ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第31話「なつよ、雪原に愛を叫べ」【第6週】

あらすじ

咲太郎(岡田将生)を探すため、東京を訪れたなつ(広瀬すず)と富士子(松嶋菜々子)。ふたりは偶然、天陽(吉沢亮)の兄・陽平(犬飼貴丈)と再会する。そこでなつは、陽平が、漫画動画を作る会社で働いていることを知る。子供のころに学校でアメリカの漫画映画を見たときの感動を覚えているなつは、陽平に誘われるがまま、スタジオ見学に行くことに。そしてなつは、漫画動画を制作する「新東京動画社」に足を踏み入れた…。

31話ネタバレ

六区館

<なつは 9年ぶりに 実の兄 咲太郎との再会を果たしました。>

なつ「お兄ちゃん!」

川村屋

信哉「咲太郎が 警察に捕まった。」

なつ「えっ!」

<しかし 咲太郎は 無実の罪で捕まり なつに 手紙で 別れを告げたのです。>

柴田家

詰め所

泰樹「お前… なつと結婚しろ。」

照男「えっ?」

泰樹「なつと結婚するんだ。」

<一方 十勝でも なつを巡る問題が ひそかに起こり始めていました。>

川村屋

なつ「信さん ありがとう。」

信哉「元気出したね なっちゃん。」

なつ「うん。」

信哉「じゃ。」

陽平「なっちゃん? 柴田のおばさん?」

富士子「あっ!」

なつ「陽平さん?」

陽平「お久しぶりです!」

<新宿の川村屋に 思いがけない人が現れました。>

富士子「どのくらいぶり?」

陽平「去年の夏に帰ったから 1年ぶりですね。」

<それは 東京の芸術大学に通う 天陽君のお兄さんでした。>

陽平「そうか…。 お兄さんに会えたのは よかったけど 心配だね。」

なつ「でも 私は信じています。 兄は 昔と 何も変わってないって。」

回想

なつ「お兄ちゃん…。」

回想終了

なつ「盗みだけは 絶対にしない。 正しいことだけじゃ生きられんかったのは 昔も そだったし。 兄が 何か 悪いことをしてたとしても 私だけは 兄のことを悪い人だとは思わん。」

陽平「そうか…。 天陽は 俺のこと どう思ってるかな…。」

なつ「えっ?」

陽平「ずるいと思ってるかな…。」

なつ「そんなこと 少しも思ってないですよ。」

富士子「そうよ。 奨学金もらって 大学の授業料は免除されてるんでしょ。 陽平さんは偉いわよ。」

陽平「俺にしたら あいつの方がずるいけどな。」

なつ「どして?」

陽平「いくら勉強したって あいつのような絵は描けないから。」

富士子「卒業したら 北海道に戻らないの?」

陽平「まだ分かりません。 今 大学の先輩の仕事を 手伝ったりしてるんです。 あっ。 なっちゃんなら きっと 興味があると思うな。」

なつ「その仕事に?」

陽平「うん。 漫画映画を作る会社で働いてるんだ。」

なつ「本当に!?」

陽平「ああ。 見てみたい?」

なつ「見たい! どんなもの作ってんのか どうやって作ってんのか見てみたい!」

陽平「見に来る?」

なつ「えっ? いいの!?」

陽平「いいよ。」

なつ「あっ… でも…。」

富士子「行っといでよ。」

なつ「えっ?」

富士子「せっかく 東京まで来たんだから 少しぐらい楽しんできなさい。」

なつ「うん。」

<そして なつは そこに 足を踏み入れたのです。>

新東京動画社

陽平「なっちゃん。」

陽平「おはようございます。」

なつ「おはようございます! お邪魔します。」

陽平「仲さん…。」

仲「遅刻だぞ! 山田君 いくら まだ学生だからといって 職場で デートをするのは いかがなものかな。」

陽平「違います。 彼女は 弟の彼女なんです。」

なつ「えっ?」

陽平「北海道から出てきたんです。 高校3年生なんですが アニメーション制作に興味があって 見学を望んで ここに来たんです。」

仲「いらっしゃい。」

陽平「アニメーターの仲 努さん。 僕に 声をかけてくれた 大学の先輩。」

なつ「奥原なつです。」

仲「アニメーションを見たことある?」

なつ「はい! 子どもの頃に 学校の映画会で アメリカの漫画映画を見て感動しました。 まるで 色のきれいな夢を見てるみたいでした。」

仲「うん。 今に それに負けないくらいの夢を 作る予定だから。 今日は ゆっくり見てってよ。」

なつ「はい。 ありがとうございます。」

陽平「じゃあ あっちが 僕の机。 ここで 僕は美術 背景画を手伝ってるんだ。」

なつ「あっ 色がない。」

陽平「ここでは まだ モノクロの短編映画を 作ってるだけだから。 だけど これだって 白と黒だけで いろんな色を表現してるんだ。」

なつ「本当だ… 何種類もグレーがある。 色がついてるけど 白黒に見えてるだけかと思ってました。」

陽平「この背景の上に重ねる作画を描いてるのが 仲さんたちだ。 まず 動きの基礎となる絵を描く。 これを 原画といって その原画と原画の間をつなぐように 中割りと呼ばれる絵を描いてゆく。 これを 動画っていうんだ。 この動画と動画を描く人を アニメーターと呼ぶんだ。」

なつ「アニメーター…。」

陽平「アニメーターが描いた絵を 一枚一枚 透明なセルに トレースし そのセル画を 僕たちが描いた 美術の背景画と重ね合わせて 一コマ一コマ 撮影してゆけば アニメーションになるんだ。」

なつ「なるほど… そういうことか。 私が ノートを ペラペラしてたのは そう間違いではなかったんだ…。 でも 本物は すご~い!」

仲「これ 前の作品のやつなんだけど 記念にあげますよ。」

なつ「えっ!」

仲「これ 僕がデザインしたキャラクターなんだ。」

なつ「ありがとうございます!」

仲「それから せっかく来たんで ひとつ テストしてみようか?」

なつ「テスト?」

なつ「薪割り?」

仲「この紙を 5~6枚使って 2枚の絵の合間を描いて 薪割りを完成させてごらんよ。」

なつ「そんなこと 無理です!」

陽平「ノートを ペラペラやってたんでしょ? それと同じだよ。」

なつ「えっ…。」

仲「じゃ 頑張って。」

なつ「え~…。」

なつ「あの~…。」

仲「できた?」

なつ「いや できたかどうかなんて 全然 分かりません。」

仲「どれどれ。」

仲「うん…。」

なつ「どうですか?」

仲「いや… なかなか いいよ。」

陽平「見せて下さい。」

仲「どう?」

陽平「なかなか いいじゃないですか。 ちゃんと 重力を感じますよ。」

仲「下山君 君の持ってきて。」

下山「はい。」

仲「彼は 先月 同じテストをして ここに入った 下山克己君だ。」

下山「どうも。」

仲「これが 彼の描いたやつ。 こうやって パラパラってやって見てごらん。」

なつ「うわ~。 動きが きれい! 全然違う。」

下山「あ… ちょっと見して下さい。」

陽平「あっ はい。」

仲「どう? 下山君。」

下山「いや いいですよ。 僕のより 迫力があるかもしれない。」

なつ「うそです。 全然ダメです。 下手です。 もう いいです…。」

下山「いやいや…。」

仲「僕たちが お世辞を言って からかってると思う? そんなに暇じゃないよ 僕たちは。 絵のうまい下手は 経験によって変わるけど 絵を動かす力があるかどうかは もっと大事な能力なんだ。 この絵には ちゃんと 君らしさが出てたと思うよ。 うん。」

なつ「本当ですか?」

仲「本当だよ。 ちゃんと勉強すれば アニメーターになれると思うな。

なつ「あ… なりたいとは別に…。」

仲「えっ 思ってないの?」

陽平「彼女の家は牧場なんです。 彼女も 農業高校に通っていて 酪農の勉強をしてるんです。」

仲「そうか… いや 残念だな~。」

なつ「女でも なれるんですか?」

仲「そりゃ なれるよ! だって 映画で お芝居していいのは 男しかダメってことはないでしょ? アニメーターだって同じだよ。 絵で 演技をするだけだ。 ここは 今 仮のスタジオでね もうじき 僕たちは 会社ごと 東洋映画に吸収される。」

仲「そこに 新しいスタジオが出来上がるんだ。 日本の映画会社も いよいよ ディズニーに負けないくらいの アニメーション映画を作ろうとしてるんだ。」

なつ「でも 私は 絵の勉強なんかしてないし…。」

仲「うん… 下山君。」

下山「はい。」

仲「君は ここへ来る前 何をやってたっけ?」

下山「あ… 警察官であります。」

なつ「警察?」

下山「はい。 警察で 絵の訓練をしていたであります! バン! バン!」

仲「ハハハ…。 勉強は どこにいたってできるよ。 まずは 人間のしぐさや 動きを よ~く観察すること。 日常のありとあらゆるものの中に アニメーターの訓練は潜んでるんだ。」

街中

<なつは 自分の想像力を 夢を そっと動かしていました。>

<なつよ その日もらった夢を 自分で動かしてみるか? なつよ…。>

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