ドラマダイジェスト

連続テレビ小説「なつぞら」第3話「なつよ、ここが十勝だ」【第1週】

あらすじ

北海道・十勝の柴田家に来て以来、なつ(粟野咲莉)は泰樹(草刈正雄)の指導のもと、酪農の仕事を覚えようと早朝から働いていた。柴田牧場で働く悠吉(小林隆)と菊介(音尾琢真)親子は、重労働にも取り組むなつの姿に感心するが、富士子(松嶋菜々子)は、学校にもいかずに働くなつを心配する。そんなある日の夕食で、なつは食事をしながら居眠りをしてしまう。その姿を見た富士子は、たまらず泰樹に向かって思いをぶつける。

3話ネタバレ

柴田家

子供部屋

なつ「私を ここで働かせて下さい。 何でもします。」

泰樹「いいんでないかい。 その方が その子も ここに いやすいと言っとるんだべ。」

剛男「言ってませんよ。」

なつ「言ってます!」

泰樹「それでこそ 赤の他人じゃ。」

剛男「お義父さん!」

泰樹「明日から 夜明けとともに起きて働け。」

なつ「はい!」

<なつが 北海道の開拓者の一家 柴田家に来て 数日がたちました。 ここで働くと決めたなつは 一日も早く 酪農の仕事を覚えようと 必死でした。」

牛舎

なつ「おはようございます!」

(鳴き声)

なつ「おはようございます!」

剛男「おはよう なっちゃん。」

菊介「今朝は元気だな。」

悠吉「早起きにも慣れたんかい?」

なつ「はい。」

剛男「なっちゃん こっち手伝って。」

なつ「はい。」

剛男「はい。」

<朝は 4時に始まります。 まずは 牛たちに よい乳を たくさん たくさん出してもらえるよう 乾燥させた飼料などを与えます。>

なつ「おはよう 今日もよろしくね。 よいしょ… 今日もよろしくね。 おはよう。」

(鳴き声)

<それから 搾乳をします。 なつは まだできません。 そして 牛を放牧して 新鮮な草を食べさせます。>

なつ「行ってらっしゃ~い! 元気いっぱい 草を食べてね! 糞もしてね! 行ってらっしゃ~い! 行ってらっしゃ~い!」

玄関前

夕見子 照男「行ってきま~す。」

富士子「はい 行ってらっしゃい。」

なつ「行ってらっしゃ~い! 行ってらっしゃ~い!」

富士子「なっちゃん おはよう!」

なつ「おはようございま~す! 元気いっぱい 糞もしてね! 行ってらっしゃ~い!」

牛舎

悠吉「じゃあ 次 糞出しやってくれ。」

なつ「はい。」

<牛たちが出ていくと これからが大変です。 牛たちの寝床を きれいにするのです。>

菊介「なっちゃん 頑張れよ。」

悠吉「牛になりたいべ。 あれら 一日食ってんのが仕事だ。 羨ましいべ。」

なつ「ハハハハ…。 私は 乳を出せないから 力を出さないと。」

悠吉「なっちゃん…。」

菊介「子どもの冗談とは思えんべさ。」

富士子「いいのかい? このまま なっちゃん 学校にも やらないで。」

剛男「今は あの子の好きにさせるしかないさ。 あの子にも 意地みたいなもんがあんだわ。 ず~っと 大人に頼らず生きてきたからな。」

富士子「大人のあんたが連れてきたんでしょ。 無責任だわ そんなの。」

剛男「なっちゃんは だいぶ 仕事にも慣れた。 自分を認めてもらおうと必死なんだわ。 俺には その気持ち よ~く分かるさ。」

富士子「はあ… な~して 男って 自分の身に置き換えて 人のことを考えることしかできないのさ。」

剛男「したけど これから あの子が ここで生きていくためには 大事なことのように思うんだ。 今は見守るしかないよ。」

富士子「(ため息)」

剛男「大丈夫だって。 俺が ついてんだから。」

富士子「だから 心配だべさ!」

剛男「よし 明美「 お父ちゃんとこ来い。 ほら 明美…。 まだ慣れないのか。 ほら お父ちゃんだぞ よし おいで おいで おいで…。」

菊介「よいしょ。」

<それから 新しい寝ワラを 牛舎に敷き詰めてゆきます。>

剛男「あっ… 大丈夫?」

なつ「大丈夫です。 自分でやれます。」

居間

一同「頂きます。」

<それから やっと朝食です。 食べている時のなつは 本当に幸せでした。>

悠吉「なっちゃんは 本当に いい食いっぷりだな。」

菊介「あんだけ働けば 腹も減るべさ。」

悠吉「牛に負けんな。」

菊介「牛と張り合って どうすんだよ。」

悠吉「な~に いいべさ…。」

菊介「何言ってんだ おやじ。」

悠吉「黙って食え。」

菊介「うっせえよ おやじも黙って食え。」

<朝食っが終わると 今度は 畑仕事が始まります。 柴田家では 酪農のかたわら 豆やジャガイモを作っていました。>

<おじいさんは 搾った牛乳を 集乳所まで 馬車で運んでいきます。>

牛舎

なつ「お帰りなさい。 お帰りなさい。 いっぱい食べた? いっぱい糞した?」

剛男「はい ただいま。」

なつ「ハハッ お帰りなさい。」

<それから 夕方にも 帰ってきた牛たちの乳を搾ります。>

(鳴き声)

居間

泰樹「おい。」

なつ「あっ お兄ちゃん! えっ?」

照男「えっ? 何?」

剛男「ハハハ… 何だ 寝ぼけてただけだ。」

泰樹「寝るか食うか どっちかにしろや。」

なつ「はい… 頂きます。」

富士子「(泣き声)」

剛男「なしたの?」

富士子「だって かわいそうだべさ…。 この いい加減にしろ! この頑固ジジイ!」

泰樹「わしが何したんじゃ。」

剛男「富士子ちゃん 落ち着いて。」

なつ「ごめんなさい!」

剛男「なっちゃんはいいんだよ。」

夕見子「ごちそうさん!」

剛男「おい 夕見子!」

明美「(泣き声)」

剛男「どうなってんだ…。」

夫婦の部屋

(足音)

夕見子「もう やだ!」

剛男「なした?」

富士子「なしたの?」

夕見子「あの子 いびきうるさくて寝られない。」

子供部屋

なつ「(いびき)」

夫婦の部屋

富士子「疲れてるんだわ。」

剛男「夕見子 こっちで寝ろ。」

夕見子「やだ。 おじいちゃんとこで寝る。」

剛男「夕見子…。」

泰樹の部屋

泰樹「(いびき)」

牛舎

<その日は 日曜日でした。 牛には もちろん 日曜日などありません。」

泰樹「おい こっち来い。 やってみろ。」

なつ「えっ?」

泰樹「搾ってみろ。」

なつ「はい! お願いします!」

なつ「よろしくね。 蹴らないでね。」

(鳴き声)

なつ「大丈夫 大丈夫…。」

泰樹「牛から離れるな。 おっかなくても くっつく方が安全じゃ。」

なつ「はい。」

泰樹「まずは このあっためた布で 乳首を拭いてやる。 そして よくあっためるんだ。」

なつ「はい。」

泰樹「強く刺激してやらんと 乳は出ん。 でも 素早くやらんと 牛が嫌がる。」

なつ「はい。」

泰樹「よし もういいだろう。 搾れ。」

なつ「はい。」

泰樹「数を数えるおうに 上から指を折るようにして搾る。」

なつ「指を…。 あっ! そうか そうやるんだ。」

泰樹「おっ おっ おっ おっ…。」

なつ「あっ。」

剛男「すごい! やったな なっちゃん!」

悠吉「うまいもんだ。 もう調子が出てきたべさ。」

菊介「なっちゃんは 本当に 俺たちの仕事を よく見てたんだな。」

剛男「ハハハハハハ…。」

玄関

剛男「随分 上手になったな。」

照男「ダメだよ 俺なんか。 じいちゃんに頼りにされてないし。」

剛男「ああ… 父さんだって じいちゃんに頼られたこおとはないよ。 気にすんなよ。 照男 あの子のこと頼むな。 父さんは お前を頼りにしてるんだぞ。」

照男「いいよ そんなこと。」

剛男「そんなことって何だ。」

照男「俺は 父さん 偉いと思うよ。」

剛男「照男… ありがとう。」

子供部屋

剛男「夕見子 ちょっといいかな? おっ 勉強か 偉いな。 父さんも 働くより 勉強の方が好きだったな。 夕見子は 父さんに似たんだな。」

夕見子「働けってかい?」

剛男「いや… そうじゃないよ。」

夕見子「じゃ 何?」

剛男「うん…。 父さんが あの子を ここに連れてきた 理由を ちゃんと話そうと思ってな。」

富士子「あの子がいない!」

剛男「えっ?」

富士子「父さんが どっかに連れてったみたい。」

剛男「えっ どこへ?」

<なつは そのころ 荷馬車に乗っていました。 まるで どこかへ売られゆくように。 なつよ 一体 どこへ揺られてゆくよ。>

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