ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第27話「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」【第5週】

あらすじ

行方がわからないなつ(広瀬すず)の兄・咲太郎を探すため、十勝から東京にやってきたなつと富士子(松嶋菜々子)。新宿の有名なパン屋・川村屋の前で信哉(工藤阿須加)と待ち合わせたなつたちは、咲太郎のことを知るこの店の主・光子(比嘉愛未)を訪ねる。光子は、かつて新宿にあった劇場で、咲太郎が裏方として働き、役者や踊り子からかわいがられていたと語る。なつは、光子のいう人物が自分の兄に違いないと確信するが…。

27話ネタバレ

柴田家

子供部屋

富士子「なつ ちょっといいかい?」

なつ「何?」

富士子「東京行かない?」

なつ「えっ?」

富士子「咲太郎さん 捜しに行こう。」

東京・新宿

<なつと富士子さんは 十勝から 2日かけて 東京の新宿にやって来ました。>

なつ「ありがとうございました。」

富士子「ありがとうございました。」

富士子「はあ~ ここが新宿…。」

なつ「母さん 行こう。」

富士子「こっちかい?」

なつ「うん あっち。 次が…。」

川村屋

なつ「母さん!」

富士子「あっ 着いた。」

なつ「信さん!」

信哉「いらっしゃい。 じゃなくて お帰りなさい… か。 お待ちしてました。」

富士子「忙しいのに 急にすいません。」

信哉「いえ こちらこそ わざわざ ありがとうございます。 ここの店に 咲太郎を知ってる人がいます。」

なつ「パン屋さん?」

信哉「ああ。 新宿じゃ 有名なパン屋さんなんだ。 行こう。」

なつ「うん。」

野上「いらっしゃいませ。」

信哉「こんにちは。 佐々岡と申しますが マダムは いらっしゃいますか?」

野上「どういったご用件でしょうか?」

信哉「私は 以前 新聞記者の下川さんという方と ここに来たことがあるんですが その時に マダムと お話をさせて頂きまして。」

野上「本日は お約束でございますか?」

信哉「あっ いえ… 突然お伺いして 申し訳ないのですが 咲太郎のことで 妹が来ていると そうマダムに お伝え願えないでしょうか?」

野上「さいたろう? 妹?」

信哉「咲太郎という名前を言えば 分かると思います。」

野上「それで ご用件は?」

富士子「いや だから 妹は 兄を捜して 北海道から はるばるやって来たんです。 その咲太郎のことで ご存じならば 何でもいいから教えてもらいたいんです!」

なつ「母さん…。」

富士子「あっ お騒がせして すいません…。」

野上「あっ あの咲太郎!? あの野郎…。」

なつ「あの野郎?」

野上「あっ いや 失礼しました。 ちょっと あの… お待ち頂けますか? マダムに お伝えしますので。」

佐知子「空いてるお席へ どうぞ。」

なつ「何これ 高い!」

富士子「雪月の3倍はするね。」

信哉「ここは 僕に…。」

富士子「ああ いいのさ。 ケチで言ってるわけじゃないんだから。」

なつ「でも ここで食べるのは やめとこうよ 母さん。」

富士子「そだね。」

信哉「おなかが減ってるなら大丈夫だよ。 ここのカレーは最高だから。」

なつ「いいのさ。 ケチで言ってるわけじゃないんだから。」

信哉「そう?」

佐知子「お決まりですか?」

富士子「アイスコーヒー下さい。」

信哉「僕も アイスコーヒー。」

佐知子「アイスコーヒーが お二つと…。」

なつ「冷たい牛乳ありますか?」

佐知子「アイスミルクでございますか?」

なつ「はい。 えっ… ないですか?」

佐知子「ございます。 かしこまりました。」

なつ「えっ 何か じっと見られたわ。」

富士子「うん…。」

なつ「案外おいしい。」

富士子「本当に? ちょっと頂戴。」

信哉「あっ マダムだ…。」

光子「いつも ごひいきに ありがとうございます。」

光子「いらっしゃいませ。 前島光子と申します。」

信哉「あの… マダム 以前お邪魔しました…。」

光子「覚えております。 佐々岡信哉さんでしたね。」

信哉「はい。 フルネームで…。」

光子「それで あなたが 咲太郎さんの妹さんですか?」

なつ「はい。 なつと申します。」

光子「なつさんね。」

富士子「私は 母の富士子です。 あっ 母といっても 咲太郎さんの母 というわけじゃあなくて…。」

光子「存じております。 大体のことは。 どうぞ 皆さんも お掛けになって。」 

光子「何もいらないわ。」

光子「咲太郎さん… 私たちは 咲ちゃん。 劇場のみんなからは 咲坊なんて呼ばれていましたね。」

なつ「サイボウ?」

富士子「その劇場というのは この近くにあるんでしょうか?」

光子「ええ。 ムーランルージュ新宿座。」

なつ「そこで 兄は お芝居をしてたんですか?」

光子「いいえ 役者ではなかったと思いますよ。 私は あまり劇場には 通いませんでしたので分かりませんが 掃除をしたり もぎりをしたり 裏方を手伝ったり 何でもしていたようですね。」

光子「よく ここへ 役者さんや踊り子さんに 連れられてきて ごちそうになっていましたから みんなからは かわいがられているようでしたよ。」

なつ「そうですか…。」

回想

咲太郎♬『うぬぼれのぼせて得意顔』

「オ~! ジャパニーズ チャップリン!」

咲太郎♬『東京は銀座へと来た』

「エノケン!」

回想終了

なつ「間違いないと思います。 兄は そういう人でした。 あっ 私は 子どもの頃の兄しか知りませんけど。」

(ドアの開く音)

光子「あっ。 ちょっと お待ちになって。 社長。」

茂木「やあ マダム 今日も あでやかで。」

光子「フフッ… ありがとうございます。 あの 是非 ご紹介したい方が… ちょっと よろしいでしょうか?」

茂木「ああ。」

光子「皆さん こちら すぐそこの本屋さん 角筈屋書店の茂木社長。 新宿のことなら 何でも 私よりも よく知ってらっしゃいます。」

富士子「よろしくお願いします。」

茂木「ん? 何のこと?」

光子「あっ こちらは ムーランルージュにいた 咲ちゃんの妹さんです。」

なつ「なつと申します。」

茂木「ああ… あの小僧さんか ハハ。」

光子「さあ 社長も お掛けになって。 いつものお紅茶で よろしいですわね?」

茂木「ああ。 それで?」

光子「なつさんは 咲ちゃんを捜しに 北海道からやって来たんですって。」

茂木「ああ…。 そういえば そんな話を聞いたことがあったな。」

なつ「私のことを 兄からですか?」

茂木「うん。 生き別れになった妹を いつか この新宿に呼び寄せるんだって。」

なつ「本当ですか?」

茂木「ああ 本当さ。 あの言葉に うそはなかったと思うよ。」

信哉「あの 私は 咲太郎の幼なじみなんですが 咲太郎は いつから ムーランルージュにいたんでしょうか?」

茂木「う~ん…。 空襲で焼けたムーランが 22年に新設されて そのころには ずっといたね。 よほど ムーランルージュが 好きだったんだろう。 結局は ストリップの人気に押されて 潰れてしまったけどね。 いつか 咲ちゃんも 役者になりたかったんじゃないかな。」

なつ「兄がですか?」

茂木「ああ。」

信哉「あの その後の咲太郎の行方を 知っていそうな方を ご存じないですか? ムーランルージュの関係者で。」

茂木「う~ん…。戦前から ムーランにいる 煙カスミって歌手が この近くのクラブで歌ってるけどね。」

富士子「クラブ?」

なつ「けむり…。」

茂木「煙。」

なつ「かすみ…?」

茂木「カスミ。」

クラブ・メランコリー

カスミ♬『リンゴの花びらが 風に散ったような 月夜に月夜に そっと エエエー』

柴田家

居間

夕見子「食べてよ。」

明美「お母さんと なつ姉ちゃん 無事に着いたかな?」

照男「もう とっくに着いてるさ。」

剛男「しかし こんな寂しい食卓は初めてだな。」

泰樹「そだな。 お前が  戦争に行ってる間も もっと にぎやかだったな。」

剛男「あ… そうですか…。」

(笑い声)

夕見子「ちょ… ちょっと…。」

クラブ・メランコリー

カスミ♬『つがる娘は泣いたとさ つらい別れを泣いたとさ リンゴの花びらが 風に散ったような』

(拍手と歓声)

カスミ「ありがとうございます。」

(拍手)

カスミ「あっ。 あなたが なつさんね。」

なつ「はい。」

富士子「お手間を取らせて すいません。」

カスミ「なつさんのお母さん。 いろいろと 事情があることは分かりました。 茂木社長からも 後は頼むと言われましたけど 残念ながら 私も 今は 咲坊が どこにいるかは 心当たりがないんですよ。」

なつ「そうですか…。」

カスミ「ごめんなさいね なつさん。」

なつ「あっ いえ…。」

カスミ「どうか お気を付けて。」

なつ「また じっと見られたわ…。」

川村屋

光子「どうでした?」

なつ「ダメでした。」

光子「そう… すぐにはね。」

野上「こちら お預かりのかばんです。」

富士子「いろいろと お世話んなりました。」

光子「今日は どちらへ?」

富士子「これから 宿を探すんですが どこか 安くていい所はないでしょうか?」

光子「それなら… うちに どうぞ。」

富士子「えっ? あっ… いや そんな!」

光子「従業員が住んでいるアパートで 寮みたいな所でよろしければ 空き部屋があります。 布団ぐらいならありますし 部屋代は タダですから。」

富士子「いいんですか?」

なつ「助かります。」

光子「そのかわり 食事は ここで なさって下さいね。」

富士子「当たり前です。」

なつ「食べます。」

光子「私 ケチなんですよ。」

富士子「あっ ハハ…。」

なつ「カレーライス 2つ下さい。」

光子「はい。 インド風カリーね。 お好きな所へ どうぞ。 カリー 2つね。」

野上「よろしいんですか? あんなやつの身内に 情けをかけて。」

光子「だからよ。 あの子がいれば 捕まえられるかもしれないでしょ。」

野上「あの子は 人質… ですか?」

光子「そうよ。 誰が逃がすものですか。」

なつ「あ~ おなかすいた!」

富士子「カレー 楽しみだね。」

なつ「そだね。」

<なつよ…。 明日を信じよう… ね。>

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