんって なつに会いたがってると思う?」

泰樹「兄貴がどうであれ 会わなきゃ なつは 昔のまま… 一生 忘れられんだろう。」

子供部屋

富士子「なつ ちょっといいかい?」

なつ「何?」

富士子「東京行かない?」

なつ「えっ?」

富士子「咲太郎さん 捜しに行こう。」

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