ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第33話「なつよ、雪原に愛を叫べ」【第6週】

あらすじ

なつ(広瀬すず)の結婚について、泰樹(草刈正雄)に企(たくら)みがあることを、富士子(松嶋菜々子)と剛男(藤木直人)が知る。それから数日後、なつと天陽(吉沢亮)は、照男(清原翔)からもらったチケットを手に、帯広の映画館を訪れた。上映ブザーが映画館に鳴り響き、満員の客席が闇に包まれていく。なつは、夢のような漫画動画の世界に浸っていく…。

33話ネタバレ

柴田家

詰め所

剛男「今 何て言いました?」

泰樹「照男を なつと結婚させると言ったんじゃ。」

富士子「何 バカなこと言ってるの。」

泰樹「バカなことじゃない。 なつと照男が もし それを望むなら それに越したことはないと思わんか? きょうだいを捨てなくても 柴田なつになれるんだ。」

なつ『ただいま。』

剛男「あっ なつが帰ってきた。」

富士子「とにかく なつには 変なこと言わないで下さいよ。 今の話は 聞かなかったことにするから。 あんたも いいわね?」

剛男「うん。」

なつ「ただいま。」

富士子「お帰り。」

剛男「お帰り。」

なつ「何さ 3人そろって…。 どしたの? 何かあった?」

富士子「いや… 何もないわよ。」

剛男「なんも なんも。」

なつ「搾乳は いいの?」

富士子「あっ! これから すぐ行く。」

なつ「私も 着替えて すぐ行く。」

泰樹「おい なつ。」

なつ「何? じいちゃん。」

泰樹「ちょっと 折り入って 話がある。」

なつ「ん?」

富士子「何もない! 今はない! でしょ!」

泰樹「ない。」

なつ「えっ?」

泰樹「ない…。」

居間

夕見子「えっ 何かあった?」

富士子「何よ?」

夕見子「そんな怖い目で見ないでよ。 何だか おかしいよ みんな黙って。」

富士子「普通でしょ。」

剛男「普通だよな。 食べながら しゃべるのは 行儀悪いしな。」

夕見子「いつも ぺちゃくちゃ しゃべってるじゃない。」

剛男「そうか?」

夕見子「うん。 父さんだって 夏休みに 母さんとなつが いなかった時 『ごはんが静かだなあ』って 寂しがってたじゃないの。」

剛男「それは いなかった時の話だろう? いる時は 寂しくないだろう 黙ってたって。」

夕見子「う~ん そういうことかな。」

剛男「そういうことだよ。」

泰樹「うるさい。 くだらんこと しゃべるな。」

富士子「ほら 普通に しゃべってるじゃないの 今日だって。」

明美「なつ姉ちゃんが 黙ってるからじゃない? 何か 変なの…。」

なつ「えっ?」

明美「なつ姉ちゃん どしたの? 何か 悩んでることでもあるの?」

富士子「あるの?」

剛男「あるのか?」

なつ「ないよ。 普通だよ。 何言ってんのさ 明美。」

明美「だって なつ姉ちゃん お兄ちゃんの夢を見たなんて言うから…。」

富士子「えっ?」

剛男「どっちの?」

照男「(せきこみ)」

剛男「どっちでもいいか…。」

なつ「東京の。 寝る前に 今頃 どうしてるかなって思ったから そんで 夢に出来てきたんだと思う。」

剛男「あれから 無実が証明されて 警察は 無事出たんだろ?」

なつ「うん…。」

富士子「けど 行方が分からないのは心配よね。」

夕見子「明美は 本当 余計なこと しゃべるんだから。」

明美「だって 心配だったんだもん!」

夕見子「あんたが 何を心配すんのさ?」

明美「だって… 人は 死ぬ時 大事な人の夢に出るんでしょ?」

なつ「えっ?」

富士子「誰が そんなこと言ったの?」

明美「花村先生。」

照男「関係ねえだろ。 夢に 誰かが出るなんて 普通のことだよ。」

剛男「お前の夢にも 誰か出るのか?」

照男「えっ?」

剛男「あっ… どうでもいいけどな そんなことな ハハハ…。」

なつ「あっ そうだ! 今日 学校で バターを作ったんだわ。」

富士子「バターを?」

なつ「うん。 あ そんでね じいちゃん 雪月のおじさんが うちに バターを作ってほしいんだって。」

泰樹「雪月が?」

なつ「おじさんが バターを使った 新しいお菓子を考えてるみたいだわ。」

泰樹「ああ そうか。」

なつ「考えないとね… これからは ちゃんと そういうことも。」

泰樹「うん。」

なつ「うん。」

<数日後 なつと天陽君は 帯広の映画館に向かいました。>

列車

なつ「どんな話だべか…。」

天陽「見して。」

なつ「うん。」

天陽「ふ~ん…。 ディズニー。」

なつ「それは知ってるわ アハハハ…。」

映画館

<なつは… そこで また 出会ってしまうのです。>

回想・仲「アニメーションは 動きが命なんだよ。 絵に 命を吹き込むことなんだ。」

回想・仲「ちゃんと勉強すれば アニメーターになれると思うな。」

大杉『皆様 日本で初めての総天然色 長編漫画映画を 我が東洋の手によって作りたいと この度 新しい映画スタジオが 完成しました。 皆さん ご承知のごとく 漫画映画は 一般の映画と比較いたしまして 多分に 国際性を持っております』。

なつ「あっ…。」

大杉『そこで 私どもは 立派な漫画映画を作りまして 広く 世界に進出いたしたいと考え 我が東洋動画は 日本ではもちろん 世界でも珍しい 最新式のスタジオを作りまして 早速 制作に着手いたしました。 その第1回の作品は 中国の有名な昔話を題材とした 『白蛇姫』でございます。 どうか 皆様の絶大なるご支援を 頂きますよう お願い申し上げます。 それとともに もし 志のある若い人がいましたら 是非とも 世界を切り開く力に なってもらいたい』。

大杉『我が社では 広く新しい人材を求めております。 どうか 皆様 新しい東洋動画を よろしくお願い申し上げます。』

雪月

なつ「あ~ 面白かった~。 よいしょ… こんにちは!」

妙子「あら なっちゃん。 まあ 天陽君も。 いらっしゃい。」

天陽「こんにちは。」

妙子「あれ? 雪次郎と約束?」

なつ「違います。 今日は 映画を見た帰りです。」

妙子「2人で映画を? 雪次郎は誘わずに?」

なつ「あ… すいません。」

妙子「フフフ… 冗談よ。 どうぞ。 はいはい。 いいわねえ。」

なつ「はい いかったですよ。」

妙子「えっ?」

なつ「なまら いかったですよ 映画。 ね!」

妙子「ああ…。」

天陽「うん まあ。」

妙子「映画は 何でもいいのよ。 ねえ 天陽君にはね。」

天陽「え?」

妙子「うん? フフフ…。」

なつ「おばさん 何変なこと言ってんですか!」

妙子「変かい?」

なつ「最近 とよばあちゃんに 本当 似てきましたよね。」

妙子「本当 嫌なこと言うね。」

とよ「あ~ら なっちゃん!」

なつ「あ~!」

とよ「え~っと…。」

妙子「天陽君。」

とよ「あっ そうだった。 天陽君 絵描きのね。」

天陽「あ 絵描きではないです。」

とよ「あれ? 違ったかい?」

天陽「絵は描きまけど 絵描きじゃありません。」

とよ「理屈っぽいんだね。」

妙子「今日は 映画を見に行ったそうですよ。」

とよ「あれ 2人で?」

妙子「うん なまら いかったそうですよ。」

とよ「映画は 何だっていいのさ 2人には。 ねえ。」

なつ「ハハハ… 本当 同じこと言いますね。」

妙子「ご注文は?」

なつ「う~ん 寒いから あったかい紅茶を。」

天陽「僕 コーヒーで。」

妙子「はい かしこまりました。」

とよ「フフフ… どう? じいちゃんは元気?」

なつ「元気です。」

とよ「相変わらず 苦~い顔して 砂糖なめてんの?」

なつ「ハハハ… なめてませんよ。」

とよ「ものの例えっしょ。 あれ やだ 私 邪魔だわね。 邪魔でしょ?」

なつ「いいえ。」

とよ「聞かれて 邪魔だって人はいないわよ。 邪魔 邪魔。 ハハハ… じゃ また後でね。 ハハハハ…。」

なつ「後で また来るんだ ハハハ…。」

天陽「ハハハ…。」

なつ「あ~ 本当いかったよね 映画。 ねえ。」

天陽「何度も聞くなよ。」

なつ「だって あんなふうに 音楽を表現できたり 地球の誕生から 恐竜の時代までを表現したり アニメーションって 何でもできるんだね。」

天陽「うん… 何でもできるってことは 何もないのと同じだよ。」

なつ「ん? どういう意味?」

天陽「何でもできるってことはさ 何もない広い土地に行くのと 同じことだからな。 自分で 土を耕す方法を覚えて 作れる種を見つけて それを手に入れないと 何もできない。 なっちゃんはさ それでも行きたいと思うのか? そういう土地に。」

なつ「そうか… そういうことか…。 そういうことだよね! やっぱり 天陽君 すごいな。」

天陽「何が?」

なつ「私の悩んでることに 簡単に答え出しちゃう。 無理だよね そんなの。 私が そんなところに行けるわけがないわ。 酪農だって 中途半端なのに。 うん… 私ができるわけがない アニメーションなんて。」

天陽「なっちゃん…。」

なつ「うん?」

天陽「本当は行きたいんだべさ?」

なつ「ハハ… 無理 無理 無理 無理!」

<なつよ そんな顔で笑うな。 天陽君も つらいぞ。>

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