ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第28話「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」【第5週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)と富士子(松嶋菜々子)は、光子(比嘉愛未)の好意で川村屋の従業員アパートに泊まり、咲太郎を探すことになった。その夜、富士子は、東京に来る前に夕美子(福地桃子)から言われたある言葉をなつにぶつける。すると、富士子からの思わぬ発言に突然泣き始めてしまうなつ。日が替わり川村屋の店内。なつと富士子のもとに信哉(工藤阿須加)が駆け込んできて、気がせいたようにふたりに近寄り…。

28話ネタバレ

川村屋

ホール

野上「インド風バターカリーでございます。」

なつ「バターカレー?」

野上「バターカリーです。 川村屋の名物でございます。」

なつ「ふ~ん バターが…。 頂きます。」

富士子「まだよ。」

なつ「えっ?」

富士子「これから カレーをかけてくれるんでしょ。」

なつ「ああ…。」

野上「いえ。 ご自分でお好きなだけ こちらのカリーを ライスと一緒に お召し上がり下さいませ。」

富士子「あっ 自分でかけるんですか?」

野上「お好きなように。」

なつ「へえ 自分で…。」

野上「手抜きじゃございませんよ。」

なつ「フフッ。」

富士子「よばれましょう。」

なつ「うん。」

富士子 なつ「頂きます。」

なつ「おいしい!」

富士子「うん おいしい…。 バターは あんまり感じないわね。」

なつ「溶けて 風味だけになってんのさ。」

富士子「うん。 うん うちでも入れてみようか?」

なつ「入れてみよう! こういう味になるかも。」

野上「それは どうなんでしょう…。 ご家庭のカレーとは また…。」

なつ「あっ カリーだもんね! カリーって何ですか?」

野上「発音でございます。」

なつ「でも バターは きっと うちの方が勝つね。」

富士子「そりゃ そうよ。」

野上「それは どうなんでしょう…。」

なつ「うちは牧場なんです。 バターも手作りすることがあるんですよ。 一度 うちのバターを 使ってもらいたいもんですね。」

光子「是非 自家製の北海道バターを 試してみたいですわね。」

なつ「あ… すいません 生意気なこと言って。」

光子「いいえ。 食べ終わったら お部屋に ご案内しますね。」

富士子「とても おいしいです。」

なつ「本当に おいしいです。」

光子「なら よかったです。 カレーを気に入ってもらえて。」

野上「マダム。 カリーでございます。」

光子「面倒くさい。 フフフ。」

社員寮

なつ「助かったね 宿代。」

富士子「あと何日いるか 分かんないもんね。」

なつ「無理させて ごめんね。」

富士子「いいのさ。」

なつ「あと少しいて 手がかりなかったら 帰ろうか。」

富士子「なして? 帰りたいのかい?」

なつ「いや そういうわけじゃないけど… 無理しても しかたないさ。」

富士子「気ぃ遣ってるんだね 私に。」

なつ「牛のことも心配だし。 東京は暑いもねえ。 ああ 気持ちいい風…。」

富士子「夕見子がね 大学に行きたいんだって。」

なつ「大学に?」

富士子「そう。 それも 札幌の北大 受けたいんだって。」

なつ「北大? すごい! 夕見は 頭いいからね 昔から 本ばっかり読んでるし。 博士になるのかな? ハハハ…。」

富士子「別に 何になりたいわけじゃなくて 自由になりたいんだって。」

なつ「へえ~… 今でも 十分 自由にしてんのにね。 夕見らしいわ。 母さん 寂しいの? 私がいるしょ。」

富士子「夕見子にね 言われちゃったのよ。」

なつ「何て?」

富士子「土地に縛るのは なつだけにしてって。 そんな気ないからね… いいんだよ。」

なつ「いいって 何が?」

富士子「もしも… もしもよ いざという時には 私のことは 無理に 母親だと思わなくていいからね。 おばさんだと思えばいいのよ。 ほら 9年間も一緒に過ごした おばさんだと思えば 逆に 家族と同じだって思えるしょ?」

富士子「どんなことがあっても なつのことは応援してるし いつでも 味方になってくれる人だと そんなふうに思ってくれたら 私は それで…。」

富士子「えっ? どした? なつ どしたの?」

なつ「どして… そんなこと言うの? したから 東京に連れてきてくれたの? 私を お兄ちゃんに返そうとしたの?」

富士子「違うわよ!」

なつ「やだ! やだよ… 私から 母さんを取らないでよ…。 母さんを取らないでや…。 やだよ…。」

富士子「ごめん…。 そんなつもりで言ったんじゃないんだよ。 ごめん なつ…。 ごめん…。」

雪月

雪之助「はい お待たせしました。」

雪次郎「来た!」

雪之助「え~ 新作のかき氷です。」

夕見子「う~わ~!」

雪之助「氷ん中に 何 入ってると思う?」

夕見子「氷ん中に?」

雪之助「パイナップル!」

雪次郎「うん。」

雪之助「パイナップルを忍ばせて 上に 何かかってると思う? 香り豊かなリンゴのシロップ!」

雪次郎「ハハハ…。」

雪之助「商品名 何だと思う? 雪月の夏!」

(拍手)

夕見子「全部言うのに 何で聞くのさ。 雪の夏って 矛盾してるけどね。」

雪之助「いや そこがいいんだ。 雪の中に パイナップルの月 夏の風物詩 雪月の夏!」

雪次郎「よよっ!」

夕見子「とけるんで 頂きま~す。」

雪之助「はいはい どうぞ。」

夕見子「うん パイナップル!」

雪之助「フフフフ…。」

雪次郎「俺も 北大受けるかな。」

雪之助「北大? お前の成績と… 矛盾してるな。」

雪次郎「じゃ 札幌でお菓子の修業するさ。」

雪之助「いや ダメだ。 お前の修業先は 東京って決まってんだから。」

夕見子「えっ 東京行くの? 雪次郎。」

雪次郎「そうしろって言うんだ。」

雪之助「私が 修業してた店にね まあ 雪次郎にも行ってほしくてね。」

夕見子「えっ おじさんも 東京行ってたの?」

雪之助「うん そう。 昭和6年だったかな。 17歳から5年間 東京は新宿 川村屋というパン屋で修業してたんだ。」

夕見子「えっ 新宿?」

雪之助「うん。」

夕見子「なつと母さんも 今 新宿行ってるよ。」

雪次郎「えっ そなの?」

夕見子「うん。」

妙子「ちょっと 忙しいのに いつまで かかってんの。」

雪之助「いや… なっちゃんと富士子さんがな 今 東京の新宿にいるってさ。」

雪次郎「うん。」

妙子「本当!?」

雪之助「うん。」

妙子「何しに行ったの?」

夕見子「そこに なつのお兄さんがいたみたいで。」

とよ「ちょっと 忙しいのに 何 油売ってんだい。」

妙子「なっちゃんが 今 新宿で お兄さんと会ってんだって。」

とよ「あら 本当かい!」

夕見子「会ったわけじゃなくて 捜しに行っただけ。 新宿にいたとしか 分かってないんだわ。」

雪之助「いや~ 新宿か…。 ハハハ… 懐かしいな。」

夕見子「おじさんは 新宿のパン屋で修業してたのか。」

雪之助「いや パン屋っていってもね もう そこには いろんなもんあってさ インドカリーなんてものもあったわ。 私もね そこで 世界のチョコレートや クリームを作ること覚えたもね ハハハ…。 何より 視野を広げることを覚えたんだわ。」

夕見子「へえ~… すごい。」

中村屋

ホール

なつ「このクリームパン おいしい!」

富士子「うん おいしいねえ。」

なつ「うん。」

富士子「このクリーム 雪月のシュークリームに似てない?」

なつ「言われてみれば…。 じゃ じいちゃんに買ってくと喜ぶね。 雪月のシュークリーム 大好きだもね。」

富士子「そだね。」

なつ「うん。」

柴田家

詰め所

夕見子「はい じいちゃん。」

泰樹「どしたんだ?」

夕見子「帯広に出たから お土産。 雪月のシュークリーム みんなで食べて。 うん じゃあ 頑張ってね! 頑張って。 うん。」

悠吉「あの夕見子ちゃんが…!」

菊介「あんな笑顔を…!」

悠吉「女の子らしいとこ 初めて見たもなあ。」

菊介「『じゃあ 頑張って』だもなあ! ハハハ…。」

照男「母さんと なつがいなければ 気が利くんだな。」

泰樹「へえ…。 もったいなくて食えねえ…。

照男「おやっさん 食べてるし。」

悠吉「ハハハ…。」

泰樹「あと2つしかない…。」

川村屋

ホール

野上「いらっしゃいませ。」

信哉「なっちゃん!」

なつ「どうしたの?」

信哉「今日 浅草の芝居小屋を回って 聞いてみたんだ。 ムーランルージュにいた人で 浅草に流れた人もいるっていうから。」

なつ「浅草に行ってくれたの?」

信哉「そしたら 今 それらしい人がいるって。」

なつ「えっ…。 本当かい?」

信哉「まだ 見たわけじゃないけど 咲太郎かも!」

浅草・六区館

ホール

楽屋

咲太郎「師匠! 起きて下さいよ! どうするんですか?」

島貫「師匠と呼ぶな! 俺は 芸人じゃねえ 役者だ。 先生と呼べ。」

咲太郎「そんなこと言ってる場合ですか! もうすぐ出番ですよ!」

島貫「しょうがねえだろ 相方が来ねえんだから。」

咲太郎「いや しょうがないって そんなこと言ってても しょうがないでしょう! 本当に どうしちゃったんですかね 松井さんは…。」

島貫「どうせ 博打だろう。 俺は もう やだね。 あんなやつと 二度とやらねえ!」

咲太郎「じゃあ 一人でも やって下さいよ。」

島貫「役者も やめた!」

咲太郎「何言ってるんですか! 今日のステージは どうするんですか! 師匠!」

島貫「お前 出てこい。」

咲太郎「俺が出て どうするんですか!」

島貫「お前の好きな森繁久彌のまねでも してくりゃいいだろ。」

咲太郎「そんなの ここの客に 通用するわけないじゃないですか!」

島貫「いいから やってこい! 行け!」

咲太郎「ええ~…。」

玄関前

信哉「ここの幕あいに コントと呼ばれる芝居をしていて それの手伝いをしてるらしい。」

ホール

<なつよ… 覚悟はいいか? いよいよ…。>

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